2ntブログ

Fireworks 10

パーティバッグを室内に置いて、シャンパングラスを手にシーリングされたドアを開けました。
そこは小さなデッキに・・・いくつかのデッキチェアとテーブルがありました。
ここはこのお部屋からしか出ることができない場所・・・専用デッキのようでした。
ドォン・・・ドォン・・・ 
「まぁ、綺麗。ね、石塚さん。」
「そうだね」
手すりにつかまるわたくしの右隣に、ジャケットを脱いだ石塚さんが立たれました。
空には煙火店の職人さん達が技術の粋を尽くしたアーティスティックな尺玉が大きな花を広げています。音も・光も・色も・形も・・・伝統的な技法だけでなく新作も用意されているようです。
「ここは、専用デッキなんですの?」
「そうだよ。祥子さんと二人きりで貸し切り。」
「贅沢ですわね。」
「前にも言ったでしょう。祥子さんと過ごす時間に贅沢すぎるものなんてないんですよ。」
もう、この方は相変わらずなのです。
冬の別荘をわたくしと過ごす為だけに改装したり、AV車を新車で1台お求めになったり、京都まで陶器をご注文なさったり・・・。
「会社の会なのでしょう。こんなに綺麗なら他の方も上がっていらっしゃるんじゃないんですか?」
飲み干したシャンパングラスをわたくしの手から取り上げて、石塚さんはデッキのテーブルにご自身のグラスと並べて置きます。
「いや、この特別室は僕が個人的に借りたものだからね。だれも来ないし、誰も通しちゃいけないとこの船のクルーに言ってある。僕が上がってきた後はスタッフ以外立ち入り禁止の札が階段に掛かっているはずだよ。」
「そんなことなさって・・・お父様とお兄様に叱られてもしりませんよ。」
「大丈夫だよ。二人とも祥子さんのことは気に入ったみたいだからね。」
わたくしの心配を、答えとも言えない言葉ではぐらかしてしまわれるのです。
この方がこう仰りはじめたら、もうどううかがっても本当のことはおっしゃらないことでしょう。
いえ多分言葉通り、わたくしを招待するためだけに、このお部屋をご用意くださったかもしれません。

石塚さんの手がわたくしの髪を愛でています。
はじめてお逢いしたときから、この方はわたくしの髪がお好きでした。
「いつもすべすべで細くて気持ちのいい髪だね。」
「ふふふ、ありがとうございます。」
ドォン・・・ 重い音の塊が身体を直撃いたします。
胸の頂きまで伸びた髪は絹糸の様に細く、毛先までなめらかでした。
フリーになって、クライアントの男性から受けがいいからと髪を伸ばしはじめた時わたくしが決めたことがあります。そ
れは、髪が傷ついたら短くするということです。どれほど長くても、枝毛の目立つ傷んだ髪は、わたくしのライフスタイルがチープであるかと表しているかのように思えて・・・許せなかったからです。
ヘアケアはスタイリングではなく、全ては美しい・正しい髪を保つためのものでした。
さらさらと流れるストレートのロングヘアは、花火を照り返して複雑に色を変え、微かに吹く潮風に嬲られておりました。
「少し正月のころよりも長くなったかな?」
「そうですわね。」
「アンダーヘアも元通りに伸びたかな?」
「や・・・っ」
わたくしは、思わず石塚さんの方へ振り向いてしまいました。
お正月に雪の別荘でこの方の手で剃毛された・・・わたくしの茂み。
いまは、ほんの少しだけ短めに整えられた状態で、すっかり元に戻っておりました。
「なにをおっしゃるの」
「ずっと気になってたんだ。祥子さんがあれからどうしてるかって。ちくちくするからって2度と元通りに伸ばせなくなる女性もいるからね。」
チッ・・・
「だから祥子さんがどうしているか、あの時に撮った2枚の写真を見比べながらいつも考えていたんだよ。」
石塚さんはついと手を伸ばすと、わたくしの眼鏡を取り上げたのです。 コメント
忙しさに取り紛れ、香りを楽しむ間もなく、昨夜の豪雨で金木犀が散り敷かれて…。
でも、二人静の可愛いい実がその脇で紫に色を移していますね。すっかり秋…。
”銀幕…”は追いつけず、いずれ。今回のお話に浸ることに致しました。
例年、日の出近くの友人のマンションから見ますが、本当に隅田の花火より大きく豪華。煌く火の粉とお腹の底に響く音に包まれ…。
独特の高揚感が、どんな展開を?楽しみ楽しみ…。

2006/09/27 10:02| URL | るり  [Edit]
るり様
今年の金木犀は、なぜかどの木も花つきが悪いような気がします。
ほんの少しのお花でも良い香りがするのでオレンジ色の枝を探すのですが結局みつからず仕舞いなこともございました。

<銀幕>は、きっとるり様好みのお話だと思います。
秋の夜長にワインでも召し上がりながらゆっくりとお楽しみくださいませ。

花火は、ほんの2時間弱の短いイベントです。
その2時間に仕掛ける・・・艶技。
石塚さんの策略と手管(笑)をいましばらくお待ち下さい。

2006/09/27 13:04| URL | 祥子  [Edit]
やっぱり策略!?
言葉で追い詰めておきながらも、自分のちゃんと欲しい
言葉の方向に向かう逃げ道だけ用意してある。

お見事!石塚さん。

2006/09/27 22:15| URL | eromania  [Edit]
eromania様
石塚さんは<策士>なのでしょうか。
今夜もわたくしは、また石塚さんの手に堕ちていってしまいそうです。
逃げ道・・・
eromania様もそうして女性を追いつめてゆくのですね。

2006/09/28 07:35| URL | 祥子  [Edit]
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