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第九 in the MOVIE 10

「こっちへおいで」
わたくしを仲畑さんの開いた脚の間に引き寄せます。
「最後列に並んで座っていても、今日みたいに混んでいたらキスもできなかったね。」
「そんな事に思ってらしたの?」
「初演のシーンを見て、キスしたくならなかった?」
わたくしはとっさに答えられなくて目を伏せたのです。
「ちゃんと答えなさい。」
俯いたわたくしを、仲畑さんはやさしく頭に乗せた手で仰向かせたのです。
「祥子。」
「したくなりました。優しく触れてほしかったわ。」
「こんな風にかな?」
仲畑さんの指は、わたくしのたっぷりとドレープの寄せられたシルクのボウタイに手を掛けたのです。
「私を見つめているんだ。アンナ・ホルツのように。そうだ。」

ベートーベンは彼女を失う事ができないと、アンナ・ホルツが去ってはじめて自覚したのです。神の音楽の代弁者は、彼女をふたたび手に入れるために尼僧院へ足を運び謝罪をして・・・アンナ・ホルツとのパートナーシップを再び手に入れる事ができました。
二人は音楽を通して尊敬と愛情と生き方と豊かな感性を交わしてゆくのです。
ベートーベンは彼女の若い新鮮な感性を・・・彼女への愛を。
アンナ・ホルツは神の声に導かれる既成概念に囚われないベートーベンの音楽への取り組み方を。
一人の熱情ではない、二人の情熱が互いに高め合うような時間の中で・・・

しゅるっ・・・キシッ・・・
首もとを覆っていたボウが絹鳴きの音を立てて解かれてゆきます。
ベートーベンがアンナ・ホルツのドレスを脱がせるシーンなんて映画の中では一度もなかったのに・・・まるで、そんなシーンがあったようにさえ思えるのです。
長いストールのように垂らされた襟。シルクでくるみこまれたブラウスの釦まで・・・仲畑さんは無言のままで、1つ1つ外してゆきました。
ウエストまで、全ての釦が開けられたとき初めて・・・ほぅという仲畑さんのため息が聞こえたのです。
「いい香りだ。そしてインナーまでブラウスと同じシルクホワイトなんだね。そのブラウスを脱いで、見事なランジェリー姿を見せてくれないか?」
テレビから流れるベートーベンの代表作「ピアノ・ソナタ第32番」。
わたくしはあまりに美しいそのメロディに従う様に手首の釦を外したのです。
しゅ・・・しゅる・・・
スカートのウエストから引き出すブラウスの衣擦れの音さえ・・・高く響くのです。
全ての釦をはずして、わたくしは肩先から・・・白のシルクのブラウスを落としたのです。

『私のことを洗ってくれないか。』
楽譜を清書するアンナ・ホルツに生涯妻を持たなかったベートーベンが、もっともセクシャルな行為として命令するシーンでした。
『さぁ』
その台詞は、わたくしの背後で流れる映画からと・・・わたくしを見つめ下ろす仲畑さんの唇から同時に聞こえてきたのです。
映画のようにお湯で絞ったタオルで身体を拭う事はいまのわたくしにはできません。
わたくしに出来るのは・・・
「・・・はい。」
仲畑さんの脚の間で、ターコイズブルーのセーターと美しい調和を見せる彼のキャメルのスラックスのウエストへと手を伸ばしたのです。
ベルトを外し、ファスナーを下ろしてブラウンのボクサーパンツの中から半ば立ち上がった塊を引き出したのです。
『ジャァァ・・ ピチャ・・』
「くちゅ・・っ ぺちょぉ・・・」
湯を含んだタオルの立てる水音が背後の画面の中から流れます。
なにも持たないわたくしは、唇の内側にコーヒーの香りの唾液を口一杯に溜めて・・・舌を使って仲畑さんを清めるしかできません。
「くぷぅ・・・くちゃぁ・・・んちゅぅ・・・」
『あぁ・・・』
映画と同じに、満足そうな仲畑さんの喘ぎが聞こえます。
先端からボクサーパンツに隠された場所までを、丹念に何度も・・・舌先と唇で拭ってゆくのです。
先端は舌先をくるくると回す様に、ごつごつとした血管は裏の筋は舌先で広げて全ての皮膚を拭う様に・・・。 コメント
美しい音楽も淫らとされるSEXも、誰かを喜ばせるためにと思うとより深く豊かな表現なりますよね。

その点で同じかもしれないなんて思ったりなんかして。

2006/12/30 19:29| URL | eromania  [Edit]
こんばんは
年末のご挨拶、わざわざありがとうございました。
どのブログもこの時期は停滞しがちなのに
祥子さんのブログだけは活気がありますね。
来年の展開も楽しみにしております。
望月さんとの事はもちろん、
新しいキャラの登場など期待してますよ。
では、よいお年を!

2006/12/30 21:09| URL | UMI  [Edit]
おお、テンプレートが変わってる。

今年一年、いろいろと楽しませてもらいました。
なかなか忙しくって、訪問もままなってませんが、
これからも読ませてもらいに来ますね。

祥子さんもよい年をお迎えください。

来年も少しずつですが、読みに来ますね。(^^♪


2006/12/30 22:53| URL | melto  [Edit]
いよいよです
eromania様
そうですね。技巧にばっかり凝ってみたところで情動がなければつまらなかったりして(笑)。・・・ごめんなさい。
五感に訴えかけるものは音楽もセックスも、全て素晴らしいですものね。
この物語もeromania様と同じ思いで綴っておりますが・・・届いておりますでしょうか?

UMI様
あぁっ・・・新キャラですか(絶句)。
なかなか、出逢った方達との逢瀬もままならないのに・・・よく考えたら、2006年の新キャラ<森本くん>なんてとうとう1作きりになってたりします。
ん~~それでも、せめて一人は頑張ってみます♪
来年もよろしくお願い申し上げます。

melto様
ありがとうございます。
テンプレートは、物語や季節に合わせて替えることが恒例のようになってしまいました(笑)。
<淑やかな彩>の基本テンプレートの赤い薔薇が懐かしいところではありますが、しばらくはまだ登場がないようです。
お正月は松が取れるまで・・・新年らしいテンプレートに替える予定です。そのあとは♪
どうぞお楽しみになさってくださいね。

2006/12/31 06:14| URL | 祥子  [Edit]
NoTitle
女の身体から衣裳を取り去るとき、
その全身を包む衣擦れの音・・・
想像をそそります。彩に満ちた光景を。

2007/01/02 23:32| URL | 柏木  [Edit]
柏木様
衣擦れの音、絹ならではのしの軋みを柏木様と同様に、仲畑さんも感じてくださったのでしょうか。
声優ならではの耳に、あの時のわたくしのため息まで聞こえてしまったのではないかとドキドキしておりました。

2007/01/03 12:29| URL | 祥子  [Edit]
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