高雄の春
「今年は道も空いていますね」いつもの迎えの車
運転手の男性はふと口にする
「主はご一緒したかったようですが、一足先に行っているとの伝言です」
「ええ、お迎えありがとうございます。
でも一人でも伺えたのに」
「いいえ、この時期に街に祥子様を一人にするなど考えられないと」
これは決して彼の主だけの言葉ではなかったろう
その証拠に、今日車は京都駅の八条口に迎えに来ていた
「お心遣い、いつも感謝しています」
「祥子様もお変わりなくホッとしております
あと少しです
ゆっくりなさってください」
車窓を流れる景色に人はいない
ただコバノミツバツツジと山桜が鮮やかに咲き誇っていた
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