銀幕の向こう側 20
ジィッ・・・ 短く・・・たぶん・・男性のバッグのファスナーが開けられる音がしました。「君のその羞恥心こそが、私にとっての極上のMの証だよ。」
声が、近づいてきました。
「いまの君が感じる姿を見たい。」
次の瞬間、男性の体温を左の頬に感じました。
「いいね。」
「・・は・い。」
耳元に直接吹き込まれた男性の声に、わたくしは<Yes>のお返事を返したのです。
男性の動きは、少し乱暴なほどに・・・性急でした。
「ぁっ・・・」
わたくしはソファーの背から拳一つ離れた位置で真っすぐに背筋を伸ばして座っておりました。わたくしのその肩を掴むと、その姿勢のままソファーの背に押しつけられたのです。
両手を括られていては、容易に体勢を元に戻すことすらできません。
「やぁっ・・・」
わたくしの真っすぐに揃えていた膝を割り、1人掛けソファの左右の肘掛けに・・・脚を掛けてゆくのです。
「だめだ、脚を閉じるんじゃない。」
高く男性の手で上げられてしまった脚を・・・もがくようにして・・下ろそうとしたのです。
腰を迫り出し、両脚をぱっくりと広げた姿は・・・淫ら以外の何ものでもなかったからです。
「その姿のまま、括られたいのか?」
男性の言葉に・・・声もなく・・首を横に振りました。
視覚をそして両腕の自由を奪われたわたくしは・・・これ以上両脚の自由まで失うわけには行かなかったからです。
「いいこだ。身体が辛くなったら言いなさい。その時は、楽な姿勢にしてあげるからね。」
声は・・・いまはもうあきらかに、わたくしの広げられた両脚の間から聞こえてきていたのです。
「おねがい・・・みない・で・・・」
わたくしは・・・色濃く変わっているにちがいない・・・藤色のサテンの小さな三角の布が・・男性の目の前に晒されていることに気付いたのです。
室内の照明は、わたくしが目隠しをされたときは薄暗く・・・調整されておりました。
いまも、わたくしの肌は・・室内の正面が変わったとは感じていませんでしたが、だからといって薄暗いままだとは限らないのです。
もし、明るい室内でこの姿を見つめられているとしたら・・・それはカーテンを開け放ったままの窓から・・・深夜の東京湾に向かってはしたない淫ら絵として晒されていることも示しているのです。
その時初めて、今夜この方はわたくしの感じやすい部分に・・・まだ指一本触れていないことに気付いたのです。
こんなに・・・羞恥心を煽られ、感じさせられているのに・・・まだ何も始まってはいないだなんて。
「なにを、見られたくないのかな。」
ビィィィ・・・ 男性が決してわたくしに答えられない質問を口にするのと、微かなモーター音が響いたのは同時でした。
「ゃっ・・・」
身を堅くしたわたくしの太ももに、振動する硬質な塊が触れたのです。
「玩具を使ったこともないのかい?」
あぁ・・やはりこれは以前長谷川さんに使われたことがある・・・あの・・玩具。
「大丈夫だ。君に痛みを感じさせたりはしない。小さな卵状の塊が小刻みに振動して、君に快感を与えてくれるものだ。ローターって言うんだよ。」
他の男性に使われたことがあるとも言えずに曖昧な態度のままのわたくしに、男性は詳しく記憶の中にある玩具のことを教えてくださるのです。
非情に・・・留まるところを知らずに・・・わたくしを追い上げてゆく小さな塊。
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映画館での辛い思いは、もう消えたのでしょうか。
まだでも、この男性がきっと忘れさせてくれると思います。
それほどまでに、息を付かせぬ展開ですね。
2006/09/07 21:24| URL | masterblue [Edit] -
まだ愛撫らしきものは何も始まっていないのに、
じりじりと二人の間が詰まる距離感が感じさせる。
こんな風にゆっくり、じっくり…してみたいな(笑)。
2006/09/07 22:32| URL | eromania [Edit] - 思いがけず・・・
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蒸し暑い夜ですね。まるで、このお話のころのように。
masterblue様
まだ忘れられてはいないのです。
気を許せば浮かび上がる愛した方の面影。
同じ愛撫なら閉じた瞳でその方を想像してしまったことでしょう。
でも、この方の愛撫はそんなセンチメントな回想さえも許してはくれなかったのです。
eromania様
そう・・・派手なことはなにもなさらないのに、わたくしを確実に追い上げる男性。
見えないだけに、この方の次の一手はわたくしを追い上げるのです。
この方の余裕なのか・・・それとも・・・
2006/09/07 23:32| URL | 祥子 [Edit] - うふふ
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祥子様
この不思議な方にmasterblue様もeromania様ものめりこんでいって欲しいなあ。
視覚を遮られて・・・他の感覚が研ぎ澄まされて更に追い込まれていきそう。
2006/09/08 10:18| URL | 桜草 [Edit] - 桜草様
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殿方お二人まで手玉に取るとは、この男性はなかなかな方のようです。
桜草様もすっかりファンですものね。
目隠しをされる感覚を一緒に楽しんでくださいませ。
2006/09/08 12:07| URL | 祥子 [Edit]
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