桜陰 4
「仕方ないね。僕が着けてあげよう。そのかわり、もう一つお仕置きが加わるからね。」そうおっしゃると高梨さんは、小振りなバックルを大きな手で外されたのです。
桜色の首輪は・・猿臂を伸ばした彼の手でわたくしの首に巻き付けられてしまいました。
「ぁぁ・・ゆるして・・・」
「だめだよ。僕に連絡をしてこなかった罰だ。今日は僕のパリ土産を身に付けてこの午後を一緒に過ごすんだ。」
美しい桜色に染められた細身の革は、上品な色合いのゴールドのバックルとリードを繋ぐ金具のところに小さな鈴が一つだけ着いておりました。いやいやと・・・首を振るわたくしの動きにつれて鈴はり・りん・・とあえかな音を奏でるのです。
「ふふ 似合うね。思った通りだ。祥子の白い肌にはぴったり合う。」
先ほどまで本を読んでいた時と同じ様にシートにもたれかかり、眼を細めてわたくしをご覧になりました。
「・・・はずかしいわ」
襟がV字に開いた黒のシルクニットは、桜色のスプリングコートに全て覆われていました。黒のロングヘアを背景に、首もとの白い肌と桜色とゴールドが優しい妖しさを奏でているのでしょう。
ほっそりと作られた上質な首輪は軽く・・・そして肌への感触も柔らかく・・・一見すると単なるアバンギャルドなアクセサリーのようにも見えました。
「これもあるんだけどね」
じゃ・・ら・・ 高梨さんがエディ・バウワーのジャケットのポケットからつかみ出したのは、桜色の革の引き手のついたゴールドの鎖のリードでした。
「だめ・・・」
まさかリードを着けて鎖を引いて歩こうなんておっしゃるつもりは・・・
「わかっているよ。これは、後のお楽しみさ」
リードを見て青ざめたわたくしの表情がわかったのでしょう。
でも、こんなリードはペット用としてトレンドではないのです。とすれば、もしかして・・・。
「痛いのか?」
首輪の縁に指を這わせていたわたくしに、高梨さんが少し心配そうに声を掛けてくださいました。
「いいえ そんなことは。あまりに滑らかなのでつい・・・」
辱める為のアクセサリーにうっとりと触れ続けているわたくしを、見とがめられた様に思えて思わず眼を伏せてしまいました。
「これは人間用だから痛くはないと聞いたんだがな」
「人間用?」
「ああ フォーブル・サントノーレにひっそりとあるその手の専門店で見つけたものだ。」
わたくしはてっきり、あの通りにあるペットショップで通りすがりに見つけられたものなのだとばかり思っていたのです。パリにあるボンデージのそれもひっそりと上顧客だけを待つ専門店・・・高梨さんはわざわざそこを訪れて・・わたくしのためにこれを求めてくださったのです。
「この前の時、あの首輪の痕があまりに可愛そうだったからね。」
この方と数日を過ごした間、わたくしの首には赤い大型犬の首輪が着けられておりました。大型犬用として用意されたその首輪は、お別れする時には・・・わたくしの白い喉にくっきりと赤い痕を2本刻んでいたのです。
「祥子用に探して来たんだよ。」
「・・・ありがとう・・ござい・ま・す」
わたくしは恥辱を与える道具に対する行為なのに・・・思わず御礼の言葉を口にしてしまいました。
パリ。ずっとご連絡もしないまま3月の初旬ごろにいらした場所のはずなのに、まだわたくしを思っていて下さったことが嬉しかったのです。
「随分と素直だな。」
高梨さんは目の前のカップの冷たいコーヒーを飲み干しました。
「本当だったんですね。」
わたくしからの連絡を待っていた事・・・そして少なくともわたくしのことを考えていて下さった事は。
「嘘なんか吐かないさ。」
ほんの短い言葉なのに・・・深く響く高梨さんの声。
彼を見つめてこくん・・と一つ頷くわたくしに、首輪の鈴がり・・りん・・と音色を添えるのです。
「さ ここの桜は飽きたから、桜並木でも散歩しようか。」
「はい」
日が翳りはじめたテラス席はほんの少し寒くなってきていたのです。
「コートの下に何を着てきたんだ? 見せてごらん」
「これですわ」
わたくしはコーヒーの最後の一口をいただくと、膝掛けを畳み・・・コートの釦を外して、黒でまとめたニットとデニムスカートの装いをお見せしたのです。
「そうか。じゃぁ、散歩の前に一軒買い物に付き合ってくれ。」
伝票を掴むと先に立って、ショップの並ぶ建物の中へと歩いて行かれたのです。
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祥子さんおはよう!貴女と話してみたい事たくさんあります。
2006/07/21 08:26| URL | 才蔵 [Edit] -
むむむ・・・調教ですね。
首輪の大きさを考えると私は余裕でフィットします(笑)
2006/07/21 08:27| URL | よしちょ [Edit] -
また雨の一日になりました。
災害も起きて・・・都内にいると想像もしないことが現実になっております。
こちらにお越しいただいている方に被害がないことを祈っております。
まだ雨が続くようです。どうか、御注意くださいませ。
才蔵様
そういっていただくと嬉しいですわ。
どうぞお気に召すまま・・・コメントしてくださいませ。
よしちょ様
首輪がフィットする?? もしかして着けていただいたことがおありですか?
一瞬、女性からうれしそうに首輪を着けられているよしちょ様を
想像してしまいました♪
2006/07/21 13:37| URL | 祥子 [Edit] -
祥子さんは寂しがりで甘えたなんだけど甘えベタ?そして孤独の時間も好き?
2006/07/21 21:32| URL | 才蔵 [Edit] -
あはは 着けた事はありません(笑)
前の職場でシベリアンハスキーがいたんですよ。
その犬の首が私より太かったので、
「これならオレでも入るな・・・ウン」
と思ったわけデスw
どちらかといえば私は標準よりSな方なので
着ける方です(笑×2)
しょ、祥子さん・・・なんちゅう想像を・・・(笑)
ではではw
2006/07/21 21:45| URL | よしちょ [Edit] -
すっかり高梨さんのペース…というかそういう展開を
望んでる祥子さんがいるわけだけど。
巧みなリード(笑)。
2006/07/21 22:55| URL | eromania [Edit] -
ウィークデーが4日しかない週末は、いつもよりお忙しかったのではないですか?
お疲れさまでございました。
才蔵様
そうですね。甘えたですけれど、実際に甘えようとすると
変な分別を出してしまったりしてつい甘えそびれてしまうんです。
1人の時間は・・・いつのまにか上手に過ごせる様になりました。
とはいっても、こうしてブログで可愛がっていただいているので・・・・
1人とはいえないかもしれませんね。
よしちょ様
シベリアンハスキーですか♪
彼ってそんなに首が太いんですね。知りませんでした。
失礼な想像をしてしまってごめんなさい。
eromania様
望んでいるわけではないのですが
高梨さんのおっしゃることには逆らえなくて・・・。
あの方はほんとうにお上手なんです。
わたくしをのぞむままになさるのが。
2006/07/22 00:23| URL | 祥子 [Edit] -
そうだね、構えた分別ある祥子さんじゃなく普段の無邪気な祥子さんとどこか新宿西口あたりのホテルでお茶したいな。
2006/07/22 01:28| URL | 才蔵 [Edit] -
才蔵様
おはようございます。才蔵様。
深夜のお誘いありがとうございます。
そうですね、いつかそんな時が来るとよろしいですね♪
2006/07/22 07:41| URL | 祥子 [Edit] -
そんな時は来ると思います。西口のホテルってラブホじゃないからね!笑。ラブホは歌舞伎町の裏にたくさんあるね!印象に残ったラブホとかありますか?私は渋谷のプールや広い岩風呂温泉があるホテルが印象的でした。
2006/07/22 12:45| URL | 才蔵 [Edit] -
才蔵様
ふふふ、さぁ 覚えてはいませんわ。
先日お友達と泊まったホテルは素敵でしたけれどね。
2006/07/22 13:38| URL | 祥子 [Edit]
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