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初雪 45

「祥子様 失礼いたします」 
ドアの外で声を掛けてから、望月さんがドレッシングルームのドアを開けました。彼は泥大島をさらっと着流しに着こなしておりました。
きっと他のお三方もお着物なのでしょう。そしていままで・・・望月さんが着付けを手伝われていたに違いありません。
「今夜はお着物をご用意しましたので、先に髪を上げさせていただきます」
わたくしを鏡の方に向き直らせると、袂から柘植の櫛と赤い椿を描いた塗りのかんざしを取り出しました。
まるであの箱根の夜のように・・・。
無言でわたくしの髪をまとめるとたった 1本のかんざしで・・夜会巻きにわたくしの髪をまとめたのです。
「ほんとうに、お上手ね」 
肩からケープがわりのタオルを外すとわたくしを立たせたのです。
脚元は床暖房の施設が整っているのでしょう。ほの暖かく快適でしたが、わたくし用にとナチュラルホワイトのムートン・スリッパが用意されておりました。
「祥子様 お身体は辛くはないですか?」 
ドレッシングルームのドアを開け、部屋に向かう間も彼はわたくしを支えるようによりそっていました。
「ええ 大丈夫です。ご心配をおかけしてごめんなさい」 
望月さんの表情はやさしいものに変わっていたのです。

ベッドの上には、外の雪景色を切り取ったようなお着物がたとう紙のなかにひっそりと置かれていました。
淡雪が降り積もった紅い侘助を描いた友禅でした。 仄光るような雪が美しく・・・椿の深い紅と緑が描かれた総柄の訪問着です。
隣に置かれた袋帯は金地の雪輪に南天を織り出した西陣のもの。
長襦袢は・・・白地の着物への透けを考えたのでしょう、雪のように淡いブルーのものでした。
帯揚げと帯締めは深い緑。上質な絹の品であることはすぐにわかりました
「素敵 これも望月さんが?」
「はい 今夜の祥子様にお召しいただきたくて、ご用意いたしました。どうぞベッドに腰を下ろしてください」 
バスローブ姿のままでわたくしはベッドに浅く腰掛けさせられたのです。

望月さんはわたくしの脚元に跪くと・・・右手で足袋をとり、わたくしの左足をとりあげたのです。
「あっ・・足袋くらい自分でいたしますわ」
先ほどのブーツを脱がされた時のように・・・男性の手に脚元のことをさせることに抵抗を感じてしまいます。
「いえ、どうか私にさせてください。祥子様のお支度のことはお任せください」
見上げる彼の忠実な大型犬のような眼に、わたくしは引こうとしていた左脚の力を抜いたのです。
足にぴったりと張り付くような足袋を履かせるのは、決して簡単なことではありません。コハゼをはずし・・足袋を半分までうらがえしにして・・わたくしの足をくるむ様に包み上げてゆくのです。そして一番上のコハゼを除いた3枚を、きちんと差し入れ止めるのです。
左右の足に足袋を履かせると、わたくしを一面カーテンに覆われた壁に向かって立たせました。
シャァァっ・・・ 望月さんの手で引かれたカーテンの向こうは一面の鏡でした。
ベッドの足元一面の鏡。こんな場所に鏡だなんて。
この建物の持ち主である石塚さんの・・・秘められた欲望を一瞬垣間みてしまった思いでした。

「失礼いたします」
わたくしのバスローブの紐に手を掛けるのです。
「だめ・・ 肌着くらい自分でいたします」 
鏡の前で全てを映し出されたままで、彼に着せ付けられる恥ずかしさを・・・耐えられるとは思えなかったからです。
「祥子様・・・」 
何度言わせるのですか・・そう言わんがばかりの眼でわたくしを見つめ、望月さんを抑えたわたくしの手を優しく外すのです。
「どうかお任せください」 
バスローブの紐は彼の手に委ねられました。彼ひとりだけの眼に全てを晒してしまう・・・そのはしたなさを少しでも忘れたくて・・・わたくしは顔を鏡から背けたのです。
「そのままお待ちください」 
望月さんはわたくしのバスローブの紐を解いただけでした。ローブをはだけることも・・・素肌を無闇に晒させることもなかったのです。そして深紅の湯文字を手にわたくしの前に再度跪きました。
「失礼いたします」 
バスローブを広げると・・・わたくしの腰に絹の肌触りの湯文字を・・・巻き付けたのです。何も身につけていないむき出しの腰や茂みを恥ずかしく思う間もないほど・・・一瞬のことでした。
湯文字は着物姿の時の下着の代わりなのです。今夜は箱根の時のような装いではなく、和服の作法に則った着付けをされるようです。 
なのにその湯文字は麻の葉を織り出した、とても上質な紅絹で作られていました。むき出しの腰に・・太ももに、すべらかな絹の感触が心地よいのです。
「こんな上質な素材で湯文字なんて」 
「祥子様のために上質すぎる素材などというものはありません」 
腰骨の上で紐を結ぶでも無く止めると、やはりバスローブをわたくしに羽織らせたままで望月さんは長襦袢を取りにゆきました。 コメント
着物!
 さやかは、学生時代にお茶を習っていたので
ちゃんと、着物を持っているのです。
で、密かな野望があるんですよね。
それは、振袖用の長襦袢が
緋色の鹿の子絞りで絵羽模様なのお。
八百屋尾お七みたい!
これ一枚着て、緊縛されてみたい。(泣)


2006/04/27 15:06| URL | さやか  [Edit]
こんにちは。
祥子さん、こんにちは。

湯文字を巻かれる時、目線を斜め下(45度の角度?)に外す祥子さんの姿が見えます。(勝手な想像ですが)
愛奴も、全裸になる時羞恥の角度は何故か45度ですね。別に測った訳ではなく感覚だけですが?(笑)
私はその理由を考えてみました。
・・直視出来ないが主様を視界には残しておきたい。
・・横向きなら主様に前を向きなさいと言われる事を察して
・・女性の裸体が主様から綺麗に見える角度なのかな?

それと、最近は着物用下着で、着物ブラ、股ワレショーツがあるようですが、私個人の希望では、ノーパン、ノーブラ派ですね。

下着を着けていない意識が羞恥心で所作も女性らしく綺麗な着物美人になると思いますが・・。
                        ・・縄指導・・

2006/04/27 15:17| URL | 縄指導  [Edit]
祥子さん、こんばんは。

望月さんが慈しんで着付け、それを何方かが脱がせる。
何方かが脱がせるために着付ける望月さんのお気持ちに、嫉妬は無いのでしょうか。

ところで、湯文字、腰巻、裾よけ・・・湯文字は艶めかしく、腰巻は猥褻・・・でも裾よけって、どうもうまく使えない表現ですね。

和服だけでなく、スカートも下穿きが無ければ、女性はもっとお淑やかに、上品になるのではないかと、ひそかに思っているのですが。

またお邪魔します。

2006/04/27 20:46| URL | masterblue  [Edit]
冷ややかなGWの始まり
今日は一日冷たい雨が続いていました。
みなさまは気温の急な変化に体調をくずされたりしてはいませんか?

さやか様
緋色の総絞りの長襦袢・・・それも振り袖用なんて。
娘道成寺のような姿も素敵ですね。
桜の下に縛られているさやか様をつい想像してしまいました。

縄指導様
斜め45度。
わたくしが視線だけを反らすのは、愛おしい方がお相手だからです。
身体ごと反らすのは相手の意に異議を唱えるのと同じこと。
だから、従いながらも
お慕いする方だからこその堪え難い羞恥に苛まれているとき
わたくしは視線だけを反らしてしまうのです。

masterblue様
望月さんが丹念に着付けられるのは、わたくしを淫らに乱される時を
少しでも遅らせようとする思いが潜んでいるようです。
それを嫉妬というなら・・・きっとそうなのでしょう。
裾よけは女同士でそのものを語るときに使うことが多いです。
わたくしは・・・ね。

着物の下のランジェリーについて、奇しくも縄指導様とmasterblue様の
同じご意見を頂戴いたしました。
わたくしは・・・お二人がおっしゃるような姿で・・・湯文字の上はGカップのバストを晒できつく巻いて・・・ お恥ずかしいですわ

2006/04/28 01:07| URL | 祥子  [Edit]
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