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外伝2/レンジローバーの帰り道 1

「ああぁ、祥子さん行っちゃったね。」
雪の別荘の門の前で、私はついそう呟いてしまった。
そう口にしていながら私の身体は、まるまる3日間あの女性と過ごす事が出来た夢のような時間の余韻に、まだ半分浸っているようだった。
はらりと落ちかかる前髪をオフホワイトのアラン編みのセーターから出た少し冷たい指先でかきあげる。ざっくりとした編地と、上質なウールの感触がとても好きで、もう5年も愛用している1枚だ。
「望月に任せておけば大丈夫さ。」
美貴が、私の言葉をどう誤解したのだろうか、そんな風に口にした。ネイビーのハイネックはシャープな美貴の容貌に似合う。いつもはスーツしか着ない彼のデニムスタイルは珍しい。
完全休日にしておいた年始休みの、今日が最後の1日であることを堪能するかのような装いだ。それとも、最近ジムで引き締めたと言っていたスタイルを祥子さんに印象づけたかったんだろうか。・・・まったく。
「結城くんが来るのは11時くらいか?」
「ええ。一昨日、ホテルのチェックアウトまでのんびりしてていいよ、と伝えてありますからきっとそれくらいの時間になるでしょう。あのホテルからここまで、下りは結構きついですからね。1時間弱といったところじゃないですか?」
セルシオが全く見えなくなるまで、門外で見送っていた石塚さんはようやく玄関へと踵を返した。こんなところが、義理堅い・・・この人のいいところだと私は思う。今日はグレーと白のシンプルなチェック柄のネルのシャツだ。去年のスキーシーズンに、うちのスポーツブランドでまとめ買いしてくれたうちの1枚だったはずだ。襟元にはチャコールグレーのスキーのアンダーウエアーが覗いている。軽装だけど結構これで寒さも防げる、スキーヤーらしいセレクトをしている。
別荘の扉を開けると、暖房であたためられた空気が優しく私達を迎えてくれた。

「それじゃ、朝飯を片付けて、帰りの準備でもするか。こういう時に望月くんがいないのは不便だな。」
「うちの望月を使いっ走りがわりに使わないでください。」
石塚さんも美貴も、たった一人の女性がいなくなっただけで気が抜けた様になっている。まぁ、私も同じなんだが・・・。
エンドレスでかかっているモーツァルトのCDを聞きながら、私達は別荘のテープルで用意されていた朝食に手を付けた。
一昨日の夜。湯文字だけの姿で縄で括った祥子さんを望月くんと一緒に雪のつもったウッドデッキへ出した時と同じテーブルの同じ椅子に、私も美貴も石塚さんも座っている。
あのときとは正反対の明るい陽の光が乱反射するテラスに、視線をつい走らせてしまうのは私だけではないようだ。
真っ暗な中に窓の結露を払ったところだけに浮かんだ・・・祥子さんの白い乳房・鴇色の乳首・・・赤い縄と・湯文字。
ushirode2.jpg

彼女の視線が、ずっと一緒にウッドデッキに出された望月くんにだけ注がれていたことに私は焼けるような嫉妬を覚えていた。
あぁ、油断をすると勃ってしまいそうだ。

ゆうべ一晩。私達3人は祥子さんに触れていない。もう、全ての精を彼女に注ぎ尽くしたからだった。さすがに、もう一晩祥子さんが側にいても・・・彼女もだろうが・・・私達も限界だった。
2日間を通して責め立てた後、彼女のことは望月くんに任せた。
以前箱根の宿で一夜を過ごした時、望月くんと祥子さんにふたりきりの時間を与えたことがあると美貴が言っていた。
その時は、なんとも甘く・悩ましく・・・望月くんに愛されている祥子さんの喘ぎ声が聞こえ続けたそうだ。 コメント
セルシオからレンジローバー…。
このテンプレでどんな物語が綴られるのでしょうか。

赤だから激しいとは限らないのですね。
蒼もけっして引けをとらないです。

2006/11/28 22:08| URL | eromania  [Edit]
こんばんわ。
留守をしております内に、いろんな展開が…。
私の方もこのテンプレが名前にあっているかとも思い考えたのですが、余りの鮮やかさに気が引けてしまったのです。
祥子さんならではの、秘めた情熱に相応しいと思います。
お気遣い有難うございました。


2006/11/29 01:11| URL | るり  [Edit]
<奇跡>の空間へようこそ
blueroseと題されたこのテンプレートは、わたくしのベーシックテンプレになっている紅い薔薇のイラストの作者と同じ010101様のものです。
blueroseの花言葉は<奇跡><ありえないこと>だそうです♪

eromania様
この1年。ずっと<初雪>を書いていたような気がします。
<初雪>の中では往きにわたくしをめちゃくちゃにされたレンジローバー。
帰り道にその車の中で交わされる、男同士の会話とひっそりと山崎さんに片思いをしている結城さんの想いをお楽しみ下さい。
あまり・・・セクシャルなシーンが多くないかもなので・・・その点はお許しくださいませ。

るり様
いえいえ、るり様とテンプレートの好みが似ていてとてもうれしいです♪
先日コメントさせていただいたテンプレも、一目ぼれだったんです。
薔薇の華やかさ・香しさ・・・。
足元にも及ばないと思っても、どうしても惹かれてしまうものですね♪

2006/11/29 07:57| URL | 祥子  [Edit]
ヒロインが去ってしまったあとの虚脱、寂寞・・・
BGMは、モーツァルトのアンニュイな調べ。
舞台設定がみごとですね。
このお話のもとになる「初雪」の筆を執られたのは・・・ちょうど去年のいまごろでしたでしょうか?
なかなか止まない初雪でしたね。(笑)
・・・と、申し上げようと思ったら。
>この1年。ずっと<初雪>を書いていたような気がします。
そう。
たしかにあのころから。
お話にも、登場人物の造形にも・・・いちだんと深みが増したように感じるのは私だけでしょうか?

2006/12/10 09:47| URL | 柏木  [Edit]
柏木様
ご無沙汰いたしておりました。
と思いましたら・・・沢山のコメントありがとうございます。
一年がかりの<初雪>お楽しみいただけましたでしょうか♪
拙い物語が、この一年皆様にお付き合いいただいたことで少しでも磨かれたなら・・・幸いですわ。
ありがとうございます。

2006/12/11 00:51| URL | 祥子  [Edit]
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