Fireworks 2
お盆時期の東京です。人はいつもよりも少ない筈なのに、その日はなぜか新橋から浜松町にかけての駅は沢山の人で賑わっておりました。
羽田に向かうとは思えない、カジュアルな装いの方達ばかりです。
余裕を持って出て来たつもりでしたのに、17時30分と書かれていた集合時間まであと少ししかありません。
わたくしはその場には不似合いなスタイルで、人ごみを避ける様に駅の北口からタクシー乗り場を目指しました。
「日の出桟橋をお願いします。」
「かしこまりました。」
とても感じのいい運転手さんでした。ほんの僅かな距離ですのに、朗らかにお返事してくださったのです。
「凄い人ですのね。今日はなにかあるんですか?」
「ああ、花火があるんですよ。」
「えっ、花火ですか?」
「昨夜の雨のせいで順延したんですよ。お台場の方が綺麗なんですがここいらでも結構見でがありますからね。あの、お停めするのは桟橋の入り口でいいですか。」
人は沢山歩いていましたが、車はさすがに少なかったのです。
詳しい話を聞かせていただく前に、タクシーは目的地に着いてしまいました。
「ええそうしてください。ありがとうございます。」
ありがとうございました バフッ・・・ 運転手さんの声とリアドアを閉める音を残して、タクシーは走り去ってゆきました。
クルージングと花火。
本来なら別の日に行なわれる筈だった二つの出来事が、天候のせいで偶然に重なってしまったようでした。
日の出桟橋のゲートを潜ると、通りの喧噪はわずかに遠のいてゆきました。
ゲストハウスにはテーブルが2つ並べられ、スーツで正装した女性が受付をしてらっしゃるようです。
わたくしの前には4人の男性が受付をなさっていました。皆さん、会社の役職につかれているくらいの年頃の男性で、顔見知り同士のようです。
にこやかに談笑しながら、慣れた手つきで受付に名刺を差し出していらっしゃいました。
受付の女性はその名刺を受け取り、名簿のチェックをしています。
今日はプライベートでの外出でしたから、わたくしは名刺を持って来てはいませんでした。まさか受付に必要だとは・・・。
でも、たしか・・とパーティバッグの中を確認してみたのです。以前にこのバッグを持ってお仕事関係の方の慶び事にお邪魔した時に入れておいた名刺のうち2枚だけが内ポケットに残っていました。
「いらっしゃいませ。」
「おねがいします。」
上品な微笑みと明るい声で迎えて下さった受付の女性に、わたくしは、招待状に名刺を添えて差し出したのです。
その女性は招待状の差出人の名前を確かめるとリストにチェックをし、わたくしの名刺とともに返してくださいました。
他の方の名刺は、受け取ってらっしゃるのに・・・です。
「いらっしゃいませ、加納様。石塚専務よりうかがっております。どうぞ、船へいらしてください。18時の出航ですが、もうご乗船いただけます。」
「ありがとう。」
狐につままれたようでした。
それでも、なにか訳があるのでしょう。
今日のこのご招待いただいたパーティの内容すら、その実、わたくしにはわかっていないのですから。
いってらっしゃいませ、二人の女性の声に送られてわたくしは桟橋に向かいました。
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fireworks…花火の夜に火花散る恋情の
始まりですか。
クルージング、パーティ、花火…舞台は
整った。主役の登場を待つばかり。
2006/09/21 15:07| URL | eromania [Edit] - 管理人のみ閲覧できます
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2006/09/21 19:45| | [Edit] - eromania様
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久しぶりのスペシャルな舞台設定です。
ここに絡むのは・・・実は石塚さんだけじゃないんです♪
大人でもわくわくする花火の夜。
今夜わたくしをわくわくさせてくださるのは、いったいどなたでしょうか。
2006/09/22 14:49| URL | 祥子 [Edit]
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