夏の香り
ケヤキ並木のバス停の信号を渡り柔らかな土を踏みながら民家の中の畑地を進む
突然あらわれたのは
見渡す限りの向日葵
私と変わらないほどの背丈の花の中を
ここを教えてくれたあの女性の
つばのひろい帽子が揺れている
いつもの自宅に迎えにいった
レクサスの後部座席ではなく
ロードスターの助手席に腰を下ろしたあの女性の
薔薇を思わせる香りを感じただけで
太陽を直視したときと同じ目眩がした
向日葵の花畑は巨大な迷路
花と花の間をいくつか曲がると
あの女性と私の他にはだれも見えない
声すら聞こえないこの瞬間
私はあの女性の手を引き
唇を重ねた
「だめ・・・」
久しぶりのあの女性の唇の柔らかさに
私の唇はそのまま
すべすべとした首筋から耳へと
キスを繰り返す
「あん・・・ほんと・・に・・・だめぇ」
つばの広い帽子が足許に落ち
祥子さんの身体が
びくん・・・と震え
力が抜けたように私に委ねられたところで
唇を離した
足許の帽子をひろった途端に
レースのスカートの裾から女が香る
「あっ・・・だ・め・・」
もう我慢できない
彼女の手を掴んで車に戻る
ふたりきりになれる場所まで
あとどのくらいこの誘惑を堪えたらいいのだろう
久しぶりの望月さんの登場です
「夏休みが取れました。
一日だけですが、
どちらか行きたいところはありますか?」
礼儀正しいメールにお誘いしたのが
この向日葵畑です
まさか、ほんの数分見ただけで
車に連れ戻されるとは思ってもおりませんでしたが・・・
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