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黒衣の情人 15

耐えるための呻きは、次第に悲鳴の色を帯びてまいりました。
長谷川さんの質問に・・・沈黙は、肯定の意に取られかねませんでした。
はしたなく張り上げそうになる声を押さえ込むがゆえに、喘ぐ息の間からわたくしは言葉を紡ぎ出したのです。
「何も・・ありません。お酒・・をご一緒するだ・け・・のお友達です・・・。下の会場では・・ゆっくりできない・・から・・・と。・・・あぁっ」
ピシ・・・
右肩を火のような痛みが襲います。剥き出しの肌には・・この打擲はあまりに・・・きつすぎました。
「それだけのために、祥子を呼んだのか?そんな訳はないだろう。」
「でも・・それだけなんです。・・・ひぃぁっ・・・・」
ピシッ・・シッ・・・パシ・・・パンッ・・・・
ピィシ・・・・・ピッシィィ・・・
力任せの鞭がわたくしの真紅のスリップで覆われた背中を・・・時に剥き出しの肩甲骨の上を・・・乱打してゆくのです。
痛みに・・・声を上げるゆとりなどもうなくしておりました。
打たれる痛みに吐き出した息を吸う間もなく、次の痛みた襲うのです。
キスの間に長谷川さんの指で絡めとられ、身体の前面へと垂らされたロングヘアは幾度もの鞭の衝撃にに幾筋か背中へ落ちかかっておりました。背の中心を走る鞭の細い革は、時にわたくしの細い髪にも絡み付き・・・長谷川さんが鞭を引くと同時に数本の髪も引き抜け落ちているようでした。
「・・・ゆるし・・て・・・ なにも・・ない・・わ・・」
ピシッ・・・
「はあうっ・・・」
剥き出しの・・・ガーターストッキングの上の太ももと白い腰の丸みの下辺を舐めた革の痛みに、わたくしはとうとう膝を折ってしまったのです。
キシュッ・・・ 左右の手首に回された黒の縄が、わたくしの体重を受けて乾いた軋みを響かせたのです。

「・・・ぁ・・・はぁ・・・・」
落ちた膝は、吊られているために宙に浮いたままでした。
鞭を受けるために強いられた緊張が一気に解かれてしまったいま、息を乱したままのわたくしは体勢を整えることすらできないでいたのです。
「強情だね、祥子。」
長谷川さんはわたくしの腰に手を添えてくださると、真っすぐに立ち直れるように身体を引き上げてくださいました。
それから、梁に投げ・括り付けてあった縄を解いたのです。
縄のテンションが無くなった途端、わたくしはよろめいてしまいました。
それでもなんとか堪えることができました。
さきほどの体勢のままでこの場に膝をつけば、剥き出しのコンクリートはストッキングを破り・・わたくしの膝を傷つけてしまったことでしょう。
長谷川さんが縄を緩めるより先にわたくしの体勢を整えてくださった訳に、わたくしはようやく気づいたのです。
そして耳には・・・あのピアノが奏でるジャズが・・・切ないSummer Timeが蘇ってまいりました。
「こちらに来るんだ。」
縄を・・・手首に回した縄はそのままに、長谷川さんはふらつくわたくしを抱き寄せると、ここに来て最初に案内してくださった革のソファーの前に連れて来ました。
先ほどまでそこにあった大理石のテーブルは、ソファーとピアノの間に移動されていました。
長谷川さんはソファーに腰を下ろすと、わたくしを彼の開いた膝の間の絨毯の上に座らせたのです。 コメント
こんにちは。
今日は穏やかで暖かい昼下がりです。
窓際のソファーに腰掛けていると睡魔が・・・。(笑)
さて、お仕置きと口に出し、嫉妬の感情もハードなロング鞭で吐き出し、失神するまで打つのだろうか?
長谷川さんがハードSさんであるのが少し気掛かりでしたが、祥子さんが自己満足なだけの鬼畜S男性を信頼するとは思えませんから・・ほっと・・安堵しました。
私も鞭を振るう立場、冷静に振舞う事を心がけていますが、感情を抑え切れず興奮して本気で女性を泣かせた苦い経験も過去にありました。(反省)

>縄を緩めるより先にわたくしの体勢を整えてくださった訳

祥子さんの小説でいつも感心させられる事は、安全・気配りについてしっかり書かれている事です。
いつも読みながら、うんうん、そうそう、一人で頷いているんですよ。(笑)
                  ・・縄指導・・

2007/01/18 16:19| URL | 縄指導  [Edit]
縄指導様
午後の眠気を払うのに、長谷川さんのお話が少しでも役に立てばよろしかったのですが。
いかがでしたでしょうか。

嫉妬・・・という感情は、口にされている以上にお持ちだったのかもしれませんが、長谷川さんに打たれながらわたくしが感じたのは<他の男>をリアルに知ったことへのショックなのかもしれないと言う事でした。
わたくしは、基本的にお逢いしている方がいらっしゃれば、その方以外の方は眼にも入らないようになります。
ですから、よほどなにか痕でも残っていない限り他の男性の存在を疑うことはないでしょう。
それが・・・目の前で自分のものだと思っていた女を攫われたのですから。
勿論、長谷川さんのことです。鞭を振るう以上仇や疎かな打擲などなさいませんが、ご自分のお気持ちを整理するための優しさもちゃんとプラスされています。
だって・・・ランジェリーごしなんですから。

安全は、大事です。
どうしてもこういったお話では疎かになってしまいますが、実はここに気を配れるかどうかが<真性のS>の方の本領だとわたくしは思っているからです。

2007/01/18 17:22| URL | 祥子  [Edit]
言っても、言わなくても
 鞭打ちのための問いだから
白状すればお仕置きになっちゃうんでは・・・・
長谷川さんは祥子さんに打ち明けて欲しいのか
それともやっぱり、黙ってて欲しいのか。
さやかだったら、鞭で落ちて欲しくないし
落ちたくもないかもしれない・・・。
難しい所です。




2007/01/18 19:49| URL | さやか  [Edit]
さやか様
これは、一人の人間として信じられるかどうかの試金石のように思えます。
例えばここで本当の事を打ち明ける女だとすれば・・・長谷川さんと石塚さんが逆だった場合にもわたくしが簡単に彼のことを石塚さんに告げているのだと判断されてしまうでしょう。
そう、先日の谷垣さんと麻生さんの<密談>みたいに。
秘めておかなくてはならない関係を表沙汰にする露悪趣味はもっとも恥ずべきものだとわたくしは思っております。
ことに社会的地位を持った男性にとっては、口の堅いパートナーは最低条件なのでしょう。
なので、身体は落ちてしまっても・・・わたくしは決して心は落ちたりはいたしませんわ。

2007/01/18 20:00| URL | 祥子  [Edit]
乾いた空間で交差する想い。
駆け引きという言葉が陳腐に思えてしまう。

秘密は互いの胸の内に秘めてこそ…なの
ですね。お互いを思いやることで成り立つ
関係…。


2007/01/18 21:30| URL | eromania  [Edit]
eromania様
駆け引きという会話・・・というなのかもしれませんね。
大人の女にとって、全てを曝け出すことばかりが美徳ではないのだと解っていてくださる大人の男性は素敵なパートナーですね♪

2007/01/18 23:18| URL | 祥子  [Edit]
祥子さん、こんばんは。和巳です。
今回の投稿、不愉快だったらごめんなさい。。。
祥子さんの官能的魅力に惑わされ、思わず、書いてしまいました。。。


この場面、私のS心がすごくそそられます。
何度か、オナニーもしました。

美しきヒロインが、悪(男)によって、抗う術もなく、容赦なく鞭打たれ、やがて屈服し、支配されてしまう・・・。

そんな妄想を描きながら・・・。

私はセックスの時、男は悪だと思ってます。
もちろん低俗な意味での悪ではなく、強さという意味の悪です。
女の弱さをその強さで圧倒し、征服させる悪。
それが男。

故に、私は容赦なく、祥子さんを犯す。
その柔肌を余すことなく鷲掴み、凶暴な男根を口に含ませ、女の最も弱い部分を力強く貫く。

祥子さんが許しを乞いても、泣きじゃくっても聞き入れず、私は一回一回の挿入に男の魂を込めて、無慈悲に打ち、貫きつづける。

私が満足するまで。一晩中。
ベッドで・・・。
浴室で・・・。
床の上で・・・。

私の欲望の限りを尽くす。
まるで暴君のように。

それだけの価値がある。祥子さんには。


2016/01/21 18:36| URL | 和巳  [Edit]
和巳様
長文のコメントありがとうございました。
お返事が遅くなり申し訳ありません。

不快なんてとんでもないです。
たくさん感じていただけてとても嬉しいです。

これからもよろしければ何度でもお越しください。
いつでもわたくしはここにおります。

2016/01/30 13:42| URL | 加納 祥子  [Edit]
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