SnowWhite 8
そう聞いて、わたくしは少しだけほっとしたのです。でも・・・。
「正直に言えば、僕に愛されている祥子さんもフィルムに納めたくなるかもしれない。でも、それは祥子さんの愛おしい一面を切り取るためで、よく市場に溢れている破廉恥な写真がほしいわけじゃない。」
わたくしは、即答できませんでした。
「現像はここの暗室で僕自身がする。アシスタントにも、見せない。祥子さんを撮らせてほしい。」
あまりに真剣な声でした。
はしたないお写真なら、わたくしの許しなど得なくても・・・忘我の境地の間に黙って撮る事もできるのです。こうしてきちんと了解を得ようとする以上、彼のフォトグラファーとしての望みなのでしょう。
高梨さんのあの深くて丸い声にここまで口説かれては、わたくしは拒否することなどできはしませんでした。
「わかりました。わたくしで宜しければ・・・。」
「ありがとう。祥子さんはいま一番興味ある被写体なんだ。」
「もう、恥ずかしいわ。お写真なんて久しぶりですもの。それでいつ、撮りますか?」
こちらに居る間にそういうお時間を作って撮影をするのだと、わたくしは思っておりました。
「いや、祥子さんは普通に過ごしていてください。カメラなんて全く意識しないでいい。ん、僕が少し熱く見つめているくらいに思っていてくれればいいよ。」
「緊張しちゃうわ。」
「ははは、祥子さんがそんなこと言うとは思わなかったよ。」
「あん、いじわるね。」
「そう。そんな顔も魅力的だよ。」
そういって、両手でフレームを作って覗き込む。
「ふふふ、モデル代たくさん頂かなくちゃいけませんね。」
「あはははは、やられたなぁ。」
最後の珈琲を飲み干して、ゆっくりと伸びをする高梨さんはとても寛いで見えました。
都会の街でお逢いする彼よりも、もっと。
「風呂の準備とか、そういうことはいつも通りだから僕がするよ。料理だけは頼む。」
「はい。」
「台所にあるものは、道具も食材も好きに使ってくれ。足りなければ、明日買いに行ってもいいしね。それと、表の畑の野菜も必要なら取ってくる。言ってくれ。」
「ええ。わかりました。」
「ふたりと一匹の気ままな年越しだ。のんびりしよう。」
おっしゃる通りでした。何かに縛られることもない、自然の中でのゆったりとした時間。
わたくしたちには、一番必要で贅沢な時間なのでしょう。
「さて、もう始めるかい?」
檜の柾目板に長針・短針だけが回るシンプルな時計は、そろそろ2時をさしていました。
「そうですね。あの、何か召し上がりたいものがございますか?」
「好き嫌いはないから大丈夫。出来たら、和食がいいかな。」
「ふふふ、珍しいのね。」
「美味しい日本酒を買ってある。」
「わかりました。あ、それからお雑煮はどんな味がお好みですか。」
「うちは醤油味のすまし汁だけど。」
「わたくしのところと一緒ですね。よかった。」
「けんかしないで済みそうだね。」
「ふふふ・・」「はははは・・・」
そうでした。
お料理についてゆっくりお話するなんてことも、いままではなかったのです。
1つずつ共通点を見つける度、わたくしたちはまるで少年と少女のように笑みを交わしたのです。
-
我が家は一日目と三日目は白みそ。二日目はすましですね。
餅は丸もちです。
私は料理好きだからどんなものか楽しみです
2007/02/23 08:07| URL | トン [Edit] - お写真ですか?
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高梨さん
さやかのブログにアップできるように
一枚・・・くださーい♪
って、アシスタントにも見せないんじゃ・・・ダメだろうなぁ。
|||(-_-;)||||||
2007/02/23 13:47| URL | さやか [Edit] - お天気の優れない週末
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2月も終わりになって冬が駆け足で追いついてきたみたいです。
でも、まだ底冷えにならないのは・・・やっぱり異常気象なのでしょうか?
トン様
2種類のお雑煮は、2人の生まれ故郷の証ですね。
普通どちらかになってしまうことが多いのに・・・。
二つの味を受け継げるトン様とそのご家族はとても素敵だと思います。
さやか様
まさか、わたくしの写真でブログの記事を書こうなんて思ってないですよねぇ?
うそ・・・そうなんですか。
それじゃ、絶対門外不出だって、高梨さんに言っておきます。
そうじゃないと、カメラ全部壊しちゃうわよ!って(笑)
2007/02/23 20:24| URL | 祥子 [Edit] -
こんばんは。
とても贅沢な一時ですね。
浮かぶ風景…お二人の会話…手作りのお野菜…
今年の夏の連休は【癒し】をテーマにプランを立ててみようかと…
私の場合、旅行にも使える大きなbagを買う事が先でした…笑。
イメージばかり膨らんでしまいますぅ…
2007/02/23 22:03| URL | 柚 [Edit] - うらやましい
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とても和やかな、明るい展開ですね。
私もしたいですね、こんな贅沢な空間を
祥子さんと過ごせたら・・・・・・
それでも、写真の伏線にはドッキリですね。
プラチナものですね。
祥子さんの写真。
欲しい・・・・・・
私も撮りたい・・・・・・・(笑)
プロではないですよ、好きなだけのアマですがね。
それも、桜や薔薇しか撮っていないカメラで
祥子さんを(笑)
私の重大な転換期がきたか?
(笑)
2007/02/24 00:03| URL | くろす [Edit] - 管理人のみ閲覧できます
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2007/02/24 00:13| | [Edit] - 柚様
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もう、GWや夏休みの企画ですね。
わたくしが好きなのは、出来るだけ少ない支度で長い旅・・・なんです。
えっ、これだけ?っていうくらいの荷物で1週間のリゾートなんてカッコいいと思いませんか?
2007/02/24 00:21| URL | 祥子 [Edit] - くろす様
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おかえりなさいませ。
冬の古都はいかがでしたでしょうか。
お写真は・・・わたくし自身がほとんど執着がないもので、高梨さんをはじめ多くの方が欲しがることが実はよく理解できていなかったりするんです。
まったりとした時間に、ときおりちらっと横切るすべてを知っている男と女のセクシャルな雰囲気。
楽しんでいただけているなら・・・ほっとしています。
2007/02/24 00:35| URL | 祥子 [Edit]
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