2ntブログ

21:00 5

「どうぞ、靴のままで」 
その部屋は、多分・・・男性のオフィスとして使われている部屋のようでした。 
あまり生活感のないシンプルな部屋です。カーテンの開けられた窓からは、先ほど彼に声をかけられた美術館のあるビルが見えました。
「祥子さん、そこで濡れたコートを脱いでください」 
リビングとして使われている部屋の入り口には、コートスタンドがありました。
たしかにわたくしのコートは雨に濡れておりました。
男性が座っている白のキャンバス張りのソファーを、このままでは台無しにしてしまいます。
コートの下はスリップさえ着けていない・・・ランジェリー姿なのです。
「でも・・・おねがいです。何か羽織るものをいただけませんか」 
男性のシャツでもいいのです。このまま・・・ここでそんな姿でいなくてはいけないなんて・・・わたくしは考えてもいませんでした。
「この部屋は寒くはないはずですよ。さぁ」 
わたくしが逆らえない・・・あの落ち着いた声が響きます。
 
「自分ではできないんですか? 私がその釦をはずしてあげなくてはいけませんか、祥子さん」 
ゴアテックスのレインジャケットを脱いだ男性は、ネル地のシャツ姿でした。
ソファーから立ち上がるとゆっくりとこちらに歩いてまいりました。
「いや・・・」 
ヒールをはいて170センチを超えるわたくしよりも、なお大きい男性を前にうつむいたまま首を横に振りました。
「わかりました。後でお仕置きを覚悟してください」 
わたくしの前に立ちはだかった男性は、胸元から一つづつ釦を外してゆくのです。 
最後のダブル打ち合わせの内釦を外すなり・・・わたくしの肩から剥き下ろす様にコートの襟をはだけたのです。
「ん・・くっ・・・」 
抱きしめるようにしてコートを背中でひとまとめにすると、男性はふいにわたくしの唇をふさぎました。
「んん・・ん・・やぁん」 
縛められた様に両腕を後手にされ、ゴールドに輝くサテンのブラに包まれたGカップのバストを男性に差し出すような姿で、唇を貪られるのです。
「・・ぁは・・っく・んん」 
素肌に触れる男性のシャツの感触は、まるでやさしく愛撫するかのような暖かささえ感じさせたのです。
男性の唇は野性的なのに繊細で、わたくしの理性をすこしずつ奪ってゆくのです。
「ん・・美味しい唇。赤ワインが似合いそうですね」 
腕の力をゆるめると両腕からトレンチコートを抜き、無造作にコートスタンドにかけました。
男性の甘くて深い声に、わたくしはもう逆らえなくなっておりました。
「わかっていますね。そうです、その身体を隠さないでください」 
わたくしは両手を自然に体側にたらした姿をとらされました。
「きれいです。さきほどのエレベーターの中の残像よりももっと」 
男性はわたくしの周りを満足そうな表情を浮かべながらぐるりと回りました。
カメラマンとして美しいモデルの身体をたくさん見ているはずの男性の眼に、わたくしの身体がどう映っているのか・・・とても不安でした。
「熟した女性ならではの柔らかなラインと、この白くて肌理のこまかい肌。素敵ですよ、祥子さん」
 
シンプルなゴールドサテンのランジェリーは、一見水着を着ているかのようでした。
ただ違うのはその素材が薄く・・・美術館からつづく辱めに、堅く立ち上がった乳房の先端をくっきりと浮き立てていることでした。
ハイレグのパンティは慎ましくわたくしの秘めるべき場所を覆っておりましたが、サテンの輝きがその起伏を明らかにしておりました。
水着ではない証拠に、ガーターベルトはウエストを横切り、シャンパンベージュのストッキングを左右2カ所づつで吊り下げています。
そして足元はベージュに黒のポイントづかいのハイヒールが、そのままにされているのです。
「ゆるして・・・娼婦みたいな姿、いやです・・おねがい」 
ひそめる必要はもうないのに、わたくしの声はひそやかにかすれておりました。
「いえ、白い肌が映えてきれいですよ。」
わたくしの脇を通り抜けて背後につづくキッチンに男性は向かったようです。
羞恥に震え・・振り向くことも出来ずその場で立ち尽くしておりました。

「美術館ではじめて見かけたときからこの姿を堪能したかったのです。さあワインを楽しみましょう」 
戻って来た男性の手には、ムートンロートシルトのボトルとデキャンタとワイングラスが2つ握られておりました。
・・くちゅ・・・ちゅ 男性の手でランジェリー姿にされ立ち尽くしていた場所から、白いソファーまでほんの4・5歩でした。
なのに・・・わたくしの身体は淫らな音を隠すこともできないほどになっていたのです。
「ワインの薫りまで霞んでしまいそうなフェロモンですね、祥子さん」 
ソファーに先に腰をおろした男性は、わたくしを前に立たせてそう言うのです。
「やぁ・・・」 
グラスを並べワインとデキャンタをサイドテーブルに置く男性に、否定の言葉も出せずに・・・恥じらいの喘ぎで答えてしまいました。

「どれ」 
男性の長い腕がわたくしの腰を引き寄せると、指をふとももの合わせ目に差し入れるのです。
「あん・・・や・・だめ・ぇ・・」 
中指は折れ曲がり、パンティの裾をくぐってそのまま蜜を満たした狭間へとはいりこんだのです。
「こんなに濡らして」 
指を抜きわたくしの腰を解放いたします。
男性の眼の高さに差し上げられた中指は、蜂蜜の壷から引き抜いたばかりのように濡れ光っておりました。
「はじめての相手と、それもキスしかしていないのに、こんなになるんですね。祥子さんは」 
その指を舌を出してぺろっと見せつける様に舐めるのです。
「やめ・・て・・くださぃ」 
はしたない印をあらためて見せつけられ、薫りと味を確かめられる屈辱にわたくしはまた・・・淫らな愛液を溢れさせられてしまうのです。 
サテンのランジェリーは濡れるとわずかに色味を変えるのです。
微妙な色の違いを男性にさとられてしまわないか・・・気が気ではありませんでした。
「これではソファーを汚してしまいそうですね。困った女性だ」 
恥ずかしさに顔を伏せたわたくしを、いたずらっぽく光る男性の眼が覗き込むのです。
「ぃやぁ・・」 
顔を背けるだけで背にひろがっていた黒髪が、さら・・・と肩へこぼれかかります。
「ふふ、仕方ないですね。そこにお座りなさい」 
男性が指し示したのはソファーに座る彼の足元の<ラグ>でした。
わたくしは彼の足元にうずくまる獣のように、ソファーと同じオフホワイトの毛足のながいラグに横座りに腰をおろしたのです。
ヒールのパンプスを履いた足を投げ出して、わたくしは男性の膝にしどけなく上半身を預けて座っておりました。
室内の空調は適度に温められておりましたが、男性特有の少し高い体温を彼の脚はチノパン越しにわたくしの素肌に心地良く伝えておりました。

足元にわたくしを侍らせたまま、男性はポケットから出したソムリエナイフを器用に操ります。
ポッン・・・完璧に密閉されたボトルならではの軽快な音を一つ立てて、コルクが開けられました。
ワインの真紅に半ば染まったコルクをわたくしに差し出すのです。
そこからはムートンロートシルトならではの、スパイシーなブラックカラントの薫りがかすかに立ち上りました。
男性はゆっくりとデキャンタージュして、空気を含んだ赤ワインをグラスに注いで渡してくれました。
 
ガーネット・レッドの波が揺れるグラスを互いの目線に掲げた乾杯の後で、舌の上を転がす様にワインを味わうのです。
空気を含んだワインは、独特の渋味を上手に押さえ込んだ見事な味でした。
「おいしいわ とても」 
なかなか手に入れることの出来ないヴィンテージのワインの豊穣な味が、わたくしの警戒心をほぐす様にほんのりと酔わせておりました。
サイドテーブルの上で男性は手慣れた仕草でグラスをまわし・・・赤ワインを空気になじませます。
「これではまるで毛並のいいメス猫だね、祥子さん」 
ゆったりした左手の動きを止めることなくわたくしを見つめて言い放ちました。
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