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外伝2/レンジローバーの帰り道 2

だから、きっと今度もそうなるだろう・・・と精の尽き果てた私達は半ば期待して、伸びた滞在日程の分だけ、望月くんひとりに祥子さんを託したのだ。
だが、今度ばかりは望月くんは必死の忍耐を見せたらしい。
もちろん、祥子さんは目の下にうっすらと隈を浮き立たせるほどに疲れ果てていた。一番若い望月くんが、持てる精力を尽くしたくてもとても応えられる状態にはなかったのかもしれない。
朝日を見た後の昼のまどろみも、夜の長い時間も・・・とうとう一度として、ほんのかすかにも祥子さんの<あの声>が聞こえる事はなかったのだ。
「ゆうべも結局静かだったな。」
まるで私の脳裏を覗いていたかのように、石塚さんが呟く。
「もし、ゆうべ祥子さんの声が聞こえたらどうするつもりだったんですか?」
同じ部屋の隣のベッドに寝ていた石塚さんは、何度か寝返りをくりかえしていた。時折深い寝息といびきが聞こえていたのでウイスキーの酔いで寝入っているとばかり思っていたが、そうでもなかったようだ。
「そうだな。メインベッドルームのドアを開けて、俺も襲っていたかもしれないな。」
美貴の多少いじわるな質問にも、さらっと答える。
「元気ですね。」
「我慢できるくらいなら、こんなに執着しないさ。」
「ははは、確かにそうですがね。」
私達もそして祥子さんも忙しい。
次にいつ逢えるのか、誰もわからなかった。
そして、だめになってしまうかもしれない約束を、無駄に祥子さんに押し付けることも出来ないでいた。

「さぁ、忘れ物がないように確認してくれ。まぁ忘れて行っても、俺のとこだからいつ取りに来てくれても構わないけどな。」
万座鹿沢口を右折した先の左手にあるこの雪の別荘は、石塚さんの持ち物だ。
ずっと祥子さんが休んでいたメインベッドルームは、実は石塚さんのための部屋だった。
「ゲストルームのベッドも手を抜かなくて正解だったな。」
夜通し責め続けた祥子さんを望月くんの手に委ねると決めた時、石塚さんが悔し紛れに口にした一言が妙に耳に残っている。きっと、ゲストルームのベッドで眠るのなんてはじめてのことだったんだろう。
自分たちの荷物は、今朝方まとめたものをもう望月くんが玄関口まで運んでくれてあった。
食料品は、ほとんど使い果たしたらしい。わずかに残った調味料だけが、冷蔵庫に残っていた。
ゴミは管理事務所が焼却処分してくれるし、生ゴミは車庫の脇に目立たない様に設置されたコンポストで有機解体されることになっている。
浴室は、メインもゲストも望月くんがきれいに洗って温泉の栓も締められていた。
祥子さんへのプレゼントの数々は、セルシオに積まれて既に東京に向かっている。
食器やスリッパなどは、もうこのままこの別荘の備品にすることに石塚さんは決めていたようだ。
行きに、セルシオとレンジローバーに満載してきた様々な荷物は、ほんとうにこじんまりとまとまっていた。

三人は、手分けをして別荘の中の忘れ物と戸締まりを確認していった。そして、結局メインベッドルームに集まってしまった。
「なんだかまだ祥子さんの香りがするみたいですね。」
「ああ。」
石塚さんが正面の壁一面にかかったカーテンを開く。そこは、昼の光をきっかりと反射する鏡面だった。 コメント
パーティーの後・・・・
 楽しい集まりの後に片付けてくれる人がいる
なんて贅沢な事でしょうね。
望月さんご苦労様です。
うちにも一人そんな人が欲しいなぁ。
ゆっくりと朝寝して、日差しに温まった布団の上で
ごろごろごろごろしながら
昨日の続きの夢をゆっくりと膨らませていたい。

2006/11/29 15:05| URL | さやか  [Edit]
さやか様
この間、知り合いの山荘にお招きをいただきました。
ですが・・・メンバーはほとんど男性。
結局全てのお食事とお酒のつまみはわたくしがお作りしたのですが(笑)、嬉しかったのは、翌朝目覚めたらいらしていた年若い男性のお二人が、前の晩のグラスもお皿も一生懸命洗っていてくれたことでした♪
その後、すぐに朝食を作る事になったのですが(爆笑)こんな心遣いってうれしいですよね。

2006/11/29 16:09| URL | 祥子  [Edit]
部屋の後始末の風景に彷徨う想いの残り香を
感じるような気がします。

丁寧な描写に物語が佳境に入る前の箸休めかな(笑)。
何がどんなふうに…期待して待つことにしましょう。

2006/11/29 22:08| URL | eromania  [Edit]
eromania様
大好きな人が先に去った共に過ごした場所。
なんとなく座っていた場所にその人のおもかげを思い出したり・・・わたくしはしてしまいます。

このスピンオフストーリーは、淡々と進んでしまうかもしれません。
1年にわたるこの3人の紳士とわたくしが過ごした時間の余韻を味わうだけ・・・かもしれません。
がっかりなさってしまいますか?


2006/11/30 00:13| URL | 祥子  [Edit]
おお・・・その山荘で・・・♪
本編もさることながら、さやかさんへのレスも・・・(笑)
そちらも気になるような・・・・(^^A

2006/11/30 00:16| URL | かなみ  [Edit]
かなみ様
ふふふ、それは・・・秘密です♪
でもとても素敵な山荘でしたよ。
いつか・・・ロケーションを使わせて頂いて、お話をお届けいたしますね♪

2006/11/30 00:19| URL | 祥子  [Edit]
プレゼントの数々。
雑駁なお話なら、そのまま置き去りになってしまうことも往々にしてあるのですが。
こうしてここにさりげなく描かれてあると。
帰宅したあとの祥子さんが眼を輝かせながら、ときに顔赤らめながら・・・手に取って眺めているところを想像してしまいます。^^


2006/12/10 09:49| URL | 柏木  [Edit]
柏木様
この方達との逢瀬の後は、わたくしのところにはしまい切れないほどのプレゼントがまいります。
どれも見事な品ですので、ことあるごとに大切に使わせていただいております。
とは言っても、ここに書かれている様にほとんど渡されるのは衣服や装飾品。食器まで届けられたら・・・・というのは杞憂でしたわ。

2006/12/11 00:54| URL | 祥子  [Edit]
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