過ぎし日の残り香 2
「なんですか。この写真は・・・」撮られた覚えのない数十枚の写真にわたくしの声は思わず震えてしまいました。
「なんだ、祥子君は覚えていないのか。さみしいな」
先ほどまで太ももをなであげていた元上司の手が、わたくしの肩に置かれました。
「徹夜で仕事をした早朝にきみに役員応接で仮眠をすすめただろう、そのときのものだよ」
そこには30代前半のときのわたくしが写っていました。
ただ・・・胸元は開けられて、レースのブラに透けている乳首までが写っていました。
フレアスカートの裾はウエストまで持ち上げられて・・・
ガーターベルトとTバックパンティの間の太ももや淡く透けるかげりまで。
さらにはうつぶせた白いお尻にわずかにTバックのレースが横切るはしたない姿も。
全身・アップ・接写と何枚も写されていました。
軽く開いたわたくしの唇のアップまでがその中にあったのです。
「いやぁ・・・」
ここがレストランの個室であることも忘れて声を上げてしまいました。
「あの時の写真だよ。もっと大胆に撮りたかったんだが、祥子君が起きてしまいそうだったからな」
あの日ほんの2時間ほど熟睡して目覚めたわたくしは、うつぶせになった身体の下の大胆に乱れたスカートの裾に一人赤面したことを思い出していました。
「貞淑な人妻で不倫をしているわけでもなく、仕事一途な君が・・・ね」
驚くわたくしの隙をついて、シルクのワンピースの肩の手をゆっくりとバストの頂きに移すのです。
「真面目で優秀なだけの祥子くんが、普段からあんなランジェリーを付けていると知って この写真をとったあと僕は・・・役員専用トイレでね・・・ひとりでなぐさめなければならなかったよ」
「いやっ・・・」
右手でわたくしの顎を引き上げ後から身をかぶせるようにして元上司はわたくしの唇を奪いました。
「1度じゃおさまらなくて・・・朝から2度も射精したんだよ。祥子君」
ディープキスの合間・・わずかに唇を外すようにして、過ぎし日の劣情を語るのです。
「んんぅぐっ・・・あぁん」
舌を舌でしごきあげ、口蓋を舐め上げて、唾液をわたくしに注ぎ込むまるでセックスのようなキスです。
「一時期は夫以外の男ができたのかと、嫉妬で狂いそうだったさ。こんな大胆なランジェリーをつけている祥子君を想像してね」
胸元にさがってきた左手がシルクのワンピースとレースのランジェリー越しにも堅く立ち上がっているのがわかる乳首を・・・ひねりつぶすように愛撫するのです。
「こんなところで・・・だめ・です・・人が来ます・・ぁぁん」
元上司のがっしりとした腕で漆塗りの椅子に肩先から押さえ込まれて、わたくしは身を捩ることもできませんでした。
「ごらん 祥子君の無邪気な寝姿」
とりわけはしたない一枚を取り上げてわたくしの目の前に差し出すのです。
「いやぁ・・・」
顔をそむけるだけしかわたくしにはできません。
「こんなに無邪気写真なのに、僕は何度もこの写真でね。ふふ 楽しませてもらったよ。今夜きみを呼び出すと決めてからも我慢できなくて、ゆうべもね・・・写真のきみはいつまでも素敵だよ」
椅子の背に立ったままでワンピースの胸元をまさぐりわたくしの耳元で囁くのです。
「お戯れもいい加減になさってください」
尊敬していた元上司に写真とはいえ劣情をぶつけられていたことを知って、わたくしはおののきました。
「そのいつまでも生意気なところもそそるよ」
「あふっ・・ん・・」
そう言ってはもう一度強引にわたくしの唇を奪うのです。
「いまの祥子君の方が・・・熟していて美味しそうだな。ああこの胸だよ この胸を好きな様に嬲りたくてな」
両手で透けるシルクとランジェリーごと両の乳房を握りつぶすかのように揉み込み、耳を甘噛みされました。
「あうっ・・・」
「こんな感触だったのか。ふっ 想像以上だよ、祥子君」
「やめて・・くだ・さ・・い 人を呼びます」
元上司の職場であるレストランの個室ではしたない写真を広げられ、身体を嬲られる羞恥に・・・わたくしの理性を飲み込もうとする快感は、あと少しのところで押しとどめられたままでした。
「きみならわかっているだろう。支配人は気が利くからね 今夜は僕が呼ぶまではここにはこないさ」
元上司の両手は少し力を弱め、手に余る柔らかな乳房の感触を楽しむようなタッチに変わりました。
「前にも祥子くんには愛人にしたいなら年間1200万円用意できるかと言って体よく断られたけれどね、諦めきれないんだよ」
襟元のワンピースと共のシルクのリボンタイをほどこうとするのです。
「部長はわたくしの気質を良くご存知なはずです。奥様がいらっしゃる方にはそれ相応のことをしていただかなければ愛人なんぞにはなれません」
元上司の手を押さえて、わたくしは首だけをひねるようにして上司の目をきっと見返してお答えしました。
「ほう 祥子君を1200万円で独占できるなら安いものだ。まあ、正確に言えば独占にはならないがね」
手の動きを拒まれた元上司は改めてわたくしの前に座ると、とんでもないこをと言い出すのです。
「あまりに僕が祥子君のことを素晴らしいというものだからいまの会社の役員たちが興味を持ってね、一度逢わせろとうるさいんだよ」
「うちの役員はみな美食家だからな、この写真を見せれば・・・」
なんて破廉恥なことを・・・わたくしは尊敬していた上司に言われなければならないのでしょう。
わたくしは目の前にちらばる写真をかきあつめて、バッグを持って立ち上がったのです。
「今日はごちそうさまでした。部長 お仕事のお話でしたらいくらでもうかがいます。ただ、もうこんな写真やお話を持ち出されるなら、この先お逢いする事もないでしょう。失礼します」
これ以上聞くことはないと元の上司に背を向け、ドアに手を掛け個室を出てゆきました。
「諦めないからな 祥子君」
上司の声が閉まりかけるとびらから流れてきました。
信頼していた元の上司に裏切られ・穢されていたショックは隠せませんでした。
でも知らないうちに写されていた写真や、年齢を重ねた男性だけが持つ巧みな愛撫に身体の芯に火をつけられて・・・その夜・・・わたくしは年若いセックスフレンドにメールをしてしまいました。
祥子からの手紙-3
こんばんわ 祥子です。
個室を出て、驚いた顔をしている支配人に
「急用ができまして、ごちそうさま」となにくわぬ顔をして挨拶するのがわたくしには精一杯でした。
口紅すらひかないわたくしですからあの場から立ち去れましたが
普通の女性でしたらあの場を離れることも難しかったでしょう。
「英雄色を好む」タイプの方だとは部下のころから思っておりましたが
まさかあのような想いを隠されていたとは・・・気づいておりませんでした。
しばらくは、わたくしは元上司からの電話に出る事はないでしょう。
今夜の疼きは年若いお気に入りの彼と・・・メールの返事が楽しみです。
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2006/02/25 21:28| | [Edit]
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