桃花の午後
芳しい炭の香りとシュンシュンと沸き立つ鉄瓶
格子窓越しの景色は春の彩り
それなのにまだ少し寒いそんな日
「河豚のヒレ酒が旨そうだな」
大きな背中がポツリと呟く
「いいですよ 祥子さんを待たずに
せっかくですから酔いつぶれてください
望月 用意して差し上げろ」
冷静な声がいつもの様に
笑いを含んで言い放つ
「確かに今夜のために手に入れた日本酒なら
ヒレ酒にぴったりですね
河豚の一夜干しもありますよね 望月君」
柔らかく響く声が控えめに煽り立てる
「危ないあぶない 用意しなくていいぞ
なんのためにここに居るのか
わからなくなるじゃないか
女雛と男雛の前で
酔いつぶれる
衛士になる気はないからな」
いつもながらの渋い着物姿の男性たちは
今や遅しとたった一人のお雛様を待って居る
その角を曲がる草履の音に
胸を躍らせながら
- お久しぶりです
-
今日はひな祭りですね。
昔、「淑やかな川柳」のお題にもなったかと思います。
ショートショートも、そんな川柳の様な、切り取られた情景の中に、祥子さんを待つ男たちの熱さが伝わってきます。
添えられた、箱火鉢の写真も、情緒を高めてくれています。
2017/03/03 16:37| URL | masterblue [Edit] - Re: masterblue様
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上巳の節句、いかがお過ごしでしたでしょうか。
このお写真は、滋賀県日野で開催されている
「日野ひな祭り紀行」のワンショットだそうです。
2月12日から3月12日までの約一月
日野町の住民の方のご自宅の庭先や窓辺に飾られた
お雛様を拝見できる貴重なチャンスです。
http://www.hino-kanko.jp/html/hino-hina.html
よろしければ、何かの機会にぜひ。
選ばせていただいたショットは、
あのお三人にぴったりな渋めな一枚です。
本当は華麗なお雛様のお写真を
たくさん見せていただいたのですよ。
2017/03/04 09:33| URL | 加納 祥子 [Edit] - 上巳の節句
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ごく普通の一日でした。
雛も無く 桃一枝も無く 日が暮れる
と言うところでしょうか。
娘も独立して家を出てしまい、何十年も昔から雛人形を飾ることも無くなりました。
2017/03/04 10:26| URL | masterblue [Edit] -
ひなまつりの時分は、まだ肌寒さがのこるもの。
鉄瓶のシュンシュンという音鳴りが、雄弁にそれを伝えてくれますね。
ライバルを酔いつぶれた衛士にしてしまおうともくろむ殿方たちの戯れは、お洒落。
足音だけで表現されたヒロインも、素敵。
足音の行き着く先には、なにが待ち受ける?
そんな想像力を刺激してくれますね。
2017/03/06 07:14| URL | 柏木 [Edit] - Re:柏木様
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陽射しは暖かいけれど
室内や日陰に入ると肌寒い
そんな穏やかなお雛祭りでしたね
数多の人形の視線に囲まれて・・・といった
シチュエーションもあるかと思いつつ
こちらのお写真の独特な雰囲気に惹かれての
お話となりました
この後は・・・
どうぞ想像を逞しくなさってください♪
2017/03/06 08:45| URL | 加納 祥子 [Edit] - 管理人のみ閲覧できます
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017/03/17 22:01| | [Edit]
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