2ntブログ

SnowWhite 19

カシャ・カシャ・・カシャ・・カシャ・・・
高梨さんはいまはファインダーすら覗いてはいませんでした。
赤い切り子のロックグラスを口元に運ぶ瞬間も・・・今度はデジタルカメラが捉えていました。
温泉に温められて桜色になった指先が、グラスの表面の霜を溶かす瞬間まで、桜の日の散歩でわたくしのあられもない姿を写したのと同じカメラが捉えてゆきます。
カメラを意識するな、と言われてもとても無理でした。
カメラのレンズと、カメラを持つ高梨さんの視線と、そしてわたくし自身の姿態と・・・。
わたくしの意識は3つに引き裂かれていたのです。

「あん・・いゃん」
二人きりでした。広い1枚板のダイニングテーブルでしたが、他人行儀に向かい合うのではなく角を挟んだ左右に高梨さんとわたくしの席は作ってありました。
ロックグラスを持った右手はテーブルの上にお行儀良くしていましたが、リーチの長い高梨さんの左手は柔らかなロングスカートに覆われたヒップの丸みに触れたのです。
おっ・・という顔をされて、そのまま得心が行ったとでもいうように小さく頷きます。
「素足でも寒くはないだろうに。」
「お嫌ですか?」
高梨さんがおっしゃっているのはきっとガーターストッキングのことでしょう。
腰に走っていたサイドのストリングスが彼の指に触れたのです。
入浴をして、柔らかな素材のお洋服に着替えた時、わたくしはブラやガーターベルトといった類いのランジェリーを身につけるかどうかを少しだけ悩みました。
もうベッドに入るだけなら無粋なものは不要です。いつものレジデント棟の高梨さんのお部屋なら、お洋服の下にはスリップとパンティだけしか身につけなかったかもしれません。
でも、今夜お邪魔しているのは高梨さんのご自宅でした。
いつどんなお客様がいらっしゃるか・・・そしていまも窓の外からは、小屋の中の白雪がこちらをじっとうかがっているのです。
ふたりきりのお部屋に入るまでは、できるだけきちんとした姿でいるほうがいいと思い、外出するときと寸分違わぬランジェリーを身に着けたのです。
「いや、祥子のランジェリー姿は大好物だ。ふふ、今夜のデザートにとっておくか。」
「わたくしは献立の1つじゃありませんわ。」
「デザートじゃ気に入らないか、ん?それじゃ、この料理が前菜で祥子はメインディッシュって言う訳か。」
「もう。そんなことばかりおっしゃって。」
ゆっくりと3日間を過ごすというゆとりからでしょうか。
お逢いしてからの高梨さんは、性急にセクシャルな雰囲気になろうとはなさいません。いまも、言葉の応酬と指先の感触を楽しんでそれで満足なさってらっしゃるのです。

ぐぅぅぅ・・・
高梨さんのお腹が大きく鳴ります。
「早く喰わせろと、腹が文句を言ってる。これは祥子より先に眼の前のご馳走だな。」
「ええ、お鍋も煮立ちますから、そうなさってくださいな。」
カシャ・・カシャ・・カシャ・・・
わたくしは、掘りごたつ風になった足元から膝下を引き上げると、床の上に正座をいたしました。
少し腰を上げて、シュン・シュンと音を立てる土鍋の蓋をふきんを使って取り上げます。 コメント
こんにちは、祥子さん。
ホンワカした大人な雰囲気…憧れます,。*・;”☆


そっと身体にタッチ…
されたいですぅ(笑)

TPOに合わせた素敵なお洋服、参考にさせて頂きます。中々SHOPへ足を運んでも見付からないものなんですけどね(泣)

2007/03/06 12:07| URL | 柚  [Edit]
意識しちゃうの
 カメラがあると落ち着かないんです。
なんだか、とっても意識しちゃうんです。
街中で鏡に出会うと思わず微笑んでしまうみたいに
これって、ナルシズムなのかなぁ?

2007/03/06 16:55| URL | さやか  [Edit]
今日はこれから寒くなるようですね。
柚様
大人二人でお夕食です。
田舎の家でなんとなくほんわかと・・・テレビを見るでもなくBGMを掛けるでもなくお食事をするのって、炭のはぜるぱちぱちという音まで聞こえていいものですよ。
ワードローブは少しずつ気に入ったものを揃えて。
部屋着も部屋着として買うのではなくて、お気に入りのブランドのものの中から着心地の柔らかなものを<部屋着にする>のがわたくし流です。
シンプルなものばかりだから出来るのかもしれませんね。

さやか様
ふふふ、わたくしだって苦手です。
だからお酒を持つ手がちょっと震えちゃってます(笑)。
ショーウインドウに映る姿をチェックするのは条件反射っていうことで♪
もともと写すことも写されることも苦手なので・・・今回みたいなのはドキドキです。

2007/03/06 18:18| URL | 祥子  [Edit]
久保田なら大吟萬寿出なくても、本醸造百寿でも千寿でも、しっかりしたお味のお料理には合いますね。
でも、せっかっくのお二人の大晦日、美しい切子で良いですね…。
静かな夜、お鍋をつついて。なんて暖かな静かなお年越し。

モノトーンの桜、控えめで良いですね。
墨絵の猫柳の新芽の着物があるのを思い出しました。引っ張り出そうかしら…!

2007/03/06 21:28| URL | るり  [Edit]
いきつ戻りつ…大人の会話、ですね。
闇雲に抱き合っては無粋(笑)。

祥子さんの佇まいが見える気がする。

2007/03/06 21:38| URL | eromania  [Edit]
ありがとう
たぶん(笑)

風呂上りに、またきちんとランジェを

身に着けてくれたのは、なによりも

ランジェ好きの私のため・・・・・・


てなことは、無いのでしょうが、

とても嬉しかったですね(笑)

2007/03/06 22:34| URL | くろす  [Edit]
冷たい風の東京から
るり様
昨年の年末のような贅を尽くしたジビエも美味しかったのですが、こうした二人きりのお時間もいいものです。
久保田はほんとうにしっかりと丸いお味で、こんなお食事にはとてもあいますね♪
るり様と同じ好みで、ほっといたしました。

eromania様
これが、街中でデートしているのならこの後の時間はわかりませんから・・・とにかく、その雰囲気にっていう男性のお気持ちもわからないではないです。
でも、この夜のように必ず・絶対・ご一緒の夜を過ごすことが決まっているなら、こんな風に居るのも素敵だと思いますわ。

くろす様
くろす様もランジェリー好きでらっしゃるのですね。
このランジェリーを<拒否>ととるか、<嗜み>ととるか、<楽しみ>と取るかで・・・男性のお気持ちが少しわかるような気がします(笑)。

2007/03/06 23:51| URL | 祥子  [Edit]
祥子様へ
モノトーンの櫻も、趣があっていいモノですね。

ゆったりと流れる時の中での食事と会話、ほっと出来るひと時ですね。

ここ数年地酒は楽しんでいませんが、折角の奥多摩ですから、澤乃井は如何でしょうか?

2007/03/07 01:21| URL | tako  [Edit]
tako様
ありがとうございます。
なかなか気に入ったテンプレートがなくて、ようやくこちらに落ち着きました。
物語とのマッチングが難しくて(笑)。
そうですね・・・地元のお酒もいただいてみたいですねえ。
わたくしのお料理で合いますでしょうか?

2007/03/07 09:00| URL | 祥子  [Edit]
祥子様へ
今年は暖冬のおかげで、櫻のライトアップも例年に比べて、1週間は早まる様ですね。

お酒と料理のマリアージュは意識をしていないのですが、柔らかいお酒(純米酒クラス?)でしたので、たらちりならそのままか、温燗がいいのではないでしょうか? 

2007/03/08 01:27| URL | tako  [Edit]
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