2ntブログ

SnowWhite 11

「1つだけお手伝いをお願いしてもいいですか?」
「ああ。」
「囲炉裏の煮物を見て頂けませんか?お出しが上に乗せた昆布に掛かっていなかったら、もう火から下ろしていただきたいんですの。」
おやすい御用だよ、そういって囲炉裏に近寄られます。
大柄な高梨さんだと本当に数歩の距離でした。
お願いをしたまま、わたくしはくちなしの実で美しく黄色に染まった栗きんとんのためのサツマイモの煮え具合を竹串で確かめておりました。すっと通った竹串を引き抜いて唇に当てて火の通りを確認します。
「これは、旨そうだな。」
「なんていうことのないお野菜の焚き合わせです。今日はお時間がなかったので、いくつかは一緒煮にしたんです。お出しの具合はいかがですか?」
お鍋の中には里芋・蓮根・人参が入っていました。筍と手綱こんにゃくは別のお出しですでに煮含めてありました。
「もういいころだろう。下げればいいのかな。」
「はい、こちらにお持ちいただけますか?」
「おう。」
そうおっしゃるなり、高梨さんは鍋の蓋を閉じてそのまま鍋の手を掴みました。

いくら手元に火が当たっていないとはいえ、長時間煮続けていたお鍋です。
「あぁっ・・・そのまま持ったらだめ、熱いわ。」
「ははは、これくらいは大丈夫だよ。」
その言葉通り、高梨さんは大振りな両手鍋を持ち上げたのです。
熱いそぶりも見せません。
「どこに置けばいいのかな?」
「そこの隅にお願い出来ますか。」
先ほどの酢蓮の場所とは少し離れたところに、煮物鍋を置くための厚めに新聞紙を敷いたコーナーを作っておきました。
すでにそこにある3つほどのお鍋のその並びに、高梨さんは焚き合わせの鍋を並べたのです。

「ありがとうございます。ね、手を見せて。」
わたくしは、高梨さんの手を取って冷たい水で絞ったタオルで指先を包んだのです。
「大丈夫だ。手の皮はしっかり厚いからな。」
「もう、シャッターを押す大事な手を火傷なんかなさったら・・・困ります。」
見た感じ、火傷はしていないようでした。
でも、わたくしよりも幾分高い高梨さんの体温のせいでしょうか。指先を包んだ冷たいタオルは瞬く間に次第に人肌へと変わってゆくのです。
「本当に大丈夫だよ。祥子は、心配性だな。」
「だって・・・。」
「いまの祥子の顔を写真に撮っておきたかったよ。」
「ん・・いじわる。」
良く熱い食べ物が苦手な方を猫舌といいます。
わたくしは、猫手でした。
主婦として十数年台所仕事をこなしていても、指先の感覚は鈍くなる事などなくて、いつもお鍋の手を取ろうとしてアチっ・・と声を上げてしまったいたのです。
きっと先ほどのお鍋も、わたくしの手ではあんな風に持てなかったでしょう。
自分だけの感覚で、心配しすぎてしまったことが急に恥ずかしくなって、わたくしは高梨さんの前で拗ねてみせるしかありませんでした。 コメント
猫舌ならぬ猫手…祥子さんの可愛らしい一面をかいま見る事が出来ました☆
引き込まれる文章の中に自然と女性らしさが身に付いていく様な気がします
さりげない女性らしさと思い遣り…心掛けなければいけませんね。笑

2007/02/26 12:17| URL | 柚  [Edit]
柚様
恥ずかしいのですが、わたくしはいまだに猫手です。
熱いお茶碗もあまり得意ではなくて・・・。
十数年主婦をしても変わらないので、こればかりはどうしようもないのだと諦めています(笑)。
わたくしが女らしいかどうかはさておいて、お慕いする方のため・・・って考えて動くのは、効果があるかもしれませんわ。

2007/02/26 16:29| URL | 祥子  [Edit]
料理を作り、おいしいねって言いながら頂く。
これってSEXに似てますね。

そのプロセスや道筋で味を確かめつつ、美味しくできた
ものをゆっくりと頂く。

それが楽しめないのはいただけないな。
食べるという行為はやはり大事ですね。

2007/02/26 20:39| URL | eromania  [Edit]
楽しい
つまんなくないですよ。
その反対です。

祥子さんの人となりが、よ~~くわかります。

家事のことは、なんでもていねいにやるんだろうな。

それこそ、淑やかな祥子さんの立ち居振る舞いが
しのばれます。

その祥子さんが乱れるから、素晴らしい絵図になるんです。

楽しみに待っています。


2007/02/26 20:51| URL | くろす  [Edit]
美味しそう!
お料理も、割烹着姿の祥子さんも
男性なら、どちらも美味しそうだと思うでしょうね。
あ、女性の私でもその姿を
近くで眺めていても飽きないと思いますよ。

2007/02/26 21:07| URL | UMI  [Edit]
キャッ(^^*))((*^^) キャッ
 新婚さんしてるぅ・・・(笑)
すごく楽しそうです。
これは、さやかも頑張らなくちゃp(=^‥^=)q
もりあげどころですよね♪


2007/02/26 23:47| URL | さやか  [Edit]
お料理な淑やか
eromania様
わたくしは、お食事って大好きです。
美味しいからっていう意味もあるけれど、お食事はご一緒する方の品格が一番出るシーンだから。
お相手が素敵な方だって確認するためなんですから、心をこめて準備します♪

くろす様
よかったです♪ほっといたしました(笑)。
お外でつかの間お逢いしているだけなら、お姫様扱いも悪くはないですが、二人だけで過ごすのですからわたくしに出来ることはして差し上げたいですもの。
ギャップ萌え♪でしたのね。

UMI様
子供の頃、祖母がおせちの支度をしている姿を側でじっと見ていたことがありました。
その数年後には、祖母の隣で人参の飾り切りを手伝わされておりました♪
お料理ってそうして覚えるものでしたのにね。

さやか様
きっとその言葉を高梨さんに聞かせたら、『そんなつもりじゃないさ』って言って、お髭の下のお顔が赤くなるのを隠す為に、白雪のところに行っちゃいそうです♪
さやか様も、がんばです。

2007/02/27 07:53| URL | 祥子  [Edit]
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