ジューン・ブライド 31
かたっ・・・ 浴室のドアの開く音が背後でいたしました。森本さんがシャワーを出られたのでしょう。BGMはホルストのジュピターになっていました。
1人でいた間、わたくしは海の景色を瞳に映したままで、脳裏にはトモくんとの最後の時間を思い返していました。
17歳年下。あんなに若い男性と親しいお付き合いをすることは、もうないかもしれません。素直で優しいコ。幸せに・・・ほんとうに幸せになってほしいと、彼の面影に最後の言葉をかけたのです。
膝の上の文庫本はほんの数ページを繰っただけでした。その数ページの内容など、はずかしいことですが・・・わたくしの頭の中にはほんの少しも入ってなかったのです。
「ねえさん。」
森本さんの声がすぐそばで聞こえました。
「さっぱりした? ん・・ぁっ」
振り返ったわたくしの唇は・・・森本さんに塞がれてしまったのです。
「・・んん・・っく」
先ほどまでの戯れのキスでは・・・もうありませんでした。
わたくしの舌も・・唾液も・・・喘ぐ声さえも全て奪い尽くすような・・淫らな口づけだったのです。
ねえさんと呼ばれ、ほんとうの姉弟のように接していても、ふたりは・・・血のつながりなどない・・・ただの男と女なのだと・・森本さんの唇が告げていました。
「・・っ・・ぇぇ・・」
右手でわたくしの肩を抱き・・・左手はバスローブの紐を・・解こうとしていました。
「あん・・だめよ・・もりもと・・さ・ん・・ぁぁ・・」
彼の暖かな唇は、顎のラインを通って反らせた喉を・・・バスローブを開かれた胸元へ向かって這ってゆくのです。
「まだこんなものを着てたんですね。」
彼の視線は喉からGカップの乳房に続く白い肌が、ゆるやかな隆起の途中で途切れている部分で止まっていたのです。
シャワーのあと、ネグリジェのかわりにと・・・アイリスブルーのスリップとTバックだけは身に着けていました。カーテンを閉じて明かりを決してお昼寝するとはいっても・・・一人きりの時のように何も身に付けない姿でいるわけにはまいりません。ミニドレスを纏ったようなこの姿なら、森本さんをセクシュアルには刺激しないかと思ったからでした。
わたくしの前に立つ森本さんは・・・黒のバクサーパンツだけの姿でした。
いつ・・・心変わりをしたのでしょうか・・・優しくてジェントルな弟だったのに。
彼の手はわたくしの肩からバスローブを引き下ろそうとしたのです。
「あぁっ・・・だめっ・・・」
「ねえさん、今日はずっと欲情してたでしょう。」
無理強いはせず・・・椅子に腰をかけたままのわたくしの首筋から肩先に向けて・・・バスローブを引きはがした分だけ唇を這わせるのです。
「ちがう・・わ・・」
森本さんといて・・・欲情するなんて。こんな可愛い・・・弟なのに・・・
「違わないさ。鶴岡八幡宮の源氏池のほとりで僕の腕に当たったねえさんの乳首は、くっきり堅くなっていたよ。」
あの一瞬のわたくしの喘ぎの混じった声を・・・森本さんのプロの耳は聞き分けていたのです。
「ずっと・・・何か考えていたよね、ねえさんは。」
右の肩先まで露にした彼の手は今度は左の肩先へと・・・。
「ミルクを溶かしたようなあの瞳が僕のせいだって、そこまでは自惚れちゃいないよ。でも、欲情しているねえさんから漂ってくるフェロモンを我慢するのは、もう限界なんだ。」
あぁ・・・何もかも、知られていたのです。映像監督としての森本さんのプロの目を欺くことなんてできなかったようです。
「フェロモンなんて、ばかなこと言わないで。」
わたくしは、まだ森本さんとの関係を決めかねていました。わたくしをねえさんと呼ぶ彼との、友人以上恋人未満の関係が最も心地よかったからです。
「ねえさんは、僕が嫌い?」
森本さんはとうとうわたくしの両手から・・・バスローブを抜き取ったのです。
「嫌いじゃないわ。あなたは・・・だって・・・弟でしょ。」
ただの・・同じ店の常連同士から、少しだけプライベートな場所へ近づくことを許した・・・たった1人の男性。
「いまだけでいいから。ねえさんのフェロモンで昂った身体を癒してほしい。」
くちゅ・・・三度、森本さんの唇が重ねられたのです。今度は少し優しく・・普通の恋人同士のような甘さが含まれていました。
「いまだけ? 明日からお逢いしても、今朝までと同じ様に可愛い弟でいられる?」
「ん。約束するよ、ねえさん。いまだけ。ちゃんと昼寝ができるように、僕をなだめてほしい。」
ボクサーパンツに覆われた森本さんの熱い昂りが・・・アイリスブルーのスリップの胸に触れました。
ジューン・ブライド 32
「欲しいの?」いまだけ・・・このひと時だけ・・・姉弟で身体の関係を結ぶ・・・禁断の近親相姦のような関係。
森本さんとならそうなってもいいと・・わたくしは心に決めたのです。
「欲しい。この真っ白で柔らかな胸も・・むっちりした太ももも・・おおきなヒップも全部。」
わたくしのスリップの右肩を落とすと・・・右側のGカップの乳房だけをむき出しにしたのです。
「ああ、ねえさんの胸だ。ブラウスの胸元から覗く白い肌がいつも気になってたんだ。それに こんなにくっきり乳首を堅くして。」
森本さんは1人掛けのソファーの前に立ちふさがって・・・わたくしの乳房と乳首を嬲りはじめました。
「はぁぁ・・ん」
感じやすい乳房は・・・朝からずっとわたくしを悩ませ続けたトモくんとの最後の夜の記憶に重なるように・・・淫らに・・・森本さんの手に・・・陥ちていったのです。
「その声。何度、あの店の隣の席で聞きたいと思った事か。ねえさんの声・・・悩ましすぎるよ。」
窓辺のソファー・・・カーテンを引いたままの窓は・・海を見せるのと同じだけわたくしたちの姿を・・・海岸をゆくサーファーたちに露に見せていたにちがいないのです。
「おねがい・・カーテンを閉じて。ベッドに行きましょう。」
ソファーに座ったままのわたくしの、スリップの左の肩紐をも落とそうとする森本さんの手を押さえました。
「恥ずかしいわ。こんなに明るいところで、おねがい。」
「だめだよ。部屋を暗くしたら白い肌が見えなくなっちゃうからね。サーファー達に見せつけてやる。」
脚元から天井までの1枚ガラスの前に・・・右胸を露にしたままのわたくしを立たせたのです。
「やぁ・・っ・・・」
あまりに恥ずかしい姿に・・・わたくしは森本さんの方へと向き直りました。
「その顔。写真にとっておきたいくらいだよ、ねえさん。こんなに僕を惑わす大人の女なのに、まるでバージンを奪われる前の主人公みたいな表情をする。」
左の肩先に伏せられた森本さんの舌は、もう・・・あきらかに愛撫をはじめていました。
「あぁっ・・ゃぁぁん・・・」
左手はわたくしの乳房を・・・右手はスリップの裾をたくし上げ・・・わたくしのヒップを外の景色に向かって露にしたのです。
「だめぇぇっ・・・」
明るく差し込む午後の日差しが・・・アイリスブルーに縁取られた、わたくしの真っ白な腰のふくらみを際立たせているに違いないのです。
「ねえさんも、Tバックなんて履くんだ。」
「や・・ん・・・」
わたくしの手は森本さんの腕に沿ったまま、スリップを引き下ろす事もできなくなっていたのです。
「その声・・ずきずきするよ。ほら、僕に見せて、ねえさんのいやらしいお尻。」
ぐるり・・と身体を回されてしまいました。
「もっと腰を突き出して。そう。」
先ほどまでの夢想の中のトモくんと同じ言葉を、森本さんの口が紡ぎ出すのです。
上体を少しづつ倒し込み、腰を突き出す姿になっても・・・森本さんのもっとは・・つづきました。
「だめ。ねえさん、直しちゃだめだよ。そのままガラスに手を突いて。」
まろびでたままの乳房が・・・羞恥に立ち上がったままの乳首が恥ずかしくて、わたくしはそっとスリップの肩紐を直そうとしたのです。
「ゃあん・・・ゆるして・・・・」
倒された身体は、左の乳房もなめらかな腹部もまるい腰もアイリスブルーのスリップにきっちりと包まれているのに・・・露にされた右のGカップの乳房だけが・・はしたなく垂れ下がっていたのです。
「ははは こんな姿を見せたら、サーファー達が海から上がれなくなりそうだよ。ねえさん。」
ぎゅっ・・と掴んだ森本さんの左手の指の間からは、白い乳房の肌が溢れ出していたのです。くいこむほどに力を込められた胸への愛撫は・・・わたくしの腰まで・・・淫楽に震わせてしまいました。
「みない・・で・・・」
後に廻った森本さんに、わたくしは弱々しく声をかるしかなかったのです。
フロントを釦で止める前明きのワンピースは、裾から膝上の部分までは釦もなく開いていたのです。ワンピースから見えない様に・・少し丈の短めな丈のスリップを選んでいたのです。こんな姿を晒すことになるのなら、ロングスリップを選んだのですのに・・・。
まくり上げたスリップから現れた・・・白い丸みを・・・陶器を愛でるように森本さんは撫でまわしてゆきました。
「今日はガーター?」
「えっ・・・」
「ねえさんのヒップ、ガーターストッキングがとっても似合いそうだから。違うの?」
今日はオールスルーのパンティストッキングでした。いまは、丸められてハンドバッグに納められているその薄い重なりのことが脳裏をよぎります。
身から離したそのものを・・・男性には見せたくない・・・もう一枚の肌。
「今日は・・ちが・う・・わ・・・」
Tバックの縁を辿るような森本さんの指遣いにわたくしの声は上ずってしまいます。
「今日はってことは、ガーターのこともあるんだね。いつも上品なねえさんの洋服の下がTバックにガーターだなんて、珈琲を飲みながら想像しちゃいそうだよ。」
「ゃぁ・・・」
いつもの珈琲専門店で必ず隣に座る彼の視線が・・・わたくしのウエストからヒップを探ることを・・・これからは意識しなくてはならないのでしょうか。
「はぁぁ・・ん・・・」
くちゅ・・・ 森本さんの指が・・太ももの狭間へと・・差し入れられたのです。
「もうこんなに濡れてるよ、ねえさん。ああ、我慢できない。」
「ああぁっ・・・」
Tバックをずらして、唐突に・・・森本さんの塊がわたくしの中に突き入れられたのです。
ぬちゅぅぅ・・・ あっあぁぁ・・いっぱぁぁいぃぃ・・・・。
「あっ・・あぅぅ・・ゆる・し・てぇぇぇ・・」
まだ見た事もない森本さんの塊は・・・太く・・大きかったのです。
トモくんの記憶と森本さんの愛撫ですっかり潤っているわたくしの中を・・それでも・・みしぃ・・みしぃぃと広げてゆくのです。
ジューン・ブライド 33
「全部飲み込んだよ。ねえさんの身体・・すごい。」「あぁぁっ・・・」
森本さんは塊を確かめるように一旦身を引くと、また奥まで・・・一気に全てを飲み込ませたのです。
「最高だよ、ねえさん。全部包み込んで、こんなにしめつけて。」
森本さんはゆっくりと大きな動きでわたくしの内部を抉りはじめたのです。
「すごいのぉぉ・・・・」
「僕のは大きすぎるって女の子に嫌われることもあったんだ。全部収められないコも何人もいた。」
パァン・・・ 森本さんの手のひらが、立ったままで貫かれるわたくしの白いヒップに赤い痕を付けたのです。
「はぁうっ・・・」
突然の痛みに・・わたくしはきゅぅっと・・・塊への締め付けを強めてしまいます。
「はは 痛みにこんなに反応するなんて、ねえさん良すぎるよ。」
わたくしの頬は日差しでわずかに温められた窓ガラスに押し付けられていました。
「あぁぁん・・・やぁ」
「ん・・いやらしい声だね、ねえさんの喘ぎ声。脳味噌が沸騰しそうになる。もっと聞かせて。」
彼の腰が突然抽送のスピードを上げたのです。
「ぁぁぁ・・・ぁあああん・・だめぇぇ・・・ゆるしぃ・・てぇぇぇぇ」
「奥がひくひくしてるよ。ねえさん。」
「やぁぁぁ・・・いぃぃぃ・・・いいのぉぉぉ・・・まぁくぅぅん・・・」
「ねえさん ああ ねえさん締め付けてるよ いい」
ねえさんと繰り返す森本さんの声は・・・わたくしに血のつながった弟の名前を口にさせたのです。森本さんと同じ・・・実の弟の名前。
日頃交わされる姉弟の呼び名が・・・本当に実の弟と交わってでもいるような・・・禁忌のエクスタシーを呼び起したのです。
「そんなにしたら逝っちゃいそうだよ、ねえさん」
言葉ではそう言いながらも・・・わたくしへの責めの手を緩めてはくれません。
「あぁぁぁ・・・いってぇぇぇ・・まぁ・くん・・んん・・いっちゃぅぅぅ」
森本さんの声に蕩けていたわたくしの・・・堅く閉じた瞼の内に・・淫楽がたえまなく閃いておりました。視覚を除いた全ての感覚がわたくしを思う様に翻弄していたのです。
「ねえさん サーファーが僕たちをみてるよ」
「あああああぁぁぁっ・・だめぇぇ・・・いくぅぅ・・・ぅぅ・・・」
忘れかけていた・・・窓外の視線を感じた時・・・わたくしは一気に絶頂を極めてしまったのです。白く霞む視界の中で、たしかに物陰からこちらをみるいくつかの眼からは、絡み付くような視線が・・・わたくしへと注がれていたのですから。
「うっ・・・いくっ」
淫らすぎる行為に収縮を止める事のないわたくしの胎内に・・・森本さんは熱い迸りを容赦なく浴びせかけたのです。
「はぁぁぁっ・・・」
塊を抜き去られたわたくしは・・・窓ガラスに火照った乳房をおしつけるようにして・・・その場に崩れ落ちてしまったのです。
「大丈夫? ねえさん」
森本さんが、わたくしの手をとると優しく抱き起こしてくれたのです。
それから彼が落としたスリップの肩紐を・・・その場から動けなくなっているサーファー達に見せつける様に・・・直してくれたのです。
「シャワー浴びてくる?」
わたくしは、力なく・・・無言で頷きました。
「ごめん。ねえさんのTバック台無しにしちゃったよ。」
ランジェリーを身に着けたままの行為は・・・わたくしの下着を・・・彼の白液にまみれさせていたのです。
「いいわ・・・だいじょうぶ よ」
「あとで僕がねえさんに似合うパンティをプレゼントしてあげるね。」
窓辺に立ったまま熱い吐息と共に耳元で恥ずかしい言葉を囁くと、ソファーに残されていたわたくしのバスローブを取り上げて、バルスームまでついてきてくれました。
「お昼寝はなにも身につけないねえさんを抱きしめたいから、そのスリップは脱いできてね。それにお買い物は夕食が終わってからだよ。ディナーは僕が一緒だから、パンティなしでいくんだよ。いいね、ねえさん。」
「だめよ・・・そんなこと・・・」
森本さんはわたくしの言葉を全て聞くことなしに浴室のドアを閉めたのです。
今夜は・・・淫らな禁忌を犯す姉弟として・・・これからの時間を森本さんと過ごさねばならないようです。
祥子からの手紙ー12
トモくんと鴬谷のラブホテルを出たのは、まだ夜も明けきらぬ午前5時でした。
1月の早朝の冷気は、ミンクのコートを通しても肌を粟立てるほどに凍てついておりました。
駅前のタクシー乗り場には数台のタクシーが、窓ガラスを白く曇らせて停まっていたのです。
「それじゃね。楽しかったわ。」
わたくしはトモくんの冷たい頬に最後のキスをしたのです。
「祥子さん、送って行くよ。」
「いいわ。ここで失礼します。トモくん・・・幸せになってね。」
彼の頬に左手の揃えた指先だけで触れると・・・わたくしは1人、タクシーに乗り込んだのです。
「おねがいします。」
走り出したタクシーに、トモくんはいつまでも手を振っていてくれました。
明日の朝。
森本さんが目覚める前に、トモくんのNo.とアドレスを着信拒否に・・・携帯のメモリーからも削除しようと思います。
トモくんの幸せを願って。