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SnowWhite 7

「美味しいわ。」
「口に合ったみたいだね、良かったよ。祥子さんが珈琲好きなのは知っていたからね。ちょっと心配だった。」
「ふふふ、手つきが慣れてらしたわ。いつもは、ほらあの下のコーヒーショップでテイクアウトしてきてしまうでしょう。」
「ま、あそこはね。僕がいれるより旨いだろう。」
「いいえ、高梨さんのこの珈琲のほうが美味しいわ。」
「ははは、ありがとう。さぁ、パンにも手をのばしてくれ。このパンはね、ここの地元の人が焼いているパンなんだよ。」
ずっしりと持ち重みのあるヨーロッパ風のパンは、厳選された小麦と天然の酵母がえも言われぬ香りを醸し出しておりました。
「ドライ・イーストじゃなくて、天然酵母なんですね。干しぶどうからかしら、美味しいわ。」
「ほう、祥子さんには解るんだね。帰る日に店が開いてたら店主を紹介しよう。今みたいに言ってあげたらとても喜ぶ。」
「ふふふ、そんなこと。普通に市販されているパンとは格段に香りが違うからそう思っただけですわ。」
「石釜も自分で作っている凝り性のパン屋でね。若い頃フランスで食べたパンが忘れられないと頑張ってるんだ。割としっかりとしたパンばかりだから、市販のふわふわの食パンを食べ慣れたこのあたりの人には人気がないって、最近愚痴ってばかりでね。はは、祥子さんに会ったらきっと喜ぶ。」
「三が日に営業なさるかしら。もしお逢いできなくても、よろしくお伝えくださいな。」
「そうしますよ。」
スライスされたレーズンブレッドも、幾重にも折り畳まれたクロワッサンも。とても美味しいのです。
合成保存料のようなものは一切使っていないようでした。そのせいで夕方には堅くなってしまうのかもしれません。食べたいときに、食べるだけの焼きたてのパンが手に入る・・・なんて贅沢なことでしょう。

「祥子さんに、お願いがあるんだ。」
ふたりの近況を話し合いながらの昼食が、ほとんど終わりかけたころです。
お代わりの珈琲をあらためていれなおして下さった高梨さんが、改まった言葉を口にしたのです。
「なんですか?」
「祥子さんの写真が撮りたい。」
「お写真?」
「そうです。」
この方はプロの・・国際的に活躍されているフォトグラファーでした。今でもコレクションシーズンは日本にいることが出来ないほどの実力派です。
だからこそ、プロフェッショナルな彼の口からこの言葉が出る事などないだろうと、わたくしは勝手に思い込んでおりました。
「もう、ご冗談ばかり。」
「いや、冗談じゃない。」
「どんなお写真をお望みなんですか?」
美貴さんたちのように・・・わたくしのはしたない姿を手元にと、お考えなのでしょうか。
「あっ、なんか誤解してますね。恥ずかしい写真を撮らせてほしいと言っている訳ではないんです。そうですね、ここで過ごす祥子さんの日常の姿を撮らせてほしい。
白雪と遊ぶ祥子さん、台所で料理をする祥子さん、炉端で寛ぐ祥子さん、僕と話をしている祥子さん、お酒に酔う祥子さん。そんなあなたを写したい。仕事ではありません。あくまで、僕の個人的なコレクションです。」 コメント
昨夜は素敵なお言葉を頂戴し、ありがとうございました。そう思うと探す事が楽しみになってきました。

高梨さん…何だかそのギャップに可愛らしいな。。と思ってしまっては失礼ですね…

ゆったりと流れる時の中で素敵ですね。。
楽しみです

2007/02/22 11:29| URL |   [Edit]
柚様・・・ですよね
お名前がなかったのでちょっとびっくりいたしました。
高梨さんが可愛らしい・・・というのは正解だと思います。見た目はクマさんですが(笑)。
少年ぽさを残した男性だと、多くの方がおっしゃるくらいですから♪

大晦日なのに、時間はゆっくりゆっくり流れてゆきます。
暖かな春の陽の中で、ゆっくりお楽しみください。

2007/02/22 11:52| URL | 祥子  [Edit]
祥子様、大変失礼致しました…わたくしでございます。名前も名乗らないなんて失態を…お気遣いありがとうございました。

2007/02/22 12:36| URL | 柚  [Edit]
祥子さんみたいに素敵な女性なら残したいと思うでしょうね。
私は・・・カメラが壊れる可能性が大ということなんで・・・
はぁ・・・もっときれいにスタイルよく生まれなかったんだろう(ノ_σ)クスン

今回のゆったりした時ってのもいいですね。

2007/02/22 16:08| URL | トン  [Edit]
時間がゆったり流れる分、想像の翼を広げることが
できる。

こんなとき、どんな風に誘うだろう、話すだろう…なんて。

2007/02/22 21:08| URL | eromania  [Edit]
等身分の時間
トン様
わたくしもとてもとても・・・お恥ずかしいスタイルなんですよ(笑)。ですから、普段はほんとうにほとんど自分ではお写真は撮りません。
旅行に行っても、お写真よりは記憶にしっかり残したい方なので。
それにグラビアのように綺麗な方なら、高梨さんは普段からたんと撮ってらっしゃるわけですから・・・きっと他の理由があるのでしょうね。
カメラを向ける訳を知りたいと、わたくしも思います。

eromania様
物語の中で、日常の一分とおなじ一分を描くのはなかなか大変なことだとこの物語を綴りながら実感しております。
ほんの少しの息づかいすら、わたくしの筆からは滑り落ちてしまって・・・。

なんでもない時の会話を楽くしてくださる男性は、やっぱり素敵ですものね。

2007/02/22 21:21| URL | 祥子  [Edit]
いいですね
読んでてすごくゆったりと温かい気分になりました
キス・・・本当に素敵です
私はたくさん愛する人と唇を重ねたいですね
こんなにゆっくりした時間を過ごしても
身体はもしかしたら早く・・・とさけんでるかもしれませんね
今週末いよいよ復活します
本当に今回は祥子さんの川柳のおかげで私にブログを書きたい気持ちを引き立てていただきました
ゆっくりのんびりやっていこうと思います
これからもどうかこんな私ですがお付き合いください

2007/02/22 21:42| URL | ななみ  [Edit]
子供達が大きくなると、撮られる事を嫌がるので、家族の写真すら、なかなか撮る事がなくなります。私が記録に残したくて無理やり撮る位。
ましてや、カメラを私に向けてくれる事なんて皆無になっていました。
だから、えっちな写真ばかりでなく、風景の中の私を丁寧に撮ってもらえる事が、最初は恥ずかしかったけれど、嬉しくて…。
今回の旅行でも”これは遺影に使える程、素敵だな”なんて言い合ったりして。
それこそ、お互いの老後の楽しみ、コレクション!

2007/02/22 22:03| URL | るり  [Edit]
東京は遅ればせながらの冬
そんな雨と気温の日が続きますね。
皆様、体調を崩されたりしていませんか?

ななみ様
セックスのためのキスじゃなくて、キスを楽しむためのキスって大人だけの贅沢のような気がしませんか?
身体が潤っても、それでも素知らぬ風をして彼を焦らしたりして♪
復活楽しみにしています。
ほんの少しでもきっかけになれたのなら、とても嬉しいです。無理をしないでマイペースで続けてくださいね。

るり様
最近は携帯にまでカメラが付いているせいで、写真がとても身近になっているような気がします。
写真を撮るというのも習慣なのでしょうね。
遺影・・・いつ使うことがあるかわかりませんが、モノトーンの素敵なものを、1枚撮っておきたいと思っています。
そんなことをふと考えてしまう年齢なんですね。


2007/02/23 07:40| URL | 祥子  [Edit]
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