花のドレス
頬を撫でる空気が冷たくなり始めた頃菊花展へのお誘いをいただいた
伝統的な厚物・管物
見事に仕立てられた千輪菊、懸崖…
その先に広いリビングルームのように
設えられた部屋が一つ
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「ウエディングドレスかしら」
小さな洋花の菊がスカートに敷き詰められた
ウエディングドレスが
花嫁を待つように広間の奥に置かれていた
手にはスプレーマムのブーケ
「これはいいね
祥子さんに似合いそうだ」
「わたくしにはもうちょっと
それにリアルに着たら一歩も動けなくなりそう」
「それがいいのだけど」
人目を避けるように唇が奪われてゆく
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「そのソファーでじっと祥子さんを見ていたいね
ウイスキーでも嗜みながら」
頬を染めるわたくしの手を痛いほど握りしめた
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