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外伝2/レンジローバーの帰り道 7

たしかにお腹も空いていた。朝食は8時だったから。でも、あのまま専務が<祥子さん>に夢中になっている話を聞いていたくなかった。このまま話がエスカレートするのなんて眼に見えていた。往きの車の中であったことみたいに・・・。車を止めて降りなければ話を止めることなんてできなかったろう。
渋滞がはじまって、いつもなら凄く嫌なのに・・・今日だけはほっとした。渋滞を理由に車を止めることができたから。

「つかれたろう。ずっと運転してたんだから。30分くらい休もうか。」
「ありがとうございます。食事をさせていただきます。」
「私達もお茶でもしてるよ。」
「はい。わかりました。」
石塚さんと、美貴はもうトイレに向かっていた。私が車を降りたのを確認して結城くんが鍵をロックする。
「私達は朝食が遅かったからお茶くらいだが、一緒に来るかい?」
他の二人から随分離れたのでちょっと元気がなくなったような彼女にそう声を掛けてみた。
「いいえ、お話のお邪魔になってはいけませんから。それに簡単なもので済ませます。お夕食を美味しくいただきたいので。」
「わかった。ゆっくりしておいで。」
レストハウスへ向かう彼女の後ろ姿を見送って、私もまずはトイレにいく。望月くんのいれるお茶は美味しいが、つい・・・飲み過ぎてしまう。

「結城くんはどうした?」
レストハウスのテーブルに合流した私に、石塚さんはまずそう口にした。
「軽く食事をして車で待ってるそうですよ。夕食が楽しみだからひとりで軽く食べるって言ってました。予約はとれたのか?美貴。」
「ああ、待ってますと支配人が言っていたよ。ただ渋滞がこんなだから、時間はまたあらためて連絡するということにした。」
「ありがとう、気を遣わせてわるかった。」
「いいんだよ。ま、これくらいは当たり前だよ。それに、祥子さんと別れたあと、1人で夕食なんて味気ないことはしたくないしね。」
「良いこと言うな。」
のんびりとした口調で、レストハウスの窓から最近SAに増えた小さな植栽スペースをなんとはなしに眺めてにやついている。
往路、石塚さんと祥子さんと一緒にレンジローバーで来た私には、彼の表情の訳が手に取るようにわかった。
「石塚さん。あれは、ここのサービスエリアじゃないですよ。」
「わかってるよ。いいじゃないか、この手の植栽の設計は似たり寄ったりだから、イメージするには丁度いいんだ。」
即座にそう返しながらも、まだにやにや笑いは終わらない。
「なにがあったんだい?石塚さんがそんな顔をするってことは、祥子さんがらみなんでしょう。」
1人だけ、望月くんの運転するセルシオで先行させられた美貴は、実はこの3日間ずっと往路のことを聞きたくてうずうずしていたらしい。ただ、別荘に到着した時の祥子さんの様子を望月くんから聞いて、さすがに彼女の前で口にするのはエチケットとして控えて来たということなのだろう。

「いいか?山崎。」
石塚さんは石塚さんで、美貴に自慢したくて仕方がないのだろう。
せっかく他の人には見せないこと・・・を条件に祥子さんが許してくれた写真を見せびらかしたいらしい。 コメント
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2006/12/04 10:30| |   [Edit]
コメント有難うの続き
祥子さんが女性の方だったとは、全く知らずにコメントしておりました。やっぱり、女性って不思議な生き物ですね。(もちろん尊敬の念をこめて)

2006/12/04 18:30| URL | missjenny  [Edit]
missjenny様
ふふふ♪そうでしたか。
プロフィールに関しては、ほとんど嘘偽りなく書いております。ですから、性別も年齢もだいたいの経歴もそのままですわ。
以前に、女性が書くものとは思えない・・・とご感想をいただいたことはございます。同じような意味でおっしゃって頂けたなら、とてもうれしいですわ。

2006/12/04 19:15| URL | 祥子  [Edit]
なかなか、このレンジローバーも面白いですよ。
読み応え充分あります。

ほんとに人間模様といい、細かな描写や展開は面白いです。


2006/12/04 19:47| URL | melto  [Edit]
melto様
ありがとうございます。そう言っていただくとほっといたします。
あまり、直截的なセックス描写はありませんが・・・お楽しみいただけてよかったです。
あとしばらく、お楽しみくださいませ♪

2006/12/04 19:53| URL | 祥子  [Edit]
つい話したくなってしまう。
つい自慢したくなる(笑)。

おしゃべりは女性だけのものじゃないですよね。
細かな描写があるからこそ登場人物に奥行きが
生まれます。

このあとどうなるのでしょう。

2006/12/04 21:12| URL | eromania  [Edit]
eromania様
恐れ入ります。
こういったおしゃべりは、男性はなさらないものと思っておりましたら・・・あにはからんや・・なのですね。
意中の女性の前では絶対に見せない、一種少年のような・・男性の顔。
できればそっと、後ろの席でお茶をしながらお話を伺ってみたいものですわ。

2006/12/04 21:44| URL | 祥子  [Edit]
狭い車内という空間で厭な話題に出くわすくらい、気まずいことはないですね。
同乗者なら寝たふりをする・・・という苦しいテもあるでしょうけれど。
運転手は、そうはいきません。
ただ無表情に、ドライバーという職務に徹するよりほかなくなります。
無表情であることをいいことに。
運転手つきの車のなかで、気遣いのない言動をとる人がいると。
肩書きほどの値打ちも、運転手つきの車に乗る重みのない人なのだな。
ついそんな、冷静な判断をしてしまうことがございます。

・・・なんて。キツいことを書いていますが。
男の自慢。私もわかります。(笑)
好きな人には見せたくない、
というよりも。
好きな人だからこそ、心を許して童心を見せてしまう。
甘いですね・・・(^^ゞ

2006/12/10 10:16| URL | 柏木  [Edit]
柏木様
<嫌な話題>なのは結城さんにとってだけなんです。
そして、往きの車の中での黙認が・・・結城さんをそういうことに対してさばけたコだという印象になっているんですね。
この方達は結城さんがバージンだということさえ、想像もしていないでしょう。
(山崎さんがその事実を知ったのは、この後の結城さんのお誕生日ですから)
いまどきのコ、それなりに幼いなりに経験はしていて・・・エッチな妄想の手伝いくらいにはなったか・・・くらいに思っているのかもしれません。

すれ違う心は時には残酷です。

2006/12/12 00:25| URL | 祥子  [Edit]
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