初雪 56
「・・・もう、よろしいでしょう」男性の方達に見られながらその前で自らの手で脱衣をする、その恥ずかしさに耐えたのです。
もう長襦袢姿でした。これで許していただけるでしょう。
「祥子さん・・・それが最後の一枚ですか?」
足元の着物は、望月さんの手で片付けられていました。
「ええ・・・」
身を覆うものはこの長襦袢とあとは腰だけに巻かれた湯文字だけ。
「もう一枚身に付けているはずですね」
山崎さんの声も冷静なだけ残酷でした。
「僕達は最後の1枚になるまでと言ったはずです。足袋は数に入れないでいてあげましょう。さぁ、祥子さん」
「そんなこと・・できないわ」
あと一本伊達締めを解くと、深紅の湯文字だけの姿になってしまうのです。
「こんな上品なストリップは初めてですよ。さあ続きを見せてください」
「いやぁぁ・・・」
石塚さんの口から出た<ストリップ>という淫媚な言葉に、わたくしは改めて男性の方達の視線の意味を思い知らされて・・・その場に蹲ってしまったのです。
「ご自分で出来ないのですか?」
もう・・・これ以上はできません。
「許して、おねがいお部屋にいかせてください」
「祥子さん!」
美貴さんの声はビジネスのような冷徹な色合いを帯びていました。
「お望みの姿になってまいります。どうか・・・おねがい」
「祥子さんのお願いは先ほど聞きました。僕たちは貴女が淫らな姿になってゆく過程を楽しみたい、と言っているんです」
「ゆるし・て・・」
「望月!」
美貴さんの声に、脇に控えていた望月さんがわたくしに近づきました。
「祥子様・・・」
胸元を覆っていた両手を掴むとわたくしを引き立てます。
「やめて・・・」
先ほどわたくしから取り上げた帯揚げを巻き付けるのです。
彼が頭上から何かを引き下ろしました。それは・・・赤い縄でした。
「ぃやぁ・・」
帯揚げの上から手首を縛めると・・・くぃと引き上げるのです。
いつこんなものを仕掛けられたのでしょう。ロフトになっている部分の太い手すりに向かって、わたくしの身体は吊り上げられてゆきました。
腕を覆っていた袖は肩へとずり落ち・・・一度はだけられた胸元は白い乳房の裾野を覗かせていたのです。唯一慎ましく閉じられた裾の下の足元は、足袋の脚を軽くつま先立たせるほどになっていました。
3人の男性はソファーをまわりわたくしの側にいらしたのです。
「ぁうっ・・・」
石塚さんの右手が襟元に差し入れられ、吊られ・引き上げられた左の乳房を握りしめたのです。
「素直に言うことを聞かないからです」
美貴さんの手が襦袢の上からわたくしの腰を撫でてゆきます。
「はあん・・」
山崎さんの指は襦袢の上から乳首を探り当て・・・くりっ・・と摘むのです。
「望月にならその伊達締めを解かせるんですか?」
美貴さんが腰のあわいに指を食い込ませる様に、尻肉を嬲りながら意地悪くわたくしの耳元につぶやきます。
「そうなんですか?」
山崎さんの指先が・・・責めの度合いを強めてゆきます。
「・・ちが・・ぃまぁ・す・・んぁ・・」
石塚さんの手も・・・
「妬けるな。本当にそうなんですか? 祥子さん」
「・・ちがう・・わ・・」
「身体に聞けばわかることです。祥子さんのこの感じやすい・敏感な身体にね」
「あぁっ・・」
パァン・・・答えることのできないわたくしの腰に、絹の上から美貴さんのスパンキングが飛んだのです。
「祥子さんがお望みだ。望月、長襦袢を脱がせて差し上げなさい」
乳首を摘む山崎さんの手も、襦袢の中に差し込まれていた石塚さんの手も抜かれます。
そして遠巻きに・・・わたくしの姿を見つめるのです。
「祥子様 失礼します」
「やめて・・・」
きしっ・・・伊達締めの絹の音が響き・・・締め付けられていた腰がふわっと・・緩みました。
カチッ・・・リビングの灯りが煌煌と輝きます。
「いやぁ・・・」
吊られ覆い隠すことのできない身体は、Gカップの乳房をたわわに揺らした上半身と・・・深紅の絹で覆われた腰を・・淡青の額縁の中で晒していたのです。
左の乳房はついさきほどまでの石塚さんの手戯で、薄く桜色に色づいているのです。
「こんな姿も祥子さんだと雅に見えますね」
「はぁうっ」
覆うもののない乳房の先を、すっと山崎さんの指が撫でてゆきます。
「この姿のままで犯してしまいたいくらいですね」
「おねがい・・ほどいて・・・」
もう一度あれほどに深く達させられてしまったばかりなのです。この不安定な姿勢のままで犯されるなんて耐えられません。
「祥子さん、僕たちの望みの姿になってくださると先ほど言ってくれましたね」
正面に回った美貴さんがわたくしを見つめて口にしました。
「・・・ええ」
これ以上・・どんな姿を晒せというの。
「ありがとうごさいます。それではここを剃らせていただきます」
美貴さんの手が置かれたのは・・・湯文字に隠れたわたくしの茂みの上でした。
「えっ・・・」
なにを仰るのでしょう。
「聞こえませんでしたか?祥子さんの漆黒の茂みをきれいに無くしてあげます、と言っているのです」
「だめ・・だめですっ」
Sだと仰った長谷川様でさえなさらなかったことを・・・この方達はわたくしに強請るのです。
「花びら餅のような祥子さんを味合わせてくださいとお願いしたはずです」
石塚さんが畳み掛ける様に責めるのです。
「そんな・・・だめ・・・」
真っ白な肌に薄く桃色の餡が透けるはなびら餅という言葉を・・・わたくしの花びらを包む丘のことを想って仰っていらしたなんて。
「綺麗に剃ってあげますよ。それにひと月ほどで元に戻ります」
「いや・・ゆるして」
「いままで剃ったことくらいあるんでしょう?」
石塚さんの口元に好色な笑みが浮かびます。
「ありません。そんなこと」
嗜みとして整えることがあっても・・大人の身体になってから一度も失ったことなどない翳りなのです。それを男性の手で剃られてしまうなんて・・・できない。
「いつも綺麗に整えてあるから、そういうことも経験があるかと思いましたが。意外ですね。祥子さんの生まれた時のような姿を見たがる男は他にもいたでしょう」
「祥子さんは熟した身体なのに結構うぶなんですよ。憶えていませんか、初めてご一緒した時まだアナルバージンだったんですから」
「いゃぁ・・・そんなこと・・おっしゃらないで」
「無理矢理は僕たちの趣味じゃないんです。祥子さんに楽しめなんて言いません。でも今までに無い経験をさせてあげますよ。どうか、はいと言って下さい。祥子さん」
耳朶をなぞる指が、山崎さんの声をわたくしの身体にしみ込ませようとするかのようです。
「だめです・・・」
吊られたままで首を横に振ったのです。
初雪 57
「仕方ないですね。少し考える時間を差し上げましょう」美貴さんの声に、望月さんがわたくしの手首の縄を解きにいらっしゃいました。
赤い縄を解き・・・帯揚げを解くと、わたくしの肩から長襦袢を引き下ろしたのです。
「ゆるして・・・」
望月さんは無言でした。彼の手にはロフトから垂れた縄とは別の、もう一本の縄が握られていたのです。
抗うわたくしの手首を後にまわすと重ねて後手にくくり、その縄端を乳房の上下にまわして手首の上で留めるのです。
「ゃあぁぁ・・」
白足袋に緋の湯文字・・・白い上半身に赤い縄・・アップに結い上げた髪さえまるで時代劇の中の囚われたの女人のようにわたくしの姿を見せていたにちがいありません。
こんなはしたない姿のままで、4人の男性の視線に晒されながら<是>の返事をするまで言葉責めをされてしまうのでしょうか。
「どうぞ、これをお履きください」
望月さんが、先ほどわたくしがソファーのところに置いたままだったムートンのスリッパを持っていらっしゃいました。
足袋の前に揃えられ、両手を縛められてバランスのとれない身体を支えられながら右・左・・・と足を通します。
「なぜ・・」
傍らの望月さんを見上げて・・呟くように問いかけたのです。どうしてこの姿にスリッパを履かなくてはならないのか、と。
望月さんはわたくしの問いを聞かなかったかのように・・・主である美貴さんを見つめたままでした。
「もう一度だけ聞きます。祥子さん、僕たちの望みを叶えてくださいませんか?」
わかっています。この方達の誘いにお応えしたのです。それは・・・余程の事以外は彼らの望みを叶えると約束したと同じなのです。
でも、剃毛をされてしまうなんて・・・簡単に頷けることではありませんでした。
「だめです・・・どうかそれだけは許してください」
「仕方ないですね。望月!」
「どうか考え直していただけませんか」
望月さんが思い詰めた様に口にした言葉は、美貴さんに対してのものでした。
「僭越だぞ、望月」
今夜の彼の主はいつにない厳しい表情のままだったのです。
強い叱責の声に、望月さんはわたくしの肩を抱いて、リビングの一面を覆っているカーテンの前まで連れて行きました。
「このままお待ちください」
重厚なカーテンを左右に開き止めると・・・そこは床までの硝子戸でした。
ガラッ・・・その一枚をためらいも無く引き開けます。
「あぁっ・・・」
冷気が露になった素肌を刺すのです。
わたくしの素肌は総毛立ちました。
ウッドデッキのベランダは通路となる部分をのぞき、雪に囲まれていました。
「そこで良く考えてください。望月を付けます。僕たちに剃ってほしくなったら望月にそう言ってください。そうですね、これくらいは許してあげましょう」
美貴さんは手を伸ばすと、わたくしの髪をアップにしていた椿のかんざしを抜き取ったのです。
ばさ・・・わたくしのむき出しの首筋と背の中程までをロングヘアが覆いました。
わたくしたちを取り囲むように、いつの間にか他のお二人もいらして開け放たれた窓に向かって立ちはだかっていたのです。
「素直になれない貴女の場所はそこです、祥子さん」
あまりの寒さに怯える表情のわたくしを、冷酷にも連れ出すのです。後を望月さんがついてきます。
「お願い、望月さんは・・・許してあげて」
零下の外気にわたくしの肌は粟立ち・声は身体とともに震えます。後ろ手に縛められた腕を掴む美貴さんが気づかないはずはありません。
「こんな時に望月の心配ですか。それなら素直にここで承知なさい」
「いや・・・」
「わかりました。その気になったら望月にそう言ってください」
ただひと言のいらえに、わたくしに背を向けて・・・美貴さんは室内に戻られてしまいました。
初雪 58
「申し訳ございません。」そう言う望月さんも羽織すら身に付けていない・・・着物だけの姿でした。防寒のための備えをしているわけではありません。
当然のように、彼の声も寒さに震えていたのです。
「あたためて差し上げることもできないのです。こうしてお話することも、後で主の責めの言い訳にされてしまいかねないのです。どうかお許しください。」
「いい・・え。わたくし・・の方こ・そ・・ごめ・・んなさ・い」
緋色の湯文字だけを纏い両腕を縄で縛められた姿のわたくしは、僅かな時間のうちにもう歯の根が合わなくなっていました。冷たすぎる外気はわたくしを一瞬の内に凍えさせ・・・すぐに体表だけを火照るような熱に包んだのです。
最も皮膚の薄い・・・身体の前面を覆うこともできず、やわらかな脂肪の層で形づくられたGカップの乳房は確実に冷やされて行きました。
せめて両手が自由なら、身体の前面を覆って最も冷えて行く敏感な部分を守れたことでしょう。
後ろ手に縛られた腕は、わたくしの身体を一層厳しく冷気に晒す結果を招きました。
肌の粟立ちは収まらず・・・乳房の先端は快楽ではなく寒さのために、堅く高く凝り立ってゆくのです。
白い肌は見る間に青ざめて・・・赤い縄がくっきりと映えるほどに血の気を引かせていたのです。
「望月くんの表情が切なそうだね。」
リビングの椅子に座り、用意されていた日本酒を注いだぐい飲みを手に石塚さんの視線は、曇りかけた窓硝子を見つめていました。
「あぁ、きっと望月のことだから祥子さんを抱きしめて暖めたくて仕方ないんだ。良かったよ、釘をさしておいて」
今夜祥子さんをどうやって責めるつもりなのか、大まかな筋書きを美貴さんは彼に話してありました。なぜなら様々な小道具の準備は、全て望月さんに任せていたからです。不安と狼狽を見せる運転手に、祥子さんをフォローはしてもいいが僕たちのすることを妨害することだけは許さない、そうきつく申し付けてあったのです。
「それにしても、まるで今夜の祥子さんの着物の柄のようですね」
山崎さんのひと言で、二人の視線が改めて窓の外に注がれます。
今夜は幸いに月が綺麗な夜でした。
ベランダに降り積もった雪は月明かりに青く輝き、その中に立つ祥子の緋の湯文字はひっそりと咲く侘助の風情でした。縛められた上半身は白い花芯を、側に立つ望月さんの鈍緑の着物は花をかばう様に沿う常緑の葉を思わせたのです。
室内の適度に暖められた空気が窓ガラスを薄くけぶらせ・・・まるで二人を淡雪でおおわれたかのように見せていました。
「祥子さんが簡単にOKするわけはないと思ったが、大丈夫かな。もう3分を超えているぞ」
不安を打ち消す様に、石塚さんが手元に残っていた日本酒をぐぃっと煽るのです。
「そのために望月を一緒に出したんだ。引き際は解っているよ、ほら」
窓硝子の外で、一歩踏み出した望月さんを彼女が見つめていました。
「そろそろかな、毛布と暖かいタオルくらい用意しておきましょう」
椅子を引くと、山崎さんは玄関脇のゲストルームの方へ向かったのです。
「祥子様お願いです。どうか承知なさってください」
望月さんの声は、白い息さえも震えていました。でも彼の若々しく甘い声色が、わたくしをほんのり暖めてくれたのです。
「望月・・さん・まで・・・」
解っていました。このまま外に居ることがどんなに危険なことなのか。
精神力だけで堪えていたのです。
きっと望月さんの身体も芯まで冷えているはずです。なのに、彼自身のことは・・・おくびにも出さないのです。
「私が望んでいる、と言ってもだめですか?」
「あなたが・・・」
そんなことは・・きっとないのです。彼が望んでいるなんて・・・そんなこと。
「はい。お願いです、祥子様のお身体が心配です。どうか承知なさってください」
「そん・・な・・・」
寒さに凍え切った身体はもう限界でした。望月さんの表情を見上げた瞬間、バランスを崩した身体は雪の中に倒れてゆきそうになったのです。
「危ない!!」
駆け寄る望月さんの胸が、わたくしを支えてくれました。
「祥子様、もうよろしいですね。どうか承知してください」
わたくしの肌に触れる大島の絹の冷たさに・・・その胸に顔を埋めたままで頷いたのです。
初雪 58
窓を叩く望月さんの手が2度振り下ろされるのと、閉ざされた窓が開け放たれたのは同じタイミングでした。「とにかく、中へ」
そう声を掛けてわたくしを望月さんから受け取って下さったのは、石塚さんのがっしりとした腕でした。
暖められた室内に入ってもわたくしの震えは止まりませんでした。
望月さんも同じだったのでしょう。
青ざめた唇を見つめた美貴さんは、何も仰らずにわたくしを暖炉の前のラグに座らせたのです。あかあかと燃える火が齎してくれる熱を目の前にしてさえ・・・わたくしはまだその暖かさを実感出来ずにいました。
がた・・がた・と・・震える肩に、毛布を掛けしっかりと覆ってくださったのは山崎さんだったのです。
「どれだけ時間が経っていると思っていたんだ。望月」
そもそも脅しのつもりだったのでしょう。ほんの数分・・・それで堪え切れずにわたくしが折れると思っていたのです。美貴さんの声の苛立ちには、自らが振り上げた拳を振り下ろす先を無くした憤りも・・・僅かながら含まれていたのに違いありません。
「どのくらい・・・ですか・・」
冷気だけに囲まれた音のない雪の夜。望月さんと二人きりのその時間はあまりに堪え難く、ほんの数秒にも数十分にも思えていたのです。
「5分になるところだった。今夜は外はマイナス3度だ。祥子さんを君に任せたんだぞ。解ってなかったのか!」
「申し訳ございませんでした。それほど時間が過ぎているとは、思いもしませんでした」
5分・・・零下の外気になにも身につけずに5分。体調が悪ければ発作を起こしかねないぎりぎりの時間だったようです。
美貴さんと望月さんだけでなく、あとのお二人もそのことは熟知なさっていたようです。
解っていたからこその叱責でした。
一頻り叱責をした後で湯気の立つマグカップを差し出した美貴さんの瞳には、ほっとした表情と望月さんへの優しさが表れていました。しっかりと望月さんの手にマグを握らせると、もう一つのマグをわたくしの右側に寄り添う石塚さんに差し出したのです。
「縄を解いてさしあげたいが、望月の手はまだだめでしょう。もう少し我慢してください」
美貴さんはわたくしの頬をあたたかな両手で包むと、よかった・・・とひと言だけ漏らしてその場を立っていかれたのです。
「暖まりますよ」
石塚さんはマグカップから一口含むと凍えるわたくしの唇に・・・口移しされたのです。
それは赤ワインをあたためて蜂蜜とレモンを入れたホットワインでした。
ゆるゆると唇から流し込まれる甘く暖かな滋味を、わたくしはゆっくりと飲み下したのです。
ふた口・・・三口・・・奥歯が鳴るようなわたくしの震えが収まってまいりました。
四口・・・五口・・・頬に首筋に・・・暖炉の炎の暖かさを感じはじめました。
六口・・・七口・・・わたくしの唇に暖かさが戻ってきていたのでしょう。
八口・・・ ようやく大きな暖かなため息がわたくしの唇から漏れたのです。
「ありがとうございます。石塚さん」
「大丈夫ですか?」
「はい、漸く人心地がつきました」
「良かった。ほっとしましたよ」
心配そうにこわばっていた石塚さんの表情が、人なつこい柔らかな笑いに包まれたのです。
本当に心配してくださっていたことは、口移しで飲まされたワインでわかりました。
ほんの少しの欲望も感じさせること無く、わたくしの身体の熱を取り戻すためだけに無心に行われる・・・行為だったからです。
「望月くん、祥子さんの縄を解いてくれないか」
「はい」
彼はもうとうに回復していたのでしょうか。キッチンの奥から返事が聞こえました。
「さぁここに座ってください」
石塚さんが指差したのは、暖炉の前のソファーセットのローテーブルでした。
そこには毛布が1枚敷かれていたのです。
わたくしはまだしっかりと立ち上がることができませんでした。肩に掛けられた毛布ごと石塚さんに抱かれて・・・テーブルに腰を下ろしたのです。
「失礼いたします」
背後から望月さんの声が聞こえました。肩に掛けられていた毛布を背の中程まで落とすと・・・手首で止められた赤い縄を解きはじめたのです。
「・・ひぃっ・・」
「申し訳ありません。冷たかったですか?」
彼の指や手はまだ氷の冷たさを残していました。
「いえ、ごめんなさい。続けて・・・解いてください」
アルコールと暖炉の火で急激に暖められたわたくしの身体に、その指の冷たさは彼が自分自身を責めている証のように感じられたのです。
初雪 59
望月さんの手は、わたくしを縛めた時と同じ様に的確にその縄を解いて行きました。上下に挟み込むように絞り出されていたGカップの乳房が自由になり・・・後ろ手に括られていた両手も間もなく自由になりました。
「ありがとうございます」
わたくしは両手で腰回りに落とされていた毛布を掴むと・・・露なまま冷やされつづけた乳房を改めて覆ったのです。
「祥子さん。こんな目にあわせてしまって申し訳ありませんでした」
美貴さんの表情は真剣でした。
「いいえ」
人心地のついたわたくしは、微笑みで美貴さんの真摯な謝罪に答えました。
「今夜・・・これからの時間を、まだ僕たちと過ごしてくださいますか?」
山崎さんのやさしい声がいたしました。
この方達は・・・本質的にお優しいのです。わたくしの強情が過ぎなければ、こんなことにはならなかったのでしょう。
ご一緒に3日間を過ごすことを承知したのはわたくしです。
「・・・はい」
わたくしはこくり・・と頷いたのです。男性たちの間の空気がほっと和らぎました。
「祥子さん、僕の望みを叶えてくれるんですね」
先ほどまで堅くなっていた石塚さんの声も、いたわりを残しながら・・・優しくそして幽かに欲望を滲ませはじめたのです。
「あなたの口からお願いしてくださる約束でしたね。これからどうされたいのかを、さぁ言ってください」
こんな恥ずかしいことを自分の口で言わなくてはならないなんて・・・
「どうか、わたくしの・・はしたない・・・茂みを・・綺麗に・・剃り上げてくださいませ」
とぎれとぎれに・・擦れる小声を唇から押し出すのが・・やっとでした。
俯く鼻先も・・・耳朶さえも、赤く染まっていたのは決して寒さに晒されていたからではなかったはずです。
「いいこです。よく承知してくれました」
俯いたままの顔を仰向ける様に・・石塚さんの口づけが、わたくしの頬に首筋に散らされます。
「まだ寒いでしょう。ここでしてさしあげます。横たわってください」
「あん・・・」
わたくしを覆っていた毛布を奪うのです。
「ここに座ってください」
テーブルの一番リビングよりの短辺を、とんとんと石塚さんが叩きます。暖炉に向かって腰掛けていたわたくしは、そちらに移動しました。
「そう。深く腰をかけて」
「はい」
石塚さんの言葉通り素直に腰掛けました。
ちゅ・・戯れの様に頬に口づけをすると肩に手をかけて・・・ソファーセットのローテーブルにわたくしを横たたのです。木製のテーブルには毛布がかけられていて、ほんのり柔らかな肌触りでわたくしの凍えた背中を受け止めてくれました。
「両手を出してください」
胸を覆う様にクロスしていた手を・・おずおずと差し出しました。なにをなさるのでしょう・・・
「望月くん、頼むよ」
「いやぁっ・・・」
手のひらを合わせた形に石塚さんにホールドされた手首に、改めて縄が掛けられたのです。
「仰る通りにいたします。おねがい、括らないで・・」
「動くと危ないですからね。いいコにしていればきつく括ったりしませんよ」
無言のままで縄を止める望月さんの代わりに石塚さんが答えます。
両手は頭上に引き上げられ、左右のテーブルの脚に縄尻を二等辺三角形を描くかのように掛けて・・・止め付けるのです。
Gカップの白い乳房はたゆゆ・・ん・・と引き上げられ、抵抗しようと身悶える度に震えました。
「ほら、こんな風に動いたら繊細な祥子さんの花びらを傷つけてしまうかもしれない。だから言うことを聞いてください」
わたくしの乳房の下に縄が掛けられました。右側に望月さんが左側に山崎さんが膝立ちになりわたくしの身体をテーブルに縛り付けたのです。
「ゆるして・・・」
乳房の上側にも・・横たわって広がるGカップを改めて寄せ上げるかの様に、縄が掛けられました。
「これで大人しくしてられますね」
わたくしの上半身はテーブルに身動きできないように、赤い縄で止めつけられてしまったのです。
「祥子さんの翳りを見せていただきますよ」
「あん・・・」
テーブルの下に落とした足先までを覆っていた深紅の湯文字を、一気に捲り開けられてしまったのです。
この姿勢では・・・わたくしの白い下腹も・・漆黒の茂みも・・・白足袋までもが、足元に立たれた4人の男性の目の前に晒されてしまいました。
「ああ、祥子さん。なんて淫らな姿なんですか」
山崎さんの声が、わたくしをまた一歩羞恥の淵に追いやります。
「緋色とミルクを溶かしたような白い肌と・・・豊かな漆黒のコントラスト。この姿もしばらくは見納めですね」
「祥子さん。それじゃぁ、この姿を写真に残してあげますよ。」
「やぁっ」
とっさに背けた顔にフラッシュの灯りが反射します。携帯電話などではないのです。望月さんが構えていたのはコンパクトタイプのデジタルカメラでした。
「だめ・・・やめて・・・」
「箱根で祥子さんの姿をあんな風にしか残せなかったことが残念でしかたなかったんです。ですから今回はカメラを用意しました。祥子さんが初めて剃毛される記念の写真ですからね」
美貴さんは淡々と言葉を続けるのです。
「この写真は僕たちだけのものです。信じてください、祥子さんとの時間を他の人間になど与えたりしません」
「でも、昨晩は田口さんにまで・・・」
箱根のあの写真を、昨晩はレストランのグランシェフにまでお見せになっていたのです。
昨晩のことを知らない望月さんの眉がぴくっと動いたのです。
「祥子さんが、あそこまでの姿をお許しになった方だったからですよ」
「そんな・・・」
昨晩ドアを開けて迎え入れた時のわたくしの姿が、3人の主達だけになされたものでないと・・・望月さんに知られてしまったのです。
「今夜の記念の姿は望月が綺麗に撮ってくれます。僕たちの・・なによりの宝物です」
美貴さんは彼の後に立つ望月さんの・・・嫉妬を滲ませた表情に気づかれてはいないようでした。
「祥子さん、脚を開いてください」
石塚さんの声が新たな羞恥のポーズを命じるのです。
わたくしは・・・その場ですうぅっっと肩幅ほどに両脚を開きました。
カシャ・・カシャ・・ その姿にさえフラッシュは焚かれるのです。
「とらない・・で・・おねがい」
わたくしの哀願の言葉など無視されていました。いえ、無視などというものではないでしょう。男性の方達の淫欲をより煽ってしまっていたのですから・・・