2ntブログ

銀幕の向こう側 19

無言のままの3分あまりが過ぎました。
「君の従順さは素晴らしいね。私とは、ほんの4時間ほど前に偶然に映画館で逢っただけの間柄なのに、私の望みを感じ取ってそのまま体現してくれる。」
「恐れ入ります。」
「どこまで従順なのか、試したくなるね。」
「それは・・・」
「そこで、オナニーをして見せてくれないか。」
「えっ・・・」
わたくしは、凍り付きました。
この方と、この部屋に来たばかりのころのように・・・混乱している時だったら・・・もしかしたら今夜限りと、この男性の仰ることを受け入れてしまっていたかもしれません。
でも、激情が去り・・・冷静になった今、とてもではありませんが、そのようなはしたないことはできません。
「とても・・できませんわ。」
ふるふると・・・見えない男性に向かってわたくしは首を横に振ったのです。

「もう一度言うよ。そこでオナニーをしなさい。」
「できません。お許しください。」
わたくしの即答に・・・ふっと空気が動いたのです。
「しかたないね。」
男性の声が、今度は唐突にわたくしの真後ろから聞こえたのです。
「オナニーをして見せないのなら、この手はいらないね。」
背中に男性の体温が被いかぶさってきたと思った途端に、わたくしの両手は男性のさほど力があるとは思えなかった腕に掴み取られ・・・頭の後で一つにされてしまったのです。
「いや・・っ・・・」
自由を奪われる恐怖感に、わたくしは一瞬パニック状態に陥りました。視覚を奪われていなければそれほどでもなかったでしょう。
この男性に従順に身を任せ・・・今夜の残酷な再会を全て忘れたいと願う自分と、一つずつ自由を奪われてゆくことへの恐怖がわたくしの中でせめぎあっておりました。
男性はわたくしの手のひらをもう一方の手首を掴むような形に合わせると、眼を覆っているのと同じ質感のスカーフを巻き付けてゆきます。
「大丈夫だよ。君を傷つけるようなことはしない。約束しただろう。」
わたくしが、微かに震えていたのが・・・この方にも解ったのでしょうか。

「社会的にセックスのタブーの壁が低くなって、性の様々な知識や行為が誰にでも当たり前のように認知されるようになった。」
頭の後に括った手を置くと、男性は話しながらゆっくりとわたくしの右手の側を通って正面へと動いていらっしゃるようです。
「オナニーも、大人が性欲を発散させるための正しい手段として中学生・・いや・・早熟な小学生すらその行為に耽るものもいるという。」
男性の声の位置は動いてゆくのに、まるく深い声はわたくしに真っすぐに向かってくるのです。
「知識として広まって、誰でも知っている・事実として認められているということと、その行為を何の羞恥心もなく晒すことは、全く違うと私は思っている。」
男性の声は正面の・・・丁度わたくしのひざの上あたりで止まりました。
「君がね、私の命令を拒否してくれてうれしいよ。」

たぶん、膝先から1mと離れていないところにいらっしゃるのでしょう。
「君はいろいろな想いを吹っ切りたくて、私に身を任せてくれると言った。だけどね、人として・・・女性として一番秘めなくてはならないことを明かしてくれるほどの関係性は二人にはまだない。」
一度は留まったと思った声が、また少しだけ遠ざかるのです。
「初対面の若い女性がね、セックスはしないけどオナニーなら見せて上げると笑顔で言う姿は、吐き気を催すほどに醜悪だ。どんなに淫らなことをしようとも、羞恥心のないものを、わたしはMだとは認めない。それは、ただの淫乱だからね。」 コメント
きちんと羞恥心を持っている女性って魅力的です。
たとえその素顔のひとつに淫らな顔を持っていた
としても、男はその落差に強く惹かれます。

PS:投票の記事に気を取られて、珍しく祥子さんが
   お休み?って勘違いしてしまいました(笑)。

   まだまだですね。

2006/09/06 21:51| URL | eromania  [Edit]
こんばんは。
お久し振りになってしまいました。

もしかして、シチュエーションは異なりますが、ナインハーフを意識されていませんか。
目隠しから何となく思っていたのですが、手を頭上で括る場面になって、もしかしたらと。
以前、祥子さんがナインハーフに言及されていたことがあったので。
ちょっと、うがちすぎですか。
段々、好きな場面になってきたようです。

2006/09/06 22:17| URL | masterblue  [Edit]
少し肌寒い夜ですね
雨が通り過ぎた後、ジャケットを着ていてもちょうど良いくらいの気温になっています。
もう、秋ですね。

eromania様
羞恥心を持ち続けるということは、いまの時代難しいのでしょうか。
早朝から10年前でしたら考えられないような・・・女性がパンティを見せつけるようなお洋服を着ることなど、ますますその風を感じてしまいます。

masterblue様
ナイン・ハーフですか・・・。
そうおっしゃられて、はじめてそう言えば似たシーンがあったことを思い出しました。
恥ずかしながら、全く意識もしておりませんでした。
この男性は、わたくしが泣きはらした目を恥じていることを、全くはじめて出逢った相手の存在を意識しすぎていることを・・・そして、わたくしがほんの少しでも心理的な余裕があれば映画館で出逢った人のことを考えてしまうことまで見抜いていらしたのでしょう。
こんな方法で、わたくしを責めはじめられたのです。


アンケートのご案内を当初アップした日付に移動しました。
解りにくい構成にしてしまって、申し訳ございませんでした。
これからもよろしくお願い致します。

2006/09/06 23:51| URL | 祥子  [Edit]
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