蜜の悲鳴
彼女に早朝に起こされた麻のジャケットに袖を通した私たちをのせたタクシーは
見慣れぬ場所を走りはじめる
「勧修寺さん綺麗でしょう」
目の前の女性の声はいつもの滑らかさはない
ピアノのどこかのキーだけが抜けた様に
柔らかな声のどこか一音が微妙に消えている
「ああ、早起きをしたかいがあったね」
八重の蓮の花と同じ色の鞭の痕が
白いサマードレスの背中に隠れているはずだ
何度も悲鳴を上げる彼女を縛り上げた縄は
内側から赤みを増した白い肌に容赦なく食い込んでいた
まるで何年も会えなかった恋人を貪るように
心が飢えていた・・・彼女を求めて
花芯の奥の奥まで何度探っても
蜜にどれだけまみれても
眠りについたのが夜空が明るくなりはじめた時刻でも
まだ私は満足していなかった
「この後の予定は?」
私の心の中はもう二人きりの場所と麻縄に向かっている
まだ一時間と経っていないのに
「ちょっと遠いですが、貴船で川床料理でもいかがですか?
七夕のおまいりもできますし」
ゆっくりと池を巡りながら
彼女のキーの抜けた声がそれでも蝉時雨をくぐって私に届く
木立に囲まれたこの場所で
背中に残っているはずの痕をあばきたくなる
「それは粋だな。ゆっくりと川床で過ごすとするか」
「ね、よろしいでしょう♪」
私の気持ちを知ってか知らずか
彼女は日傘の影になった白い頬をゆるめた
眼の下に浮かぶ薄い隈が私の与えたものだと思うと
ほんの少しだけ気持ちが落ち着く
時間はゆっくりある
少しお酒を飲んで・午睡をむさぼり
あの宿へと帰ろう
行灯に浮かぶ彼女の白い肌を
今夜もこころゆくまで苛むために
彼女の蜜のような悲鳴に
まみれるために
- 以前に・・・
-
お越しいただいていたようなので
お伺いしました。
小説家??
エレガントでなおかつ淫靡な
Mの世界。
刺激を受けました。
よく行く京都の町並みの写真・・
イメージを膨らませやすくて
やはり写真もいいなと。
またのぞきにきますね。
2013/08/06 01:10| URL | ぱぱ [Edit] - パパ様
-
コメントありがとうございました。
お久しぶりでございます。
お邪魔していたのはもう4〜5年前になります。
時の過ぎるのは早いものです(笑)
これからもよろしくお願い申し上げます。
2013/08/06 09:38| URL | 祥子 [Edit]
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