初雪(下巻)お待たせしました
大変遅くなりましたが、なんとか下巻の配信がスタートしました。お待たせして申し訳ありません。
舞台は雪に閉ざされた端正な山中の別荘。
季節の花を描いた友禅の着物、有名作家の器の数々、
贅沢なレースで作られたロングドレス。
差し出されるプレゼントの分だけ、
紳士逹と運転手の4人の男性の想いの深さだけ、
欲求と欲望は凌辱の域へと高まってゆく。
初雪の下巻には女性運転手を描いた外伝もプラスしました。
出版社様とお待ちいただいた皆様には心から感謝いたします。
どうか、年末・年始の狂宴。お楽しみくださいませ。
忍ぶ恋
可憐な花びらを揺らす庭を山寺の上まで上るあの女性が待っていると
メールが届いたから
麗紅の花はあの女性の唇を
薄紅の花はあの女性の濡れそぼった花びらを
白い花びらはあの女性の豊かな乳房を
ぽってりとした厚みで
妄想させる
道程の花々に囲まれた龍の彫刻にすら
嫉妬をしてしまいそうだ
目の前であの女性を嬲られているようで
早く連れて帰って
縄で括って
私ひとりで味わいつくしたい
忍んでいなければならない想いなのに
私の身体はもう
あの女性に反応している
中秋の名月
今年の満月は雨が過ぎた後の雲間からようやく顔を出してくれました
空の色がグラデーションになる時間を
お月様とともに楽しめる
穏やかな夜も素敵ですが・・・
中天に輝く姿を科学の眼で見ると
それでも美しく
どこかに輝夜姫の宮殿があるのではと思わされます
蝉衣
残暑お見舞い申し上げます一年の半分はあっという間に
過ぎてゆくものですね
毎日いろいろなものに追われて
過ごしております
蝉衣というと
なんとなく薄く儚いものをイメージします
でもリアルはしっかりとした
存在感のあるものでした
なぜここにこんな風にあったのかは
わかりません
切なく残された想いのようですね
馥郁たる
年の初めのこの頃年に一度奥宮のある山に登る
ロープウェイを降り
ほんのすこし歩くだけで
馥郁たる香りに包まれる
梅の香りともちがう
フリージアでもない
和でも洋でもエスニックでもない
心安らぐ濃密な香り
そして思い出すのだ
この香りのそばに私の喜びがあるのだと