黒衣の情人 9
「わたくしの・・・はしたない姿を・・ご覧下さい。ご主人様。」わたくしの喉から出たのは、さきほどの歌の時とは全く違う・・・声でした。
やっと、絞り出した掠れた声には、もう・・・長谷川さんの視線に犯されて感じてしまったはしたないわたくしの体内に生まれた淫らな熱が籠っておりました。
「そうだ。良く覚えていたね。それに僕の好みも。」
視線を避けるように背けた頬に長谷川さんの眼差しが注がれているのにも・・・気づいていました。
「ランジェリーはスリップだけが赤なのか?」
「・・・はい。」
彼に捧げる様にさし出された脚は、マットな質感の黒のストッキングが同じく黒のガーターベルトで留められていたのです。開いた黒のシャツの胸元からは、真紅のスリップのストラップに寄り添う黒いレースのブラのストラップが覗かせてしまったのかもしれません。
「マニッシュな装いの下の真紅のスリップ。その下の黒のランジェリー。今日は昼間からクライアントの男性達を誘惑していたわけじゃないだろうね。」
「ちがい・ま・す・・」
ピアノを弾く長谷川さんの指は、わたくしに触れることはありません。
でもその分視線が・・・スリップの胸元を、スカートのスリットを掻き分けて素肌を這っているようでした。
「祥子がそう思っているだけだろう。打ち合わせが急に増えたと言ったね。それは、祥子のせいだね。こんな女性と隣り合って打ち合わせできるなら、何時間でも側に拘束しておきたかったんだろう。そのクライアントに脚くらい触らせてあげたのかな?」
「いたしません・・そんな・こと・・・」
夏に客船でのパーティでお逢いした時にも、そのことはお話いたしました。
わたくしは、お仕事関係者とはこんな関係は持たないって・・・。
ご存知なのに、長谷川さんはわざとおっしゃるのです。
「シャツの釦をどれだけ留めても、打ち合わせテーブルの下でストッキングに包まれた脚を見せない様にしても、祥子のフェロモンだけは隠せないからな。君の色香に迷わない男なんて、打ち合わせの相手はよっぽどのガキか枯れたジジイだったってことだね。」
「ひど・・い・・わ」
指一本触れられていないのに、長谷川さんの言葉と視線はわたくしの身体を疼かせたのです。
「酷い?心外だね。こんなに褒めているのに。嬉しいよ。祥子がずっといい女でいてくれて。他の男の心を動かせないような女には、僕は用がないからね。」
Summer Timeのサビを繰り返して・・・長谷川さんの指は鍵盤を離れました。
「さぁ、脚を下ろして。続きをしなさい。」
「・・・はい。」
ハイヒールのつま先を下ろすと、Aラインの黒のスカートはわたくしの脚を上品に覆い隠してくれました。
それでも・・・すぐ・・・このスカートはわたくしの身体から落ちてゆくのです。
両手を後ろに回し、スプリングホックを外します。
チ・チチチ・・・ コンシールファスナーを左手で下ろしてゆきます。
わたくしは・・・男性の手で、着ているものを剥がれることがほとんどでした。
こうして、ご覧になっている前で自分で脱いでゆくことが、こんなにも恥ずかしいことだなんて思いませんでした。
ピアノはまた「枯葉」に戻っていました。
なのに、わたくしの落とした視線の先に見える長谷川さんの脚は、肩幅に開かれてピアノではなくわたくしの方を向いていたのです。
「どうしたんだ。スカートを脱ぎなさい。」
長谷川さんの声に、わたくしはスカートのウエストを持っていた指を離しました。
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2007/01/12 15:18| | [Edit] - こんにちは。
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穏やかで気持ちの良い昼下がりです。
一息いれる時間があるのは嬉しいですね。
祥子さんも珈琲お好きですよね。私も大好きで1日に7~8杯飲みますよ。珈琲のお蔭でストレス発散出来ているのでしょうか?元気です。
さて、長谷川さんの巧みな言葉責めで、拘束されてしまいましたね。
私も女性の服を脱がせたり、直ぐ身体を触ることはしません。
M女自ら脱ぐ羞恥の方が脱がされるより数倍恥ずかしい事実、触感は最高に敏感になり、触るか触れないで全身電気が貫く時点で味わう方が極上で美味しいです。(笑)
時間はたっぷりあります。焦らずゆっくりと・・・。
・・縄指導・・
2007/01/12 15:57| URL | 縄指導 [Edit] - 縄指導様
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まるで長谷川さんとご一緒に、わたくしを辱めていらっしゃるようですね。
触れない、手を掛けない・・・。
そういうことも女性の感覚を高める手段になりうるのですね。
わたくしは、お逢いした時点でそんな風になってしまうのですが・・・ふふふ、縄指導様にはしたないと怒られてしまいそうです。
2007/01/12 16:24| URL | 祥子 [Edit] - はじめまして
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祥子様
はじめまして 『女の子が読むちょっとエッチな小説』のはるおです。過日は小ブログにお寄り頂き、またコメントを頂きありがとうございました。出張に出ていたもので、お返事が遅くなりまして申し訳ございません。
それにしても、なんというかゆったりとした時間の流れるエロスですね。私にはないもので、羨ましくもあります。今日はこれから新年会とまた出てしまいますが、時間のある時にゆっくりと読ませていただこうと思います。
取り急ぎお礼まで。
2007/01/12 19:53| URL | はるお [Edit] -
じりじりと言葉で追い詰められるだけで、心もカラダも
だんだん濡れていくのですね。
「疼く」という言葉の表現がぴったりです。
PS:返信感謝!もう少ししつこく、粘っこい視線での
愛撫ってことですね。
2007/01/12 21:06| URL | eromania [Edit] -
いいですね、言葉と、視線。
それだけで、祥子さんは徐々に別世界に誘われてゆく。
そこは日常から切り離された舞台。
長谷川さんに導かれ、昼間の世界から離れて、堕ちていって下さい。
2007/01/12 22:16| URL | masterblue [Edit] - お返事が遅くなりました。
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都内でプチ・リゾート生活をしていて、お返事が遅くなってしまいました。
どうぞ、お許しくださいませ。
はるお様
お忙しい中ご丁寧なコメントありがとうございます。
基本的にブログの世界としては長編系のお話が多いので、じっくりゆっくり・・・セクシャルな世界に入り込んでいただくようになっております。
気持ちとしては、日経の新聞小説なんですけれど♪
ぜひ、またお越しくださいますよう、お願い申し上げます。
eromania様
そうですね。ほんとうにどうしてなんでしょう。
言葉を交わすだけなら、ほんの1時間ほど前となにも変わっていないはずなのに。
Sのスイッチが長谷川さんに入っただけで、こんな風になってしまうのです。
masterblue様
触れることなく、パートナーをエクスタシーに導くという物語をつい先日ある小説で読んだのですが(残念ながら、その小説のシーンにはあまり・・・しっくりと気持ちが添えなかったのですけれど(笑))そういうこともあるのだろうと、長谷川さんとご一緒する度に、そう思ってしまいます。
都会を離れている訳でもない、もしかしたらmasterblue様がお勤めのビルの少し先にある工事中の現場の中で置きている事かもしれない日常空間での出来事なのですが・・・異世界・・・ですね。
2007/01/13 19:55| URL | 祥子 [Edit]
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