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閑話休題(インター・ミッション) 4-2

前回途中で終わってしまった作品紹介の続きです。
<わたくしが男性の方達と出逢った場所・後編>、二日目の目覚めの前の一時をお楽しみください。

第6作 唐紅

クライアントのオフィスは、あの3人の男性と出会ったバーからほんのわずかの場所にありました。
マッカランの25年と並んでバーカウンターにあったポール・ジローのボトルが、わたくしの心をよぎります。
あの時は・・・日付がかわるほどに遅い時間でした。
いまのこの時間なら多忙な彼らと逢うことなんてないでしょう。
たった1杯だけブランデーを楽しむだけ・・・それならきっと大丈夫よ。
バーのスタッフはあのときのことは何もしらないのだから。
心を決めて、夕闇が薄く帳をおろしはじめた時間に、あのバーのドアに手をかけたのです。

第1作オペラピンクのランジェリーで偶然に立ち寄ったあのバー。
あの3人の男性に出逢った場所には2度とうかがうつもりはなかったのです。神経をすり減らすようなプレゼンが終わった後、クライアントのオフィスの側に見つけたのでなければ決してあのバーには行ったりはしなかったでしょう。
早い時間にあの方達と逢わない様に・・・と思っていたのですが、急な階段を上った扉の外には、あのセルシオと運転手とゼニアの似合う男性が待ち受けていたのです。

湯本から七曲がりへ向かう道を右へ下ったところに、その瀟酒な宿はありました。
贅沢な平屋づくりの建物は、春には花が見事だろうと思わせる桜の樹々の間に、離れのように点在していました。
4組も泊まれば満室になってしまうかのような贅沢なつくりの宿は、いまは紅く色づく紅葉の桜葉に彩られていたのです。

わたくしと一緒に過ごすのは急に決まったことだったはずですのに、この方は箱根の宿を予約されていたようです。どうも、この宿はこの方のいきつけの一つのようでした。わたくしはここにお連れになった何人目の女性にあたるのでしょうか。

脱衣所の川音の聞こえる側には1枚だけの扉がありました。
彼が先に立ってゆっくりと戸を引きあけると、そこは露天風呂だったのです。
侵入者とその視線を拒むように槙の垣根に守られた一画は、正面の紅葉の山肌を絵画のように一層引き立てていました。
きっと離れの屋根からのライトアップもあったのでしょう。
美しく色づいた葉の一枚一枚が照り映えておりました。

この見事な箱根の露天風呂で、わたくしは身体の全てを運転手さんの手によって洗われてしまうのです。後ろのはしたない排泄器官の中までをあらためられて・・・。自らは何一つせずに全てを男性の手に委ねる羞恥と心地よさをわたくしはここで知ったのです。

わたくしは部屋に通されてからのことを思い出し、改めて部屋を見回しました。
灰白い漆喰の壁に長年いぶされたのであろう黒々とした柱が、時代を感じさせる造りでありながらモダンな印象を醸し出していました。
高い天井までの空間は繊細な欄間などではなく、きりだしたままのような梁が何本も横切っているのです。
青畳の上にはイサムノグチ氏の間接照明が行灯のように置かれ、白い壁・白い障子が最低限の照明の効果を高るように室内を明るくしていました。

明かりは落とされ、イサムノグチの和紙使いのスタンドからもれる間接照明だけがほのかに室内を照らしておりました。
運転手は襖の側でわたくしたち2人を出迎えてくれます。
勧められるままにゆったりと横座りに座椅子に座ると、雪見障子は上げました。
ライトアップされた紅葉の庭が美しく見渡せます。

運転手さんがご用意くださった見事な着物を着せられたわたくしが嬲られたのが、この白壁の部屋でした。お食事をして・・・離れの庭を散歩したあとで・・・わたくしはその庭が雪見障子越しに見える部屋で・・・ゼニアの男性と運転手の望月さんのお二人に犯されるのです。夜が白む時間まで。


第7作 21:00

夜の帳が降りたあとの美術館いらしたことがありますか?
最近は都内にも、ようやくそんな素敵な場所ができました。
わたくしのお気に入りの空間のひとつです。
遅い時間はお客様も少なくて、思うがままに好きな作品を堪能できるので・・・そう数ヶ月に一度はつい足を向けてしまうのです。

高層ビルの最上階にある大好きな美術館は21:00まで開館している都心のお気に入りの場所でした。ゆっくり1人でアートを楽しむ・・・つもりでしたのが、ある男性と出逢ってしまったのでした。その方が仕掛けてきたのが、露出のはしたない罠だとは思ってもいなかったのです。美術館から彼の部屋まで、わたくしが考えたことのないような体験をさせられてしまうのです。

男性が<私の部屋>と言ってらしたのはレジデント棟16階にある一室でした。
エントランスを入り、2人きりでエレベーターにいる時も男性は紳士的でした。わたくしによりそい、わたくしの荷物を持ち黙ってエスコートしてくださったのです。
その部屋は、多分・・・男性のオフィスとして使われている部屋のようでした。 
あまり生活感のないシンプルな部屋です。カーテンの開けられた窓からは、先ほど彼に声をかけられた美術館のあるビルが見えました。
「祥子さん、そこで濡れたコートを脱いでください」 
リビングとして使われている部屋の入り口には、コートスタンドがありました。
たしかにわたくしのコートは雨に濡れておりました。
男性が座っている白のキャンバス張りのソファーを、このままでは台無しにしてしまいます。

男性がわたくしを連れて行ったのは「彼の部屋」でした。
生活感の乏しい上質なこの部屋で・・・わたくしは彼の視線と指だけに犯されて上り詰めてしまうのです。降りしきる雨に濡れたわたくしをソファーの前のラグの上に座らせて猫のようだと言う男性はフォトグラファーの高梨さんとおっしゃいました。


第8作ムーンナイト・アフェア

真夏のジャズライブから2ヶ月。
いつもの女友達に誘われて、久しぶりにあのホテルに向かう事にいたしました。
秋の夜に月が浮かぶ宵のことでした。
都心にひっそりと存在する庭には、いまは鈴虫の声がかすかに響いておりました。
あの佇まいはなにも変わらないままに、陽が落ちるとひんやりとする夜気がそこここに漂っておりました。

あのホテルのジャズライブに行けば、あの方との関係がはじまってしまうことはわかっていました。あの夏の日に予告されていたことですから。でも、二月遅れでジャズライブに訪れたわたくしを待っていたのは黒衣の男性ではなくて、彼のメッセージの添えられたランジェリーのプレゼントだったのです。

ロータリーを回った少し先に、一台だけシルバーのベンツが停まっていました。
E320クーペ。2ドアのベンツにしてはコンパクトな車でした。
コン・・コン・・ 近寄って運転席の窓を叩きます。
「乗ってください」 
すっ・・とパワーウインドウが開き Take Five と共に彼の声も流れてきました。

待ち合わせの最寄り駅でわたくしを待っていたのは、長谷川さんの愛車でした。
行き先も告げずに車を出した彼は・・・ホテルに到着するのを待つこともなく・・シートベルトに拘束されたシートの上でわたくしを淫楽の中に陥れるのです。

そこは生け垣に囲まれた・・・宿のようでした。
ただ、離れの様な平屋の建物が5つほど並び、それぞれに駐車スペースがあったのです。
その建物は不思議なつくりをしておりました。
和室なのですが、建物の中に玉砂利敷きの中庭がありいくつかの部屋があるのです。
天井にはあの箱根の宿と同じような黒々とした梁が渡っておりました。

いくつかのラブホテルが連なる郊外へと車を走らせた長谷川さんはそのどこにも入らなかったのです。そして車を向けたのは、寂れた感じの宿の表示のある場所だったのです。
「これくらいの広さがないと楽しめないからな」という男性の言葉の意味を知ったのは、緊縛され・・・Mだと幾度も告げられた後でした。

次に、室内なのにどうしてそんなものがあるのだろうと思っていた腰高の障子を、左右に引き開けました。
そこは出窓のように50センチほど張り出して手すりが設けられておりました。
障子の向こうには、室内なのに玉砂利敷きの先に太い丸太柱を中心に植樹されている中庭が見えます。
室内を暗くした分、中庭スペースを照らす間接照明が明るく窓越しに差し込んでおりました。

わたくしの胸の上下を縛った男性が・・・玩具責めをするために両脚を身体を拘束したのはその手すりだったのです。男性の身体で愛されることしか知らなかったわたくしに、淫具と鞭で絶頂を味あわせるのでした。
窓の外に見えた玉砂利も太い丸太柱も・・・わたくしを責めるための道具でしかなかったのです。

手首からバックルに止められた枷をはずし、革の上下で擦れて紅くなった部分を優しく愛撫してくださるのです。
中庭から最初の窓を通り過ぎた先にある、部屋のベッドの上でした。

わたくしをベッドに横たえた男性は緊縛だけでなく・・・吊りによる責めを与えるのです。両脚をベッドの上に渡された梁に備え付けた滑車と、もう一方の脚を縄で引き上げてわたくしを思い通りになさったのです。
そしていたわる様にわたくしを抱きしめて僅かな時間眠ってくださったのもこのベッドでした。


第9作 第九合唱付き

もう午後には雪空が宵闇のような暗がりを作り出していたのです。
いまは18時。コンサートホールへ向かう人波の中で・・・わたくしは思いがけない男性の姿を見かけた様に思ったのです。

ロビーは人で溢れていました。
第九の時には、ロビーではホテルからのケータリングサービスが用意されています。
いつものようにグラスシャンパンンをいただいて、人で埋まるソファーではなく窓から外庭が見えるガラス張りの窓辺へ向かいました。
今夜はよほど気温が下がっているのでしょう。
ガラスは凍り、その側にいるだけですっと冷えてゆくのが解るほどでした。
その時のわたくしには・・・ほんの少し口にしたシャンパンの酔いと、心地よい演奏への興奮と期待を程よくクールダウンさせてくれるように感じたのです。
広がる庭に立ち木の配された庭は今宵はライトアップで幻想的な様子を示しておりました。時折吹いているであろう風が梢を揺らしてゆきます。

老舗のクラシック・コンサートホール。
第九を聴きに行ったコンサートホールで、わたくしはあの写真家の高梨さんと再会したのです。1人で過ごす予定の贅沢な時間になぜか表れる・・・魔法のような声の男性は、わたくしの手を離してはくださらなかったのです。

チン・・16階への到着ベルが鳴ってもキスを止めず、ドアが開いてようやく唇を離してくれたのです。
 
あの夜と同じ・・彼の部屋でした。
「どうぞ 靴のままで」 
彼は部屋の入り口でわたくしのコートを脱がせるとスタンドに掛けて・・今夜は以前に通されたリビングではない、もう一つの扉を開けたのです。
キングサイズのベッドにサイドテーブル、ラブソファーが一つとミニテーブル、シンプルで端正に整えられている部屋でした。
男性は部屋に入るとスタンドの灯りを付け、ベッドの枕元のオーディオからラフマニノフを低く流しはじめたのです。

高梨さんのあの部屋のもう一つの扉の中はベッドルームでした。
紳士的に優しく始まった二人の夜だったはずなのに・・・。あの方は豹変するのです。


ここまでが完結した9作目までのロケーションガイドです。お楽しみいただけましたでしょうか?
現在アップ中の「第10作 初雪」もいくつもの場所でわたくしは男性の方達に愛していただくことになるのです。いずれ、このようにご紹介する時が来るのを楽しみにしております。

次の閑話休題(インターミッション)では、現在投票を受け付けている<男性キャラクター>のご紹介をする予定です。
投票期間は4月2日まで。皆様の投票順に人気のあるキャラクターからより詳しくご紹介してゆく予定です。まだ、投票されてない方がいらっしゃいましたら、ぜひご参加ください。 コメント
NoTitle
こんばんは。
インターミッションで、ほっと一息ですね。
毎晩読み継いでいると、おやすみもいいものです。

そういえば唐紅は"箱根"でしたね。私のほうもプロローグで箱根を提示し、やっと箱根に来ることができました。

昨年、小塚山の麓の小さな会員制のホテルへ行きました。そこで、こんなホテルを改装して・・・と、温泉に浸かりながら、けしからん妄想にひたっていました。
やはり天下の嶮、箱根は懐の大きいところです。

2006/03/30 20:41| URL | masterblue  [Edit]
masterblue様
<男性の方達と出逢った場所>後編をなかなか御届け出来ず、お待たせしてしまいました。
お楽しみいただけてるなんて・・・とてもうれしいです。

箱根は都心から約100キロ。日帰りはもちろんのこと、一泊でもゆったりと楽しめる山の別荘地ですね。
車を持っていた頃は、深夜のドライブコースとしてもお気に入りの場所でした。
唐紅のロケーションは、イメージのもとになっている宿はあるのですが、実際のまま御届けしてはおりません。桜に囲まれた瀟酒なお宿は、これからの季節素晴らしい景観を与えてくれるはずです。

2006/03/30 21:10| URL | 祥子  [Edit]
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