初雪 67
「祥子さん、剃毛の後は傷ついていませんでしたか?」わたくしの左隣の美貴さんが改まった声でおっしゃいました。
大丈夫です・・・その意を込めてわたくしは首を横に振ったのです。
「よかった」
わたくしに剃刀を当てた石塚さんも・・・そしてずっと冷えた上半身を暖めてくださっていた山崎さんも満足そうに頷かれました。
「酷いことをしたって思ってらっしゃるでしょうね」
美貴さんが続けます。
いいえ・・・もう一度静かに首を横に振ったのです。
羞恥に満ちた形で行われた行為ですが、失ってもいずれ取り戻すことができるものを一時的に取り去られたそれだけのことなのですから。
「僕たち3人は・・・いや、望月を加えると4人か・・・祥子さんに対して本気なんですよ」
望月さんが注ぎ足した冷たいワインを一口召し上がります。
「剃毛してしまえば、祥子さんあなたのことです。決して他の男性にその身を晒すことはないでしょう。僕たちは、あなたを自分だけのものにしたいんです。」
真摯な山崎さんの声が右側から美貴さんの言葉を継いだのです。
「だったら・・・」
こんな風に3人で嬲るようなこと・・・
「祥子さんがきちんとパートナーを決めるまでと、紳士協定を結んだんです。決して抜け駆けはしない・・と。出来れば・・・こんなこと僕たちがお願い出来ることではないですが、祥子さんには僕たち以外の男性との関係も持って欲しくないんです」
「だから・・・」
気怠げに、でも確たる声で石塚さんが続けます。
「無理矢理でしたがあんな行為をさせてもらったんです。申し訳ありませんでした」
「お気持ちはわかりました。でも・・・」
「ええ、いますぐに答えられなくてあたりまえです。僕たちはあなたに破廉恥なことばかりしてきてますから」
山崎さんがわたくしの右手を取ってすべすべした指を絡めるのです。
「祥子さんの個人的なお付き合いを制限する権利なぞないことも承知しています。あくまで・・・僕たちの気持ちなんです。わかってください」
絡めた指を柔らかく握りしめます。
「本気です。この場で出来れば僕だけのものにして。美貴にも山崎にも望月くんにも指一本触れさせたくない、そのベッドルームに二人きりで籠って朝まで愛したいっていうのが本音なのですよ。祥子さん」
石塚さんの言葉に他の方達もかすかに頷きます。
「それにね、僕たちは祥子さん自身にも魅了されているのですよ。たとえ自分だけのものに出来なくても、いまここにいる仲間にあなたなら加えたいと思っているのです。一緒に過ごした僅かな時間ですが、あなたの見識には敬意を払っているのです。いつか誰かのものになってしまったとしても・・・僕たちが指一本触れることができなくなってしまっても、今度は友人として祥子さんと過ごす時間を持ちたいと願っているのです。」
美貴さんの言葉は静かに、でもしっかりとわたくしの元に届きました。と、同時に・・・一気にこんな想いをぶつけられて・・・わたくしは混乱をしていたのです。
「・・・そんな・・・」
この方達がわたくしと過ごすために用意された時間への心の砕き方には普通でないものを感じておりました。
ただ、どう考えてもこの方達はセクシュアルな対象としてしかわたくしのことを捉えていないのだと思っていたのです。それが・・・こんな風に。
「このレースのマリエは、いつか祥子さんが誰かを選ばれた時にその方との誓いの場で着ていただけたらと思ってプレゼントさせていただいたんですよ」
山崎さんのひと言は、この方達の思いの深さを伝えてきました。
「祥子さん、レースの語源を知っていますか?」
美貴さんがわたくしの手元の空になったグラスを取り上げました。
「いいえ」
「レースの語源は英語のLacier 『しばる』という言葉からだそうですよ」
「えっ」
指を絡められていた右手を山崎さんに捉えられたまま、グラスを持っていた左手を美貴さんに捉えられて、貴腐ワインの香りのキスを重ねられたのです。
「花嫁の心と身体をしばる為に作られた上質で高価なレースが、この純白のウェディングドレスなんです。花嫁はベッドで愛してあげなくてはいけませんね。さぁ」
先ほど望月さんに手を取られて出て来た扉を、美貴さんに連れられてもう一度入ったのです。
4人の男性と一緒に・・・
-
こんばんは。
相変わらずの雨・・・今日は蒸し暑いほどでした。
剃毛の目的は浮気防止・・・というよりはマーク付け?
羞恥責めではなかったのですね。
年末年始を過ごした後、祥子さんはどうされていたのでしょう。もう先が気になってきました。お休みなんてことは無いですね。
レースの語源は「縛る」・・・他に、「罠」という説もあるようです。どちらにしても、祥子さんはがんじがらめ。この先の展開がますます楽しみです。
2006/05/19 22:08| URL | masterblue [Edit] -
これほど複雑で深い愛のカタチを示されるとは…。
やはり女性冥利に尽きるのでしょうか。
勝ち負けをつけるものではないのかもしれません
が勝者は祥子さんと思うのは僕だけかな。
PS:もう少し近づきたいな。
2006/05/19 22:19| URL | eromania [Edit] -
キャッ(^^*))((*^^) キャッ
祥子さん、さあ、一人だけ選ぶとなるとどうします。
美貴さんは、さやかのために残して置いてくださいね。
ああ、でも、今日はこれから4人の男性の
お相手を務められるんですものね。
まだまだ長い夜を・・・(*ノノ) キャー
2006/05/19 23:53| URL | さやか [Edit] - 本当にもう初夏ですね
-
爽やかさから蒸し暑さに
日本の五月は着実に夏へと向かっているようです。
masterblue様
あの行為は充分羞恥責めでしたわ。
ただ・・・浮気防止というのはどうかと。
だってまだわたくしはどなたにも<本気>を差し上げるとは
お約束していないのですから。
レースのもう一つの語源「罠」。
仕掛けられて捕われるのはわたくしでしょうか?それとも・・・
eromania様
そうですね。箱根の夜から・・・いえ、一番最初の出会いの時から
うっすらとこの方達のお気持ちに対する予感はあったのです。
でも、こんな風にはっきりと戦線布告♪されるとは思ってもおりませんでした。
いままで、お逢いした方達の中で
どなたの手を取ったら・・・わたくしは幸せになれると思われますか?
さやか様
いまはまだ・・・選ぶなんてできませんわ。
それに、こんな風に言ってくださるのはこの方達だけではありませんしね。
わたくしが美貴さんを選んだら、さやか様に嫌われてしまいそうですね(笑)。
2006/05/20 13:29| URL | 祥子 [Edit] - (*'‐'*) ウフフフ♪
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嫌ったりはしませんけど、やきもちは焼きます!
そんな時は、ポケットの中の美貴さんを
虐めて遊んじゃうから・・・・。
祥子さんにも、ほんとに好きな人が出来て
選ぶ日が来るんでしょうか。
その時は、ブログに出てくるような人達とは
全然違う人だったりして・・・・。
2006/05/21 03:23| URL | さやか [Edit] - さやか様
-
そうですね。
お約束はできませんが、
美貴さんをお慕いしている女性がいらっしゃることは
肝に銘じておきますわ。
わたくしが心からお慕いできる方が現れる事を
さやか様も祈ってくださいね♪
2006/05/21 13:18| URL | 祥子 [Edit]
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