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初雪 41

「静かに・・・一階から人が来ますよ」 
くちゅ・くちょ・ちゅぷ・くちゅ・ はしたない水音を立てるほどに激しく・浅く・深く・・・
山崎さんはいままでの欲求不満をぶつける様に・・わたくしの腰を抱いて塊を突き立てるのです。
「・・・ぁぁ・・っぁ・ぅくぅ・・・ぁぁ・・ぁ・・・」 
わたくしは手の甲を唇に押しあてて、堪えきれずに漏れる喘ぎを抑えようといたしました。
「ふふ 人が来ると言った途端に一段と締め付けが強くなりますよ。祥子さん」
激しい腰遣いを一瞬止めて囁くのです。そんな声さえ記念館の静寂には響くようにだったのです。
「本当に敏感で淫乱な身体ですね。あぁ いい。いいですよ。祥子さん」 
どんなに声を抑えても、わたくしの白く豊な腰肉と山崎さんの身体がぶつかる肉音は・・・抑えようもないのです。
辛うじて・・・激しい動きに落ちかかってゆくふかふかの厚いシャドーフォックスのコートが二人の腰を覆い・・音が漏れるのを防ぐ役割を果たしていました。
「・・ぃぃ・・・ぁ・・ぁぁぁ・・んん」 
山崎さんの太く・大きな塊と大きく張ったかりがわたくしを抉りたてます。
一番奥の・・・もっとも感じやすい場所まで・・・後からなのに子宮口をこじあけるほどに突き続けられるんです。
「そんなにいいですか。僕のをまるで握るように締め付けて。こんな場所で犯されて感じるなんてやっぱり見られると感じるのかな、祥子さんには」
「ちがい・・ま・す・・・ん・ん・・・」
露出に対するわたくしの心理的変化を山崎さんには悟られてしまったのでしょうか。
「・・・ゃぁ・・・もぅ・・だめぇ・・・」 
人気がないとはいえ、博物館のようなストイックなスペースで・・いつ人がくるか解らない状態で犯されることが・・・わたくしを狂おしく駆り立てていたのです。

「・・・ん・んんぁ・ぁぁ・・・」 
シャドーフォックスのしっとりとしたサテンの裏地が、後から突かれ・・・たふ・たふ・・と揺れる乳房の先端を舐める様に刺激するのです。
「こんな場所で感じて!いけない女だ。スパンキングできないのが残念ですよ。」
派手な音を立てるわたくしのヒップへのスパンキングまで欲していらしたなんて。
「ぁっ・・だ・・めぇ・・」
「ほら もっとだ!逝くんです。祥子さん」
言葉責めの間、くじるようにして奥を刺激していた塊を、また激しい抽送へと変えてゆきます。
「ぁぁぁっ・・もぅ・・」
身体だけでなく脳にも視界にも聴覚にも・・・幾重にも仕掛けられる淫楽の罠がわたくしを追い込むのです。
「ええ 僕もそろそろです。あぁ 祥子さん、。逝きそうです」
わたくしの身体の慄きとひくつきはもう止まらなくなっていたのです。

展示スペースの入り口近くで、まるで一般の見学者の風情を装い・・人の出入りを監視していた石塚さんがはじめてこちらに向いたのです。
「・・・ぁぁ・・ぁ・・ぃくぅぅ・・・」
長く・太く・堅い・・山崎さんのものが激しい動きとともに胎内で一段と容積を増す・・・。
それに気づいた時には・・・わたくしは今日一日の淫らな疼きを一気に燃やし尽くす様に・・・絶頂へと駆け上がっていたのです。
「逝きます!祥子さん あぁ いくっ!!」 
山崎さんはわたくしの上体を引き起こし、耳元に牡の喘ぎをぶつけたのです。
逝き切って白く蕩けて抵抗のできないわたくしのファーコートのフロントホックを一気に外し・・・。
カシャ・・・ 石塚さんの構えるカメラのフラッシュに、素肌に破かれた黒のパンティストッキングとブーツだけのわたくしの姿を晒しながら・・・彼の精液を注ぎこんだのです。

「脚を閉じていてください」
携帯をしまった石塚さんは駆け寄ると・・コートのポケットから出したハンカチをわたくしと山崎さんの結合部に当てたのです。
いつになく山崎さんの射精は長く・・・たっぷりと注ぎ込まれていたのです。展示場の床にはしたない体液が落ちない様に・・・山崎さんもわたくしの身体から身を引くと素早くご自分のものを拭われたようです。
「はぁぁっ・・」
立ったままで達したわたくしは、惚けたように石塚さんに縋りその場にへたり込まない様にするのが精一杯でした。彼の手にコートの前のスナップを止める行為を委ね・・・弾む息を懸命に抑えようとするのが精一杯です。
「化粧室へ行きたいでしょう。僕は下のショップを見ていますから、ゆっくり戻ってください」 
身支度を終えた山崎さんにわたくしを預けると、石塚さんは一足先に階下に降りてゆきました。

「素敵でしたよ。祥子さん」 
山崎さんはほつれかかるわたくしの前髪を耳に掛けると、頬にキスをしてくださいました。
「きっと別荘にはもう温泉の準備が出来ていると思いますが・・・そのままというわけにはいかないでしょう。きれいにしてきてください」
もう一階に声が響きかねない場所で、やはり耳元に顔を寄せこっそりと囁くのです。
「・・・いじわ・る・・」
花びらに当てられたハンカチを落とさない様に・・そのハンカチにとろりと流れ出す山崎さんの精液を感じながら、優しくすべらかな山崎さんの手に縋ったのです。
一階の奥に化粧室はありました。
「ちょっと待っていてください」
小声で山崎さんに告げ、わたくしは記念館の化粧室に向かいました。

「お待たせしました」
閉館の時間が迫っていました。
気が急きながらもわたくしは身体を清め、石塚さんのハンカチをとりあえず洗ってお二人に合流したのです。
山崎さんがショップでお会計をされていました。
細長い包みと小さな包みがショーケースの上に用意されていました。
「何をお買い求めになったんですか?」
幾度もいらしているのなら、改めてここで買うものなどないでしょう。
そうでなくともベネチアングラスのショップなのです。男性の興味を引くものがあるとは思えませんでした。
「あとでね」
そう言うと茶目っ気たっぷりにウインクしてみせるのです。
「さぁ 結城くんが待ちくたびれてるだろう。車にもどろう」 
ありがとうございました・・・ミュージアムショップの店員さんに見送られわたくしたちはその記念館を出たのです。

初雪 42

「別荘まではあとどのくらいですか?」 
「車であと5分くらいだよ」 
先ほどまでの淫らな行為などなかったように、石塚さんがのほほん・・とお答えになります。
「えっ・・5分」 
わたくしはお二人の顔を見比べてしまいました。たった5分ならこんなことなさらなくても・・・。
「仕方ないじゃないですか。あんな祥子さんにずっと車で触れてたんです。我慢なんてできなかったんですよ。許してください」
車まであと少し・・その位置で山崎さんはわたくしを抱き寄せ頬にキスをするのです。

「もう それじゃ、あと5分は紳士でいて下さるんですね」 
お二人とも満足をされたのでしょう。あとはこのまま別荘へ・・・
「さぁ、それは祥子さん次第だね」
「僕たちを誘惑しなければ、ね」
運転席には結城さんが座ってらっしゃいました
わたくし達に気づかれたのでしょう。運転席から降りて・・・リアのドアを開けてくださいました。
「待たせたかな」
「いいえ、この後は別荘でよろしいんですね」 
まるで起こったことを知っているかのような、堅い声です。
「あぁ、真っすぐにやってくれ」
「わかりました」 
運転席に乗り込むと、そのままゆっくりと車を発信させました。

リアシートのカーテンは閉じられたままでした。
「あと5分、祥子さんの身体ならもう一回逝けるでしょう」 
あぁ・・許してはいただけないのね。
「やめて・・ぁ・・んく・・」
唇を山崎さんに塞がれ、お二人の手でコートの前を開かれて・・・。
右の乳房は山崎さんの指に・・・左は石塚さんの唇に・・・そして太ももの狭間には石塚さんの指がわたくしの敏感な真珠を・・・嬲りはじめたのです。
「・・ん・・ぁ・・やめ・・て・・・」 
先ほどの陵辱で、わたくしはもうこのドライブでの行為は終わりだと思っていたのです。
心理的なガードを全て外したわたくしの身体には・・・4カ所を同時に愛される淫戯を堪えるすべはありませんでした。
山崎さんの唇は・・・弱い耳元を・・首筋を・・・そしてまたわたくしの喘ぎの止まらない唇へと・・繰り返されるのです。
「おねが・・い・・ゆるし・・て・ぇ・・・はぁぁあ・・ぁん」
「さっき綺麗にしたばかりなのにこんなにぬるぬるに大きくして。いけない人だ、祥子さんは」
敏感な左の乳首をねぶる合間の言葉責めを石塚さんは続けます。
「もう見えてきましたよ、あと少しです。さぁ逝ってください」 
山崎さんの唇までもが右の乳首に移り・・・わたくしはまた・・あぁぁぁ。
「逝くんです。別荘に着くまでに逝かなくても、逝くまで車から出しませんよ。僕らにこうされている姿を迎えに来た望月くんに見せつけたいんですか?」
だめ・・・そんなこと・・・
「だめ・・・あぁ・・・い・・いっくぅぅぅ・・・」
シートにのけぞる様に身体をけいれんさせ達したのと、車が別荘のロータリーに止まったのは同じタイミングでした。

「お待ちしていました」
リアの左ドアを開けた望月さんの眼に飛び込んできたのは・・・石塚さんと山崎さんの間で、逝ったばかりのはしたない姿を晒しているわたくしでした。
「後は頼むよ」 
車を降り、石塚さんは望月さんの肩をぽんと一つ叩いて別荘に入ってゆきました。
「・っ・・祥子様」 
彼の声にわたくしはファーコートの前を慌ててかき寄せたのです。
でも・・・望月さんには下半身にレイプのように引き裂かれた黒のストッキングしか身に付けていないことまでわかってしまったのでしょう。

「結城さん、荷物を下ろしにきます。少しだけ待っていてください」
慌てたそぶりを抑えて結城さんにそう声を掛けて・・・わたくしを失礼のないように彼の胸に抱きとめると・・・まず別荘内へと連れて行ってくれたのです。

初雪 43

除雪されたとはいえ、雪道を歩くわたくしの脚はふらついておりました。
この15分ほどの間だけでも2度も達していたからです。 
「足元にお気を付けください」 
森に囲まれた、敷地に立つチューダー様式調の端正な別荘でした。薄暗がりの雪の中でも白壁と黒に近いティンバーのコントラストが際立って見えます。
管理事務所が手をつくしてくださったのでしょう。建物の周囲は丹念に雪かきがされていました。公道を左折して入って来れる私道は建物の裏側に通じ、ウッドデッキのテラスをの前に、広く車を数台停めておけるほどのスペースがありました。
それでなのでしょうか。
結城さんも建物の玄関側ではなく、テラス側のロータリーへと車を進めたようでした。
シャッターが下ろしてあるガレージには、望月さんが運転してらしたセルシオが停められているのでしょう。
「こちらです」 
玄関へ回るのだと思っていたのですが、彼はリビングに張り出したウッドデッキを登ってゆきます。
そして、てそのままベッドルームへと向かったのです。
中から鍵をはずしてあったのでしょう。
ガラス扉を開けると、彼は一足先に室内にて入り 、跪いてわたくしに彼の肩に掴まるように言うとロングブーツのファスナーを引き下ろしはじめたのです。
「そんなことまで・・・」
「いいえ、させてください」 
ブーツの踵に手を当てると片一方づつ脱がしてくれました。黒のヌメ革のブーツの下のストッキングにも・・・無数の伝線が走っていたのです。
わたくしの脚元だけを見つめる望月さんの眼に、嫉妬と微かな怒りがほの見えたのです。
決して酷いことをされた訳ではない・・・そう言おうと思ったのです。でも・・・わたくしはどんな言葉を発することもできませんでした。
「そのままで結構です」
コートを羽織ったままの姿でわたくしは暖かな室内に入りました。
そこはキングサイズよりも大きなベッドのある、上品なインテリアのベッドルームでした。 
 
「どうぞ」
望月さんは、入って来た窓の向かい側にある扉を開けて、わたくしを導いてくださいました。
そこは広々とした鏡張りのドレッシングルームでした。そして曇り硝子の引き戸の向こうには、掛け流しにされた温泉の音が響いていたのです。
「そのようなお姿ではお寒かったでしょう。ご入浴の準備はできております。そのままどうぞゆっくり暖まってらしてください。お召しかえは後ほどご用意させていただきます。」 
「ありがとうございます」
わたくしに視線を合わせないまま一礼すると、彼は扉を閉めて・・・あの羞恥に満ちた車の元へ・・・戻っていったのです。
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シャドウフォックスのコートと引き裂かれたパンティストッキングを脱ぐと、掛け流しになっている岩作りの温泉にその身を沈めたのです。
お湯は滑らかで、肌を心地よく暖める温度に調節されておりました。

車の中で起きたことは・・・決して粗暴なことでも礼を失したことありません。
なぜなら、わたくしはカードの誘いをお受けしているからです。
美貴さんをはじめとするこの方達が,わたくしに抱いてくださっているに違いない幽かな想いを想像すれば、身の危険やわたくしが真にNOと言うことを強制されるなどと言うことはあり得なかったからです。
ただひたすらこの方達が望まれることに忠実に、淫らな行為を繰り返されていただけなのですから。
わたくしの意志の下にお応えすると決めて、昨日迎えのセルシオに乗ったのです。
この数時間に起きたことは、あのお二人の願いを叶えるために・・・わたくしが羞恥にまみれた時間を過ごし、普通では許されない場所で何度もの絶頂を味合わされた・・ただそれだけのことだったのです。
 
望月さんの心配そうな・・半ば怒ったような顔が脳裏に浮かびました。
わたくし1人をあの方達の車に乗せることがどんな事態を招くかということくらい、望月さんにだってわかっていたはずなのです。
仮にセルシオに乗っていたからといって、まったく何もないままここにたどり着けたとは限らなかったからです。
・・・大丈夫なのよ、怒らないでちょうだい そう彼に語りかけたかったのに、堅い鎧に覆われたような事務的な彼の態度に、傷付き・・・わたくしは彼に何も言えなかったのです。

初雪 44

わたくしの身体は、朝から責め続けられたためにぐったりとしておりました。
身体のそこここがぼぉぅっと熱を持っているような感じなのです。淫媚な快楽は、身体にとっては数え切れないほどの緊張と弛緩を強いるのです。
意志を超えて強制的に加えられ続けた刺激は、わたくしの肉体を想像以上に苛んでいたようでした。

バスルームは数人が一緒に入れるほどの広さです。家族連れ用に設計されているのでしょう。緑がかった石で組み上げられた半円形の浴槽は、身体を充分に伸ばせるほどの大きさでした。ふっと力を抜くと、浮力で身体が浮くかのような感覚を味わえたのです。

「祥子様」 
無邪気に水面にロングヘアを浮かべ、子供のように温泉の湯の中を楽しんでいたときです 。望月さんの声が扉の向こうから聞こえてきました。
「はい、なんでしょう」 
ざぁっ・・・半身を湯から引き上げ、でも反射的に腕で胸を隠して彼の声に答えました。
「お疲れのところ申し訳ございません。祥子様のバッグを持ってまいりました。」
きっとわたくしの着替えも一緒に持って来てくださったのでしょう。
「そろそろ夕食のお時間です。お召しかえもございますし、30分ほどで上がっていただきたいのですが」
「ありがとう。わかりました」
今夜・・美貴さんがいらっしゃるのです。昨夜求められなかったことを思えば、どうしてもわたくしのバッグの中のものが必要でした。
「ドレッシングルームにハンドベルを置いておきます。お上がりになりましたらベルでお呼びください」 
箱根の夜のように、彼がわたくしの湯浴みを全て手伝うと言い出さなかったことにほっとしました。彼の手で胎内までも清めると・・・言われかねなかったからです。
「はい、出来るだけ早くいたしますわ」 
浴室との仕切りから彼の姿が消えて扉の閉まる音を確認して、わたくしは一旦身体を拭うとドレッシングルームに戻りました。
先ほどまでわたくしがまとっていたコートは、もうそこにはありませんでした。
替わりに、鏡の前の棚にはタオルとバスローブとわたくしが普段使いをしているブランドのヘアケア・基礎化粧品が用意されていました。その隣にはわたくしのバッグが置いてあったのです。

バッグを手に取ると・・・わたくしは今朝と同じ様にあるものを手にしました。
決して男性にはお見せすることの出来ない<胎内を清める儀式>を執り行うためです。
この恥ずべき行為を、男性の手でされることに喜びを感じる女性がいることは知っておりました。
でもわたくしには・・・とてもそんなことはできなかったのです。
アナルでの行為を必ず望まれる方がここにいらっしゃる以上・・・胎内までもを丹念に清めざるを得なかったのです。
時間はもうあまり残されていませんでした。女性としての最低限の嗜みを・・・急いで整えたのです。

身体と髪を清め・梳り・・・バスローブ姿になってドレッシングルームに座ると、髪の水分を拭いながらわたくしはハンドベルを鳴らしました。

初雪 45

「祥子様 失礼いたします」 
ドアの外で声を掛けてから、望月さんがドレッシングルームのドアを開けました。彼は泥大島をさらっと着流しに着こなしておりました。
きっと他のお三方もお着物なのでしょう。そしていままで・・・望月さんが着付けを手伝われていたに違いありません。
「今夜はお着物をご用意しましたので、先に髪を上げさせていただきます」
わたくしを鏡の方に向き直らせると、袂から柘植の櫛と赤い椿を描いた塗りのかんざしを取り出しました。
まるであの箱根の夜のように・・・。
無言でわたくしの髪をまとめるとたった 1本のかんざしで・・夜会巻きにわたくしの髪をまとめたのです。
「ほんとうに、お上手ね」 
肩からケープがわりのタオルを外すとわたくしを立たせたのです。
脚元は床暖房の施設が整っているのでしょう。ほの暖かく快適でしたが、わたくし用にとナチュラルホワイトのムートン・スリッパが用意されておりました。
「祥子様 お身体は辛くはないですか?」 
ドレッシングルームのドアを開け、部屋に向かう間も彼はわたくしを支えるようによりそっていました。
「ええ 大丈夫です。ご心配をおかけしてごめんなさい」 
望月さんの表情はやさしいものに変わっていたのです。

ベッドの上には、外の雪景色を切り取ったようなお着物がたとう紙のなかにひっそりと置かれていました。
淡雪が降り積もった紅い侘助を描いた友禅でした。 仄光るような雪が美しく・・・椿の深い紅と緑が描かれた総柄の訪問着です。
隣に置かれた袋帯は金地の雪輪に南天を織り出した西陣のもの。
長襦袢は・・・白地の着物への透けを考えたのでしょう、雪のように淡いブルーのものでした。
帯揚げと帯締めは深い緑。上質な絹の品であることはすぐにわかりました
「素敵 これも望月さんが?」
「はい 今夜の祥子様にお召しいただきたくて、ご用意いたしました。どうぞベッドに腰を下ろしてください」 
バスローブ姿のままでわたくしはベッドに浅く腰掛けさせられたのです。

望月さんはわたくしの脚元に跪くと・・・右手で足袋をとり、わたくしの左足をとりあげたのです。
「あっ・・足袋くらい自分でいたしますわ」
先ほどのブーツを脱がされた時のように・・・男性の手に脚元のことをさせることに抵抗を感じてしまいます。
「いえ、どうか私にさせてください。祥子様のお支度のことはお任せください」
見上げる彼の忠実な大型犬のような眼に、わたくしは引こうとしていた左脚の力を抜いたのです。
足にぴったりと張り付くような足袋を履かせるのは、決して簡単なことではありません。コハゼをはずし・・足袋を半分までうらがえしにして・・わたくしの足をくるむ様に包み上げてゆくのです。そして一番上のコハゼを除いた3枚を、きちんと差し入れ止めるのです。
左右の足に足袋を履かせると、わたくしを一面カーテンに覆われた壁に向かって立たせました。
シャァァっ・・・ 望月さんの手で引かれたカーテンの向こうは一面の鏡でした。
ベッドの足元一面の鏡。こんな場所に鏡だなんて。
この建物の持ち主である石塚さんの・・・秘められた欲望を一瞬垣間みてしまった思いでした。

「失礼いたします」
わたくしのバスローブの紐に手を掛けるのです。
「だめ・・ 肌着くらい自分でいたします」 
鏡の前で全てを映し出されたままで、彼に着せ付けられる恥ずかしさを・・・耐えられるとは思えなかったからです。
「祥子様・・・」 
何度言わせるのですか・・そう言わんがばかりの眼でわたくしを見つめ、望月さんを抑えたわたくしの手を優しく外すのです。
「どうかお任せください」 
バスローブの紐は彼の手に委ねられました。彼ひとりだけの眼に全てを晒してしまう・・・そのはしたなさを少しでも忘れたくて・・・わたくしは顔を鏡から背けたのです。
「そのままお待ちください」 
望月さんはわたくしのバスローブの紐を解いただけでした。ローブをはだけることも・・・素肌を無闇に晒させることもなかったのです。そして深紅の湯文字を手にわたくしの前に再度跪きました。
「失礼いたします」 
バスローブを広げると・・・わたくしの腰に絹の肌触りの湯文字を・・・巻き付けたのです。何も身につけていないむき出しの腰や茂みを恥ずかしく思う間もないほど・・・一瞬のことでした。
湯文字は着物姿の時の下着の代わりなのです。今夜は箱根の時のような装いではなく、和服の作法に則った着付けをされるようです。 
なのにその湯文字は麻の葉を織り出した、とても上質な紅絹で作られていました。むき出しの腰に・・太ももに、すべらかな絹の感触が心地よいのです。
「こんな上質な素材で湯文字なんて」 
「祥子様のために上質すぎる素材などというものはありません」 
腰骨の上で紐を結ぶでも無く止めると、やはりバスローブをわたくしに羽織らせたままで望月さんは長襦袢を取りにゆきました。