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黒衣の情人 11

「ふふっ、まあいい。さぁ、まだ途中だよ。早く祥子のランジェリー姿を見せなさい。」
グランドピアノの開けられた反響板に、わたくしの衣服を掛けるとご自身はまるでそこが指定席だとでも言う様に、再び先ほどと同じ椅子に腰を下ろされたのです。
「こっちを見なさい。」 
スカートに隠されていたシャツの6つ目の釦を外そうと視線を下ろした時です。長谷川さんから厳しい声が飛んだのです。
「いつものように、女王様然としてこちらを見るんだ。できるね、祥子。」
わたくしは改めて背筋を伸ばし、凛と表情を引き締めて・・・長谷川さんを見つめ・・・そのまま釦を外していったのです。
全ての釦を外した肌触りの良い超長綿のメンズシャツは、わたくしは白い肩から滑り落ちてゆきました。
暖められているとはいえ直接素肌に触れる馴染みのない空気に、わたくしはさっと肌が粟立ちました。

「きれいだ。本当に祥子の白い肌には濃い色のランジェリーがよく似合う。」
長谷川さんは立ち上がると、室内にいくつか置かれた工事用の照明を直接わたくしに向けられたのです。
強い光は熱を含んで、わたくしの肌を真っ白く浮き立たせました。
「まぶしいわ。あなたが・・見えない。」
言葉通り、わたくしの視界は指向性の強い工事用の照明に白く霞み、長谷川さんの姿を見失っていたのです。
わたくしは一人きりにされたような心細さと、ランジェリーだけの姿の羞恥心から思わず胸元を腕で覆ってしまったのです。
「隠そうとするんじゃない!」
長谷川さんの強い声に、わたくしはふたたび腕を最初のように身体の側面に垂らしたのです。
ペルシャ絨毯は黙々と自動演奏を続けるピアノの音と相まって、長谷川さんの靴音を完璧に殺しておりました。
まっすぐ前を見つめ続けるわたくしの視界は、強すぎる光に遮られてあまりの眩しさにいつの間にか軽く瞳を閉じていたのです。

しゅるっ・・・・ 
かつて聞いたことのある音が左のソファーのあったあたりからいたしました。
あれは、縄を捌く音でした。
しゅっ・・・しゅる・・ 
長谷川さんは以前お逢いした時も綺麗に縄を束ねて、管理していらっしゃいました。そして、それを使うときだけ束になった縄を解き、二つ折りになさるのです。

「お仕置きだよ。祥子。」
長谷川さんが明かりの中から姿をお見せになったとき、彼の手には2本の黒い縄が握られておりました。
「おねがい・・おしおきは・い・や・・・」
猿臂を伸ばすと、後ずさるわたくしから掛けたままになっていた眼鏡を取り上げたのです。
一旦ピアノの譜面台にツルをたたんで置くと、大きな歩幅で一気にわたくしとの間合いを詰めました。
「手を貸しなさい。」
長い1本の縄を肩に掛けると、もう一本の縄の二つ折りにした輪の部分を持ってわたくしに近づかれたのです。
長身の長谷川さんが持っていても、縄尻は彼の黒革のブーツによりそって蛇のようにとぐろを巻いているようでした。
「ゆるして・・」
それほどの長さの縄でどのような拘束を科せられるのか・・・わたくしは恐怖心からまた一歩後ずさったのです。
この限りある空間から逃れることはできないと解っておりました。それでも、お仕置きだと口にされるこの方に素直に従うことは・・・できなかったのです。
「あっ・・・」
「手間の掛かるお姫様だ。」
あと一歩、間合いを取ろうとわたくしが思ったのと、長谷川さんの大きな手がわたくしの手首を掴み取ったのは同時でした。
瞬く間に黒い縄はわたくしの手首の5センチほど上に回され、必要以上に引き絞られない様にと縄止めをされたあと力を分散するかのように二本取りのまま3度巻き付けられたのです。

黒衣の情人 12

「ぁっ・ぁあっ・・・」
右手も同じでした。
白く薄い内側の皮膚の上を長い縄が走ってゆくときの、肌を焼くような摩擦熱も・・・長谷川さんの力強い縄さばきだと格段に熱が宿るようでした。
手首を括るだけのことなのです。
使われた縄もただの黒の綿縄でしかありません。
なのに長谷川さんの縄は、まるでわたくしに幅広の黒革の手錠を巻いた様に、美しいフォルムを見せていたのです。

「こちらにおいで。」
長く垂らされた縄尻を拾い上げると、長谷川さんは片手にまとめてわたくしを窓の近くまで、柱1つ分だけ歩かせたのです。
真紅のスリップの裾は、普通にしていても辛うじてガーターストッキングの留め具を隠すほどの丈でした。
その下に秘められたままのマットブラックのレースのブラもTバックも・・・長谷川さんは何一つ乱そうとはなさいませんでした。
まるで紅いスリット入りのミニドレスを身に着けて長谷川さんと街中を歩いているだけのように、わたくしは背筋を伸ばして一歩を踏み出したのです。
一歩、また一歩。
膝を曲げることなくすいと伸ばす脚元からは、いつしか不用意に大きな音が響いてまいりました。
コツ・・コツ・・ もうわたくしの足元には、あの瀟酒なペルシャ絨毯はありませんでした。
打ちっぱなしのコンクリートの床をハイヒールが進んでゆくのです。
ジャズ・ピアノの音が響くだけの・・・地上の騒音も届かない空間に、自分自身が立てる大きな音は、まるで・・このはしたない姿を見てください・・・と哀願しているかのようでした。
「そのまま、窓に向かって立ちなさい。」
「・・・はい。」
歩みを止めることが出来て、わたくしはほっといたしました。
長谷川さんの声に促されるままに、わたくしは大きな一枚窓へと身体の向きを変えたのです。

既にわたくしは両手に縄を掛けられておりました。
長谷川さんなら、わたくしにあと1~2本の縄をかけてここに吊るされるおつもりなのでしょう。
望月さんとは違う・・・長谷川さんの厳しく・強い縄はわたくしのはしたないM性を引き出すスイッチでした。
肌の上を縄が走って灼くような痛みを与えられたり、神経や血管を圧迫しないように細心の注意を払いながらもぎりぎりまで締め上げるその縄は、わたくしに甘えや媚びではない真の哀願をさせるだけの力を持っていたのです。
縄の食い込む痛みと拘束されて身動きできない身体と心をこの方に嬲られて、羞恥に悶えるわたくしの様をご覧になるのが・・・快楽系のSだとおっしゃる長谷川さんがお好みになる行為の一つでした。

工事用照明が交錯する真っ暗な空間を透かし見れば、天井の剥き出しになった鉄骨の梁が、そこだけは先ほどまでの空間よりも幾分低めに渡されておりました。
「・・っ」
長谷川さんは手首を括った縄尻を、柱と梁のわたくしからは見えない交点へと投げ上げます。
落ちて来た縄端をするすると引くと、わたくしの左腕を真っすぐに斜め45度に引き上げ、柱に数回巻きつけて縄端を留めました。
「んっ・・・」
右手の縄は左手よりも強く・・・ハイヒールの踵がほんの少し床から浮き上がるほどに引かれてから丹念に結び留められました。
これで終わりではなかったのです。
再び左手の縄が解かれ・・・右と同じほどにきつく引き上げられて・・・わたくしは、黒のハイヒールでつま先立つ様に立たせられたのです。

黒衣の情人 13

さきほどまで、ミニドレスのようにガーターストッキングの留め具を上品に隠してくれていたスリップは、Tバックのフロントの逆三角形の頂きを露にする位置まで無惨に引き上げられておりました。
殊に左前の深いスリットは、Tバックとガーターベルトのレースの重なりが白い腹部の肌の上につくる妖しい陰影までもを、長谷川さんの眼に晒していたのです。
踵を下ろすことができないわけではありませんでした。
でも、そうするためには、手首の内側の白くて柔らかい皮膚がひきつれるほどに・・・縄を食い込ませるしかなかったのです。

ピシッ!・・・
「ゃっ・・・」
突然の床を打つ鋭い音に、わたくしははしたない驚声を上げてしまったのです。
あれは・・・
「綺麗だよ。祥子。」
「ぁん・・・ん・・」 
背後から声を掛けた長谷川さんは、背中に流れるストレートのロングヘアに左手を差し込むと、擲音に怯えたわたくしの顔を捻る様に向けさせて今夜初めて・・・唇を重ねたのです。
夏に客船で再会した時は、言葉を交わしただけでした。
口づけさえ1年ぶり以上になるのです。
でも・・・1年前の夜にわたくしを試す様に重ねた冷静な唇とは、明らかに違いました。
熱く・深く・・だからといって淫欲に溺れるだけでもなく・・・<思慕>という言葉を滲ませる口づけは、わたくしの怯えた心を溶かしてくださいました。
「・・・はぁ・ぅ・・・」
太もものガーターストッキングが途切れて素肌を晒す、ちょうどそのあたりを細い革の束が撫でてゆきます。バラ鞭と言われる形状のようでした。
「・・ん・・ぁ・・・」
以前、この方がわたくしに使われたことのある八条の1cmほどの巾のある黒革を束ねた鞭とは・・・同じバラ鞭でも全く違う種類のようです。
「・・ぁ・・ぁぅ・・・」
まるで長谷川さんの口内に流れ込むわたくしの慄きの声を楽しむかの様に、吊られ・引き延ばされたランジェリーだけに覆われた身体を、長谷川さんは右手に持った鞭で撫で回してゆくのです。
太ももの外から内・・・Tバックに包まれた丘の頂き・・・やわらかなわたくしの腹部・・・ハーフカップブラに支えられたGカップのバストの下辺・・・キスのために反らされて露にされた左の首筋。
「ゃ・・ぁ・・・・・」
眼を開けることも、肌に触れる鞭の姿を追うことも、頭を押さえられ・唇を奪われたままのわたくしにはできませんでした。
それでも張りのある細革の滑らかさは、束ねた革の本数が振り下ろす力を分散するためでなく一部の無駄もなく全ての力をわたくしの身体に伝えるためにあることを教えていました。

「今夜のキスはシャンパンの香りだな。」
「ぁ・・ぁぁ・・・」
唇を重ねられるのと同じ唐突さで、長谷川さんはわたくしを離されました。
わたくしの舌は、先ほどまで絡められていた長谷川さんの舌を追う様に・・・喘ぎ声とともに差し出され・・・放置されたのです。
キスをしていれば、鞭打たれる時間は遠のくと思ったのです。
でも・・・
「これが随分気に入ったみたいだね、祥子。」
「ぃゃぁ・ぁ・・・」
眼の前に差し出された鞭は、眼を閉じていたわたくしが想像した以上のものでした。
沢山の細革が束になったその鞭は、振り下ろす力にGを加えることが可能なほどの長さとしなやかさを備えていたのです。この鞭の一振りは、間違いなくわたくしの白い肌に・・・紅い火襷のような痕を付けることができるでしょう。
「ブラをしていてもこんなにはっきりわかるほど昂らせて、そんなにこの鞭が欲しかったのかい?祥子。」
「あぅっ・・・」
鞭の持ち手のエンドに付いた銀の玉で、長谷川さんはわたくしのGカップの先端を・・・ぐりぐりと押しつぶすのです。
両腕を吊り上げられてしまったせいで、くっきりと立ち上がった乳首をのせたGカップの乳房は乳暈をぎりぎり覆っていたハーフカップのブラから溢れ落ちんばかりになっていたのです。

黒衣の情人 14

「はぁう・・っ・・・」
紅いスリップごしとはいえ、冷たい銀の玉は容赦なくわたくしの敏感な先端に氷を押し当てたような刺激まで与えたのです。
長谷川さんはわたくしの乳房に鞭の握りを強く押し付けたまま動かしてゆきました。
柔らかな乳房の先端から外側へと・・・そして白く・薄く・感じやすい柔らかな下辺に埋め込む様にして・・・やがて鞭の握りを、両手を上げて吊るされたことで中央に寄り合わせる形になった乳房の間にすっぽりと挟み込まれたようになりました。
「祥子、今夜は聞かせてもらうよ。夏の竹上のパーティの間、石Jrと2人きりで何をしていた?」
白い二つの乳房の間の銀の玉を上下させるようにしながら、長谷川さんが問いかけたのです。わたくしの耳元は冷気と緊張から、彼が寄せた唇の熱に軽い痛すら感じておりました。
「ご一緒に特別室から花火を見ていただけですわ。」
「嘘を言うんじゃない。」
乳房を嬲る様に押し付けていた鞭を掴み取ると、長谷川さんはわたくしの背後から大股で離れてゆかれたのです。

ピィシ・・・・
「はっ・あっ・・・ぅ・・」
力づくの一鞭がわたくしの背中に振り下ろされたのです。
スリップとブラごしでも・・・その痛みは耐えきれず大きな呻きを上げてしまうほどでした。
ピシッ・・・ピシ・・・
「ぅっ・・・んくっ・・・」
立て続けの鞭はウエストの少し上、刺激に弱い同じ場所を右上からと左上から鋭く走って行ったのです。
ピシ・・・
「あっひぃぃっ・・・」
腰の頂きから下に振り下ろされた一閃は、細革の何本かで剥き出しになった太ももまで舐めてゆきました。
長谷川さんは全く容赦も手加減もなく腕を振り下ろしてらっしゃいました。
ただ、まだ身に纏わされたままだったランジェリーの儚い厚みの分だけ・・・痛みが軽くなっていました。
でもそれも、打たれた瞬間だけのことでした。
じんじんとする鞭痕は、やがて身動きするたびに触れるランジェリーの感触に、別のひりつく痛みをわたくしに与え続けたのですから。

「あの時、祥子はとうとう僕の居たパーティルームには戻って来なかった。2時間近くも2人きりでいて、何もない訳はないだろう。」
長谷川さんのおっしゃる通りなのです。
あの2時間・・・わたくしは破廉恥に石さんにこの身体を・・・それも客船の特別室専用デッキで貪られていたのですから。
でも、石さんとお仕事上の取引関係のある長谷川さんにそんなことは口が裂けても言えることではありませんでした。
「ご一緒に、花火を見てお酒を頂いただけですわ・・・ひっ・・・ぃ」
ピィシィィ・・・ 
わたくしの答えが終わる間もなく、鞭が・・・今度は左のスリップに覆われていない肩先から背中に向けて打ち下ろされました。
「祥子と2時間居て、酒を飲むだけで我慢できるほどあの男が聖人君子だとは思えないがね。」
ピシッ・・・・ 
「ぅあっ・・・」
左の脇腹からバストの下まで・・・鞭先がサテンのスリップを舐める様に回り込みます。
バストのすぐ下の・・・男性の指が触れるだけでわたくしの甘い声を導き出す柔らかな皮膚が・・・強い細革のピンポイントの強打に肌を裂かれたような痛みを感じたのです。

黒衣の情人 15

耐えるための呻きは、次第に悲鳴の色を帯びてまいりました。
長谷川さんの質問に・・・沈黙は、肯定の意に取られかねませんでした。
はしたなく張り上げそうになる声を押さえ込むがゆえに、喘ぐ息の間からわたくしは言葉を紡ぎ出したのです。
「何も・・ありません。お酒・・をご一緒するだ・け・・のお友達です・・・。下の会場では・・ゆっくりできない・・から・・・と。・・・あぁっ」
ピシ・・・
右肩を火のような痛みが襲います。剥き出しの肌には・・この打擲はあまりに・・・きつすぎました。
「それだけのために、祥子を呼んだのか?そんな訳はないだろう。」
「でも・・それだけなんです。・・・ひぃぁっ・・・・」
ピシッ・・シッ・・・パシ・・・パンッ・・・・
ピィシ・・・・・ピッシィィ・・・
力任せの鞭がわたくしの真紅のスリップで覆われた背中を・・・時に剥き出しの肩甲骨の上を・・・乱打してゆくのです。
痛みに・・・声を上げるゆとりなどもうなくしておりました。
打たれる痛みに吐き出した息を吸う間もなく、次の痛みた襲うのです。
キスの間に長谷川さんの指で絡めとられ、身体の前面へと垂らされたロングヘアは幾度もの鞭の衝撃にに幾筋か背中へ落ちかかっておりました。背の中心を走る鞭の細い革は、時にわたくしの細い髪にも絡み付き・・・長谷川さんが鞭を引くと同時に数本の髪も引き抜け落ちているようでした。
「・・・ゆるし・・て・・・ なにも・・ない・・わ・・」
ピシッ・・・
「はあうっ・・・」
剥き出しの・・・ガーターストッキングの上の太ももと白い腰の丸みの下辺を舐めた革の痛みに、わたくしはとうとう膝を折ってしまったのです。
キシュッ・・・ 左右の手首に回された黒の縄が、わたくしの体重を受けて乾いた軋みを響かせたのです。

「・・・ぁ・・・はぁ・・・・」
落ちた膝は、吊られているために宙に浮いたままでした。
鞭を受けるために強いられた緊張が一気に解かれてしまったいま、息を乱したままのわたくしは体勢を整えることすらできないでいたのです。
「強情だね、祥子。」
長谷川さんはわたくしの腰に手を添えてくださると、真っすぐに立ち直れるように身体を引き上げてくださいました。
それから、梁に投げ・括り付けてあった縄を解いたのです。
縄のテンションが無くなった途端、わたくしはよろめいてしまいました。
それでもなんとか堪えることができました。
さきほどの体勢のままでこの場に膝をつけば、剥き出しのコンクリートはストッキングを破り・・わたくしの膝を傷つけてしまったことでしょう。
長谷川さんが縄を緩めるより先にわたくしの体勢を整えてくださった訳に、わたくしはようやく気づいたのです。
そして耳には・・・あのピアノが奏でるジャズが・・・切ないSummer Timeが蘇ってまいりました。
「こちらに来るんだ。」
縄を・・・手首に回した縄はそのままに、長谷川さんはふらつくわたくしを抱き寄せると、ここに来て最初に案内してくださった革のソファーの前に連れて来ました。
先ほどまでそこにあった大理石のテーブルは、ソファーとピアノの間に移動されていました。
長谷川さんはソファーに腰を下ろすと、わたくしを彼の開いた膝の間の絨毯の上に座らせたのです。