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Fireworks 8

「4階のエロイカになります。」
「はい、難しくなければ1人で行くわ。この階段を上がればいいのかしら?」
パーティルームのドアを出た向かいの通路に、上階へ上がるための細い階段がありました。
「恐れ入ります。こちらを上がって頂いて、正面が特別室になります。お部屋は一つですのですぐにわかっていただけると思います。」
「ありがとう。それなら大丈夫です。」
パーサーは、80名以上のお客様のサービスを取り仕切られているのです。スタッフにご迷惑を掛ける訳にはいきません。
わたくしは1人でゆっくりと客船らしいコンパクトなその階段を上っていったのです。

エロイカと印された部屋は、先ほどのパーティルームに比べればほんとうに小振りでしたが・・・まるで邸宅の応接間を彷彿とさせる重厚感のあるお部屋でした。
お部屋の中央のテーブルには、シャンパンとそれから下のパーティルームに用意されていたのと同じようなオードブルが二人分ほど用意されていたのです。
このお部屋からは、テーブルと椅子の並ぶデッキにそのまま出ることができました。
デッキに向いた窓の外はすっかり陽も落ちて、東京湾の夜景が見事なパノラマを展開していたのです。

「待たせて申し訳ない。親父たちが放してくれなくてね。」
バフッ・・カチャッ・・・ ドアの開く音と共に、太くしっかりした石塚さんの声がいたしました。
わたくしは見とれていた窓外の景色から目を離し、ゆっくりと声のする方へ振り返ったのです。
「今日はお仕事なのでしょう。わたくしのことなら宜しいのに。」
「だめだめ。祥子さんを1人にしては置けないよ。早速イケメンと二人で話し込んでいたじゃないか。」
「ふふふ、そんなんじゃありません。」
「ははははは 大丈夫だと思っているのは祥子さんだけさ。」
半年ぶりに聞く石塚さんの笑い声は、変わらずこの方らしく陽気でした。

石塚さんは椅子を引きわたくしを座らせると、テーブルの上の2つのグラスにシャンパンを注いで一つをわたくしに差し出してくださったのです。
チン・・・グラスを軽く合わせます。
「半年ぶりだね。山崎からも聞いていたけどお変わりないみたいだね、祥子さん。」
「恐れ入ります。相変わらずお世辞が上手ね。」
「お世辞なんかじゃないさ。」
そば粉のブリニに乗せたキャビアをわたくしの口元に差し出すのです。
「ありがとうごさいます。」
わたくしは微笑んで、ひな鳥が親鳥から餌を与えられる様にして・・・贅沢なオードブルを口にしたのです。
ストイックなまでのそば粉の香りと口の中ではじけるベルーガの濃厚な味を、辛口のシャンパンが洗い流してゆきます。
石塚さんも、同じものを・・・そして生ハムを召し上がられます。
パーティがはじまってからずっと、来客の皆様にご挨拶にまわられていたのでしょうか。
乾杯の時に形ばかり口にしたシャンパン以外はほとんどなにも召し上がらず、お腹が空かれていたようです。
この時間も、下のパーティルームではイベントやご挨拶など・・・本来でしたらこなさなければならないお仕事が続いているはずです。
「抜けてらして大丈夫でしたの?」
2杯目のシャンパンを注いでいただいたところで、あらためて問いかけたのです。 コメント
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2006/09/25 12:31| |   [Edit]
長谷川さん
 ドキドキするだけでなくって
あっさりと他の男性と二人きりになれる場所に
連れ去られてしまって、
すっかり熱くなった気持ちをもてあまされてるんでは?
それにしても・・・・石塚さーん
>イケメン
は、無いでしょう。
(* ̄m ̄) ププッ無理してますね。

2006/09/25 13:51| URL | さやか  [Edit]
長谷川さん、石塚さんがさりげなく出した嫉妬心をするりと
かわす祥子さん。

恋上手なのはさてどっち?

2006/09/25 21:03| URL | eromania  [Edit]
さやか様
大人の男同士の水面下のバトル・・・お楽しみいただけましたでしょうか。
長谷川さんと二人で話しているところに自分で乗り込んだりしないあたりが、石塚さんらしいというか(笑)。
この出逢いが切っ掛けで、数年後石塚さんは長谷川さんを竹上建設に引き抜くんです。

さて、いつも過激な石塚さんは、今夜はどんな風にわたくしと過ごすおつもりなのでしょうか?

2006/09/25 21:05| URL | 祥子  [Edit]
eromania様
>恋上手
わたくしにはわかりませんわ。

いまは、プライベートと仕事は別・・・って言われますけれど、でもやはりお仕事の真剣勝負の関係に色恋ごとを影響させては申し訳ないとわたくしはつい思ってしまうのです。


2006/09/25 21:11| URL | 祥子  [Edit]
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