第九 合唱付き 3
「このスパンコールがずっと僕を幻惑していたんだよ。客席の暗闇でも、祥子さんの魅力的なバストを感じさせてくれたからね」背に回していた右手を胸に・・・あてがうのです。
「はぁ・・・あっんん」
ニットの上から・・・ランジェリーごしでさえも熱く柔らかい男性の掌に、ぴくん・・と身体が勝手に応えてしまいます。
声を同じに、わたくしを抵抗できなくしてしまう・・・男性の魔法。
「柔らかいな。手のひらに余るこの量感、あの時のままですね」
左手で逃れられない様にわたくしの肩を抱き、右手は容赦なく乳房を揉みしだくのです。
「ぁぁっ・・・あ・はぁん・・」
今夜の薄いレースのランジェリーは、男性の手にすでに堅くしこった乳首の感触を伝えているに違いありません。その羞恥がわたくしをさらに駆り立てるのです。
「相変わらず敏感だ。それにこの薫り、もうフェロモンをまき散らしはじめてるんですね 祥子さん」
わたくしの耳元に鼻を寄せ・・・わざとくんくんと嗅ぐ真似をするのです。
「やめ・・て・・おねがい、恥ずかしいわ」
男性の胸に顔を埋めるようにして、視線を避けるしかありません。
「その白い肌に他の男の付けた印などないでしょうね、祥子さん」
タートルネックに覆われた首筋からなだらかな胸元への白い肌理の細かい肌は、ほんの少し強く口づけただけで紅い印を残してしまいまねない場所なのです。
「い・いえ・・ないわ」
頑是無い子供がいやいやをするように首を振って否定をしたのです。いまは、どなたの付けた痕も残っていないはずでした。
「こちらを向きなさい。祥子」
両手で肩を持ち逞しい胸からわたくしを引き離すと、男性の声がそう命じました。
「今夜、その恥辱にまみれた君の顔が見たかったんです。隠すんじゃありません。わかりましたね」
「・・・は・い」
「違うだろう、祥子。きちんと言いなさい」
「は・・ぃ・・申し訳ございません。ご主人様」
なぜ・・・わたくしはこの方の声に命じられると<ご主人様>とお呼びしてしまうのでしょう。決して主従の関係を誓わせられた訳でもないはずなのに。
「いいコですね。さて今夜のランジェリーを祥子の口から説明してくれませんか」
あの時と同じ・・・羞恥を感じずにはお答えできないような質問がはじまったのです。
「説明なんて・・できません」
俯こうとする顎を捉えられ、わたくしは彼から視線をそらすことを許されなくなってしまいました。
「出来ない。そう言ったらどんなお仕置きが待っているのか解っていますね、祥子」
昂ったところのない冷静な声でそう告げるのです。
「お仕置き・・・いやぁ・・」
この方は縛ったり・鞭を振るう訳ではないのです。心と精神を真綿で締め上げるような男性のお仕置きは、わたくし自身が虜になってしまいそうな・・・怖さがありました。
「今夜はいくらでも時間がある。きちんと出来るまでお仕置きを繰り返してもいいんですよ、祥子さん」
有無を言わせないあの声が・・・わたくしを追いつめます。
「おねがい・・です・・酷いこと・しない・・で」
瞳に宿る怯えの陰は男性の嗜好を一層刺激してしまうのかもしれません。
「それなら素直に説明しなさい。簡単だろう、身に付けているランジェリーがどんなに男をそそるものなのかを説明するだけだ」
「そそる・・・なんて」
「デートでなければセクシーな下着を身につけないなどという愚かな小娘ではないでしょう、祥子は」
今夜はコンサートで第九を楽しみ軽くお酒をいただいて自宅に戻る予定でした。
そんな時でもきっと男性を満足させるものを纏っているはずだと・・・彼は言うのです。
男性の脳裏に浮かんでいるのは、偶然に出会った夜に身に付けていたゴールドに光るサテンのランジェリーなのでしょう。嬲られ愛液を滴らせるとブラウンに色合いを変えるはしたない下着。
「・・・・ぃゃぁ・」
「すれ違うだけでふっと漂う色香は男と逢う・逢わないに関わらず身に付けたセクシーなランジェリーの賜物でしょう。それも高級で上質な素材でつくりあげられたものだけ。ちがいますか?祥子」
こんな風に眼を見つめられたままで、わたくしのランジェリーに対する思想を口にされるとは思ってもおりませんでした。
ただ違うのは・・・決して男性を籠絡するためだけに選び・身につけているのではないということなのです。
「聞かせなさい。君の口から聞いてから、この眼で確かめさせてもらうのが楽しみなんだよ。この前よりも易しいだろう、さぁ!」
この前は、男性の前で官能に濡れそぼったからだの状態を告白しなさいと・・・強要されたのです。とてもできるものではありませんでした。今回はランジェリーです。言葉にするのは・・・それに比べれば容易かもしれません。
「ターコイズブルーの・・・リバーレースのセットです」
顔をあおのけられたままでしたので、瞳だけを伏せて囁くほどの微かな声で語りはじめました。
「何を身に付けているんだい」
「スリップとブラジャーと・・・パンティーと・・・ガーターベルトです」
「ほぉっ・・・祥子はいつもガーターだね」
「いえ・・そんなことは・・・」
以前にも男性にこのことを指摘されたことがあるのです。決して毎日ガーターストッキングなわけでもないのに、なぜか身に付けた日に限ってこんな風に男性に出会ってしまうのです。
先ほどこの方が口にした・・・ランジェリーの効果のせいなのでしょうか。
「スリップは透けて見えるものか?」
「・・・わかりません。全て薔薇柄のレースで構成されたものですから」
「ふふっ 肌が透けて見えるな。ブラはどんな形なんだ」
「普通ですっ・・・フルカップのレースだけのものです」
Gカップのバストは、それ以上の大きさを強調する必要などないのです。
柔らかにシルエットを整えるためにストレッチリバーレースだけで作られたカップが、一番つけ心地がいいのです。日本製の幾重にも不織布を重ねたものは・・・身体の変化を響かせない効果はありますが・・・わたくしには不要なボリュウムを加え過ぎるので好みではありませんでした。
「イタリア製だね。相変わらず祥子の下着は趣味がいい」
「なんで・・・そんなことまで」
「私はファッション写真も撮るんだよ。仕事上の知識の一つだよ」
ふっ・・と唇をゆがめるような笑みを浮かべます。
「それにね、さっき手のひらに祥子の大きくなった乳首を感じたからね」
「いやぁ・・・」
既に身体は、男性の与える淫らな刺激に反応してしまっていることを知られてしまったのです。
「続きです。パンティはいつも通りのTバックなのかい?」
「・・・は・い、でも・・・いつもじゃ・・ない・・です」
「いつもじゃなくても、僕は君に出会った二度とも祥子の白い尻をこうして下着を付けたままで嬲れるわけだ」
背の手を無遠慮に腰に下ろすと・・撫で回すように腰を撫で、ぐいっ・・と掴み上げるのです。
「あうっ・・・」
「もうパンティの色が変わるほどに濡らしているのか?」
「そんなこと・・・」
「見ればわかることだ。嘘をつけばお仕置きをする。もう一度聞くよ、祥子。もう濡らしているのか?」
「・・・は・ぃ・・・」
色が変わるほどではないにせよ、服を着たままなのに、わたくしのガーターストッキングの上の内ももはもうしっとりと・・・ぬめりを帯び始めていたからです。
「いいコだ、祥子。ここで・・僕の前で服を脱いでご覧。ゆっくりとストリップをするんだ」
「・・や・ぁ・・できませ・・ん」
男性の目の前での脱ぎ着など、もっともはしたない無防備な姿を晒すなんて・・・
わたくしにとって身支度は、男性の眼の届かないところで済ませるものなのです。
「もう こんなになってるんだ」
わたくしの手を男性の前に・・・押し付けるのです。そこは明らかに堅く昂った塊がひくひくと蠢いておりました。
「強姦のようにパンティを引きちぎって犯されたいか? そうしたいのを堪えているんだ。もう一度言うよ、祥子。僕の目の前でストリップをしてみせなさい」
男性の声はほんのわずかの高ぶりも感じさせない、いつもの深く甘い声なのです。切羽詰まった様子もなく淡々とわたくしに命ずるのです。
でも・・・ストリップなんて・・でき・・な・いわ。ふるふるとわたくしは首を横に振りました。
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2006/03/06 15:39| | [Edit] - わたし書きます。
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祥子さんコメントありがとうございました。
ごめんなさいね、勝手なおねがいでしたね。コメント載せさせていただきました。すぐにはできないと思いますがアナルの画像にわたしなりの思いを書き込みます。
文章ってすごいですね、いろいろ思いがひろがってSEXより感じる気がします。考える時、しらずしらず指が下の方にいってしまいます。 よろしくおねがいします。
2006/03/07 06:53| URL | kuritorisu [Edit] -
kuritorisu様
喜んでいただけたようで、ほっといたしました。
わたくしにとってもはじめての経験でした。
ありがとうございました。
どうぞこれからは・・・思いのままの言葉を綴ってくださいませ。
ブログとはきっとそういう場所なのですから。
2006/03/07 08:02| URL | 祥子 [Edit] - 管理人のみ閲覧できます
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2006/03/07 08:31| | [Edit] - またまた場違いで・・・
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祥子さん、おはようございます。
またまた、場違いなところでのコメント、申し訳ありません。
ムーンナイト・アフェア、昨夜読み終わりました。
S男性を、よく理解いただき、暖かく描いていただいて、有難うございます。受けて頂く側が理解して頂いていることに安心しました。
素晴らしい一夜が書き尽くされ、祥子ワールドに完全に引き込まれました。縛り、鞭そして玩具・・・取り揃えて出てきて、楽しめました。
受けて側から書かれていることで、粗野にならず、濃厚な読後感でした。
最後の手紙で、Mでしょうかと自問されておりますが、気になります。これからどうM性を開発されてゆくのでしょうか。
話は変わりますが、祥子さんのGカップのバストの揺れを表現している「たゆん」、とても好きなことばです。
最後に、庭で立ち木にY字形に縛られ、月光の中で曝されている祥子さんの白い裸身を妄想しています。何もせず、月光の中でそこだけ浮き上がる裸身、それを見ながらゆっくり飲めたら・・・夢です。
やっと追いつきました。第九、楽しみです。
2006/03/07 10:04| URL | masterblue [Edit] - NoTitle
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masterblue様
「ムーンナイト・アフェア」はご堪能いただけましたでしょうか。
いつも丹念にお読みくださってありがとうございます。
とても・・・うれしく、masterblue様のコメントを楽しみにしております。
「ムーンナイト・アフェア」は<淑やかな彩>をはじめてからいつかは書かなくてはならなくなると覚悟をしていたモチーフでした。
前戯の一部としてのソフトSMではなく、ハードではないにせよ・・・ある程度の意志をもって行われるSMという行為・・・というモチーフです。
性の嗜好が多様になり、さまざまな悦楽の技術が一般の方達のものになっているこの時代。
真のSであること、真のMであることの難しさを感じております。
以前にもこちらで書かせていただいたやもしれませんが、わたくしにとって・・・こういった方達のお望みにお応えするのは、その方を憎からず想っているからです。そうでない限り、たとえハンカチで手首を縛るといったことさえ させはしないでしょう。
わたくしの真情にこの物語の男性が本当に気づいてくださるまでは、わたくしは首を縦に振る訳にはいきませんでした。
行為としてのSMについては・・・実際の安全面に関しても十分留意し、興味本意なだけの描写に終わらないように注意して書いたつもりです。そして、行為としてだけではないSMを本来は描きたかったと解っていただけたら・・・幸いです。
次作はいよいよ「第九 合唱付き」ですね。
昨年末に約4日間で集中連載した作品です。
どうぞ・・・お楽しみくださいませ。
2006/03/07 19:09| URL | 祥子 [Edit]
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