黒衣の情人 29
そうでした。かりそめの、ブームにのっただけの自称サディストでは・・・この方はないのです。女性に責めを課すなら、その責めに見合うだけのリスク管理をきちんとされる、真性のS・・・それが長谷川さんでした。
「それじゃ、いま、お薬を下さい。」
「濡れた肌には塗れないよ。」
「いいえ、痛み止めの・・・キス。」
わたくしは、拗ねたように少しだけ背けた身体を捻るようにして顔だけを彼の方に向けたのです。瞼を軽く閉じて、薄く・・唇をひらいて。
「ん・・ん・・っく・・」
長谷川さんは唇を重ねると、今度は遠慮なくわたくしの少しの狭間に暖かな舌を差し入れてきたのです。唇だけでなく、舌を、上顎を、歯の根を・・・ゆっくりと長谷川さんの力強い舌が這って・・やさしく愛でてくださったのです。
「んぁ・・ぁ・・」
ねっとりと・・・長谷川さんの唇と舌がわたくしから喘ぎを引き出しながら、離れてゆきました。いつのまにかわたくしの身体は、長谷川さんの長い腕の中に抱き取られていたのです。
「薬は効いたかい?」
「・・・はい。」
わたくしはうっとりと、彼の問いに答えていました。慈しむような優しいキスは、先ほどまでの過酷な責めを甘美な思い出へと変えていたのですから。
「祥子さんがこんなに甘えただとは知らなかったよ。」
「あ・・・ごめんなさい。」
わたくしは、甘えているとは思ってもおりませんでした。ただ、いまは、心のままに長谷川さんに身を任せていただけでした。
でもそのようなことは、SとMの二人の間には許されないことだと・・・彼に言外に責められた様に感じていたのです。
「いや、嬉しいよ。こんな可愛い祥子さんを見る事ができてね。」
「ちゅく・・・ぅ・・」
今度はわたくしがおねだりをして・・のキスではありませんでした。ご褒美としてのキスでもなく・・・責めとしてのキスでもなく・・・さも愛おしいと言う表情で唇を重ねて下さったのです。
「ん・・ぁん・・だめ・・」
「ふふ、相変わらずの艶めいた声を上げるね。祥子さんの声は媚薬だよ、まったく。」
わたくしの身体に触れる長谷川さんの塊は、フェラチオを始めたとき以上に堅さと大きさを増していたのです。
「祥子さん。僕のものにならないか。」
ジャグジーの泡と長谷川さんの身体に抱かれながら、夢見心地になっていたわたくしの耳に彼の声が届きます。
「わたくしを1年も放っておいて、お逢いしたらプロポーズですか?」
こんなシチュエーションで囁かれた言葉を、わたくしは茶化してみせるしかなかったのです。
-
声は媚薬…そのとおりですね。
カラダには無害でも心はたまらなく興奮する媚薬。
優しい言葉というのは意識して選んで出せるものでは
なく、想いを伝えたい相手のことを考えるだけで、自然
に出てくるものなのかもしれませんね。
2007/02/01 21:29| URL | eromania [Edit] -
やさしいけど、すごくMの気持ちを考えた水責め素敵でした・・・やっぱ長谷川さまはすごいSなんですねっ・・・d(*⌒▽⌒*)b
それからキスのお薬も(* ̄。 ̄*)ウットリです・・・
あっ・・・それからわたしのところのコメント・・・
やっぱ祥子さんって鋭いです・・・
やさしい男性はSの素質をもってるのかもしれませんねっ・・・長谷川さまみたいに・・・
2007/02/01 21:45| URL | 悪夢☆ [Edit] - 冷たい空気
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昼間はちょっとだけ暖かだった分、夜の冷たい空気の冷たさが身にしみてしまいます。
こんな時、抱きしめてくださる腕があったらいいのに・・・ね。
eromania様
eromania様も媚薬のような声の持ち主を恋人にしていらしたことがあるんですね。
男性の声の中にも媚薬効果のある声をお持ちの方がいらっしゃいます。その声で、eromania様のような優しい言葉をお話になったら・・・蕩けてしまいそうですわ。
悪夢様
ありがとうございます。
水責め・・・お気に召していただけて嬉しいです。少し変わった責めですが、力ずくや乱暴なだけの責めとは違いますが本当に堪える責めでした。
悪夢様のブログのコメントに勝手な推測を書かせていただいてしまって申し訳ありませんでした。
どうあってもSの行為でなければ満足のできない方が、それでも妻にだけはこのことは秘密にしなくてはと殊更優しい夫を演じていらっしゃるということを良くうかがうのです。
そこからの連想でした。もし、ほんの少しでも当たっていたらうれしいです♪
2007/02/01 22:50| URL | 祥子 [Edit] -
ラリーを楽しく過ごし、なんだか腑抜けてしまいました。
ちゃんと皆様の所に伺えなくて。
昼間の暖かさに梅の枝も、2月になったばかりと言うのに、最早、満開に近くて。
長谷川さんの本意は何処にあるのでしょう…。
自分の行為を余す所無く受け止めてくれる祥子さんに、愛しさが込み上げたのでしょう。
冷徹に見えるS、きっとそれは熱い心の裏返しなのでしょうね!
2007/02/01 23:43| URL | るり [Edit] - るり様
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いろはにほへとラリー、楽しかったようですね。わたくしもるり様のところをはじめ、こちらにお越しの皆様のブログで見せていただきました。
長谷川さんのお気持ちは・・・もう少し先をお楽しみにどうぞご覧くださいませ。
2007/02/02 06:54| URL | 祥子 [Edit]
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