SnowWhite 47
片手で、注がれるお屠蘇。構えられるカメラ。カシャ・・ カシャ・・ カシャ・・
シャッター音が始まりました。斜めから、朱塗りの杯とわたくしの指先とそして露になった頤から喉元までをレンズがなめているのがわかります。
そのリズムに合わせる様に、わたくしはゆっくりと久方ぶりのお屠蘇をいただきました。
カシャ・・ カシャ・・
わたくしがカメラの向こうの高梨さんに向かって微笑むまで、シャッター音は続いたのです。
「粋だね。祥子の飲み方は。」
「ふふふ、お上手ね。カメラに夢中になっているとお雑煮が冷めますわ。」
「ああ、いただきます。」
「どうぞ、召し上がれ。」
カメラを脇に置いて、大振りのお椀に高梨さんが手を伸ばします。
そのまま、まずお出しを味わって・・・ふうっとため息を吐かれたのです。
「お味が違いましたか?」
「いや、うちの味にあんまり近いんでびっくりした。」
「よかったわ。そう言っていただけて。」
お雑煮はその家・その家で味が違います。
基本となるお出汁の味はうかがうことが出来ても、取り合わせる具で随分味がちがうものです。
五品の具材を合わせた今朝のようなものから、具材には小松菜だけで花鰹を沢山掛けるという家もあれば、小松菜と里芋と鶏肉だけというお宅もあるのです。
まだもう一日、お雑煮を作るチャンスはありましたから、もし取り合わせが違っていたら高梨さんのお好みをうかがって明日は合わせてさし上げようと思っていました。
「ん、おふくろのより随分上等だ。」
おかわり、早速2つのお餅を平らげた高梨さんが空になったお椀を差し出します。
「はい。お餅はいくつにしますか?」
「2つ、だな。」
「はい。」
オーブントースターでお餅を焼きます。
本当は炭火で焼くと香ばしくて美味しいのですが、じっと見ていなくてはなりません。
今朝は祝い膳をご一緒したかったので、ちょっとだけ手抜きです。
「そんなことをおっしゃったら、お母様に叱られますよ。」
「ははは、九州にいるんだ。聞こえやしないよ。」
「もう、お正月から罰当たりだわ。」
「おふくろはね、ほんとうに料理が下手だったんだ。だから正月はこの家に来て、祖母のおせちを食べた。親父が銀行勤めをしてたから転勤が多くて、長男の嫁なのに祖母から料理を習う間もなかったんだろうな。ここで食べるおせちは、普段のうちのご飯より何倍も旨かったよ。」
「そうでしたか。」
高梨さんの家庭のお正月の味は<お祖母様の味>だったようです。
このお正月、少しでも曾ての想い出を楽しんでいただけるなら、こうしてお料理させていただけて良かったと思えました。
「ん、この味ならブリーダーの中野さんも文句なしだな。」
栗きんとんを口に運び、嬉しそうに笑う高梨さんの顔なんてきっとアシスタントの方は見たこともないでしょう。
- おせち料理
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今朝もお正月モードです。おせち料理。ずいぶん手間が掛かっているのでしょうね。料理をしない私にはよく分かりませんが、そういえばフランス料理なんかに比べて、和食は見かけは地味に見えても、その下ごしらえ、例えば出汁なんかにしても、昆布や鰹節等は、家庭に入ってくるまでに、既に相当の手間が掛かっているわけだし、それから出汁をひくのにも手間が掛かり、各国の料理の中でも和食のグレイドは最高のうちの一つだっていいますからね。
祥子様のお話はしばらくは、こんな料理モードやお正月モードが続くのでしょうか。教養の深い祥子様のお話は今まで知らなかった話題や興味が増えてとても得をしたような気がします。しばらくこんな時が流れても楽しいものです。そして、更にその後に、期待したシーンも待っているわけだろうし、「一読で二度楽しい、いや三度も四度も得をする」という思いです。
この後元旦がどう流れていくか、全く予想がつかないのも良いものです。
ああ、毎日が楽しくて、待ち遠しい今日この頃です。
2007/04/03 11:47| URL | オーバーチュア [Edit] - やれやれ・・・
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ちょっと忙しくてまとめ読みをしたら
クライマックスだったので力が入って
肩が凝ってしまいました(笑)
手に汗握るアクション官能小説?
のんびりとしたお正月の朝にほっと一息ついています。
2007/04/03 15:08| URL | さやか [Edit] - 雨もひとやすみ
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オーバーチュア様
元旦の朝の数時間・・・堪能いただいているようですね。
昨晩のお写真がどんなものかが解らないのは不安ですが、高梨さんの寛いだ様子を見るだけでもわたくしはとてもほっとできます。
激しい夜だけを過ごす関係というのは、ある意味大人の関係でもありますが・・・こういう日常をご一緒させていただいて、お慕いする気持ちというものは大きくなってゆくように思えるのです。
さやか様
そんなに激しいアクションシーンではなかったはずですが(笑)。
やはりカメラに撮られるという第三者の眼への緊張感のせいでしょうか?
このコメントだけ見たら、どんなバトルが繰り広げられているのかと知らない方には思われてしまいそうです(笑)。
2007/04/03 15:51| URL | 祥子 [Edit] - 花冷え
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桜が咲き始めたのを待ちかねたように「花冷え」する夜です。
深い官能のあとの穏やかなお正月のワンシーンも同様に…。
だからこそ桜も物語も鮮明になるのでしょうね。。。
2007/04/03 21:59| URL | dreamcat [Edit] - dreamcat様
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今日は夕方から酷い雨で・・・久しぶりに早くに仕事を上がったらすっかり濡れてしまいました。
この雨はひどく強くて、染井吉野もこれでは散ってしまいそうです。
ということで、テンプレートを変更してみました。
早く雨が上がって、桜葉が綺麗に見える青空がやってくるといいですね。
2007/04/04 17:14| URL | 祥子 [Edit]
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