夢のかよひ路 13
「祥子さん。」わたくしの耳元にかかる望月さんの息は熱をもっているかのようでした。
「そんなことを言ったら・・」
「言ったら?」
声に、意識的に媚びと甘えをコーティングさせてみたのです。
挑発・・・だと言われれば、きっとそうだったのでしょう。
「許しません。」
苦しそうに、でも喜びを滲ました声で望月さんがきっぱりとおっしゃったのです。
「許しません、僕が満足するまで祥子さんを離しません。紳士的になんてなれないかもしれない。それでもいいんですね。」
ゆうべ、ふたりきりのベッドで・・・わたくしはてっきり望月さんはそうなさるのだろうと思っていたのです・・・箱根の夜と同じ様に。
なのに彼の身体はわたくしに反応していたのにも関わらず、抱きしめて眠るだけで、昂りを堪える様にして静かに静かに過ごしてくださったのです。
わたくしは望月さんだけの手で満たされてゆく密やかな二人きりの時間を、熱望しておりました。
「ええ。あなたの好きにして・・・」
「行きましょう。」
甘やかな返事の途中で、望月さんは立ち上がりわたくしの手を引いたのです。行くって・・・どこに。
ダイニングキッチンを抜け、一旦廊下に出た望月さんはそのまま左手へ向かいわたくしを先に扉の中に押し込んだのです。
カチッ・・・ 後ろ手に、彼が扉の鍵を締めたのがわかりました。
出窓から午後の日差しが入るその部屋は、ベッドルームでした。
ライティングデスクとダブルサイズのワイヤーフレームのベッドだけが置かれたシンプルなお部屋は、望月さんにぴったりでした。
「ここは、あなたの寝室なの?」
扉の前に立って、レースのカーテンから溢れる日差しを身に纏ったわたくしを見つめる望月さんに、わたくしは無邪気に微笑みかけてみたのです。あまりに、険しい顔を彼がしていたから。
望月さんは声も出さず、眼だけで頷いてくださったのです。
リビングのソファーなんかじゃなくて、ここで・・・彼のベッドにわたくしを愛してくださるのだとわかって、嬉しくなりました。
背の高い望月さんは、つかつかと・・・わたくしに迫ってきます。
立ちすくむわたくしの肩に手を掛けると、改めてご自分の胸に引き寄せて強く抱きしめたのです。
「お願い、先にシャワーを浴びさせて・・・」
わたくしは性急に身体を這い回る彼の手に驚きました。
朝、温泉で身を清めてきてはおりました。
でも、その後5時間近くドライブをし、先ほどはソファーの上で・・・彼のキスで一度絶頂を極めていたのです。
いまの身体がどれほどはしたない状態なのかは、わたくしが一番わかっておりました。
キシっ・・・ 身じろぎをするわたくしに、シルクニットのワンピースが身代わりとでもいうように絹鳴りをいたします。
「必要ありません、祥子さんに洗い清めなければならないところがあるなら、僕が綺麗にしてあげます。」
「ぃやぁ・・っ」
「その恥じらいの表情も、濃く漂うフェロモンも・・・僕だけのものです。」
「お願い・・・ね。」
「好きにさせてくれると言ったのは、祥子さんです。」
「あぁっ・・・」
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言葉攻めとは違う…言葉の戯れ?甘えじゃれあう…。
それは心が解け合った仲だからこそのもの。
早く!抱きすくめられながら、熔けたい…!私も…。
2006/10/14 22:11| URL | るり [Edit] - るり様
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そうなんです。
望月さんがお相手だと・・・責めにならなかったりしてしまって。
でもその彼の言葉に絡めとられてわたくしは身動きができなくなってしまうんです。
2006/10/15 12:46| URL | 祥子 [Edit]
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