初雪 51
ソファーの背に反るようにして腕を望月さんに掴まれながらも・・・わたくしは両脚を堅く閉ざしておりました。石塚さんに開かれた裾も・・・深くソファーに腰掛けた姿勢のために茂みまでを晒すことはなく、太ももの中程までしか露にしていなかったのです。
「本当ですね。まるで今日の器のような艶やかさです。」
山崎さんがため息のような言葉を漏らします。お三方は暖炉の手前まで下がり・・・わたくしの姿を<鑑賞>なさっていました。
「まるで祥子さんが椿の花芯のようですね。赤い湯文字が・・・こんなに艶かしく見えるとは」
着物姿のわたくしを、独り占めして嬲り尽くしたことのある美貴さんまでもがそんな風におっしゃるのです。
「祥子さんの太ももからふくらはぎにかけての白さや柔らかさは格別だね」
石塚さんのひと言は、わたくし自身に羞恥の愉悦を誘いそそるような・・・言葉でした。
「おねがい・・・ゆるして・・・」
腕を取られ・・・革のソファーに押さえ込まれているだけで・・・僅かな身動きさえ封じられていました。
「いいですか?」
わたくしにではなく石塚さんと美貴さんだけに許しを得て・・・山崎さんが近づいてきます。
「あぁん・・やめて・・くだ・・さぁい・・」
襟元に手を掛けて・・・力の限り胸元を左右に割るのです。
「やぁぁぁ・・・」
「ああ いいな」
石塚さんの唇からこぼれたのは、体芯から漏れるような・・・栗の花の香りが微かに漂うような声でした。
きちんと着付けられた着物の胸元は、力づくでくつろげられても自然と閉じようとして、Gカップの白い両の乳房を締め付ける様に持ち上げるのです。
「おねがい・・・みないで・・」
わたくしは望月さんだけに聞こえる様に、哀願の声を上げたのです。頭上から見下ろす彼の視界には・・・より淫らな姿が映っていたに違いないからです。
「ミルクを溶かした肌の色。ふふ その量感の乳房に相応しい色ですね」
美貴さんの視線が胸元を嬲ってゆきます。その視線だけで、乳房の先端を堅く・・堅く変えてゆくのです。
「脚もそうだよ。いま時の、生脚をためらいなく晒す女性たちのかさついた脚とは格段に違う。ストッキングに常に覆われているしっとりと滑らかな白い肌。そのむっちりとした太もももたまらないね」
ソファーに深く腰掛けているとはいえ、着物の裾はふとももの中程より少し上まで開き・・・普段ガーターストッキングに覆われている部分は全て曝け出されているのです。
「触れずに見ているだけというのも、乙なものですね。そんなにしっかり脚を閉じなくても大丈夫ですよ、祥子さん。」
僕たちは視姦しているんだよ・・・と、山崎さんは言外にもっとしどけない姿を要求してきました。
確かに、両手を望月さんに捕らえられ何一つ隠すことは出来ません。だからといって、自らはしたない姿を晒してゆくなんてわたくしにはできません。ただ一つ遺された<しっかりと脚を閉じ合わせること>だけを守り続けていたのです。
「脚を開いてくれませんか。祥子さん」
「いや・・だめです」
この姿のままで脚を開く・・・想像は出来た言葉だとはいえ・・・そんなはしたない姿・・できません。
「祥子さんの花びらを見せてください。さぁ」
美貴さんの声が重ねられます。
「そんなこと・・・」
「ご褒美をくださるんでしょう」
「・・・でき・ないわ」
「僕たちはこの豪奢な衣装に包まれた祥子さんを楽しみたいんですよ。もう一度言います 脚を開いてください」
「・・ゃあ・・・」
「望月!」
次の声は鋭い命令の声でした。
「やめて・・・」
望月さんが押さえていた手首に、縄の感触が這ったのです。
わたくしは静かにはしていられませんでした。身体を捩り、彼の手から逃れようと抗ったのです。
「そうして暴れる姿さえもそそりますね、祥子さん。あぁそんなにバストを揺らして」
山崎さんのひと言に、わたくしは身を堅くしてしまったのです。
その一瞬を逃さず、止めつけられた手首の縄がぐい・・と後に引かれたのです。
望月さんが引き下ろした縄尻を、ソファーの脚に結びつけたのです。
「もうこれ以上は言いませんよ、祥子さん。貴女の意志で脚を開いて僕たちに見せてください」
美貴さんの最後通告です。逆らえば・・きっとこの方達の手でこの脚を押し広げられてしまうのです。でも・・・
「ゆるし・・て・・おねがい」
わたくしには4人の男性の前に許しを乞うたのです。
初雪 52
「困った人だ、素直に言うことを聞かないなんて。仕方ないですね、望月」この方達は、わたくしの正面に立ったまま動きません。
代わりに、わたくしの前に赤い縄を持った望月さんがいらしたのです。
「失礼いたします」
後の男性達の眼から隠す様にわたくしの正面に膝をつくと、わたくしの膝を彼の手の厚みの分だけ開いたのです。
「やぁ・・」
二つ折りにした縄を、右の膝に巻き緩みを加えて留め付けます。
同じ様に左の膝も・・・。
身体の両脇に左右の膝を縛った縄のそれぞれの端を置いて、望月さんは立ち上がったのです。
それだけ・・・?
立ち上がる彼を見上げ、彼に開けられたほんの少しの膝のゆるみを・・・わたくしはまたぴったりと付けたのです。
「もう一度言います。祥子さん、ご自分で脚を開いてください」
「おねがい・・ゆるして・・縄を解いて」
脅されるように縄で括られても・・・自分から脚を開くなんて・・・できません。
「ご自分では出来ないんですね。仕方ないな。望月、手伝って差し上げなさい。」
「はい」
わたくしの左右に置かれた縄を望月さんが手にすると、先ほど以上の力でソファーの背に向かってぐぅぅぅっと引かれたのです。
「きゃぁ・・あぁぁぁぁ・・・やめ・・てぇぇ」
膝を左右に割られ引き上げられて・・わたくしの脚ははしたなくM字に開かれてしまったのです。
「祥子様、危ないですから暴れないでください」
ソファーの背から望月さんの声が聞こえました。
その声はやがてソファーの脚元に移動し、わたくしを羞恥にまみれさせる為だけに縄尻を手首の縄と同じように固定してしまったのでした。
「こんな姿・・いやです。お願い元にもどして・・」
膝に縄を掛けられても、その場でこの方達に脚を左右に開かせられるだけだと思っていたのです。
なのに・・・
わたくしの両膝は、括られて袖口から露になった二の腕の近くまで・・・白足袋のつま先が、ようやくソファーの革の座面に触れる程に引き上げられてしまいました。膝の上で上品に割られていた着物の裾は・・・百花繚乱という言葉のままに乱れ腰のまわりに絹の波を作り出していました。
「祥子さんのアナルまでくっきり見えますよ」
美貴さんの視線は・・・せり出さされた腰の奥の姫菊の蕾を探り当てておりました。
「いやぁ・・ゆるして」
そんな奥まで晒されているのです。わたくしのはしたない部分は全て・・・赤く燃える暖炉の火に照らし出されてしまいました。
「祥子さんの魅力が一望だね」
わたくしは、いままで決してこんなはしたない姿態を晒したことなぞありません。こんな姿・・・耐えられません。
「おねがい・・解いて・・・」
背後に立つ望月さんを見上げるようにして、哀願の言葉を重ねたのです。
「祥子さん、お願いする相手が違いますよ」
「あぁうぅっ・・・」
美貴さんの声がすぐ近くに聞こえたことに気づいた時には・・・わたくしの乳房と花びらは3人の男性にねぶられていたのです。
くちゅ・・ ぺちょ・・ ちゅく・・・。
「はぁうっ・・・」
わたくしの右のソファーには石塚さんが、左のソファーには山崎さんが片膝を突き上体をかがめて左右の乳房を口嬲りしていました。
「あぁぁ・・あっくぅ・・」
M字に割られ縄で引き上げられた脚の狭間には美貴さんが跪き・・・花びらの蜜をすすり・・・敏感な真珠を舐め上げるのです。
「だ・めぇぇ・・あぁああ・・」
舌で一層しこり立てられた乳首を石塚さんが甘噛みし、山崎さんは敏感になった先端を舌先で嬲ります。
「あっあぁぁぁ・・ん・・はぁうぅ」
女性のもっとも敏感なポイントを・・・それもとても弱いGカップの乳房を左右同時に。加えて淫楽の芯である真珠と花びらまでを責められているのです。
どれだけ・・淫らな喘ぎ声を上げても、三人の男性はどなたも責めの手を弱めようとなさってはくださいませんでした。
初雪 53
「ゆるし・て・・ぇぇ・・はぁぁ・・おねがい・・ほどい・・て・・」真珠をむき出しにされ美貴さんの唇に吸い上げられる強烈な刺激に耐えかねて・・・わたくしはもう一度望月さんを見上げました。
彼の前で他の男性に嬲られる姿を・・・他の男性によって上げさせられる喘ぎを・・・出来るだけ聞かせたくはなかったのです。
望月さんを見上げる睫毛には涙がひかり、声はどれだけ堪えてもわななく赤い唇からは・・・苦悶よりも淫らな色合いを深めて漏れ出していたのだと思います。
眉をひそめてわたくしを見下ろす望月さんがの眼差しに宿っていたのは・・・なんだったのでしょう。
苦悩・欲望・・・それとも軽蔑?
「お許しください」
望月さんはあおのけたわたくしの頤を捕らえると、顔を重ね哀願の言葉を紡ぐはずの舌に・・・はしたない声を溢れさせる唇に・・・貪るような口づけをはじめたのです。
「ん・・ぅくぁぅ・・ん・ぁ・・・」
やめて・・・という言葉は、彼の喉奥に飲み込まれ舌の動きは彼の口腔を愛撫する動きに変わってゆくのです。
昨日から唇しか交わしていない望月さんとの性交のような口づけは、彼の満たされない欲望の深さをわたくしに突きつけているように思えたのです。
主の眼を盗んでのものではない・・・彼だけのものにはなれないシチュエーションでの熱い口戯に・・・わたくしは次第に理性を薄れさせ、我を忘れていったのです。
「望月のキスはそんなにいいんですか?祥子さんの蜜が飲み切れないくらい溢れてきますよ」
ちゅく・・ちゅく・・・ と唇を放した場所に指を這わせながら、美貴さんはわたくしの羞恥をなおも煽ります。
「んん・・ぃぁ・・ぅう・・ん」
ちがうの・・・ 美貴さんの言葉責めに抗う言葉さえ、望月さんに飲み込まれてしまいます。一瞬でも離したら2度と重ねることが出来ないとでも言う様に触れ続ける二人の唇の端から、抗いの言葉も喘ぎのように漏れ出ただけでした。
美貴さん・山崎さん・石塚さんの唇は、感じやすいわたくしの淫らな身体を容赦なく追いつめてゆくのです。
送り込まれるストレートな快感に、ぴく・・ぴくっん・・と身の内を駆け抜ける快感が引き起こす痙攣は、その間隔を明らかに縮めていったのです。
「ふふ いいんですね、祥子さん。こんなに身体を震わせて」
左の乳房を責める山崎さんが、すべすべの指に先端をはさみ・揉み込む様にしながら唇を奪われているわたくしの耳元に囁くのです。
「ぅっ・くぅ・・あぁぁ・・はぁん」
どれほど唇を塞がれても・・淫らな喘ぎは後から後から溢れてしまいます。
滑らかな山崎さんの手が、わたくしのGカップの白い乳房を握りしめるのです。指の間から・・・白い柔肉を絞り出すかのように。
そして、一層突き出した堅い先端を前歯で軽く挟みしごくように・・・愛撫するのです。
根元に歯が当てられると同時に、唾液をたっぷりと載せた舌が生き物のように山崎さんの口内に含まれたわたくしの敏感な分身をなめまわすのです。
「んん・ん・ぅう・・ぃぃぁ・・ぇぇぇ」
昨晩から、いいえ朝から何度も何度も絶頂を味合わされた身体は、堪え性をなくしておりました。
一度も声をお出しにならない石塚さんは・・・痛みと感じるぎりぎりの刺激と甘やかな舌先を駆使して、ひたむきにわたくしを愛撫し続けていました。
胎内を除く全ての粘膜を、豪奢な着物を纏ったまま縄で縛められ、同時に複数の男性の繊細な口唇の粘膜で嬲られ続ける快感は、わたくしをまたもや・・・はしたない頂へと押し上げはじめていたのです。
「こんなに身体をひくひくとさせて。もう逝きそうなんですね。逝きなさい!祥子さん あなたの逝き顔を晒すんです!!」
山崎さんが耳元でそれだけを囁くと白い乳房に即座に顔を伏せ・・・感じやすい左の乳首をしたたかに噛み扱くのです。
「ぁぁ・・んあぁ・・ん・・いく・・ぅぅぅぅぅ」
ぴく・・ぴくん・・ぴくぅ・・ 淫らに身体をひくつかせて、最後の瞬間に全ての唇から解放されたわたくしは、4人の男性に見下ろされながらM字開脚に縛められたままで・・・逝き果ててしまったのです。
初雪 54
「ふふ また溢れさせて。せっかくの着物をダメにしないように僕が飲んであげていたのに。いけない人ですね、祥子さんは」絶頂を迎えた身体は・・・今夜はまだ何一つ受け入れていない蜜壷から、とろりと薄白い蜜を湧き出させたのです。
美貴さんは濃鼠の大島の袂から出したハンカチを・・・新しい蜜に濡れ光る花びらに押し当てるようにして拭ったのです。
「・・・はぁあぁぁぁ・・・」
縛められているからではなくて・・・わたくしは動くことも考えることも出来なくなっていました。
絶頂で緊張の極みを迎えた両脚は、いまはぐったりと力なく赤い縄を食い込ませていただけだったのです。
「解かせていただいてよろしいですか」
背後からの声・・・望月さんです。
「ああ 頼むよ」
美貴さんが答えてわたくしの太ももの狭間からハンカチを取り上げられたのと・・両脚を引き上げていた縄のテンションが落ちたのはほとんど同時でした。
下ろされる両脚を支え・降ろし、膝から縄を解いてくださったのは石塚さんと美貴さんでした。
背を反らす様に引き上げられていた腕を止めていた縄尻が解かれた時には、山崎さんが冷たいおしぼりでわたくしの額を拭っていてくださったのです。
「ありがとうございます」
ゆっくりと開けた瞳に移った山崎さんに、無意識のうちに微笑みかけていました。
「随分深く・・・逝ってしまったみたいですね」
「いやぁ・・・はずかしい・・・」
額に当てられていたおしぼりは、ソファーの背でほつれた幾筋かの黒髪を載せた首筋を拭っていました。
「自分でいたします。お願い・・この手を解いて」
わたくしの手首はまだ縛められたままでした。はだけられた着物を掻き合わせて・・・かりそめの身繕いをしたくても・・・それすらできません。
「祥子さん。そろそろお着物を脱がれたほうがいいかもしれませんね」
わたくしの脚の縄を解き・・・圧迫されていた膝裏を丁寧にマッサージしてくださっていた美貴さんが、わたくしの右隣に腰掛けたのです。
「せっかくの着物を台無しにしそうだしね」
「おっしゃらないで・・・」
もう片方の脚を受け持ってくださっていた石塚さんは、横顔でそう言いながら暖炉に数本の薪を投げ込みます。
このままこの方達との時間を続けるには、わたくしは反応しすぎる濡れやすい身体だったのです。この高価な友禅をだめにしかねないほどに・・・これまでの行為でも溢れさせていたことはわかっていました。
わたくしの身体がそれほどに淫らに過ぎるということを・・・秘めておきたいその事実を改めてこの方達は言葉で突きつけられたのです。
「着替えてまいります。おねがいです。この手を解いてください」
「どこに行くつもりですか?祥子さん」
美貴さんが・・・不思議そうにおっしゃいます。
「先ほど着替えをした部屋へ。すぐに戻ってまいります。」
どなたも何もおっしゃって下さいません。わたくし1人にするのがそんなに不安なのでしょうか。
「この別荘から外には1人でなんて出られませんわ。今夜は皆さんと過ごします。だからおねがいです、身支度をしにいかせて」
わたくしの哀願が聞こえているはずなのに、美貴さんは眉一つ動かさずに言い放ったのです。
「身支度はしていただきます。でも僕たちの前で、ここでその着物を脱いでみせてください」
「・・いやっ・・」
男性の方達の前で着替えをするなんて・・そんなはしたないことまでさせようと言うのでしょうか。
お支度は秘かに男性の眼に触れないところでするものだと、わたくしは決めておりました。女としての最低限の嗜みであり美学ですらあります。
ですから、いままで・・・そう望月さんに箱根で許した外には・・・身繕いを男性の目の前でしたことなどなかったのです。
「ご自分でなさってくださるなら、その手の縄をすぐにも解きましょう」
わたくしはまだ裾を乱され胸をはだけられたままでした。
この方達の前で帯を解くくらいでしたら出来るかもしれない・・・とにかく淫らに乱れたこの姿のままでいたくなくて、わたくしは美貴さんの提案を飲んだのです。
「仰る通りにいたします お願いほどいて・・・」
そう言って差し出したわたくしの手首の縄を、望月さんは丁寧に解いてくださいました。
初雪 55
自由になった縄痕の残る手で・・・胸元を掻き合わせ・裾の乱れをざっと直しました。「ここでよろしいのですか?」
ソファーから快感でまだふらつく脚で立ち上がり、わたくしは帯締めに手をかけたのです。
「いえ、ソファーの向こうに行ってください。そう、その先です」
石塚さんが指定されたのは、キッチンカウンターをダイニングテーブルとは反対に進んだところ、玄関へと続く空間でした。
「ストップ。さぁそこでその着物を脱いでみせてください、祥子さん。最後の1枚になるまで。わかりましたね」
先ほどまでの吹き抜けの空間ではなく・・・3mほどの高さの天井が設けられている場所でした。暖炉の灯りも・・・落とされたリビングの照明も届かない場所。薄暗がりの場所を指定することが、この方達なりの優しさなのだと思いました。
「動かないでください」
それでも恥ずかしくて4人の男性の方達に背を向けようとした時です。山崎さんの厳しい声が飛んだのです。
「その場から動かないで。僕たちを見つめながら帯を解くんです」
「・・・わかりました」
こんなに恥ずかしい姿を見せるというのに・・僅かな逃げ場さえ、与えてはくださいませんでした。身体の向きを変えることはせず、でもとても男性の方達に視線を投げることなど出来ず・・・目の前のソファーの背を見つめて帯締めに手を掛けた時です。
パッ・・・わたくしの真上と左右の足元に灯りが付いたのです。
「・・いやっ・・」
まだ僅かに乱れている胸元と・・・羞恥を堪えている表情を揺れる袂で隠しました。
「約束ですよ、祥子さん。そこで着替えるんです。さぁ続けて」
美貴さんの声が冷徹にわたくしに次の行為を促すのです。
「おねがい。灯りを消してください」
「だめです。祥子さん、さぁ」
美貴さんだけではありませんでした。山崎さんも石塚さんも、そして一歩控えて立っている望月さんの視線さえわたくしの哀願を許してはくださらなかったのです。
わたくしはまばゆい光に囲まれて・・・改めて深緑の帯締めに手を掛けました。
きゅっ・・・ 望月さんの手で締められた絹の組紐は、ほどく時も同じきしみを上げたのです。
しゅっ・・・ぱっさっ・・・ 帯締めを引き抜くと背中のお太鼓が落ちてゆきます。
手にした帯締めをどこに置こうかと視線を上げた先には、望月さんがいらしたのです。
「祥子様」
黙って差し出された手に4つに畳んだ帯締めを差し出しました。
次は帯揚げです。柔らかく結ばれて帯に挟み込まれていたものを引き出します。
ぱたっ・・・ 金で描かれた松葉が、わたくしの手のひらに広がり鈍く灯りを照り返した時には・・・帯枕が足元に落ちたのです。華やかに装うために・・・高く大きな枕が選ばれていました。
「どうぞそのまま」
かがみ込み足元の枕を拾い上げようとしたわたくしを望月さんが制止します。帯枕を拾い上げた彼に、帯揚げを託したのです。
しゅっ・・しゅるっ・・・ 雪輪に南天の織り出された西陣の袋帯は持ち重みがありました。背できつく引かれていた結び目を両手を後にまわして・・・ほどいて行きます。
「・・・ごくっ」
男性の方達は、どなたもひと言も発しないのです。クラシックが低く流れる中で、帯の解ける音に混じってどなたかが唾液を飲み込む音が聞こえました。
ばさ・・ばさ・・ 重みのある見事な帯が、わたくしの足元に錦の蛇のように・・落ちてゆきます。
その輪から一足だけ抜け出して帯板を拾い帯を軽くまとめると、わたくしは手に持ったのです。
「もう・・・よろしいですか?」
ここまでなら・・・男性の目の前でも耐えられます。
「祥子様。お預かりいたします」
一歩近づき望月さんは、わたくしの手の中の帯を取り上げたのです。
「まだです。せっかくお似合いのその着物に恥ずかしいシミをつけたいんですか?」
美貴さんの声は、楽しみを中断された不快ささえ滲ませていたのです。
きしっ・・・ わたくしは無言で真珠色の伊達締めに手を掛けました。
絹で織られた上質な伊達締めをほどくと、整えられていた襟が開き・・・長襦袢に覆われた胸元がその隙間から覗きます。
ほんの少しだけ見えていた、襦袢の掛け襟の銀の雪輪の刺繍が存在感を増すのです。
「ほぉぅ・・・」
石塚さんのため息に、伊達締めを畳む手を止めてしまいそうになります。
くつろげられた胸元からは・・・薫きしめられた微かな香と、絹に閉じ込められていたわたくしの肌の香りが立ち上っていました。
さきほどの石塚さんの声の原因はきっとこの女の香りだったのでしょう。
気づかれなければいのにと願っておりました。
でも・・圧倒的な濃度のある香りは、ソファーの向こうの男性達にまでたどり着いてしまっていたのです。
「続けてください」
美貴さんの声は冷静なままです。そして望月さんはその声に促される様に、わたくしの手から真珠色に光る伊達締めを取り上げたのです。
次は・・・腰紐です。
白い腰紐に手をかけて、思い切るように解いてゆきます。躊躇する様さえ・・・彼らを楽しませるだけだからです。
しゅるっ・・・ぱさっ・・・ 腰紐を引くと・・・赤い椿の着物は打ち掛けの様に前を開き・・・一段と艶やかにわたくしを彩ります。
「・・ぃや・・」
恥ずかしさに背を向けてしまったわたくしを、なぜかどなたも咎め立てなさいませんでした。
先を促すような・・・無言の視線が、ほつれ髪がかかる首筋に突き刺さるようでした。
さらぁっ・・ 両肩から着物を滑らせるように落としました。
襟が背を滑り・・長襦袢の腰を通り・・・後に垂らした袖を抜けて・・・床に堆く降り積もる雪のように落ちていったのです。
「こちらを向いてください。祥子さん」
美貴さんの声に・・胸元を押さえながら振り向きました。
上質な絹で作られた・・・まるでもう一枚の着物のような長襦袢です。
淡青の地には流水紋が地柄として織り込まれ、白侘助と艶やかな緑の葉が描かれているのです。
下衣でありながら上品な長襦袢姿だからこそ、わたくしは自らの手でここまでの姿になれたのです。
腰の線も・・・胸元まで、抑える絹が薄くなるほどに艶かしいラインが露になっているのです。それも一度はだけられてしまった胸元は・・・Gカップの丸みを絹がそのままに淫らにあらわしていたのです。