黒衣の情人 21
左右の手首を重ね合わせて二つ折りにした麻縄を掛けて括ってゆきます。綿縄とはちがう・・・しくっとした痛みが手首に走ります。吊って鞭を打ったわたくしの手首を心配して下さった長谷川さんなのです。先ほどと少しだけ違う位置を縛り上げておりました。
「ぁぁっ・・・」
「動くんじゃない。」
後ろ手だけかと思っていた縄が、胸元に回って来たとき思わず声を上げてしまったのです。鞭でひりつく背を麻縄が走る痛みもさることながら、柔らかく白い肌の上をしゅっと・・・強く引かれる麻縄は想像以上の痛みを与えるのです。綿縄のような一瞬の熱感ではなく、ほんの少しの動きでも小さなとげに刺され続けるような感覚が続くのです。
マットな黒のガーターベルトとストッキング・Tバックにパンプスを履いただけの姿のわたくしは、高手小手に縛り上げられておりました。
長谷川さんの麻縄は、練られ・鞣され・・・わたくしの身体をしなやかに括り上げておりました。麻独特の色合いは肌に溶け込み、まるでわたくしが自らの意志で腕を後ろに回し・・・淫らなGカップの乳房を突き出しているかのように見せました。
「麻の感触はどうかな。」
「ちくちく・・します。」
「ふふ、そうか。祥子の肌には刺激的過ぎたかもしれないな。それとも初めてではなかったかな?」
締め具合を確認するように長谷川さんは縄とわたくしの肌の間に指を入れようとなさるのです。
くい・・と引かれるたびに、ちりちりと肌を刺す痛みがわたくしを責めます。
「ちがい・ます・・はじめてです」
「見た目で言えば、やはり黒か赤が祥子のこの淫らな身体には似合うな。」
「あぁ・・ん・・ゆるして」
伸ばされた長谷川さんの手が縛られたことで一層前に迫り出したGカップの乳房の先端の鴇色の蕾をつまみ上げるのです。
「縄が好きか?僕以外の男に縛られて、縄酔いするほどに開発されたか?」
びくっ・・・わたくしは身体を震わせてしまいました。
他の男性・望月さん・・・に幾度となく縛られて晒した痴態まで知られていたような・・・そんなことなんてあり得ないのに・・・気さえして怯えました。
それに・・・縄酔いする身体になっているなんて信じられません。
縄を掛けられて強引に取らされる淫らな肢体に羞恥を覚えても、縄の感触自体に感じるなんて・・・そんなはしたない身体になっているなんて思いたくもありませんでした。
「長谷川さん以外の方に縛られるなんて・・・」
「ないか?縄の心得がある男なら祥子のこの身体と従順な態度を見れば、縄掛けしたくてうずうずするはずだ。」
「・・・そんな。」
「そんな?」
「わたくしは、そんなに節操のない女じゃありません。」
「そうか。ずっと逢わなくても僕の縄を覚えていてくれたということなのか?こんなに。」
「あぁぁっ・・」
羞恥によりあわせたふとももの狭間へ・・・Tバックごしに透けて見える茂みの中の真珠へ長谷川さんは指を差し入れたのです。
黒衣の情人 20
わたくしはソファーの前に・・・長谷川さんの足元に跪いていたそのままの場所に、両手で胸元を押さえたままでゆらり・・と立ち上がりました。「お仕置きが堪えているようだね。」
髪は長谷川さんの手で乱されたままでしたが、鞭の痕の痛みはまだ残っておりました。
いつもなら、痛みを痛みだけでわたくしに与えることを長谷川さんはなさいませんでした。あくまで気の遠くなるほどの快楽の代償か、淫楽と共に溶かし込む様にして与えられるのはずなのに・・・今回だけはどうもその不文律も違うようなのです。
<お仕置き>は正にその言葉通りのようにわたくしに与えられたのでした。
「手を下ろしなさい、祥子。」
険が有る訳ではないのに、有無を言わせない強い声が飛びます。
わたくしは、辛うじて胸元を覆っているサテンとレースから手を離したのです。
ファ・・サ・・ 足下に、真紅の花びらを散らしたようにランジェリーは落ちてゆきます。
痛みとご奉仕を差し上げる事しか許されていないはずなのに、わたくしのGカップの先端は明らかな悦びの印をあらわしておりました。
「ますます熟してきたようだね。綺麗だよ、祥子。」
ソファーに腰掛けたままで、長谷川さんは羞恥に揺れるわたくしの白い乳房を見上げながらそうおっしゃいました。
先ほどまで、わたくしの口唇の中で猛々しく昂っていた塊は、もう元の装いの奥に隠されていたのです。
「後ろを向いてごらん。」
わたくしは、その場で長谷川さんに背中を向けたのです。
ひりつく鞭痕が両肩から滑らかな白い背、Tバックのパンティのせいで剥き出しになったヒップの丘、ストッキングの上の剥き出しの太ももまで赤く這っているはずでした。
「すまないね。しばらくはパーティドレスは着られないな。まぁ、夏じゃないからいいだろう。祥子のその身体なら、剥き出しの肌よりも首もとまでぴったり覆ったシルエットのドレスでも充分にそそられるだろう。ドレスをこの手で引きはがしたくなる、今夜のスーツスタイルみたいにね。」
「ぃゃぁ・・・」
長谷川さんの視線が、鞭痕を這うのがちりちりした痛みで解る様でした。左の肩先からウエストのガーターベルトを通ってストラップ添いにヒップの丸みの下へ・・・そしてストッキングに区切られた反対の太ももへ・・・。
見られることでわたくしはまた・・痛みが身体の中へ疼きとなって溜まってゆくようでした。
「祥子。」
「はい・・」
ソファーに座っているとばかり思っていた長谷川さんの声が、思いがけず近くでして・・顔だけを振り向かせたのです。
「あぅ・・・」
微かに動いた左肩に合わせて揺れた左腕を、次いで右腕を後ろに捻り上げられたのです。
「動くんじゃない。」
わたくしの足元に流れるように落ちたのは・・・麻縄・・・だったのです。
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黒衣の情人 19
「また、上手くなったね。ずっと祥子のフェラチオを忘れられなかった。他のどんな女性にさせても、祥子ほど気持ちよくなれなかったからね。」ボクサーパンツに頬をこするほどに、わたくしは裏筋を根元まで甘噛みしてゆきました。
そしてまた先端の男性の敏感な合わせ目に向かって、今度は先ほどよりもすこしだけ強く、その分舌先の愛撫も加えながら根元から少しずつ頭を動かしていったのです。
「もういちど、咥えなさい。祥子。」
眼の前の塊は、手を添える必要がないほどに充分にそそり立っておりました。
自らの唾液に濡れ光る猛々しいその姿を見る事が出来ないわたくしは、見下ろす長谷川さんの瞳を見つめながら、ゆっくりと再び口腔内へと塊を飲み込んでいったのです。
ちゅぶ・・・
唇の内側まで唾液を溜めながら、規則正しく頭を上下いたしました。
強弱を付けるのは、唇の輪と・・・塊に触れる舌先の位置・・・だけ。
全ての経験を駆使して差し上げることのできる快楽を、余す事なく差し出したいと・・・その瞬間わたくしは願ってさえいたのです。
何度目のことでしたでしょうか。
喉の奥まで塊を受け入れたところで、わたくしの額に長谷川さんのひきしまった腹筋が触れたのが解りました。
そして彼のしなやかな上半身が・・・イラマチオをさせるかのように、わたくしの後頭部をそのまま押さえつけたのです。
「続けなさい。」
ん・・・んくぅ・・・
頭を動かすことはできませんでしたが、わたくしは舌先だけを使って長谷川さんを愛撫し続けておりました。
「・・っく・・・」
喉奥で声を漏らしてしまったのは、先ほど鞭に舐められた左の肩に長谷川さんの指が触れたからでした。ついで、右の肩にも・・・。
真紅のスリップのストラップと、ハーフカップのブラのストラップが乱暴に引き下ろされたのです。
喉奥まで突き入れられ口枷のようになった塊は、わたくしのほんの僅かな動きをも封じる力があったのです。
「・・ぁっ・・」
一段と強く、カシミアのセーターに後頭部を押さえつけられたと思った時にはブラのホックが全て外されておりました。
驚きのあまりに上げてしまった呻きの・・喉の動きすら快感だったのでしょうか。わたくしの口内一杯の塊はひくっと・・・大きく一度蠢いたのです。
「もういい。」
上体を起こされた長谷川さんは、口元をねっとりと唾液で濡らしたわたくしの頭をご自身の身体から引きはがしました。
突然肩先から引き上げられた身体から落ちそうになるブラを、わたくしは咄嗟に両手で押さえたのです。
それほど大胆にブラとスリップのショルダーストラップは引き下ろされていたのです。
唇のまわりの淫戯の証を拭う事もできないまま、わたくしは顔を伏せました。
「立ちなさい。」
先ほどまでの快楽を表した人と同じ方とは思えないほどに、長谷川さんの声はとても冷静でした。
黒衣の情人 18
「ああ、祥子のフェラチオはほんとうにいいな。ほら、もっと美味しそうにしゃぶってみせなさい。」ちゅぷ・・・ 塊の太さの分だけわたくしの唇は開いてゆきます。口腔に溢れていた唾液が舌先を伝って・・・長谷川さんの上に滴り・・・唇の作る輪が塊の根元の茂みへと進んでゆくのを助けるのです。
長い腕を伸ばすと、長谷川さんは左右に分かれてわたくしの表情を覆う長い黒髪を掴み左へと流しました。口唇愛撫の粘膜の触れ合う快感だけではなく、自ら技巧を尽くすわたくしのはしたない表情までも、この方は望まれるのです。
わたくしは、髪を除けて下さる長谷川さんの手の動きにあわせて、しばらくの間上目遣いで彼を見つめながらフェラチオを続けました。
「こんな風に祥子に見上げられたら、あの強面の石塚Jr.でもひとたまりもないだろうな。」
長谷川さんが、石塚さんとのことを本気で全て聞きたいと思っているわけではないのは・・・わたくしにも解っておりました。
ご自身もアブノーマルな世界でしかご満足を得られないこの方は、プライベートを守る事の価値を、きっとどなたよりもご存知のはずでした。
他の方との秘められた褥での出来事を無闇に知りたがったり、ましてやその事実を仕事の駆け引きに利用するような卑怯な方ではないと、わたくしは信じておりました。
仮にわたくしが石塚さんとのことをおもしろおかしく簡単に口にした瞬間に、長谷川さんはすぐにその一夜を切り上げてしまうことでしょう。
多分・・・石塚さんのことは<言い訳>なのです。
それも夏のあの夜、東京湾の上を滑る様に進む客船のパーティールームでお逢いした時に、わたくしが長谷川さんに与えてしまった<言い訳>でした。
どんなことがあろうとも・何もなかろうと、わたくしが決して石塚さんとの関係を決して口にすることはないとご存知だからこそ・・・とことん責めるための理由としてお使いになっているのです。
同時に1人の女としての価値をこの方に試されているのだと、わたくしは感じておりました。
「もっと、出来るはずだね。祥子」
上顎の鼻腔へと繋がるすこしざらついたポイントを撫でる様に鈴口が通過しても長谷川さんは許しては下さいませんでした。
奥へ・・もっと奥へと・・・熱い塊は入り込んでまいります。
わたくしの唇が茂みに埋まり喉の奥に長谷川さんの先端が触れて・・反射的に締まる喉が彼のものを扱くようになることを・・・望んでいらっしゃるのです。
ちゅ・・く・・・ わたくしは一度、唇がカリの裏に当たるまで頭を引き上げました。
そして、舌先を裏筋にそってひらめかせながら、改めてゆっくりと頭を下げていったのです。
ごくん・ごくんと・・・長く大きく反り返った塊を飲み込むように・・・。
「っ、そうだ。ああ祥子の口はまるで性器だな。いいぞ。」
んくっ・・・ 喉奥を突かれて噦く寸前の引きつけのような喉の動きが、長谷川さんを締め付けるのです。喉奥の僅か数センチの分だけを3度深く飲み込むように頭を上下させて・・・わたくしは、またゆっくりと頭を引いたのです。
「祥子、この唇と喉を何人の男に楽しませた?」
ぺちゅ・・・ わたくしは答えませんでした。
代わりに頭を横に倒して、はむはむ・・・と裏筋の左右を唇で覆った前歯で甘噛みをしてみせたのです。
反りの一番大きな太いところが、長谷川さんが感じる場所でした。
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