ムーンナイト・アフェア 17
わたくしの言葉を満足げな様子で聞くと、手触りの柔らかさを楽しむようにゆっくりと髪を撫でるのです。まるで・・・愛おしいとでも言う様に。
「それにその黒々とした茂みも無くしてしまいたいものだね。真っ白な肌に赤い縄だけの姿が祥子には似合う」
「いやぁぁ・・だめですぅ・・・」
「わかっているよ、祥子。いまは無理強いはしない」
そう言うとまた一口ミネラルウォーターを含み、わたくしの唇に口移しするのです。
唇を離すと改まった口調で名前を呼びました。
「祥子・・・」
「なんでしょうか」
身を起こそうとする動きを制止されて、わたくしは男性を見上げた姿のままで返事をしました。
「僕のものになる気はないか」
「えっ・・」
その声は落ち着いた普段の長谷川様の声でした。
ただその声が意味するあまりに意外な言葉に驚いてしまったのです。
「夏に、あのジャズライブの夜に抱いてから、僕はずっと祥子がMだと思っていた」
ミネラルウォーターを手にして冷たくなった指がわたくしの頬の上を滑ります。
「今夜逢って本当に極上のMだと確信できた。僕が望んでいる理想通りのM女なんだ」
唇の端までたどりついた指は・・・輪郭を触れるか触れないかの微妙なタッチで辿ってゆくのです。
「祥子を知ってしまっては、他の女達ではもう僕は満足できない」
驚きのあまり僅かに開いた唇の狭間に、口づけをしているかのように・・・その人差し指をゆっくり差し入れるのです。
わたくしは・・・ほとんどあたりまえのようにその指先を受け入れ、舌を指先に絡め、唇で指をしごく様にすぼめたのです。
舌と唇の感触を存分に楽しんでから、男性はゆっくりとその指を引き抜いたのです。
「祥子は何が望みだ?」
わたくしの唾液に濡れた指をゆっくりと自らの唇に運び・・・指先についた蜂蜜を味わうかの様にねぶると・・・そう口にしました。
「祥子を手に入れるためなら他の女達は全て整理する。僕のものにならないか、祥子」
男性の真情をその手が・・・真摯な語り口が一時の思いつきではないことを・・・きちんと物語っていたのです。
でも・・・わたくしは静かに首を横にふりました。
「僕が嫌いか? それとも行為が気に入らなかったか?」
プライドを傷つけられたのでしょうか。初めて眉を顰める様にして言い募られたのです。
微笑みを浮かべて・・・再度わたくしは首を横に振ったのです。
「いいえ、素敵でした。こんなに・・・はずかしいのですが1人の男性に何度も狂わせられたのははじめてですわ」
そして長谷川様の手を取り、胸元に抱きしめながらお返事をしたのです。
「わたくしが探しているのはセックスのためだけのパートナーではないものですから」
そこまでお答えしてようやく彼と視線を合わせたのです。
「こんな風にお逢いしていてこんなお返事・・・なんて申し訳ないのですが、こういう行為の為のお相手だとしたら、わたくしはあなただけのものになる訳にはまいりません」
長谷川様が息をのむ音さえ聞こえるようでした。
「そうか、祥子を全て受け入れる覚悟がないと僕のものにはなれない、というんだね」
わたくしはこくん・・と一つ頷きました。
「それに、あなたには奥様がいらっしゃるのでしょう」
わたくしよりいくつか年上の魅力的な男性なのです。家庭があって当たり前です。
だからこそ・・・わたくしは深入りするわけにはいかなかったのです。
夏のあの日の偶然の出会いに決着を付けるために、今夜出向いたのですから。
「いや、独りなんだよ。離婚してね」
余裕の笑みさえ浮かべながらも、自虐の色を漂わせた声音で思いがけないことを口にします。
「祥子も同じなんだろう。支配人からそう聞いている」
わたくしの瞳を覗き込んだままで質問を繰り出します。
離婚して数年・・・フリーの仕事・独りの生活、それが今のわたくしでした。
「ええ そうですわ」
「だから祥子がそんなことを望んでいるなんて思いもしなかった。僕はまだそんな関係を手に入れたいとは思っていないからね」
胸元に抱きしめていたわたくしの手を払って、男性の左手は縄で引き絞られたGカップの左の乳房を握りしめるのです。
「はぁぅっ・・・」
男性の視線に晒され続けたことで身体の芯に溜まっていた疼きが、また・・目覚めさせられてしまいそうです。握り込まれた手のひらの中心を揺する様にして、わたくしの乳首を刺激するのです。
「祥子 だったら、こんな風に逢うのは構わないのか? 今日の様に過ごすのはいいのか」
「いつか・・・わたくしが誰かのものになる時が来るまでなら」
刺激に上ずりそうな声を抑えて答えました。
「それは明日来るかもしれません。それにどれだけこうして可愛がっていただいても・・・これだけの関係しか望まれないなら、わたくしがあなたのものになることはないのです。それでもよろしいのですか?」
長谷川様は少し考えていたみたいでした。左手の動きすら止まり・・・視線は宙を泳いでいたのです。
「はせがわ・・さん?」
わたくしの声に惹かれた様に・・・不意に唇を重ねてらっしゃいました。
「あふっ・・・んっぅ・・ふぅく・・っん・・・」
貪るような口づけでした。
「キスだけでこんなに感じる。ふっ・・たいしたものだ、宗旨替えしても手に入れる価値はあるかもしれないな」
糸を引くほどに交換された唾液が・・・彼の口元に光るのです。
わたくしの耳元で男性の塊が・・彼の言葉通り・・・むっくりと力を増し始めていました。
「休憩は終わりだ、祥子。ほらこちらを向け。僕のをそのいやらしい舌と唇で大きくしてもらおうか」
男性に膝枕をしていたわたくしを自分の方に向けると、黒のボクサーショーツから・・半ば立ち上がった塊を引き出してみせるのです。
「・・ぁん・・くちゅ・・・」
今夜限りと納得をしてくださったのなら・・・と、わたくしは筋肉痛になる少し前のように熱をもった身体から背に掛かる髪を払い・・・舌を伸ばして新たにフェラチオをはじめたのです。
ぺちょ・・・くっ・・ちゅ・・ 男性の左手は、最初わたくしの肩を強い力で支えておりました。
「その位置からだと、裏筋の敏感なところばかり祥子に責められてしまうな。ふふ いいぞ、祥子」
塊の先端とその向こうの傾斜にも舌を這わせようと顔を伏せる様にしたときです。男性の左手が離れました。
「・・んふっ・・ちゅ・・くっ あん」
次に右手で乱暴に肩を後に引かれた時、わたくしの左右の乳首に・・・ふたつのプラスチックの卵が医療用のテープではりつけられていたのです。
「あっ・・だめ・・・」
テープで外れない様に止められるなんて。
あの塊にこのまま振動されたら・・・わたくしは思わず右手で付けられたばかりのローターを外そうとしてしまいました。
「だめだ! 外すんじゃない」
右手首は男性の左手に押さえ込まれてしまいました。
「また括られたいのか?祥子。その手首に2週間はとれない赤い痣をつけたいのか!!」 そんなことできません。
明らかに縄痕だとわかるような痣を手首に付けたまま2週間も仕事をするなんて、そんな破廉恥なこと・・・。わたくしは腕の力を抜きました。
「そうだいいコだ。そうしていれば括ったりしないからな、ほら口がお留守になっているぞ、祥子。続けなさい」
- 祥子様
-
「セックスだけのパートナーを探してるのではないですから」という言葉・・・・
同じ言葉をどこかで口にしたような・・・・
ほんの休憩だったのですね。
また祥子様の体が熱く・・・燃えていくのですね。
2006/02/26 16:45| URL | 桜草 [Edit] -
胸を締め付けられるような感覚
体が熱くなる感覚
逢瀬の時を思い出せてくれました。
2006/02/26 17:22| URL | 響 [Edit] -
桜草様
同じ言葉・・・そうでしたでしょうか。
わたくしが求めているパートナーは<唯一の方>なものですから。
お求めいただく気持は解っても 簡単にはお答えできなかったのです。
響様
お越しくださってありがとうございました。
逢瀬の一時・・・そう思って下さるのがうれしいです。
よろしければまたお時間のある時にでもお越しください。
2006/02/26 18:51| URL | 祥子 [Edit] - 祥子様
-
コメントの仕方が悪うございました。
私も同じ言葉を口にしたことがあるのです。
唯一の方・・・それがよくわかるのです。
2006/02/26 21:37| URL | 桜草 [Edit] -
桜草様
わたくしの方こそ失礼いたしました。
この言葉は・・・とても勇気の必要な言葉ですよね。
相手の方を傷つけてしまいかねない言葉
でもきちんと伝えないと自分自身がいつか傷ついてしまう言葉。
その切なさ・辛さをわかって受け止めていただけたならとてもうれしいです。
2006/02/27 07:48| URL | 祥子 [Edit] - はじめまして^^
-
表現が素晴らしくてつい読み入ってしましました
これからも愛読させてくださいね^^
あっ・・リンクさせて頂きましたがご迷惑なら解除いたしますね
2006/02/27 12:41| URL | Gay [Edit] -
Gay様
いらしてくださってありがとうございました。
リンクまでしてくださって・・・とてもうれしいです。
時々お時間のある時にでもお越しくださいませ。
これからもよろしくお願い申し上げます。
2006/02/27 20:00| URL | 祥子 [Edit]
トラックバックURL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| BLOG TOP |