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第九 in the MOVIE 2

「ははは、やっぱりあんな偶然はないんですね。」
「ふふふ、そうですね。」
「祥子さん、今夜この後の予定はなにかあるんですか?」
「いいえ。特に決まってはいませんの。今日はわたくしのお誕生日なので、どこかでお食事をして帰ろうと思っておりました。」
「そうなんですか。」
仲畑さんは、少しだけ考える様にされたあとでこうおっしゃったのです。
「私でよかったら、お祝いをさせてください。映画が終わった後、そうですね・・・この映画館の前の広場のゴジラの前ではどうですか?」
ふふふ。入れ替えのための人でごった返す映画館の中や、最終回で並ぶ入り口ではなくこんな場所を選ぶなんて、流石に映画関係者のお1人だとわたくしはつい心の中で微笑んでしまったのです。
「あっ。解りませんか?ゴジラ。」
「いいえ、解りますわ。あのスターの手形がならぶ広場にあるゴジラの銅像の前ですね。」
「はい。そうです。それじゃ、後ほど。」
前の回の上映が終わり、ほぼ満席だったお客様が一気にロビーに出てらしたのです。
人波に、仲畑さんは入場待ちの後ろの列へ回ってゆかれました。

今夜は、第九に合わせて白のシルクのブラウスに黒のロングスカートを合わせていました。映画を見て、お食事をいただいて・・・暖かな場所を移動するだけでしたので、ブラウスの上にはカシミアの黒のストールと刈毛ミンクの黒のテーラードカラーのロングコートを着ておりました。足元は黒のショートブーツ。
深く後中心に入ったスリットを意識して、ストッキングはシーム入りの黒のものを、パールホワイトのサテンのスリーインワンで吊って、ショーツは同じ素材のハイレグのラインの目立たないものを選びました。
装う前に鏡の前で見たまるで花嫁のためのようなランジェリーは、黒のシーム入りのストッキングのせいでその清楚さを僅かに損なっているようでした。
まさか、仲畑さんとご一緒することになるとは夢にも思っておりませんでした。
もし、この姿をお見せすることになってしまったら・・・がっかりなさるかしら、と考えているわたくしがおりました。
この前にお逢いした夜は・・・わたくしが普通の状態ではありませんでした。泣きじゃくるわたくしを慰める為に、仲畑さんはわたくしと一夜を過ごしてくださったのです。
今夜の出逢いも偶然でした。
映画が終われば19:00近く。
お食事をご一緒して・・・その後・・・。
ふっ・・と会場の明かりが落ちて、わたくしは意識をはじまったばかりの映画に戻したのです。

地味に、淡々と・・・それでもベートーベンの生きた1800年代に、女性の持つ能力や才能を認め・側におかずに居られなかった人間としてのベートーベンの苦悩と、野獣と言われる彼を理解してその才能を尊敬し・惹かれずにはいられなかったアンナ・ホルツが描かれた映画でした。
23歳の女性が倍に近い年齢の男性に傾倒してゆく様・・・身体を交わしはしないのですが、重ねられる日常が二人の関係を示しておりました。
第九の演奏は、物語の中盤だったでしょうか。
予想通り第四楽章だけでしたが、第九の持つ聖なるイメージだけではない新たな物語を感じさせるシーンが印象的でした。

最終回ではありませんでしたから、どのお客様もあわてて席を立たれたのです。
わたくしは、映画館の反対の端に座っているはずの仲畑さんを目で探したのですが、見つける事ができませんでした。
待ち合わせは屋外だったのです。お待たせしてはいけないと・・・わたくしはエレベーターを待たずに、階段をつかって映画館を出たのです。

ゴジラの前には仲畑さんはまだいらしておりませんでした。
三々五々映画館から近隣の劇場へと向かう人波をコートの襟を掻き寄せて見つめておりました。
一人の贅沢な夕食も、それはそれでわたくしの大好きな時間でした。
でも、せっかくの一日。ご一緒に祝ってくださる方のいる幸せを・・・わたくしはしみじみと感じていたのです。 コメント
こんばんは。
外は激しい降りです。

このサイトへお邪魔するきっかけが、「第九・合唱付き」だったと思います。
でも、そのときはまだアップされていなくて、思わせぶりにタイトルだけが、カテゴリー欄にあったように記憶しています。
長い、ながい祥子さんの性の遍歴ですね。そして回を重ねる毎に美しく、艶やかに、淫らになってゆく様がたまらなく愛おしく、そのように磨き上げてゆく男性諸氏が、たまらなく妬ましいこのごろです。
さて、今回はどうなるのでしょうか。
第一楽章からなんて、じらさないで下さいね。
ずばり第四楽章のファンファーレから突入して下さい。

2006/12/26 20:57| URL | masterblue  [Edit]
ええっ?ここはどこ?って、彷徨いかけた柏木でした。(笑)
(すでに別んとこにコメ残したのは、ここではナイショ)
すっかり雰囲気、かわりましたね。
イメージは、いちめんの雪原でしょうか?
去年の「合唱」、よく憶えています。
あれからもう、一年経ってしまったのですね。
ふたたび、祥子流交響楽に酔い痴れて・・・。^^

シーム入りのストッキングは、たしかに清楚さとは別の魅力を秘めていますね。
オトナな装いに心の綾の深さを覚えるのは・・・いささかコアな妄想でしょうか?

2006/12/26 21:15| URL | 柏木  [Edit]
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2006/12/26 21:21| |   [Edit]
はじまして
先日は私のブログに遊びにきてくれてありがとう
名前は何度かお見かけしましたが
なかなかゆっくりくることができずすみません
こんな素敵なブログを書いてる祥子さんにコメントいだたいて嬉しく思います
私はまだ女として未熟者です
また一つ素敵なブログにめぐりあえてよかったです
またゆっくり遊びにきますね^^


2006/12/26 22:56| URL | ななみ  [Edit]
仕事がらみなのですが、今年も何回第九を聴いた事か…。いつもこの時期には第九とメサイアが頭をぐるぐる廻っています…。
浮いた話より硬い、苦しい生涯の方が印象深いベートーベン。その映画が祥子さんと仲畑さんの再会のきっかけになるなんて…。
仲畑さんのあの時の大人の振る舞い…私はとても心惹かれたので。
今年最後になるのでしょうか?素敵な展開を期待していますね!

2006/12/26 23:45| URL | るり  [Edit]
年末恒例の第九・・・今年で2つめの物語になります
masterblue様
こちらのブログを開かせていただいたのが今年の1月19日。
前身の<msn淑やかな彩>でそのタイミングまでに既に連載を完了していた最後の物語が、<第九 合唱付き>でした。
こちらをメインブログにするために、さくさくと移転を進めたのですが、<第九 合唱付き>をお届けするまでに随分とお時間がかかってしまいました。
今年の<第九>は映画です。
第四楽章から、とゆきたいところですがお相手が仲畑さんなのでどうか第一楽章からごゆるりとお楽しみ下さい。
あぁっ・・だめですよ、シャンパンを飲み過ぎて途中で寝たりしちゃ♪

柏木様
クリスマスが明けたら、テンプレート変更♪
わたくしが以前お勤めをさせていただいた百貨店の店頭も同じでした。
今回のテンプレは、手描きの楽譜の古風なイメージをと選びました。いかがでしょう。

ななみ様
はじめまして。ようこそお越しくださいました。
わたくしもあちらこちらのブログでコメントをされているななみ様をお見かけしておりました。
ようやくななみ様のブログにお伺い出来て、コメントをすることができました。
これからも、時折お邪魔させていただきます。宜しくお願いいたします。

るり様
「敬愛なるベートーベン」という映画を見て、わたくしはベートーベンの印象が随分変わりました。
神の声を聞く能力を得たために・・・神に聴力を奪われた男性。映画を見る限りひどい難聴のようでしたが、その苦悩の下にあるピュアな男性の情熱を感じる映画でした。
エロティックではないのに、どこか心引かれる素敵な映画です。

2006/12/27 16:53| URL | 祥子  [Edit]
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