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桜陰 14

コート越しの高梨さんの手の動きさえ、なんとかして押さえ込もうとしている疼きに簡単に火をつけてしまうのです。
わたくしの身体は、白昼の咲き誇る桜並木というありえない場所での淫戯に溺れかけていたのです。

「そろそろ次の桜だよ。」
行く先をわたくしの瞳は見つめているはずなのに、身体に触れる高梨さんの手に集中してゆく意識が・・・また次の責めの場所が近づいていることを忘れさせていたのです。
「おねがい・・もう、ゆるして」
すれ違う人たちに聞こえないように、わたくしは彼によりそい小さな声で<おねがい>をしました。
これ以上の責めを受けることはなくとも、彼の部屋で二人きりになった時わたくしは、高梨さんには逆らうことなど出来はしなかったでしょう。
もう、桜を楽しむ余裕はわたくしにはありません。<お仕置き>と言う名の公共の場での辱めは・・わたくしを想像以上に苛んでいたのです。
「お願いの仕方が違うようだね、祥子」
歩みを緩めて、高梨さんがひとこと一言をゆっくりとおっしゃいました。
俯いていた顔を上げて・・・彼の瞳を見た時、わたくしは高梨さんの求めている言葉がわかったのです。
 
「どうか、もうわたくしをお赦しください、ご主人様」
 
「憶えていたようだね。」
「はい。」
「赦すって、祥子はどうして欲しいんだ。」
わたくしたちは3本目の桜の下に辿りつきました。
「ご主人様のお部屋で、祥子を・・・お望みのままに。」
口にした言葉が、いったい何を意味しているのか・・・充分にわかっておりました。でも、神経がひりつくような、こんな行為を続ける事はわたくしにはもう出来なかったのです。
高梨さんの瞳を見続けることができなくなって、視線を外そうとしたわたくしの頤をぐいと引き上げると・・・高梨さんは唇を重ねたのです。
「ん・んく・・・ぅ」
ディープキスでした。
でも、今度は身体を犯すのではなく・・・心を奪うような・・・キスだったのです。
 
数十秒?それとも1分?
わたくしの首筋にまわした高梨さんの手がストレートロングの髪を分け入り・・美容師さんのシャンプーにも声を漏らしてしまう・・・感じやすい頭皮を愛撫している間中、キスは続きました。
「次の桜がレジデンス棟の入り口だよ。祥子。」
最後のコートの釦は、高梨さんの手で外されてしまいました。
コートの中は透ける桜色のオーガンジーのスリップと、お揃いの素材のガーターベルト・・・そしてナチュラルのストッキングだけの姿でした。
辛うじて釦が留まっている間は人目に晒されることのなかった、短く整えられている漆黒の茂みさえ、いまはスリップからくっきりと透けてしまっていたのです。
「これじゃ眼の毒だな。」
そう仰るのに、でも許してはくださらないのです。
「いや・・」
それでも、高梨さんはいままでよりも少し早足で先を急いでくださいました。
レジデンス棟まであとわずか。どなたとも近距離ですれ違うことがないことを・・・祈るだけでした。 コメント
祥子様

>お赦し下さい・・・ご主人様
>ご主人様のお部屋で・・・お望みのまま

高梨様はご主人様なのですね
コートの中の桜色のスリップ越しに見える祥子様の肌も茂みもしっかりと見えていますよ。

2006/07/29 08:43| URL | 桜草  [Edit]
>「ご主人様のお部屋で、祥子を・・・お望みのままに。」

やっと出たこの言葉に、総てを任せてしまう安堵感と、その結果与えられる愉悦への期待が、滲み出ていますね。

(アレ、桜草さんと同じとことをピックしていた・・・)

2006/07/29 09:42| URL | masterblue  [Edit]
桜草様
高梨さんとは何のお約束もしてはおりませんの。
でも、ふたりになるとき・・・一番最初で美術館で出逢ったときから
自然とその言葉が口をついてしまったのです。


masterblue様
委ね切る・・・悦楽。確かにございますね。
映画には出ていなかったんですが、原作小説の「ナイン・ハーフ」にも描かれていた課題です。
委ね切る勇気と委ねられる方の力量と。
そのバランスが美しく取れたとき、ふたりの間に至珠の時間が訪れるのですから。


桜草様・masterblue様・・・仲良しでらっしゃいますね♪ うふ

2006/07/29 11:21| URL | 祥子  [Edit]
こんにちは。
おひさしぶりです。
今週は広州へ出張してきています。
来週は待ちに待った一時帰国休暇です。
週末の短い期間ですが、楽しみです。

2006/07/29 11:34| URL | yamatan  [Edit]
yamatan様
広州へですか。おつかれさまでございます。
ここ数日の東京は、香港に負けないくらい蒸し暑いです。
覚悟していらしてください(笑)
ゆっくり日本を楽しんでくださいね。

2006/07/29 12:08| URL | 祥子  [Edit]
 ご主人様。
一言ですべてを変えてしまう魔法のような言葉。
これで、もう、祥子さんには
理不尽を理不尽だと言うことが
出来なくなっちゃったの。
ちょっぴり、妬けちゃうさやかです。

2006/07/29 17:01| URL | さやか  [Edit]
さやか様
ご主人様・・・っていう言葉は本当に魔法ですね。
でも高梨さんとの間だと、なぜか自然に出てしまうのです。
理不尽がただの理不尽なのか・・・
心のありようを確かめるための試金石なのか・・・
高梨さんが誠意をもって向きあってくださることを祈るばかりです。

2006/07/29 18:07| URL | 祥子  [Edit]
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