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初雪 24

「新車なのでしょう」 
さきほど乗り込む時に見えたタイヤは、ほとんど走行してないもののようでした。
「冬に祥子さんをご招待するからと、石塚さんが用意したんですよ」
「えっ・・わたくしのために?」
先ほど乗り込んだのと反対側のリアドアが開きました。
「お待たせ。さぁ行こうか」 
石塚さんが乗り込んでいらっしゃいます。
「助手席にいらっしゃればいいのに」 
決して狭いわけではなかったのです。が、せっかく開いている助手席でゆったりなさったらいいのに・・・と思っておすすめしたのです。
「ん そうですね」 
石塚さんは少し考える風で・・・リアのドアを閉めると助手席に座られました。

暖まった室内でわたくしたちはコートをラゲッジスペースに移して、車はゆったりとスタートしたのです。
「ETCはセットしてあるからな」
「はい」 
結城さんは車幅感覚を確かめる様に、ゆっくりと公道を走らせてゆきます。
「関越でよろしいですね」
「あぁ、嵐山あたりで一度休憩しよう」
「わかりました」 
初めての車とは思えないスムースさで、女性運転手の結城さんはレンジローバーを操作していました。
「結城さんは運転手さんのお仕事をなさってるの?」 
一年のうち最も空くといわれる元旦の都内の道はスムースでした。
「ええ、僕の車をね」 
答えてくださったのは彼女ではなく山崎さんでした。
山崎さんのすべすべとした手はわたくしの右手を愛で続けていました。
「社用車を運転してるんですか。何を使ってらっしゃるの?」
「山崎はね、ベンツに乗ってるんですよ」 
石塚さんが助手席から振り返ります。
「ハンドルが逆でもこんなに簡単に乗りこなすんですね。すごいわ」 
レンジローバーは右ハンドルでした。
「結城くんの運転の技術はすごいですよ。見た目と違ってね」 
買ったばかりの新車を、当然のように預けるのです。石塚さん・山崎さんが彼女の技術を認めているのは間違いないでしょう。それもきっとわたくしを委ねて先に発った美貴さんも・・・そして望月さんも同じなのでしょう。
「美貴さんたちとご一緒できたらよかったのに。この車でしたらセルシオとでもクルージングできましたでしょう」
「美貴と一緒だったら、この車に祥子さんをご招待できないじゃないですか」 
空いた都内の一般道から関越道へ入って行きます。石塚さんの愉快そうな声が響きました。
「美貴も望月くんも祥子さんを離さないでしょうからね。ですからゆうべ3人で打ち合わせをして、美貴に先に行って準備してくれって頼んでおいたんです」 
あのあと3人で・・・きっと望月さんも合わせて4人で打ち合わせしていたのはこのことだったのです。美貴さんがいらっしゃればわたくしはセルシオの後部座席を選んだでしょう。山崎さんがおっしゃるとおりです。
「祥子さんを僕たちだけのものにできるのは移動時間しかありませんからね」
カチカチ・・・ウインカーの音がして嵐山のサービスエリアが近づいてきました。
「あそこまでなら途中1回休憩くらいの予定だろう」 
駐車スペースを探す結城さんに石塚さんが質問をします。
「そうですね」 
抑揚の少ない声が帰ってきました。

「お疲れさまでございます。出発は10分後くらいでよろしいですか?」
「ありがとうございました」
「よろしく頼むよ」
山崎さんはわたくしにラゲッジスペースからコートを取り出し、手渡してくださいます。
「すぐ行くよ」 
石塚さんは結城さんになにごとか指示をされているようでした。
このペースなら思った以上に早く着きそうです。
わたくしは手を離して下さらない山崎さんの腕に沿いながら・・・サービスエリアの化粧室に向かいました。

化粧室を出ると山崎さんと石塚さんが待っていてくださいました。
「コーヒーでもいかがですか?」
つい先ほどホテルでいただいたばかりです。
「いいえ、結構ですわ。飲み物はなにか買っていったほうがいいのかしら?」
「お茶とミネラルウォーターでしたらバゲッジスペースに用意してありますよ」
「それにワインもね」 
石塚さんがウインクしながらおっしゃいます。
「もう、運転をしてくださる結城さんに申し訳ないわ。彼女には何か?」
「先ほど何か買っていたようですから大丈夫でしょう」
車までほんの僅かの距離なのに、今度は石塚さんが手をとってくださるのです。
「さぁ、結城くんが待ってます。行きましょう」

車に戻るとバゲッジスペースにレースのカーテンがかかっていました。
石塚さんがリアドアを開けてくださいます。
「祥子さんが真ん中ですね」 
今度は石塚さんも後に乗ってらっしゃるのでしょう。
先ほどまでの話からしたら、お二人がわたくしと一緒にこちらの車に乗られたのは・・・これが目的だったのでしょうから。 
ただ、運転手は女性の結城さんなのです。
彼女の眼のあるところで悪戯はあっても、ここでひどく淫らなことをされることはないと思っておりました。
「出発してもよろしいですか?」
「あぁ、頼むよ」 
石塚さんが声をかけました。ゆっくりと駐車スペースから車が出て行きます。

わたくしの右には山崎さんが、左には石塚さんが座ってらっしゃいました。
後部座席は少し後に下げられていたのでしょう。先ほどよりも足元がゆったりとしていました。
BGMはサックスの音も軽快なジャズのCDのようでした。
「ポール・デズモントですか?」 
Take Fiveが軽快に始まりました。
「そうです。祥子さんはジャズもお詳しいのですね」
CDも石塚さんのセレクトなのでしょうか。
「石塚さんはジャズ好きなんですか? あっ・・ん・・」
彼に向き直ったわたくしの右肩を大きな手で押さえると、唇を重ねたのです。 コメント
卯月ついたち…
今日から4月。絶好のお花見日和です。これから彼と出かけて参ります。ドライブデート私もしたいです。2人でいる時の万が一の事故を心配してくれる彼とは出来ないのです。
昨日は”外科室”ロケ地の小石川植物園で、狂気の様なレンギョウと桜を楽しんできました。夜には経緯をUPしようかと。男性心理は分かりません…。また、何か起こらないと良いのですが…。

2006/04/01 12:10| URL | るり  [Edit]
NoTitle
こんばんは。

バゲッジスペースにカーテンが引かれています。しかし、運転席には結城さんが・・・多分結城さんは何があっても冷静に運転されるでしょうが。その先に何が待っているのでしょうか。これも想像が当たるかなと、楽しみです。

四人の男性に囲まれ、その他にも多くの男の方との出会いがあり、ある意味では祥子さんは、淫乱?・・・しかし、見方を変えれば慈母観音様。どちらでしょうか。
ご存知と思いますが、隠語で観音様は・・・男を包み込み、子を産み、本当に観音様です。
与えられた愉悦を、托鉢で得た食べ物のように、好き嫌い無しに食べ尽くす、もしかしたら性の修行僧でしょうか。

明日は日曜日です。今日は少し夜更かしをします。


2006/04/01 19:51| URL | masterblue  [Edit]
はらはらと散る桜
早かった今年の桜はもうはらはらと散り始めているようですね。
週末に盛りの姿を見せてくれる桜。
皆様も楽しまれているのでしょうか。

るり様
れんぎょうの黄色の鮮やかさと薄紅の桜のコントラスト。
きっと美しかったことでしょうね。
その中の美しいるり様の後ろ姿を思い浮かべてしまいました。
素敵な夜をお過ごしになれましたか?

masterblue様
そうですね・・・事実だけを並べ立てれば、わたくしはただの淫乱な女でしかないのかもしれませんわね。
好き嫌いなくというよりは、好きな方とだけ・・・というのが本当のところかもしれません。なぜなら、わたくしには好みの男性以外は<男>としては存在していないものですから(笑)。
などと書くと、傲慢な女だと非難されてしまいますかしら。
男の方もそうかもしれませんが、人間性が最も出るのが行為の時・・・そのように思うのです。ですから、大人の女として男性の鑑定にはこんな時間が必要なのですわ♪

そして、もう一つ。求められることに弱いのも・・・わたくしなのです。
求められるなら与えて差し上げたい。
お与えしたなら満足していただきたい。
わたくしを求めてくださった方なのですから・・・。

2006/04/02 13:05| URL | 祥子  [Edit]
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