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「まだ何一つ脱がせていないのに、そんなに恥ずかしいか?」「・・・・はぃ」
辱めだとは思いませんでした。
写真を撮りたい、そうおっしゃったお望みを受け入れたのは他の誰でもないわたくし自身でした。今夜、高梨さんは屈辱にまみれさせるような行為は何一つ要求なさらなかったのです。
従わない時に、与えるかもしれない・・・お仕置きを告げる言葉として以外には。
そして、その言葉に芯から反応してしまうのは、わたくしのはしたない心と身体だったのですから。
「本当に祥子には桜色がよく似合う。」
「・・・あっ」
抱きしめるように回した高梨さんの腕が肩紐を引き下ろされたブラのホックを外します。わたくしは裾を引き上げていた手を思わず離そうとしてしまったのです。
「そのままだ。まだ動くんじゃない。」
ナイティの上半身に使われたストレッチレースのせいで、ゆるみはしたもののブラが落ちてくることはありませんでした。高梨さんの手は、今度は引き上げた裾の中に入ってゆきます。
「セクシーなランジェリー姿を楽しもうかと思ったが、このナイティごと祥子を抱きたくなった。」
太ももの脇を這い上る高梨さんの手が、レースのTバックのサイドにかかりました。ハイレグに作られた細いウエストのレースを掴むと一気に膝まで引き下ろすのです。
「やっ・・・」
「祥子、もういいよ。手を離しなさい。」
わたくしはゆっくりと、裾を掴んだ手を下ろしてゆきました。それでも、きつく・・・羞恥を堪えるように、ナイティの裾を握りしめた指を開くことができなかったのです。
「ふふ、仕方ないね。」
高梨さんは、笑みを浮かべると一本一本優しく開いてゆかれるのです。
ちゅっ・・・開いた手を右も左も・・・ダンスを踊る前のパートナーのようにご自分の手で掬い上げると、手の甲にキスをして、ナイティの左右に下ろしてゆきます。
わたくしの下半身は中途半端なまま、桜色の裾の中にまた覆い隠されていったのです。
「そんなに不安そうな顔をしなくていい。」
伸ばされた腕は、わたくしの髪を中途半端に止めている髪ゴムを外しました。
細い毛質のストレートの黒髪に、彼は指先を入れてほぐしはじめたのです。
さらさらと、高梨さんの手の中でわたくしの髪はいまは剥き出しになっている背中に滝のようにまっすぐに落ちてゆきました。
「うん、綺麗だ。」
満足そうに頷いた高梨さんの手が、次に伸びたのは二の腕にかかっていたブラのストラップでした。両方のストラップを手首から抜き取ると、上半身にフィットしたストレッチレースの中から、Gカップのブラを引き出したのです。
「ぁん・・・」
中途半端な状態のまま乱されたランジェリー姿を晒すことはとても恥ずかしく不安でしかありませんでした。でも、それを全く奪われる心細さは・・・こんな状況でも変わりません。
「このままじゃ、祥子もいやだろう。」
ブラをサイドテーブルに置くと、高梨さんはまたわたくしの手をとって・・・先ほどの口戯の間に腕から外れたナイティの肩紐を再び元に戻したのです。それも、今夜わたくしが自分で着替えた時と同じように。
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「ん・ん・・・・だめ・・・」
胸元から差し入れた手で、ストレッチサテンとレースのなかでつぶれてしまいそうなGカップの乳房の形を整えるのです。室内の空気に晒されたままだった乳首に高梨さんの熱い手が触れただけで、わたくしの唇からは甘い声が洩れてしまったのです。
くっきりと立ち上がった乳房の先端は、きちんとナイティに覆われたことで・・・落とした影が一層淫らさを強調するようでした。
「腰を下ろしなさい。」
わたくしは跪いた姿勢から、ゆっくりと左側に脚を流す様に腰をおろしました。
先ほど高梨さんの手で引き下ろされ不安定に膝に絡み付いていたTバックは、脚を動かしたことでナイティの裾の中でまた少しふくらはぎへと下がってきていたのです。
「どれ・・」
「やっ・・・」
遠慮なく裾をくぐって高梨さんの手がわたくしのパンティを手にします。
それだけ身につけさせられていたガーターストッキングの滑らかさが、高梨さんに淫らさの証のような濡れたTバックを与えて・・・わたくしの形ばかりの抵抗を台無しにしていました。
でも、手にしたランジェリーを高梨さんはなんの躊躇もなくサイドテーブルのブラの上に置いたのです。
そして、裾をもう一度整えるとカメラを手にして・・・再び・・・。
カシャ・・・ カシャ・・・ カシャ・・・
「背筋を伸ばして、そう。」
スタジオでモデルに指示をするようにわたくしに掛ける高梨さんの声は、まるでわたくしにイラマチオをさせているときのような熱に包まれていました。
カシャ・・・ カシャ・・・
「ゆずる・・さん・・・」
「そんな心細げな声をあげてどうした、祥子。まさか、毎晩ブラジャーで身体を締め付けて眠っている訳じゃあるまい。」
カシャ・・・ カシャ・・・
どうして、そんなことがわかるのでしょう。
わたくしは自宅でも最低限のランジェリーしかナイティの下には身に付けませんでした。時には・・・なにも身につけないことも・・・。
「・・・はい」
「ならいつもと一緒だろう。それとも、あんなに小さな布切れが1つないことがそんなに一大事か?そんなに、泣きそうな顔をすることはないだろう。」
ふる・・ふる・・ わたくしは首を横に振ったのです。
高梨さんが口にしたものが、愛液と唾液にまみれたTバックであることはすぐにわかりました。
たしかに男性と二人きりで部屋に居る時の装いとして不自然なことはなにもありませんでした。いつも、二人きりになると最低限のランジェリーだけの姿に剥かれて・・・高梨さんの座るソファーの下の床に大きな猫のように侍らされることを思えば、きちんとナイティを身に着けた一見外からはなんの淫らさも感じさせない姿でいられるだけノーマルだと言えるかもしれません。
ナイティの下が、ガーターストッキングだけというはしたなさも、心もとなくはありましたが、いままでに全く経験がないわけではありませんでした。
「祥子の泣きそうな表情も、いい。同じ顔を俺の身体の下でさせたくなる。」
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カシャ・・・ カシャ・・・ カシャ・・・高梨さんの昂った声よりも・・・その時のわたくしの耳を刺激していたのは、デジタルカメラのシャッター音でした。
プロのフォトグラファーの指が一枚一枚切ってゆく、そのリズミカルな音がわたくしの内をざわめかせていることに、そしてその事実に戸惑っている自分自身に気付いてしまったのです。
「ゆずるさん・・・」
「ん?なんだい。」
ようやく、この姿での撮影に満足なさったのでしょうか。高梨さんはカメラをサイドテーブルに置くと、あのリモコンを手にしてわたくしの側に戻ってらっしゃいました。
シャッター音が止まっただけで、ほんの少し、わたくしの鼓動も収まるのです。
はしたない姿をカメラに収められることに、感じてしまう自分をとうとう確信してしまいました。
「おねがい・・」
パジャマの上着を脱いで、わたくしを抱きしめようとする高梨さんの左手を両手で包んだのです。その手の中には、ベッドの上を写す様に仕掛けられている5台のデジカメのリモコンが握り込まれていました。
「ここから先は、お写真は・・・ゆるして・・」
「写真がどうした。」
「もう・・・ね」
「祥子のここが感じ過ぎるからか?」
「あぅっ・・・」
空いたままの右手が、ナイティのストレッチサテンを押し上げるGカップの乳房を握りしめるのです。
「カメラに写されることで感じたのか。」
「はぁっ・・・ちが・・ぁぅ・・・」
ジィィ・・・カシャ
ぴく・ん・・・ たった一回のシャッター音で、わたくしは身体を慄かせてしまったのです。
「敏感だね、祥子」
ジィィ・・・カシャ
「ぃゃ・・・・ぁ」
さきほど、わたくしを口戯で追いつめた時に機能していたカメラなら、いま切られたデータにはベッドの上に横座りしたわたくしの頭頂くらいしか写ってはいないでしょう。
ジィィ・・・カシャ
「ぁん・・・」
なのに、高梨さんはわたくしのことを試す様に、間隔を開けてシャッターを切ってゆくのです。
「嬉しいよ、俺のカメラに感じてくれて。大丈夫、恥じることはない。どんなプロのモデルでも、いやプロのモデルほど俺のカメラには感じてくれる。カットを重ねるごとに、眼差しも身体のラインもどんどん綺麗に艶かしくなる。それが俺のカメラだ。」
ジィィ・・・カシャ
「ん・ぁ・・・」
「思った通りだった。祥子には素質がある。ほら、身体がどんどん震えて、感じているんだろう。それでいいんだ。」
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ジィィ・・・カシャただでさえ、高梨さんの声はわたくしの理性を奪う深くて丸い声でした。
その声の響きとシャッター音は、きっちりと装ったナイティの下の身体を内側から蕩けさせてゆくのです。
秋に美術館で初めてお逢いしてお名刺をいただいた後で、わたくしは書店で彼の写真集をいくつも目にすることができました。
彼の写真の中の美しい女性は、どなたも大変魅力的でありながら決していやらしくはなかったのです。ただ、高梨さんがおっしゃるように、レンズを見つめる女性の瞳はどなたも濡れた様に光っておりました。
どんなにマニッシュなスーツで装っていても、どれほどきっちりと襟を合わせた和服をお召しになっていても、思わず抱きしめたくなってしまうたおやかさが漂っていたのです。
「俺は商品には、手は出さない。」
春にお逢いした時、世界中の街にいる恋人を切って来たという高梨さんに、綺麗な女性に囲まれていればそれでよろしいでしょう?と、いじわるを言ったことがございました。そのとき、きっぱりと・・・高梨さんはそうお答えになったのです。
誰1人抱いたりはしない、と。「たとえ据え膳でもね。」
カメラの前に立つ快感を知っているプロだから、彼の愛撫がなくとも、高梨さんの深くて丸い自分だけに語りかけてくれるような声と、肌の上をなぞるような視線に、彼女たちは反応してしまうのでしょう。
高梨さんの、柔らかな瞳に映るわたくしの表情は・・・あの写真集の女性たちのように・・・
わたくしは、とうとう押さえていた高梨さんの左手を離してしまいました。
「心配しなくていい。下劣な行為のあからさまな写真が欲しいわけじゃない。もちろん、この家からは一歩たりとも外には出さない。」
こくん・・・
高梨さんの言葉に首を縦に振ったのです。
「でも、お願い。こんなに明るいのは・・・いや。」
メインベッドルームは天井のシーリングライトが、最初より少し光量を落としているだけでした。部屋の三方にある間接照明は、全く使われていなかったのです。
「午後のベランダであんなに激しくしたのに、か?」
ふるふると・・・首を横に振りました。
あの桜の日のことは。首輪を付けられ、牝猫のように扱われ、あまりに破廉恥な姿をレジデント棟16階の超高層ビルの望遠鏡の前に晒したあの日とは・・・。
「今夜は・・優しく・・愛してくださるって・・・」
「ああ、そのつもりだ。」
「だったら・・・」
「もっと恥ずかしいことになるぞ。」
「えっ・・・」
「それでもいいなら、祥子の望み通りにしてあげよう。」
高梨さんが何をおっしゃっているのか、わたくしにはわかりませんでした。
それでもさっさと、サイドテーブルの上にあるコントローラーでシーリングライトの調光を落としていただいたことで、わたくしはようやく堅くしていた身体を高梨さんに委ねたのです。
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仄かな明かりの中、高梨さんの肩の輪郭と微かな表情だけがわたくしに迫り・・・そのままベッドへと倒れ込んだのです。ちゅぅく・・・
「ん・・ぃやぁ・・」
高梨さんのたっぷりと唾液を乗せた唇が、ストレッチサテンごとわたくしのGカップの乳房の先端を舐ったのです。
唇に挟み込まれる圧迫感に続いて、じわ・り・・と暖かい液体がナイティに染み込むのがわかったのです。
「もっと声を出しても大丈夫だ。」
こりっ・・・
「あぁっ・・・」
既に幾度も上り詰めさせられたわたくしの身体は、高梨さんの甘噛みに、簡単にはしたない嬌声を漏らしてしまいます。
右と・・より感じやすい左を・・交互に・・・。唇を離された側は、暖められている室内でも濡れそぼった乳房の先端を一気に冷やし、その感触が一層わたくしを責めるのです。
「もっと、だ。」
「いやぁぁ・・・は・ぁぁぁ・・・」
ストレッチサテン越しであるだけ、高梨さんの舌の動きは大胆で乱暴でした。人間の舌とは全く違う生き物に・・・嬲られているかのように錯覚してしまうほどに・・・
わたくしの感じやすい昂りを唇で・舌で・歯で追い上げてゆくのです。
ただお髭のちくちくだけが・・・間違いなく高梨さんに愛されているのだと教えてくれるのです。
わたくしの上に被さる高梨さんの塊は、ありありと存在を主張する様に昂ってらっしゃいました。わたくしの太ももに押しつけられる熱さは、桜色のサテンに覆われた先端の冷たさと相対的に高まってゆくのです。
「もっと!」
ジィィ・・・パッ・カシャ ジィィ・・・パッ・カシャ
「ぁあぁぁ・・・ぁ・・んぁ・ぁぁ」
高梨さんの上体が離れ、左膝がナイティごと太ももの狭間をくじった時・・・わたくしは高い喘ぎ声を上げてしまったのです。
快感に閉じた瞼越しにも、強いフラッシュの明かりがわかりました。
「いやっ」
「だめだ!」
ジィィ・・・パッ・カシャ
高梨さんの手がわたくしの両手を左右に押さえ込みます。
先ほどよりも数倍強い光の中で、わたくしは彼にねぶられた乳首が桜色のナイティから物欲しげに・淫らに・・・透けていることに気付いてしまったのです。
ジィィ・・・パッ・カシャ ジィィ・・・パッ・カシャ
「ゆずる・さ・ん・・・だ・め・ぇぇ」
「言ったはずだ。もっと恥ずかしいことになるって、な。」
今度は、まぁるくわたくしの蜜のしみをつけたナイティの裾まではだけ上げるのです。
自由にされた腕は、なにを覆い隠せばいいのか・・・わからなくなっていました。