SnowWhite ２０
「これから作るのか？」引き寄せたお鍋の具の大皿を見て、高梨さんが不思議そうな顔をなさいます。
「ええ、お鍋はすぐにできますから、お大根でもきんぴらでも召し上がってらしてくださいな。」
「ああ、さっきからもう手を出しているよ。こんなに味の染みた美味しいふろふき大根はひさしぶりだ。鴨のローストも旨かった。ああして鬼おろしとポン酢で食べるのもいいもんだな。」
おっしゃる通りでした。健啖家といえばいいのでしょうか、高梨さんは眼の前のテーブルにならんだいくつもの小皿をつぎつぎと空けてゆきます。
男の方らしいぐいと手を伸ばす召し上がり方ですが、テーブルマナーはとても美しいものです。二人分を合い盛りにした器に添えられた料理は、きちんと取り箸で手元の小皿に受けられるのです。
スタイリッシュなのに、お食事する姿があまり上品ではない男性が増えているなかで、高梨さんの召し上がり方は本当に気持ちのいいものでした。
カシャ・・カシャ・・カシャ・・・ カシャ・・カシャ・・カシャ・・・
そして、お食事と同じくらいスムースにカメラにも手を伸ばされるのです。
繰り返されるシャッター音は、いつしかわたくしから＜レンズ越しに見られる＞緊張感を奪っていったのです。
鍋の火加減を少し弱めて、わたくしは鱈の切り身を大皿からひとつづつお鍋に入れてゆきます。身が白くなったところでアクを掬い、それからふっくらとした長ねぎを入れました。
昆布だけの出汁が、鱈や長ねぎのコクで益々美しい光沢を増してゆくのがわかります。
わたくしは、まだ手を付けていないグラスに半分だけ万寿を注いで、滋味豊かな日本酒を鍋肌から流し込みました。
「そうですね。鴨も野鳥の一種なのでどうしても肉の臭みが気になるらしくて赤ワインで煮たり治部煮のように濃い味にしてしまいがちなんです。でもご用意いただいていたのがとてもいいお肉でしたので、あっさりと召し上がっていただこうと思って作ってみましたの。」
「時々鴨を料理するが、自分でするといつもぱさぱさな味になってしまう。あんなにしっとり仕上げるのになにかコツでもあるんだろうか」
「それはね、待ってあげることなんです。火を入れてから半日・・・すくなくても３時間くらいは、抜け出した肉汁の中でゆっくりとお肉を休ませて上げるといいんですよ。」
「なるほどな。出来立てが旨いとは限らないわけだ。」
「ええ。」
日本酒で少し収まったお鍋が再び小さく沸騰を始めました。わたくしはもう一段火を弱めたのです。
「もうお鍋を召し上がりますか？」
「ああ、手を出していいなら食べたいが。」
「白子は火を通しすぎたら台無しですから。それじゃおつくりしますね。」
「ああ。」
ガラスの器に入れてある白子を一塊ずつスプーンでお鍋にそっと滑らせる様に入れてゆきます。
ひとつ・ふたつ・みっつ・・・・。
「しかし、こんなたらちりは初めて見る。」
「そうですか。」
「余分なものが何一つない。たらとだしの昆布、それに葱だけ。」
「ふふふ、寂しいですか。」
- お腹がグー
-
読んでるとお腹空いてきちゃうわ＾＾
昨日からやっと起きだしました。
ご心配お掛け致しました。
まだ咳き込むときがありますが、無理しなければ出ないので、まだゆったりさせてもらってます。
寝込んでいた後半は、だいぶ熱も下がっていたので、携帯から読んでいました！
あまあまムードが、こっちまで幸せな気分になります♪
2007/03/07 09:03｜ URL | ゆうこ [Edit] -
今日はお鍋…
そんな気分になってしまいました。。といっても私が作ると闇鍋ですが(笑)
久保田の万寿…日本酒が大好きな私にはたまりません…夜は缶ﾁｭｰﾊｲで我慢します(笑)
柔らかな素材を選んで部屋着。素敵…参考になりました！
洋服選びも楽しくなってきますね☆.。.:*・°
2007/03/07 10:32｜ URL | 柚 [Edit] -
余分なものが何ひとつない…。
お鍋もお二人の会話も、ね。
食べてる姿はお洒落できませんね。
2007/03/07 22:14｜ URL | eromania [Edit] - 永代橋で早い桜が咲いていました
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ゆうこ様
コメントありがとうございます。
お加減もだいぶ良くなられたようでほっといたしました。
ベッドで携帯で読んでいただくのには、丁度良いソフトさだったかもしれませんね（笑）
早くこの後のハードな展開を楽しめるように、元気になってくださいませ。
柚様
お鍋って・・・意識を変えるだけでこんなに変わるものだと、改めて認識しました。
なんでも入れて楽しめるのもお鍋ですが、限られたお味をとことん極めることができるのもお鍋だと思うのです。
どうですか？この週末。お鍋で日本酒♪
eromania様
お食事をする姿を彩るのは、＜お行儀＞＜作法＞だと思いますわ。
だからごまかしのメイクは通用しません♪
とくに大人の時間にはね。
2007/03/07 22:40｜ URL | 祥子 [Edit]
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