2ntブログ

唐紅 6

「こんなに冷たくなってしまって。あたたまりましょう」 
「ん・・・」 
わたくしの手首をやさしく外す彼の手にも、バスタオルを取り去る行為にも、もうあらがうことはいたしませんでした。
「少し熱いです」 
彼自身は腰にタオルを巻き付けたままで両肩に掛け湯をします。
「少し足を開いてください」 
ためらうわたくしの足の間に彼は足を差し入れ、お湯ではないもので濡れている柔らかな狭間に手を差しいれました。
「あっ・・・ん・・・」 
お湯を受けた手のひらで恥ずかしいあわいを覆う様にして、先ほどからの辱めに反応してしまった証を流すのです。
「ここはこんなに熱いんですね」 
「ぃゃ・・」 
たくましい彼の肩に顔を埋めてしまいました。

「さぁ あたたまってください」 
わたくしを檜づくりの湯船に・・・紅葉がもっとも美しく見える場所に導きました。
「あなたは?」 
彼は首を横に振ると・・・洗い場に行ったようです。
お湯を掛ける音・石けんの香りで彼が自らを清めていることがわかりました。
 
温泉は硫黄の香りのする透明なお湯でした。
なめらかに肌を流れる心地よい湯の肌触りと、川風に適度に温められた温度が、ゆっくりとわたくしを芯からあたためてゆきました。
ただ・・・これから運転手の彼にされてしまうであろうことに、わたくしは鼓動を止めることが出来なくなっていました。
男性と共に入浴をしたことが一度もないわけではありません。
男性のことを洗って差し上げたり・・・ほんのわずかに身をまかせ、清めていただいたことはございました。
ただ、全てを男性の手で清められるなんてはじめてです。
温泉の熱さだけでなく・・・その想いがわたくしをのぼせさせておりました。
 
「お待たせしました」 
濡れた髪をした運転手がさきほどと同じ様に腰にタオルを巻いて、わたくしを迎えに来てくれました。
彼の前はタオルを押し上げたままですが・・・もう隠そうとはいたしませんでした。
「暖まりましたか?」 
運転手の声は優しく響きます。
「ね、湯冷めしないように暖まって。わたくしのことはいいから」 
髪まで濡らした彼のことのほうがよほど気になって、声を掛けてしまいました。
「ありがとうございます。でしたらどうか素直にお身体を流させてください」
「・・・はい」 
湯から上がったわたくしの肩にバスタオルを掛け、洗い場に腰掛けさせます。
そこには檜の桶にバラの香りのバスバブルが泡立てられ、溶かされていました。
 
「失礼します」 
運転手はわたくしの左の足先から順に洗い始めました。
スポンジはきめ細やかな海綿製のものでした。
天然素材ならではのやわらかな肌触りは、まるで毛並みのよい猫の身体を思わせます。
「脚をこちらまで伸ばしてください」 
膝を揃えて片側に流す様に座っている膝下を洗い終えると、彼はそう言いました。
膝上を洗うために脚を開かせるのではなく、身体に引き寄せる様にしていた脚を伸ばさせる・・・わたくしの気持に配慮したその心配りに素直に左脚を伸ばしました。
膝をまるく洗うと膝の裏をたどって太ももの外側にスポンジは移動します。
脚の付け根まで上がったスポンジは太ももの前面にうつり、膝までゆっくりと下りてくるのです。
 
「あ・・・ん・・」 
次にスポンジが移ったのは折り畳まれた脚の内股でした。 
「少しだけお力を抜いてください」 
彼は膝を開かせはしませんでしたが、伸ばされた脚と折り畳まれた脚との間にスポンジを持った指を沈めてゆくのです。
「ん・・・ぁはぁ・・・」
ゆっくりと円を描く様にスポンジを動かしてゆきます。 
指先がやわらかな茂みに触れた途端すっと手を引くのです。
 
「反対側の脚を失礼いたします」 
わたくしの膝を逆に倒して同じ手順で右足を洗いはじめました。
脱衣所で少し怖いとさえ思わせる、感情を押さえた態度を運転手は崩しませんでした。
スポンジに加わる力加減はやさしく、彼の指が直接に肌に触れないようにと気遣っていることもわかりました。
「どうぞ両脚を伸ばしてください」 
彼はわたくしの肩に掛けたバスタオルを外して足元にたたみました。
脚を洗い終えると、スポンジは白い腹部をやはり丸く円を描く様に動くのです。
彼の引き締まった身体とは違う、年齢相応に脂肪ののった肌を恥ずかしく思いました。
でも彼に約束したのです。
軽く両手を左右に下ろして身体を隠したりしない・・・強い意志の力が必要でした。
 
あらがうつもりはなくても、声を上げてしまうとそれは否定の意を含んだ声音になってしまいます。
運転手の彼を傷つけたくなくて、出来る限り声をもらすまいとこらえておりました。
「あん・・・」 
それでも白い乳房を洗うスポンジの感触には・・・つい声を漏らしてしまうのです。
先ほどから彼がどんなに事務的にてきぱきと身体を清めてくれていても、わたくしの身体は堪え切れずにはしたなく反応してしまっているのです。
いつもでしたら自然と腕で隠す秘所も・・・全て彼の視線の前にさらけ出しているのです。
鴇色の乳首はすでに堅く立ち上がり、触れると消えてしまうほどの泡の感触にさえ刺激を感じてしまうのです。
「ぃぁあぁぁ・・」 
左の乳房を外側から中心に向けてまぁるく、そして右の乳房へと。
Gカップのやわやわとした塊を海綿のスポンジが這ってゆきます。
「・・・んん・・・・」 
わたくしの右手は思わず彼の左腕を掴んでおりました。
「祥子さま どうなさいましたか」 
優しく声をかけてくれるのですが、スポンジの動きを止めてはくれません。
右胸から右の肩先にスポンジの感触が移って、ようやく彼の手を握りしめていた右手を離しました。
 
「お流しいたします」 
洗い場のシャワーのお湯の温度を自らの手で確かめてから、彼は肩先から胸・お腹・脚へとシャワーを当てます。
バラの香りのバスバブルは、最後の香りを立ち上らせながら流されてゆきました。

乾いたタオルでわたくしの身体の表面の水滴を軽く拭ってゆきます。
露天風呂を渡る風が身体を冷やさないように・・・彼の配慮をうれしく思いました。
 
「髪を洗わせていただきます」 
彼の手でさされたかんざしを、今度はすっと引き抜きました。
梳られほぐされていた黒髪のロングヘアが白い背中に落ちてゆきます。
彼は後からその様をしばし眺めていた様です。
運転手はもう一つ腰掛けを持ってくるとわたくしの隣に置き、その少し先の床にさきほどの畳んだバスタオルを置きました。
「さあ 立ってください。そう・・・こちらに膝をついて」 
板張りの床に直接膝をついては痛い、そう思って置かれたバスタオルのようでした。
「・・・?」 
彼の言う通りにタオルのある場所に膝立ちになり、どうしたらいいのかと彼を見上げます。
「こちらに上体をお預けください」 
彼は持って来た腰掛けに座ると膝を指差してそう言うのです。
運転手の腰掛けた膝の上にわたくしの上体を投げ出し、ふとももに剥き出しの乳房を押し付けなくてはならないのです。
「さ 湯冷めしてしまいますから」 
わたくしの肩に手をかけて促すのです。
「・・・はぃ・・・」 
この体勢なら彼と視線を合わせることはありません。
髪を洗うためなのだと彼の膝に上体をふせました。
 
「ごめんなさい。重くはないですか?」 
首筋から背中への彼の視線に戸惑いながら声を掛けます。
「いえ 気になさらないでください」 
彼の声は変わらないまま・・・なのに、わたくしの左脇腹に当たる塊がくいっと・・・熱をこめて反応を伝えてまいりました。
「お湯をお掛けします」 
首筋から頭頂にかけてシャワーが当てられます。
彼の指が軽くマッサージをするようにわたくしの頭皮を揉みほぐします。
「熱くはないですか?」  
手に取ったシャンプーを泡立ててから髪を洗いはじめます。
「気持いいです」  
髪の生え際から根元・・・そして長く垂れる毛先へと・・・彼の指が動いてゆきます。
「洗い残しているところはありませんか?」 
こめかみをやわらかくマッサージするように、指をはわせ髪をくしけずります。
「ええ 大丈夫です。プロの方みたいお上手だわ」 
彼の脚の暖かさにほっとするものまで感じておりました。

唐紅 7

「恐れ入ります」 
運転手の上体が少しわたくしに押しつけられます。
シャワーの温かな飛沫を右の太ももに感じます。
「失礼します」 
首筋からゆっくりとシャンプーを流してゆきます。
首筋からこめかみ、生え際までを丁寧に洗い流すと、冷え始めたわたくしの背にお湯が流れるようにシャワーヘッドを調節してくださいました。
髪を軽く絞るようにしてから左側にまとめるように流した髪に、コンディショナーを付けてくれたようです。
「このままでしばらく置きます」
「お背中をお流しします。そのままでいらしてください」 
温かな海綿製のスポンジが背骨の上を滑ってゆきます。
「ん・・・ふ・・」 
脇腹を丸く撫でてゆくスポンジの感触に思わず声は漏れ・・・背を腰を・・わずかにくねらせてしまいました。
首筋から背骨を降りていったスポンジは左の脇腹を通って首筋へ・・・そして右の腰へとおりてゆきます。
愛撫ではない・・・身体を清めるのに必要なだけの心地よい圧力が伝わってくるのです。
 
「ぃあん・・・ん・・・」 
背から腰の丸みへスポンジの感触が移ったときには・・・ついみだらがましい声を上げてしまいました。
乳房を清めていたときと同じ様にまぁるく・・・でも今度は白い腰の頂きから外側に向かってまぁるく動いてゆくのです。
「んん・・ぁぁはぁ」 
内股を這い上がり・・・柔らかい狭間にふれる寸前で、反対側の頂きに感触が移るのです。
「あん・・・だぁ・・めぇ」 
一度きりでなく二度、三度とスポンジは往復します。
スポンジの感触も次第にかすかに・・・愛撫の色を強めてゆくのです。
「ね・・・かんにん・・し・てぇ・・・」 
運転手の膝に疼く乳房をおしつけたまま、わたくしは幾度となく背を腰をくねらせてしまいました。
「おとなしくなさってください」 
彼の落ち着いた声は、快感を募らせていた身体に羞恥の火を点しました。
彼はただわたくしの身体を清めていただけなのです。
なのに・・・はしたない反応をしてしまったことに、強い羞恥を感じずにはいられませんでした。

「あふっ・・・いやぁ・・」 
何の予告もなくただ一カ所まだ清められていなかった柔らかな狭間に、スポンジではない泡にまみれた運転手の指が入り込みました。
突然の行為に無意識のうちに逃げようとしたわたくしの身体を、運転手はもう一方の手で力強く押えるのです。
「祥子様 お静かになさってください」 
わたくしの身体が緊張を解くと・・・彼のしなやか指はやさしく柔らかく花びらの尾根を清めてゆきます。
くちゅ・・・ちゅ・・・ バスバブルやお湯だけではない、ぬめりのある液体独特の音が川音よりも高く響きます。
「あん・・・ぃぁ・・あぁぁ・・・・」 
花びらの左右を挟み込む様に動いた指は・・・そのまま大きくふくらみはじめているであろう真珠の上を撫でさすります。
「ん・・・あぁ・・ああ・あ・・」 
くちゃ・・くちゅ・・・ちゅぽ・・・ 花びらの狭間を愛液の溢れる源を押しとどめるように、窪みにそって指が往復するのです。
彼の指の動きは<清める>という行為などでは・・・もうありえませんでした。
 
「あぁあ・・・だめぇ」 
指は狭間の中央から合わせ目をたどり・・・恐れていたとおり・・・ぬめりをまといつかせたままで後のつぼみへと引き上げられます。 
「いやぁぁ・・・お願い・・・かんにん・・」 
わたくしの哀願の声すら彼には届いていないようでした。
中指と人差し指のぬめりをつぼみに何度かに分けて与えるのです。
それだけでは足りない潤いをバスバブルの泡で加えて・・・中指の細い指先で堅く閉じたつぼみを何度となく揉みしだき・・・すこしづつ先端を埋めてゆきます。
排泄器官が彼の指を飲み込んでゆく、そのはしたない後ろ姿を彼は無言でみつめているのです。
「いやぁ・・・見ないでぇ・・・」 
どれだけたったのでしょうか ようやく指先はまた花びらへ戻ってゆくのです。
これで許された・・・あんな恥ずかしいところを彼に触れられるなんて・・そう思ったときでした。

「っんぁあああ・・」 
花びらと真珠を中指と人差し指が嬲る感触と同時に、親指の腹で恥ずかしいすぼまりを撫でるのです。
「おねがい・・ゆる・し・・てぇ・・・」 
快感を送り込まれながら、いままでにない圧力で羞恥のつぼみを押し開けられる感覚にわたくしは一段高い喘ぎを上げてしまいました。
「祥子様 お力を抜いてください」 
中指の先でぬめる真珠をころがしながら、運転手が静かに言い放ちます。
「いや・・・しないで・・・太いの・・・いや・・・」 
拒もうと白い背中と腰を捩るわたくしを、彼は狭間に差し入れた一本の人差し指で止め付けてしまうのです。
「酷いことはいたしません。主の言いつけなのです、どうか身体の力を抜いてください 祥子様」 
親指への恐怖心がほかの二指の快感に勝ることを、彼はようやく気づいてくれました。
狭間を嬲る指を一旦抜き・・・あらためてほっそりとした中指でアナルへの愛撫を再開したのです。 
「この指でしたら・・・よろしいですか祥子様」 
改めて問われることで羞恥をかき立てられた愛液のぬめりが、彼の指先を容易に侵入させます。
「あはぁ・・・あん・・・ああ・・・」 
3度目になるアナルへの性的な愛撫は、確実にほかの部位とはちがう快感を送りこみはじめておりました。
わたくしの身体ははしたなく彼の指に応え、堅くすぼめられていたひだは柔らかく開きはじめ・・・侵入する指を自ら飲み込もうといたします。
「息をはいてください」 
わたくしの呼吸に合わせて彼は中指の第二関節まで・・・すっと差し入れました。
「あっ・・・ん・・・ああ・・だぁめ・・・ぇぇ」 
浅く抜き差しを繰り返し、内臓の感触をたしかめるように指先を蠢かします。
「おねがい・・・ゆるし・・て・・かんにん・・してぇ」 
喘ぎ声が細く高く川音をしのぐほどになって、ようやく彼の指は胎内からゆっくり抜き出されたのです。
 
「はぁあ・・・」 
運転手は先ほどまでわたくしを嬲り続けていた右手を見つめ、感嘆を交えたようなため息を放ちます。その指先は差し入れたときと同じ綺麗なままだったからです。
ぺろっ・・・・ 彼はその指先をそっと舐めました。 
「祥子様 ありがとうございました」 
夜気に本来なら冷えきってしまうはずの2人の身体は・・・共にうっすらと汗を浮かべておりました。
「お流しいたします」 
先ほどよりも少し温めにしたシャワーを、わたくしの肩から腰へと流しかけます。
「主の申していた通りでございました。ご無理をお願いして申し訳ございませんでした」 柔らかな狭間を・・・そしてコンディショナーの浸透した黒髪も、丹念に洗い流してゆきます。
 
「お苦しくはございませんでしたか、祥子様」 
彼の手でうつぶせられていた上体を引き起こされても・・・わたくしは顔を上げることすらできませんでした。
運転手の脚に押しつぶされていたGカップの白い乳房は、わずかに赤くはしたない身悶えの名残をとどめておりました。
「もう一度暖まられてからになさいますか?」 
目顔で浴槽を示す運転手にわたくしは首を横に振りました。 
これ以上この姿のまま彼とここにはいられない・・・・彼の視線を感じるだけで・・・洗い流されたばかりの茂みの奥にもう新たな潤みがわき出してしまったからです。
「わかりました」 
立ち上がらせたわたくしの全身に少し熱めのシャワーを浴びせると、乾いたバスタオルを取って最初と同じようにわたくしの身体を覆いました。
 
「長い入浴ですね。ここの温泉が気に入りましたか」 
脱衣所の引き戸の音が響きました。
「なんだ、もう上がるところだったんですね。残念だなぁ」 
からかいまじりの陽気な声がいたします。
腰にタオルだけを巻いた姿で男性が露天風呂に入ってきたのです。
さきほどまですぐ側にいた運転手は、半歩だけわたくしから離れました。
「どうです、僕と一緒にもう一度あたたまりませんか。祥子さん」 
厚手の白いバスタオルの下を透かし見るような視線を感じます。
「いいえ、もうこれ以上ご一緒したらのぼせてしまいますわ。お先に上がらせていただきます」 
運転手に甘え・・・翻弄されていたわたくしを取り戻させたのは、男性の自信に満ちあふれた態度だったのです。
 
「お先に頂戴いたしました。いいお湯でしたわ、ありがとうございます」 
左側に流した髪を押さえるようにして会釈をし、脱衣所に戻ろうとしたときです。
「祥子様 どうぞこちらに」 
運転手が濡れ縁につづく踏み石のところでわたくしを待っておりました。
「・・・はい」 
彼は乾いたタオルで、踏み石を上がるわたくしの足を片方づつ拭ってくれました。
「その扉の中のお部屋でお待ちください。すぐに参ります」 
「女将が夕食だと知らせてきました。僕もすぐにあがりますから」 
掛け湯をし檜の浴槽の湯音とともに男性の声がいたします。
「はい わかりました」 
そう答えてわたくしは目の前の扉を引き開けたのです。

唐紅 8

その部屋は6畳ほどの小部屋でした。
扉の左手には鏡台が置かれ、掛け布を施された鏡の前には氷の入った緑茶が用意されておりました。
鏡台の前の椅子に腰掛け喉の乾きを潤そうとしたわたくしの眼を奪ったのは、衣桁に掛けられた着物でした。
 
室内装飾の一部なのでしょうか。 
黒地に深紅から朱赤までの紅葉を散らした見事な友禅でした。
肩には月待ち月を浮かべた夜空のような、黄色と黒の大胆な柄の半巾帯が掛けられ、ところどころに遊ぶように白兎が浮かんでおりました。
「こんなに素敵な着物ならあちらのお部屋に飾られたらいいのに」 
鏡台の椅子に腰掛け冷たい緑茶で火照りを覚ましながら、うっとりと見つめておりました。
今宵のこの場に最も相応しい意匠、選んだ女将のセンスの良さに思わずため息すらもれてしまいます。
 
「お待たせしました」 
先ほどの脱衣所からの扉を開けて運転手が入ってまいりました。
こちらの宿のものなのでしょうか。彼の長身にすっきりと合う縞の浴衣を着ておりました。
「ね 見て、綺麗ね。このお着物」 
「お気に召していただきましたか」
「えっ・・・」 
一瞬彼が何をいっているのか理解できませんでした。
「今夜の祥子様のお召し物です。お着替えを手伝わせていただきます」 
彼はそう言うと鏡台の掛け布を引き上げ、わたくしの髪を袂から取り出した柘植の櫛で梳りはじめました。
洗い髪は滑らかにまとめられ、先ほどと同じ赤い珠のかんざしですっきりとアップにまとめられました。
コットンと化粧水をわたくしに渡して、彼は着物の陰から黒塗りの乱れ箱を持ってまいりました。
 
黒塗りの乱れ箱の中は深紅の絹で覆われておりました。
赤の綾絹は長襦袢なのでしょう。紅葉の刺繍が施された半衿がつけられていました。 
乱れ箱の端には赤の伊達締と数本の紐、赤の絞りの帯揚げと小振りの帯枕が並べられています。
彼がしなやかな指で引き上げた長襦袢の下にあるはずものは白の肌着・・・そう思っていた予想は見事に裏切られたのです。
深紅の綾絹の長襦袢の下に並べられていたのは・・・深紅のランジェリーのセットでした。
繊細なレースを使ったクォーターカップのブラジャー、Tバック、ガーターベルト。それに、白のストッキング。
わたくしのサイズで整えられたのであることは一目みてわかりました。
 
「本来でしたらこのようにお召しいただくことはないのですが、今宵の主の趣向です。どうかお付き合いください」
運転手は驚くわたくしの手から冷茶のグラスを取り上げ、部屋の中央に立たせました。
「失礼いたします」 
左胸に折り込んだバスタオルの先を引き出して・・・はらりと足元に落とします。
髪だけを結い上げた姿で白い肌を全て彼に晒されてしまいました。
「・・・ぃゃ・・・」 
扉一枚向こうには男性が露天風呂に浸かっている、そのことがわたくしに抗いの声を潜めさせたのです。
 
彼はガーターベルトを手に取るとわたくしのウエストに巻き付けました。
目の前に跪いて左脚から白いストッキングを履かせ、ガーターベルトに止め付けます。
次いで右脚も・・・・。
わたくしはなに一つ身につけていないのです。 
跪く彼の目の前には想像をすることすら恥ずかしい、はしたない姿が繰り広げられているに違いないのに・・・黙々と事務的にわたくしを装わせてゆくのです。
「ぁぅっ・・・」
右脚を畳に下ろすとTバックをとりあげ足首を通し・・・立ち上がるようにして腰骨まで一気に引き上げます。
 
次に手にしたのはブラジャーでした。
アンダーバストに合わせて背中のスナップを止め、ストラップを左右の腕に通してゆくのです。
深紅のブラジャーのカップは1/4しかありません。
ただでさえ深いGカップを必要とするわたくしの乳房は、下辺をレースで支えられているだけで白い肌も鴇色の頂きもほとんどが露になったままでした。
「こんなの・・・だめ・・・」 
実際に身に付けているわたくしの視点からですら、こんなにも淫らな姿なのです。
向かい合う男性から見たら・・・どんなにか・・・
「お着物ですからこのほうがよろしいのです。普段にお使いいただけるハーフカップのものとスリップは別にご用意してございます。ナチュラルカラーのストッキングも、主が以前にお約束したものだと申しておりました」

「さぁ・・・どうぞ」 
運転手は深紅の長襦袢を広げ・・・わたくしの肩に着せかけました。
しっとりとした重みの綾絹はわたくしの肌に吸い付くようでした。
「苦しかったら仰ってください」 
赤い紐をくわえ長襦袢の前を持つと少し強く前を引き合わせました。
わたくしの豊かな乳房は絹に引き絞られる様に押し込めるのです。
きゅっ・・・ 胸高に一本の紐を渡し縛ります。
衣紋を抜き襟元を整えると紅と紺糸で織り上げられた伊達締めを締め付けます。
いつもでしたら着物を着る時には特別な肌着を必要とする胸元は、厚みのある綾絹だけで見事に整えられてしまいました。
 
「失礼いたします」 
長襦袢と同じ様に衣桁にかかっていた着物を着せかけます。
長襦袢と着物の裄丈、身幅、長襦袢の着丈。
普通の女性よりも背も高くボリュームのあるわたくしに、ぴったりの丈に仕上がっておりました。 
お茶会や観劇などで着る普段着さえも、出来合いで販売されているものでは着る事ができず、誂えざるを得ないわたくしにとって・・・こんなに身体にフィットする着物は久しぶりでした。
そういえば先ほどの女将も背の高い方だったわね。
ほっそりとした、でもすらりと背の高い女将を思い出したのです。
きっと女将のコレクションの1枚なのでしょう。
翻る裾の内側までも紅葉が染められた丁寧な仕立てに、一人で納得をしておりました。
 
運転手はわたくしの前に回り裾をととのえ、腰骨の上で紐を掛けます。
「あん・・・」 
身八ツ口から差し入れられおはしょりを整える手が、絹に縛められている乳房の上を撫でるように走るのです。
「申し訳ございません」 
彼の冷静で真剣な声が、わたくしが感じるかすかな快感さえもはしたないと咎めるように聞こえます。
「・・・いいえ」 
恥ずかしさにかすれる小さな声で、そう答えるしかありませんでした。
 
しゅっ・・・しゅ・・・ 襟元を整え、帯下に当たる場所に紐を掛け伊達締めを締めます。
着物を着慣れた女性でもこうはいかないと思えるほどの手際の良さで、わたくしを着付けてゆくのです。
深紅の腰紐も伊達締めも、彼の手にかかると魔法の様にぴたりと決まるのです。
決してきつかったり苦しかったりはいたしません。
それなのに身体に沿う様に一部の狂いもなく縛め止められてゆくのです。
正面から着物をまとったわたくしを満足げにみつめると、彼は半幅帯に手を伸ばしました。

唐紅 9

半幅帯は新品のものの様でした。
「これをお願いいたします」 
運転手は柄の上下を確かめると、片側を半折りにしてわたくしの左肩に預けます。
「しっかり立ってらしてください」 
しゅ・・・しゅっ・・・きゅ・・きゅっ・・・・ 伊達締めの上を二巻きし、わたくしに預けた帯の手を上にして力を入れて結ぶのです。
「ふくっ・・・」 
男の力で締め上げられる帯は、わたくしを一瞬息苦しくいたします。
綾絹の長襦袢で・・・伊達締めで・・・友禅の着物で・・・西陣の帯で・・・丸みの勝ったわたくしの胸元は幾重にも縛められたのと同じでした。
 
彼は深紅の総絞りの帯揚げを取り上げて、小さな帯枕をくるみます。
「珍しいのね 半巾帯に帯揚げなんて」 
枕の位置を決め腕を前にまわして仮止めすると、彼は正面に回り帯枕の紐をきゅっと締め・・・帯揚げを華やかに胸元にあしらいます。
「このほうがずっと綺麗ですから」 
合わせた衿元にほんの僅か開いた素肌に、彼の熱い息がかかるのです。
「・・・ん・・・・ぁ・・」 
彼の手に全てを委ね、思うがままにされることにわたくしは次第に慣らされ・・・快感すら感じるようになってきていました。
「あと少しですから」 
黒髪をアップにし、露になった耳元に口を寄せ・・・熱い息とともに囁きます。
主の前ではわたくしに対して常に一歩引く彼が、二人きりの時に示す男としての態度すら媚薬のように白い肌に沁み入るのです。
 
「これでよろしいでしょうか」 
後に戻り垂れを片流しにまとめて帯を締め上げると、わたくしを鏡台に向き直らせました。
「あっ、ん・・・すてき」 
鏡の中のわたくしは、いままでに見慣れた着物姿とは少し違って見えました。
粋ともあだっぽいとも違う、でも隙もなくやぼな感じでもない、品がありながらどこか女を感じさせる不思議な着付け方でした。
着物の黒地と帯の地がマッチし、総絞りの帯揚げが大胆な帯の柄をうまく着物にとけ込ましておりました。
髪を巻き上げたかんざしの赤い玉も、ふと見下ろした足もとの不自然に思えた白すぎる ストッキングさえ・・・白足袋の風情を漂わせて全身を華やかにみせておりました。
 
「ありがとう。いつものわたくしじゃないみたいだわ」 
鏡ごしの彼にはにかんでしまいます。
「お綺麗です。お着物も着慣れていらっしゃるんですね」
運転手の目は冷静に、まるで作品を見る様にわたくしを見つめておりました。
「絹がすっと祥子様の肌になじんでゆくのがわかりました。着慣れない方はどんなにしなやかなものをまとっていただいても、こうはいかないものです」 
鏡の中で合った視線を彼はふっとそらすのです。
「お食事の支度ができております。まいりましょう」 
彼に導かれて、最初に通された居間へと向かいました。
 
「ほぉぉ、お似合いですね」 
先付けをつまみに女将に熱燗をつがれていた男性は、襖を開けて座って遅れたことを詫びるわたくしにそう第一声をあびせたのです。
「ほんと、素敵だわ」 
女将はそういうと、わたくしに男性の向かいの座布団を勧めました。
「美味しそうだわ」 
相模湾の海のものと秋の山のものを、彩りよくあしらったお食事でした。
「急のお越しでしたから、簡単なものしかご用意できなくて申し訳ございません」 
恐縮したように言いながら、女将は小振りなグラスにビールをついでくれるのです。
「こちらの方も今夜は召し上がりますのでしょう」 
「ああ、注いでやってくれ」
わたくしの右手に座った運転手にも、同じ様にグラスを満たすのです。
「いただきます」 
指先に伝わる冷たい感触にそそられながらビールに口をつけます。
小振りなグラスの半分ほどをいただいてしまう白いのど元を、男性と運転手の視線が這っていることに・・・わたくしは気づいてもおりませんでした。
「どうぞごゆっくり」 
女将は室内の空気がわずかに変わったことを察したのでしょう。
三つ指をついて挨拶をすると下がってゆきました。
 
ゼニアのスーツが似合っていた男性は、光沢のある大島を着ておりました。
まるで自宅でくつろぐかのように着こなす姿は、やはり男性が普段から着物を着る機会を持っていることを教えてくれました。
「いや・・・手酌でいいですよ」 
男性にお酌をと徳利を手にしたわたくしを押しとどめて、手元の杯を満たします。
「祥子さんは何を召し上がりますか?」 
「同じものを頂戴します」
隣に座った運転手がすっと立ち上がり、先ほど女将が居た場所に用意してあった平盆を持ってもどります。
わたくしの目の前に備前の杯がすっ・・・と差し出されました。
「ありがとう」 
彼の注いでくれる香りの良い日本酒に口を付けて、濃厚な香りを楽しみます。
「わたくしばかり・・・こんな 申し訳ないわ」 
疲れていた身体に再び受け入れたアルコールが、目元を赤く染めはじめました。
 
机の上の器がほとんどあけられたころです。
「彼は気に入りましたか」 
わたくしは平目のお造りに伸ばしかけていた手を、止めてしまいました。
「それともなにか不調法をしましたか?」 
雇い主の鋭い眼で運転手を見つめるのです。
「いいえ 大変良くしていただきましたわ」 
最初はあまりのことに拒んでしまったものの・・・最後には彼の献身的で紳士的な手に、自らを委ねる快感を知ったわたくしは即答いたしました。
「さきほどは随分と抗う声が聞こえていたと思ったものでしたから、僕の気のせいですか」 
声を押えていたはずなのに・・・はしたない声を聞かれていたなんて。
「祥子さんの声は魅力的ですから、つい耳についてしまうんですよ」 
酔いのせいばかりではなく耳まで赤くしたわたくしに、男性はそう言うのです。
「いえ、祥子さんのご機嫌を損ねるようなことをしたのなら、罰として叶えてやろうと思っていた彼の望みをとりあげてしまおうと思ったのです。」 
手元の杯を一気に喉に流し込むように飲み下すのです。
「良かったな、気に入ってもらえているみたいだぞ」 
わたくしの知らない男性の日常をほのかに垣間見させるのでした。
 
「さて、食事の片付けをしてもらう間少し散歩でもしますか。祥子さん」 
男性は立ち上がり、着物とそろいの羽織を着るとわたくしを促しました。
「あとは頼むぞ」 
運転手は男性の一言に頷き、女将へと電話を掛けにまいりました。

唐紅 10

玄関には、ここに来るまでに履いていたパンプスも男性の革靴もありません。
白い鼻緒の雪駄と、赤い爪革をつけた下駄のようなミユールが置いてありました。
「ありがとうございます」
わたくしの白い足元は着物姿なのに足袋ではなくストッキングなのです。 
踏み石に足を下ろすわたくしに、手を添えてくれた男性に履物までの心遣いへの御礼を込めて申しました。
「ここの庭は部屋から見るだけじゃもったいないですからね」 
男性は玄関をあけると庭への小道を歩きだしました。
 
「ほんとうに着物がお似合いですね」 
白い小石を踏みながら男性が話はじめました。
「ありがとうございます。こんなに素敵なお着物まで・・・女将に借りてくださったのですね」 
さきほどからいつ切り出そうかと思っていたのです。
「いえ、彼は何も言いませんでしたか」 
不思議そうな顔で男性はそういうのです。
「ええ」 
事情が飲み込めないままわたくしは、なまなかな返事をするしかありません。
「女将のものじゃないんですよ、この着物は。もちろん僕のプレゼントでもない。僕が用意したのはその下に着てくださっているはずの深紅のランジェリーのセットだけです」
「えっ・・・それじゃ、これは?」 
こんな上質なものが女将のコレクションでも、この地位があるであろう男性のプレゼントでもないなんて、狐につままれているような気がしました。
 
「彼が祥子さんのためにご用意したんです」 
静かな声で男性はわたくしに告げたのです。
「そんな・・・彼のような若い男の方に用意できるようなものではないでしょう」 
趣味の良さといい仕立てといい、そう簡単に手に手にはいるものではなかったからです。
「彼はね、京都の呉服屋の息子なんですよ」 
言われてみれば僅かに運転手の言葉には、京言葉のイントネーションが混じっておりました。
「大学生のころは祇園で男衆のようなことをやってたみたいでね」  
芸・舞妓の置屋で、彼女たちの着物の着付けをするのが男性であること・・・そういった様々な裏方仕事をする人たちを<男衆ーおとこし>さんと呼ぶことを思い出しました。
言われてみれば彼の手際の良さ・・・不思議な着付けの仕上がり。
そう聞けば納得のゆくことばかりだったのです。
「・・・そうだったのですか。でも、こんなにしていただくなんて」 
理屈はわかっても、わたくしはまだ納得が出来た訳ではなかったのです。

建物を回り座敷から見えたライトアップされた桜の庭にたどり着きました。
部屋からでは気がつきませんでしたが、桜の樹の足元には上品な秋草の庭が設けられていて・・・ゆっくりと露天風呂のあたりまで回遊できるようになっていました。
 
「彼の前ではね。悔しいので褒めませんでしたけれど、いい趣味だ」 
庭を照らす照明の切れたあたりで男性は立ち止まり、わたくしに向き合いました。
「その血赤珊瑚のかんざしから履物まで、全て彼の見立てなんです」 
アップにした髪からつま先までを男性の視線が舐める様に動いてゆきます。
「先日 祥子さんを自宅までお送りしたあと、彼が密かに実家に頼んで手配をしていたようです。今日いらしたと連絡を受けて、急いで何かを積んでいるとは思っていたのですけれどね」 
一歩踏み出すとふいにわたくしの肩を抱きしめて・・・引き寄せます。
「あっ・・・」 
急に引き寄せられてバランスを崩したわたくしの身体は、男性の腕の中にすっぽりと抱きかかえられてしまったのです。
 
「良くお似合いです。僕は祥子さんがこんなに着物が似合うとは思ってなかった」 
男性の左手は背をたどり・・・帯下の腰へと・・・なめらかな友禅をなでてゆきます。
「うん、付けていてくださってるんですね。僕のプレゼントも」 
ガーターベルトを・・・留め具まで、そしてTバックの細いストラップとその狭間の白くまぁるいわたくしのヒップの感触を確かめる様に左手が動くのです。
「・・・ぃゃぁ・・・お座敷から・・・見られ・・ま・す・・・」 
右手で抱きしめられた上半身を離す事もできず、さきほどまで紳士的だった男性の淫らな仕草に身をよじる様にしてあらがうしかできません。
「ここは照明がないですから見えませんよ。それとも彼の視線が気になりますか?祥子さん。・・・妬けるな」 
 
「ん・・・あはぁぁ・・・」 
左手はもう確かめるような動きではなくて、明らかな愛撫に変わっていました。
「祥子さんには黒いドレスが似合うと思っていたのです。シルクニットの肌によりそう・・・ダナキャランあたりでしょうか、この次は僕がプレゼントしますよ」 
わたくしの下腹に押し付けられた彼の塊は、熱く堅く高ぶってまいりました。
「もちろんぴったりの黒のランジェリーと一緒に。今夜僕を満足させてください」 
男性の指がたっぷりと張るわたくしのヒップに、食い込む様にうごきます。
「あの夜みたいにね、祥子さん」
「やぁぁ・・・・」 
運転手が見ているかもしれない庭での艶戯に、静まりかけていた疼きにまた火をつけられてしまったのです。
舌の根元まで吸い上げられるような濃厚なキスを奪って、男性はようやく座敷に戻ることを許してくれました。
男性が好む・・・白い双膨の狭間にまで届きそうなほどきつく腰を握りしめ、堅くなった塊をわたくしの下腹にこすりつけるようにしながらのキスです。
「・・・・くぅぅっ・・・やめて」 
川音で決して座敷まで声がとどくことはないことを知っていながら、わたくしは声を潜めずにはいられませんでした。
「ほぉっ・・・記憶通りの唇でしたよ」 
唇の間でため息をつくように言って、やっとわたくしの身体を離してくれたのです。

「片付けも終わったころでしょう。戻りますか」 
庭に来たときと同じ何もなかったかのようなそぶりで、男性は元来た道を歩きだしました。
あのバーの前に止められたセルシオに乗ったときから、こんな夜は予想はしていました。ただ、男性一人と知ったときの・・・安堵は もしかしたら間違いなのかと少し怖くなったのです。
以前の・・・淫らな熱にうかされたかのように3人の男性に翻弄されたあの夜。
今夜はもっと別の意味でわたくしは弄ばれるのだと悟ったのです。
 
食事をしていた部屋の座卓は片付けられ、小机にお酒と飲み物の用意だけが上品にされておりました。
明かりは落とされ、イサムノグチの和紙使いのスタンドからもれる間接照明だけがほのかに室内を照らしておりました。
運転手は襖の側でわたくしたち2人を出迎えてくれます。
勧められるままにゆったりと横座りに座椅子に座ると、雪見障子は上げました。
ライトアップされた紅葉の庭が美しく見渡せます。
つい先ほどまであの奥で・・・そう思うだけで絹に押さえられている乳房の先が疼き出すのです。
「軽い食後酒でもいかがですか」 
差し出された果実酒は、ほのかな酸味が心地よい新酒の梅酒でした。
「んん・・おいし・い」 
氷で冷やされた甘みのあるとろりとした液体は、次第に熱さを増しながら喉の奥に落ちてゆきます。