ムーンナイト・アフェア 4
その建物は不思議なつくりをしておりました。和室なのですが、建物の中に玉砂利敷きの中庭がありいくつかの部屋があるのです。
天井にはあの箱根の宿と同じような黒々とした梁が渡っておりました。
「そこに座って待っていてください」
わたくしを先に部屋に上げ、すぐの和室をさして男性はそう言いました。
ベロアのコートを脱ぎ、ハンドバッグを右脇に置いて下座に座って戻ってこられるのを待ったのです。
しばらくすると、男性がボストンバッグを持って座敷に入ってまいりました。
「待たせたね」
上着を脱ぐ男性の後にまわり、黒革のジャケットを受け取ります。
「お預かりいたします」
衣桁に掛けてあるハンガーに彼の上着を掛けて、振り向いたのです。
「あっ・・・」
男性の手の中には赤い縄がありました。
無言のままで3束の縄を座卓に置くと、驚きでそのまま立ち尽くしているわたくしの前に立たれたのです。
「祥子、ひと月も僕を待たせるなんていけない人だ。今夜は邪魔は入らない。思う存分あなたを堪能させてもらうよ」
そして両手で黒のカーディガンをはいだのです。
さらっ・・・ カーディガンはわたくしの足元に落ちました。
先ほどの車の中での行為で、わたくしの身体は彼に抗うことが出来なくなっていました。
きっとどんなに抗っても、最後は彼の思いのままにされてしまうのです。
それに・・・自らSだと名乗る男性の嗜虐性が恐ろしくもあったのです。
「確認させてもらうよ。祥子」
男の視線を誘う様に第二釦まで開けられたカナリアイエローのブラウスに手を伸ばすと、第三釦・第四釦を順に外してゆきました。
「ふふ、綺麗だ。祥子の白い肌には濃色のランジェリーが映える」
釦を外すだけでも、高さのある胸の膨らみに自然とブラウスの胸元が開いてしまうのです。
そこには繊細な黒のハーフカップブラに押し上げられ、乳輪が見えそうなほどに盛上がってるGカップの白い乳房が揺れておりました。
いつもはスリップを付けているので、これだけでは決して人目に触れさせることのないブラの下の白い腹部までが覗いていたのです。
「おねがい。暗くして・・ください」
煌々と明かりのともる部屋での唐突な行為に、わたくしの声は震えておりました。
「だめだ。たしかに月明かりに映えそうな姿だがな。外で脱がされたいのか? 祥子」
あの魅力的な声に厳しさが加わるのです。この方のS性にスイッチが入ってしまったようでした。
「外なんて・・だめです」
「それなら口答えはするな」
足元の座卓から縄を取り上げ・・・わたくしの瞳を見据えながら・・捌くのです。
「ゆるし・・て ひどく・・しな・い・で・・・」
あの蝉時雨の夜、男性が床柱に縛られたわたくしを見ていた瞳を思い出してしまいました。
そして・・・箱根の宿で縄をかけられ、乱れてしまったわたくし自身のことも思い出していたのです。
失神してしまうほどに・・・淫らに達してしまったことを・・・
「手を後に組みなさい」
二つ折りにした縄を手に男性がわたくしの後に回りました。
わたくしは無言で両手を後に回したのです。
男性の手で手首を重ねられそこに縄を掛けられました。
「あっふ・・・」
どのくらいの長さがあるのでしょうか。わたくしの肌を縄が通るたびに摩擦熱が微かな痛みを伝えるのです。
数回まわされたあときつく結ばれ、その縄が引き上げられました。
そして左右からブラウスごしに胸の上下を縛めるのです。
最後に縄尻を手首に巻き止められてしまいました。
「あぁ・・・」
次から次へとわたくしを拘束してゆく縄の力に、わたくしは・・・切ない息を漏らすしかありませんでした。
「やはり祥子には縄が似合う。思った通りだ」
間近にわたくしを見てため息のように呟かれます。
「それにその表情。縄を掛けられるほどに切なく昂る、そんな表情を見せる女はそういない。やはり祥子はMだな」
恥ずかしさに顔を伏せるわたくしの頬を、男性の手がなで上げる様に動きます。
「返事は!」
手のひらを返しわたくしの顎を掴み顔を引き上げるのです。
「・・・はい ご主人様」
幾度もの絶頂のあと何の説明もなしにはじめられた緊縛に、瞳は濡れ怯えるような色をたたえていたと思います。
「祥子はMだな?」
男性の手が、きつく縛められた縄の下のブラウスの胸元を左右に強引に押し広げます。
「・・・やぁ」
カナリアイエローのブラウスは左右に大きく割られ、赤い縄は黒のハーフカップブラを付けた胸元を、直に上下に横切るように白い肌に密着します。
「もう一度聞くぞ。祥子はMだな?」
黒のシャツを着た男性の腕が伸び、申し訳なげにGカップの乳房を支えている右のブラのカップをぐい・・と引き下げるのです。
「ぁあ・・だめ・・」
わたくしの答えを聞いていないようにその手は左のカップまで引き下げ、縛められて一層大きく前に張り出した・・・たわわに柔らかくゆれる白い乳房を露にするのです。
「お仕置きだ」
柔らかく乳房を引き出していた指は、快感に堅くしこりたった左の乳首をきつく捻り上げたのです。
「あうっ・・いた・ぁ・・ぃ」
立ったままわたくしの身体は反射的に、後に引かれる様にぴくんと反応してしまったのです。
「素直に返事をしないからだ、祥子」
男性はしばし痛みに総毛立った左の白い乳房をなだめるように、手のひらで撫で回しました。
「・・・ひっ・・・」
ほっとしたのは一瞬のことでした。下がっていた左手が上がると左と同じように・・・右の乳首を責めたのです。
「言ってみろ、祥子ははしたないMですって。言え!」
男性は強い指の力で、勃ちあがっていた乳首を押しつぶすように力を加えながらそう命じました。
「祥子・・は・・はしたな・い・・M・です・ぅ・・ご・主人・・さまぁ」
わたくしは敏感な・・優しい愛撫でさえ感じ過ぎる乳首を痛めつけられる恐怖に打ちのめされておりました。
同時に、男性の強い意志の下に、いいなりに従わされる快感に打ち震えてもいたのです。
「そうだ、祥子。僕の質問には素直に答えるんだ。無意味に待たされるのは不愉快だ。その時はこうしてお仕置きをするからな」
立ったままで後ろ手に縛られ、着衣の上から乳房の上下に縄をかけられて、ブラウスとハーフカップの黒のレースのブラをはしたなく乱されたわたくしの肩を左手で引き寄せると、右手で仰向けた涙を溜めた瞼を一瞥して・・・唇を重ねたのです。
「あふん・・・んくっ・・ぁはぁん」
2ヶ月ぶりなのに・・・最初からわたくしの淫らな疼きを誘うように・・はげしく舌を絡めやわらかな唇を貪るのです。
くちゅ・・・ 男性は満足したのでしょう。
2人の唇の間に唾液の光る糸を引いて、一方的に口づけを止めました。
はしたないことにわたくしの舌は彼の唇を求めて・・・差し出されたままで・・髪を引かれ引きはがされたのです。
「祥子、僕は快楽系のSだ。決してあなたに苦痛を与えたいわけじゃない。素直に命令に従えば、今まで味わったことのないような快楽を与えてあげよう」
男性の右手はわたくしのしなやかな黒髪のロングヘアを楽しむように弄んでいたと思うと、指に巻き付け・・・くいっと後にひいたのです。
「わかったね、祥子」
「はい・・・ご主人様」
感じ過ぎる身体に与えられる痛みへの恐怖と、理性さえ白く蕩けてしまうMの快感に、わたくしは教え込まれたその言葉を素直に口にしてしまいました。
男性は満足したように頷くと2・3歩あとずさり、わたくしの姿を見つめました。
そして入って来た襖を開けて玄関の明かりを付けると・・・わたくしたちのいた部屋の照明を最小まで落としたのです。
たん・・・
次に、室内なのにどうしてそんなものがあるのだろうと思っていた腰高の障子を、左右に引き開けました。
そこは出窓のように50センチほど張り出して手すりが設けられておりました。
障子の向こうには、室内なのに玉砂利敷きの先に太い丸太柱を中心に植樹されている中庭が見えます。
室内を暗くした分、中庭スペースを照らす間接照明が明るく窓越しに差し込んでおりました。
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