洛中を避けて
この時期あの女性がここにいるのはわかっていた私の町家があるのをわかっていても
宿を取りにくいこの時期であっても
いつも決して甘えてきたりはしない
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例年より4日ほど早く見頃が訪れた桜花
きっと一人で楽しむには足が必要だと思って
桜が盛りの社で待ち合わせをした
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人で溢れかえる洛中を避けても
今年は楽しむ桜に事欠くことはない
宇治の地で紅枝垂のシャワーを浴びるあの女性の
横顔を見つめるうち午後の陽は落ちていった
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「お食事はやっぱり洛中ですのね」
まるで意地を張るかのように街中に戻らなかった
私と望月にゆったりと微笑みかける
その頬は春にしては強すぎる日差しに
ほんのり赤く染まっていた
今夜の肌に刻まれる縄痕を想い少し昂った
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