夢のかよひ路 38
バン・・ わたくしの背中で運転席のドアが閉まる音がいたしました。RX7のエンジンは掛けられたままでした。路肩に止められた車はヘッドライトとハザードランプを煌々と点けたままだったのです。
暗い山の道は、真夏の夜の草いきれと緑の気配を濃く漂わせておりました。
「ここは、どこなの?」
「修善寺の山の中です。」
「山の中?」
「ええ。」
「何があるの?」
見渡しても、そこにあるのは青々と茂る樹々だけです。車はさきほどから1台も通りません。ただ、少し早い鈴虫の音だけが響くのです。
「何もありません。」
望月さんは、眩しいヘッドライトの向こうから声だけで答えるのです。
「それじゃ、どうして?運転に疲れたかしら」
訳がわかりません。先ほど海沿いのパーキングエリアで車に乗り込む時には、もう目的地まで直行すると彼は言っていたのです。
「祥子さんにお仕置きをプラスするためですよ。」
「いやぁっ」
光の中から近づいた望月さんの手には、引き捌かれた新たな縄が握られておりました。
「やめて・・・っ」
こんな場所で大きな声で抗う訳にはまいりません。
ここからはどんな明かりも見ることが出来ませんが、だからといって人が住まっていないとは言い切れません。もし、近在の誰かに聞かれれば、まるでわたくしが望月さんに暴行を受けている様に思われてしまいまねなかったからです。
「ゆるして・・ 望月さん」
わたくしの本気ではない抵抗など、彼の力の前には何の役にも立ちませんでした。
望月さんはつかつかと近寄ると、わたくしを抱きしめるかのように腕を回し、胸の上にあっさりと縄を回してしまわれたのです。
「ほら、また罰を受けなければならない理由が1つ増えましたよ。」
「あぁ・・ん・・」
シュルッ・・・二つ折りにした輪の部分に縄尻を通して引き絞ります。そのままもう一巻きし、今度は半幅帯の上辺のさらに上に・・・二巻きされてしまいました。
望月さんの着付けの技で、わたくしのGカップの乳房は上手くボリュームを抑えて綿の着物の中に納められておりました。その乳房を今度はもとの質量よりも一層突き出させるための縄を掛けるのです。
わたくしの身体は、2つの相反する綿の力に淫媚な軋みを上げていました。
そしてわたくしの腕には、まるで予告のように・・・今夜シンフォニーの中で長谷川さんが赤ワインで描いたのと同じ場所に・・・赤い縄が掛けられていたのです。
「これで手の自由もききませんね。でもまだ峠道が続きますから、これで最低限身体を左右で支えることもできるでしょう。」
長谷川さんならまず、ためらいもせずに後ろ手に拘束しているでしょう。
望月さんは、わたくしの両腕を体側に垂らした姿のままで着物の上から乳房の上下だけを引き絞るようにしたのです。
きつく食い込む縄は、白勝ちの着物の胸元を赤い縄で縊れ出させるだけでなく、腕の自由も確実に奪っておりました。
シュル・・・ わたくしの後ろにまわった望月さんは、縄尻で上下に平行に掛けた縄を背中で引き絞り、一層きつく食い込ませたのです。
「ぁぁっ・・」
「祥子さんがいけないんです。僕が話しかけているのにちゃんと答えないから、眠っているのだとおもって玩具を動かさなくちゃならなかったじゃないですか。」
「ちがうわ・・・」
西湘PAで望月さんに腰回りへの縄を掛けられていたせいだったのです。容赦なくFCの振動が送り込む快感にはしたなく反応してしまう身体が、わたくしの理性を奪っていったからです。
夢のかよひ路 37
西湘バイパスから国道1号線で箱根を抜け、136号線へ。その道が伊豆半島の中心を抜ける道であることも、カーブの多い細い山道であることも、以前にハンドルを手にドライブしたことのあるわたくしは知っておりました。
望月さんは、わたくしにした<お仕置き>のことなど忘れたかのようにペースを上げて走り続けました。
ロータリーエンジンは、彼のアクセルワークに応えるように高い口笛のような吸気音を響かせます。堅めのサスペンションとスポーツシートは、路面の小さなギャップさえわたくしの身体に・・・縄の結び目やプラスチックの塊でより深く・・・伝えてきました。
高低差のあるブラインドカーブさえ、望月さんはその先の道がどうなっているのかを熟知しているかのように綺麗に駆け上がり・・・駆け下りてゆくのです。
車内にはずっとスクウェアのサウンドが流れておりました。
情熱的なのにどこか乾いたその音色に、わたくしは口を開く度に言葉にならない艶めいた喘ぎを織り交ぜずにはいられなくなっておりました。
ドライブの間中、望月さんは時折思い出したようにわたくしに語り掛けました。
箱根の山道では美貴さんと一緒に行った宿のことや、わたくしの好きな季節の花の話題・・・。
いつもなら、なんということもなく答えることのできるそれらの問いかけに、わたくしは即答できず、ふっと声を飲み込んでしまうのです。
ヴィィィ・・・
「あぁっ・・・」
その度に望月さんはシフトノブを操るように、わたくしの帯に挟んだコントローラーの目盛りを上げてゆくのです。
ヴィィィ・・・
「ゆるして・・・」
微かな振動は赤い縄で繋がっている2つの結び目まで小刻みに動かしました。
ヴィィィ・・・
「おねがい・・ぁぁ・・」
少し大きくなったモーター音は、わたくしの真珠をダイレクトに愛撫しつづけるプラスティックの卵から聞こえてきます。
唇を噛みしめて堪えるわたくしに、それでも望月さんは新たな会話を仕掛けるのです。わたくしにはもう・・・彼の声を言葉として理解するだけのゆとりはありませんでした。
答えられないわたくしの帯の上に小さく赤く光る玩具のランプをめがけて、望月さんの指が走るのです。
ヴヴィィヴィ・・・
「だめっ・・いっ・ちゃう・・」
MAXにまで引き上げられたプラスチックの卵の振動に、わたくしはたまらずに追い上げられていったのです。
あの深夜のホテルの開かれた扉の側で、目隠しをしたまま玩具に嬲られて・・・潮を吹き逝き果てたことを思い出してしまいます。お着物の姿のままあんな風にはなれません。でも・・・・。
「あぁぁっ・・・・いくっぅぅ・・・」
シートベルトで繋がれたレカロのシートの中で、わたくしは逃れる事もできず、玩具の振動に・・・達してしまったのです。
キッ・・・ RX7が唐突に停められました。
そこは、左右を森に囲まれた道でした。
望月さんは無言で玩具のダイヤルをオフにしました。
ヴッ・・・
小さな卵形の塊が止まっても、わたくしはまだひくひくと内ももを震わせて淫楽に捉えられ続けておりました。望月さんの隣で続けられた淫らな責めは、わたくしの意識を蕩けさせていましたが、底に残った微かな理性が、潮を吹くと言う最悪の事態を避けられたことに・・・ほっとしていたのです。
玩具の振動が途切れたことで、わたくしは目的地に到着したのかと思ったほどでした。それでも、道の途中でしかないことは明らかだったのです。
「外に出ましょう。」
望月さんが、ドアロックを解除します。
ここがどのような場所なのかはわかりませんが、彼がそう言うなら何かわたくしに見せたいものがあるのでしょう。
望月さんの手が、わたくしの腰の右にあるシートベルトのロックを外します。
ヴィッ
「ぁぁっ・・・」
巻き上がってゆくシートベルトが、偶然に玩具のダイヤルを動かしたのです。
再び上がったわたくしの嬌声に、望月さんは何も言わずに玩具を止めてくださいました。
「さぁ、降りてください。」
望月さんも自分のシートベルトを外しました。が、ご自分はまだ運転席に座ってらっしゃるのです。
促すような視線に、わたくしはひとりドアを開けて車を降りました。
夢のかよひ路 36
望月さんがポケットから出したのは・・・小さな卵形の玩具でした。深夜のシティホテルでその玩具だけで潮を吹くほどに追い上げられた記憶が蘇ります。
「やぁ・・・」
「動かないでください。」
もう一度、跪いた望月さんは、ただ引き揃えられた2本の縄がくいこんでいただけの真珠に、その卵を押し当てて、縄で固定してしまったのです。
「あ・・・っ・・」
卵の分だけ、2つの結び目は一段とわたくしの秘めた場所に食い込むのです。
「もうぐっしょりと縄が濡れていますよ。祥子さんは、括られるのが好きなんですか?」
「ちがう・・わ。」
「このままだと、着物を汚してしまいそうですね。」
「いやぁ・・・」
望月さんはポケットから出したハンカチをアナルの結び目の先に挟み込んだのです。そして、小さなナフキンを当てるように・・・淫らな赤い縄の結び目に添わせてわたくしの太ももに挟み込ませたのです。
「これで足りればいいのですが。」
立ち上がった彼は、わたくしの着物の裾を整えると、着物の合わせた裾からローターのコントローラーを出して・・・右の乳房の下にあたる帯に挟み込んだのです。
「許して・・・このままドライブなんてできないわ。」
声を押し殺したままわたくしは望月さんに許しを乞うたのです。
わたくしの身体は、RX7の走行の振動だけでも感じてしまうのです。なのに股縄を掛けられて・・・結び目の瘤を2つの女の部分に押し込められ・・・そのうえ、動かされていないとはいえ真珠の上にはあの卵形の玩具が置かれているのです。
「さあ行きますよ。助手席に乗ってください。」
望月さんがRX7のドアを開けます。
「はぁうっ・・・」
乗り込もうと身をかがめただけで・・・食い込みは一層きつくなるのです。このままスポーツタイプのシートに座り続けていなくてはならないなんて。
わたくしはやっとのことで、シートに身を預けたのです。それだけで精一杯でした。
「シートベルトをしてください。」
「ぁぁ・・ん・・」
シュッ・・・運転席から身を乗り出して、望月さんがわたくしにシートベルトを掛けたのです。
無造作に掛けられた幅広のベルトさえ、駐車場での痴戯に昂りきった乳房の先端を擦りあげ、わたくしを快感で責め立てるのです。
「これで眠りそうになったら起こしてあげられますね。」
ヴゥゥゥ・・・っ
「ああっぁ・・」
一瞬の振動でしたが、レカロのシートの上で、わたくしは着物に包まれたからだを跳ね上げてしまいました。あの玩具は・・なんて場所に触れているのでしょう。
「ゆるして・・・・」
「お仕置きだと言ったでしょう。祥子さん。それじゃ、目的地まで一気に行きますよ。ちゃんと起きて僕と話しながらドライブを楽しみましょう。」
望月さんはウインカーを上げ、西湘南バイパスへと白いFCを合流させてゆきました。
夢のかよひ路 35
「だめ・・・ゆるして・・・」「もう一度言います。祥子さんのその手で裾を捲り上げてください。ご自分でなさるなら車が通るそちら側の裾は下ろしたままにさせて上げましょう。」
「あぁ・・・」
「もう一度言います。今度聞かなければ、ここで胸縄を打ちますよ。」
「ゆるして・・・」
わたくしは、とうとう裾に手をかけたのです。
ついさきほど化粧室でしたのと同じ様に・・・着物の裾を広げたのです。
「そのままにしてください。」
「あぁ・・ん」
望月さんは、レストハウスの人から見れば、まるでわたくしに優しく話しかけるかの様に近づきました。そして、恋人の腰を抱く様に、開いた着物の中に赤い縄を回したのです。
しゅるっ・・・二つ折りにした輪に反対側の先端を通すのです。前に垂れた縄に2つの結び目を作りました。
望月さんは腰に巻き付いた輪を、わたくしの腰を抱く様にして180度後ろへと回したのです。
「足を開いてください。」
わたくしは、脚を開けませんでした。その一言で・・・先ほどの2つの結び目の意味が想像できてしまったからです。
「祥子さん。もう一度言います、脚を開いてください。」
望月さんのローファーが、わたくしの白木の下駄の間に差し込まれます。
じりじりと・・・わたくしは脚をほんの少し開かせられていったのです。
「どうして、素直にできないんですか?」
「ゃぁん・・」
まるで、恋人が落としたイヤリングを拾う様に、わたくしの足下にかがみ込みました。そうして、現実には下駄の奥に垂れた赤い縄を拾い上げたのです。
わたくしはもうそれだけで・・・恥ずかしさに蜜を溢れさせてしまっておりました。ランジェリーを付けない着物姿のわたくしの茂みには、淫らな香りの汁が溢れるだけ染み込み絡んでいたことでしょう。
「ぁっ・・・」
望月さんはかがんだままで、縄端を彼の目の前を横切る腰に巻かれた赤い縄に下から通したのです。
「あっ・・・ぁぁっ・・・・」
そして立ち上がりながら、その縄をたぐり上げ・・・わたくしの太ももの狭間へ・・花びらへと縄の結び目を割り入れてゆくのです。
「まだ緩いですね。」
必死に力を入れて拒もうとする腰の谷間も、望月さんの腕力には敵いませんでした。
「ぁぅっ・・」
アナルへ、花びらへと結び目が押し込まれ・・・真珠の上を縄が擦りあげたのです。
「そんな声を上げたら、人に気付かれてしまいますよ。祥子さん。」
潮騒にまぎれるだけに声を押し殺していたつもりでした。
それでも、くいくいと引き上げられる綿縄の刺激は、同じ波音の聞こえる船の上で、今夜石塚さんに責め立てられ一度は達した身体には淫楽が過ぎました。
しゅるしゅると・・・縄が始末されてゆきます。
望月さんの手が広げた着物の裾の中から抜かれたところで、わたくしは恥ずかしい姿を・・・せめて表面だけでも元にもどそうとしたのです。
「だめです。まだ、そのままにしていてください。」
夢のかよひ路 34
「すごいわ・・・早いのね。」わたくしが憶えていた最後の場所は・・・三ツ沢に向かう横羽線の上でした。
だとすれば、ここに来るまで有料道だけでなく一般道も走らなければなりません。白いRX7は軽快に前をゆく車をパスしてきたのでしょう。
「休憩しませんか?」
「ええ。でも、こうして普通に起こして下さればよろしかったのに。」
「僕に向かって少し開いた唇を差し出した祥子さんを見たら、こうするに決まっているじゃないですか。」
「もう、いじわる。」
これ以上セクシャルな会話にならないように、わたくしはドアを開けました。
助手席のドアの外は駐車場の端の壁になっておりました。
車から見た駐車場は、さすがにこんな時間だったからでしょう。数台の車が化粧室の近くに停まっているだけでした。他の車はあそこにあるのに、なんでわたくしたちだけ・・・こんなに離れた場所に?
「いきましょう。」
ドアをロックした望月さんに、声を掛けられてわたくしは質問をしそびれてしまったのです。
もう23時をまわっていました。シーズンとはいえ、小さなレストハウスは自動販売機だけが明るかったのです。わたくしは化粧室を出て、自動販売機でブラックの缶コーヒーを2つ買って、車へと戻りました。
「よかったら、これ召し上がってください。」
望月さんは、もう車に戻っていらしてました。
車の前のコンクリート壁に壁に腕をついて、潮騒に包まれながらじっと黒い海をみつめていたのです。真夏の海は、日差しがなくても汗が溢れるような熱気に包まれておりました。
「あっ、ありがとうございます。冷たくて気持ちいいな、いただきます。」
彼はさっそく缶を空けて口にします。
「疲れましたか?運転。」
わたくしは、袂に自分のコーヒーを仕舞うと望月さんの隣に立ったのです。
「いえ、運転は好きですからね。いつもの車よりは楽ですよ。」
美貴に聞かれたら怒られそうですね、と悪戯っぽく笑います。
「ごめんなさい。わたくし隣で眠ってしまったりして・・・。」
「そうですね。お仕置きをしなくてはいけませんね。」
真面目な声で、わたくしを見つめて・・・。
「そちらに行きましょう。」
車の向こう側、助手席のドアの方へとわたくしを押しやるのです。
「ここで?」
「そうです。」
バタっ・・・既にエンジンが掛けられていた車の中からは、エアコンで冷やされた冷たい空気がわたくしに足下に流れてまいりました。
でも、それよりも開けたドアの中、助手席に置かれていた赤い縄が・・・わたくしの背筋を冷たくさせました。
「いや・・・」
後ずさろうとも・・・わたくしの背中は、コンクリートの壁でした。
「祥子さん、ご自分で着物の裾を捲り上げてください。」
「だめ、できないわ。」
「お仕置きですから必ずします。ここでぐずぐずすれば気付かれた誰かに近くに車を停められるだけですよ。さあ。」
束になった縄を、望月さんは二つ折りに捌き直すのです。
「や・・・」
「帯までならFCに隠れて駐車場の他の車からは見られません。それとも、他の車にわかるように、胸縄を掛けてそのGカップを剥き出しにされたいですか?」
