銀幕の向こう側 12
「わかった。待っていなさい。」男性はわたくしの隣に寄り添っていた身体を起こすと、煌煌とついていた部屋の灯りを少しずつ落としていったのです。
次にわたくしの側に戻って来た時には、先ほどわたくしが男性を括ったあのシルクスカーフを手にしていたのです。
ベッドの上の男性のバッグを、ワインをいただくのに座っていた長ソファーに置くと、わたくしの頭を彼の膝に載せたのです。
「信じて、くれるね。」
ブラックのメタルフレームの眼鏡が似合う男性の眼をみつめながら、わたくしはこくんと頷きました。
次の瞬間、わたくしの視界は柔らかな闇に覆われました。
シルクスカーフが、わたくしの目元に巻き付けられたからです。
「きつくないかい。」
「はい。」
男性に視界を奪われた不安よりも、わたくしは子供の様に泣きはらした眼を見られずに済んだことに、ほっとしておりました。
「嫌な事や、不快なことがあったら言うんだよ。決して無理強いはしないからね。」
「はい。」
この方の言葉を・・・お持ちになっていたものを思えば、男性がとても深いS性をお持ちでらっしゃることは想像できました。
わたくしを包み込むほどに大きなS性。
わたくしの後頭部に手を添えると、ベッドヘッドから引き出した枕をあてがってくださったのです。
「ありがとうございます。」
少し楽になった体勢に、小さな声でお礼を付け加えたのです。
「君はいいこだね。」
わたくしの頭を少女に対する様に一撫ですると、男性がベッドから降りられるのがわかったのです。
ギ・シ・・・ 次にベッドが小さくきしんだのは、わたくしの脚元でした。
なんの言葉もないままに、男性の手が黒のレースに覆われたわたくしの膝に置かれました。
「君が貞淑なのは、この膝を触れただけで良く解るよ。」
膝小僧をまぁるく男性の手が撫でるのです。
「人目のある電車の中でさえだらしなく膝を開いて座る女性を見ていると、それがどんなに美人でも誘う気も起きなくなる。その女性の下半身だけでなく貞操観までもが緩んでいる気がしてね。」
男性の手は右の膝から左の膝へと動いてゆくのです。
「でも、君は違う。ベッドに横たえられて、身を任せると決めているのにきっちりと力を入れて両脚を揃えている。私しか見るものがいないのにね。」
男性の視線は、きっと自在にわたくしを観察なさっているのでしょう。
「ふふ、貞操観と羞恥心が欠けているただ淫乱なだけの女性に、私はどうしてもMとしての魅力を感じられなくてね。」
男性の手がゆっくりと膝から離れてゆきます。
「力を抜いてごらん。不安なら少しづつでいい。」
男性の手が触れたのは膝の裏でした。
「そう。いいこだ。少しだけ膝を立ててごらん。君が楽にいられるくらいでいいからね。」
膝を立てる・・・男性の座ってらっしゃる場所が解らないのです。スカートのまま膝を立てるというはしたない行為を、わたくしは躊躇しました。
「大丈夫だよ。このくらいなら、辛くないかい。」
「はい。」
男性の手がわたくしの左膝だけをほんの少しだけ押し上げました。
脚を開くことが出来ずに、わたくしは膝頭をつけたまま両脚を男性の言う高さにまで上げたのです。柔らかな素材で出来たスカートがずり落ちることのない・・・その高さは、わたくしを安心させました。
「いいね。動くんじゃないよ。」
レースと膝の間に男性の手を感じたと同時に・・・つ・つっ・・っとスカートがたくし上げられていったのです。
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祥子さんの違う部分も引き出しながら…本質も見抜いている…。どんな方なのでしょう、この方は…。
今後が楽しみですが、10日程、欧州へ参ります。また戻りましたら…。
そして、私のは後程、一区切りをつけたいと思っています。
今迄ありがとうございました。私と彼とは穏やかに変わらずに…と願っています。
2006/09/01 14:15| URL | るり [Edit] - るり様
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ありがとうございます。
海外出張前のお忙しいひとときにお立ち寄りくださってありがとうございます。
るり様のお気持ちは変わらないのですね。
それは一つのお気持ちですしありかただと思います。心のままに・・・
ぜひ、これからもお越しくださいね。
わたくしは、いつもるり様のお越しを楽しみにお待ちしておりますから。
2006/09/01 16:12| URL | 祥子 [Edit] -
「淑やかな彩」の新しい境地ですね。
それ以上に、SとMへの深い洞察に感銘を受けました。
鞭を振るった後、すっかり吹っ切れたようにMへ振り子が戻った祥子さん。今度は、どんな新しい祥子さんを見せてくれるのでしょうか。
ps
31日の祥子さんのレスへ。
一日のほとんどはSとMの真ん中にいます。ですから、な~んにも持っていません。
2006/09/01 21:45| URL | masterblue [Edit] -
二重人格というのではなく、SとM、両極端を併せ持つ。
出会いがなければ、自らの性質に気づかず過ぎてしまう
こともある。
出会うことの奥深さを思う…。
2006/09/01 22:26| URL | eromania [Edit] - SとMの間に
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昨日から一転明るい朝です。
週末をいかがお過ごしのご予定ですか?
masterblue様
恐れ入ります。<銀幕>は、地味な雰囲気の物語ですが実は淑やかな彩の中でもはじめてのことが・・・わたくしの涙をはじめとして・・・顕われます。
この男性の存在も、不思議です。
この方なりの<理想のM>はまだまだ語られてゆくことでしょう。
eromania様
あのまま映画館から哀しみをかかえて自宅に戻って・・・。
きっと普通ならそうなっていたのだとおもいます。
この方に出逢って、わたくしは不思議な時間を過ごすことになったのです。
今日は、夕刻にももう一話アップいたします。
どうぞお楽しみになさってください。
2006/09/02 07:33| URL | 祥子 [Edit]
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