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外伝2/レンジローバーの帰り道 3

「綺麗だったな。ウエディング姿の祥子さんは。」
「ええ。あのまま教会へ拉致して誰にも触れさせたくなくなりましたよ。」
美貴の言葉は、あの場にいた全ての男の気持ちだろう。
その気持ちの裏返しが、あのサディスティックなダイスゲームなのが美貴らしい。
marie-001.jpg

「望月くんも含めて4人でいても、全員が満足してしまう。そりゃもちろん、いろいろ思うところはあるさ。でも、こんなのは他の女じゃ考えられない。」
「そうですね。どうしてなんでしょう。」
ピン・ポォン・・・ピン・ポォン・・・
私がなにかを答えようとした時に、結城くんが到着したドアホンが鳴った。
あのこは、だれも答えないからといって自分からドアを開けるようなタイプではない。誰かが答えて開けるまで、じっと玄関先で待っているようなコだった。
「結城くんが来たようです。続きは車で・・・。」
「ああ。そうだな、帰り道も長いからな。」
先ほどと逆に石塚さんはメインベッドルームのカーテンを閉めた。

やっと昨日の夜に「明日チェックアウトして別荘まで迎えにきなさい。」って専務からのメッセージが入った。どんなに贅沢かしれないけど、1人のホテルは淋しかった。それに専務と一緒にいるのがあの<祥子さん>で、1日以上も予定より長く一緒にいたのかと思うと嫉妬で気が狂いそうだった。
綺麗な人だけど・・・往きの車のなかでずっと・・バージンのあたしにだってわかるようなこと・・・専務と石さんにいやらしいことをさせてた。まる一日消すのにかかっちゃった淫乱な匂いを自分もそれに専務にもさせる女。
ようやく専務のお顔が見られるけれど、最初に迎えに行ったときみたいに<祥子さん>がいたら嫌だな。専務が<祥子さん>しか見なくなるから・・・いや。

「待たせたね。」
「いえ、お荷物はどれでしょう。」
結城くんは元旦の朝、タワーホテルの扉の前に立っていたときと同じ表情でそこにいた。
「これだけだ。自分で運ぶからリアを開けてくれ。」
石塚さんが陽気な調子で結城くんに声をかける。
この人はいつもそうだ。少し神経質な感じで壊れそうなガラス細工のような風情の女の子なのに、ことさらに気を遣うといった風情を見せはしない。
どちらかというと一見は乱暴に見える物言いで踏み込む。でも、しばらくすると結城くんもリラックスして見えるのだからそれはそれで、この人らしい人心掌握術の1つなのだろう。
美貴は、ちょっとだけいつも結城くんのことは苦手そうにしている。
嫌なんじゃないだろうが、「彼女と居ると自分のしてることが汚いって非難されてるような気がするんだよ。」と飲んだ席で愚痴ったことがあった・・・のが本音だろう。
3人のトラベルバッグと、望月くんが用意してくれた着物を入れたバッグが3つ。荷物はこれだけだった。
私達はそれぞれにバッグを手にして、レンジローバーのリアにまわる。
「ありがとう。」
この車を降りた日、祥子さんのフェロモンと私と石塚さんの精の匂いで噎せ返りそうだった車内の空気は、ほんの僅かも残っていなかった。
今日下ろしたばかりの新車だと言われてしまえば、そう信じたくなるほどに車内の空気は清浄だ。まさか、このコはこの休みの間車の清掃に精を出してたわけじゃないだろうな。 コメント
結城さんの心のなかを青字にしたのは・・・とても印象的です。
それに<祥子さん>という書き方も。
彼女の持っているやや嫌悪交じりの競争意識が籠められているようですね。

>どちらかというと一見は乱暴に見える物言いで踏み込む。
さすがです。
石塚さんの人心掌握術。
ストレートにばしーん!ってやると。
意外に早く相手が素顔を見せてくれることがありますね。
わたしは小心者ですから・・・めったにいたしませんけれど。(^^ゞ

潔癖な若い子をけむたがる美貴さんの心裡が分かるようになったのも。
齢相応の、心の垢の賜物でしょうか。(苦笑)

部屋には祥子さんの残り香が漂っているとすら思えるのに。
車の清掃が行き届いていて。空気までもが清浄だったのは・・・
彼女の潔癖さからなのですね。

2006/12/10 09:54| URL | 柏木  [Edit]
柏木様
結城さんの青い文字は、ちょうど同じカテゴリの外伝にある「女性運転手 結城さん」の彼女のモノローグと同じです。
潔癖で清潔できっぱりとした彼女らしい色だと思いませんか?


2006/12/11 00:56| URL | 祥子  [Edit]
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