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ジューン・ブライド 11

「あん・・・ね・・おねがいよ」
両手が自由になれば・・・トモくんの目からはずかしい場所を覆い隠すことができます。それだけでいいから手を自由にして・・・わたくしはそんな風に口にしてしまいそうになりました。
「あぁ まっしろい肌だ。それが黒のブラからこんなに溢れて。たまらない。」
ちゅぅぅぅ・・・ トモくんはまろびでた左の乳首を・・・乳輪ごと口にするとはしたない音をたてて・・吸い立てたのです。
「はぁっ・・あぁぁん・・・」
はじめて彼に抱かれた時は、ただ・・・貪るようにわたくしの乳房を口にしていただけでした。でも、いまは・・・淫楽の蕾がわたくしに与える妖しい響きを知り尽くしているかのように・・・トモくんの唇も舌も動き続けるのです。
「こっちはどうかな」
ちゅぷぅぅぅ・・・ いつのまにか引き下ろした右のブラに覆われていた淫らな大きさの先端には・・・彼の前歯と舌が同時にまとわりつくのです。
わたくしは妖しく腰を蠢かせてしまったのです。
「やぁぁ・・・ぅっ・・ぁ・ぁぁん・・」
左の乳首はトモくんの指が・・・ねっとりと載せた唾液のぬめりを塗り込めようとするかのように・・・扱き立てるのです。

「いい声を上げるね、祥子さん。夢にまで出て来そうだよ。」 
「いやぁぁ・・・そんなこといわないで」
右は甘噛みの痕がひりついているのに・・・トモくんの大きな手が掴みきれない白い乳房を指の間から溢れるほどに強く握りしめるのです。
「生理の時でも女の人のあそこって濡れるんですか?祥子さん」
わたくしの身体が・・・感じやすいバストへの愛撫だけで・・・はしたなくしとどに濡れそぼることを彼は知り過ぎるほどに知っていました。
「いじわる・・・しらない・・わぁ・・んぁぁ」
かぷぅ・・・ふたたび伏せられた彼の唇に啄まれた左の乳首は・・・わたくしの腰を淫らにひくつかせたのです。
「はじまって2日目でしょ。もっと生臭い血の匂いがするんじゃないの?祥子さん」
トモくんの手がわたくしの太ももの合わせ目に触れようと降りてきました。
「やぁっ・・・」
ショーツとタイツの上から触れようとする手から、バランスを崩しながらも逃れました。
わたくしが、彼に知られたくなかったのは・・・言い訳にした月のもののことではなく、4人の男性に摘み取られた茂みのことだったからです。

でも、却って両手を縛られた上半身は、トモくんの胸に・・しっかりと落ちていったのです。
「ふふ そんなにでかい胸を弄られるのが気に入ったのかな?祥子さんは」
「・・はぁぅん・・いわない・・でぇぇ・・トモくぅぅん」
わたくしの・・・萌え出たばかりの茂みは・・・サテンのショーツもタイツも透かして・・・ちくちくとした先端を露にしていたのです。トモくんの手が触れれば・・その感触にすぐに気づかれてしまったことでしょう。
「ほら、こうされたいの、祥子さん。」
トモくんの両の指からこぼれんばかりに掴まれた乳房を押し上げるようにして乱暴にもみしだくのです。
「あはぁぁん・・・やぁ・・トモくぅぅん」
掬い上げる様に押し当てられた彼の大きな手は、中指と人差し指の間に乳首を挟み込み・・・乳房全体だけでなく・・感じ過ぎる先端までもを同時に嬲っていたのです。
「このおっきな胸で扱いてもらいたくなっちゃうよ。」
ちゅぅぅりゅぅん・・・ 男性の握力で掴み上げた右の乳房を強く引くと、指の狭間でしこる乳首をすいたてるような舌使いでなめるのです。
「はぁぁっ・・・いいの・・ぉぉ」
「祥子さんはこんなふうに酷くされるのが感じるんだぁ」
ちゅぅぅくぅぅぅりゅう・・・ 今度は左を・・・わたくしは感じやすい乳房が熱を持ち始めたんじゃないかとおもうほどに・・・強く・きつく・・・何度もなんども・・繰り返すのです。
「あぁぁっ・・だめぇぇ・・トモくぅぅん・・・おむねでいっちゃうぅぅ」
立ったまま・後ろ手に縛られたままで・・・年下のセフレに秘め所への興味を削ごうと、望むままに与えつづけた2つの乳房は・・・もう限界でした。
トモくんは意識してはいなかったでしょう。でもわたくしの身体はGカップの乳房をきつく縄で縛り上げられる責めの快感を・・・知ってしまっておりました。それと同じ快感を送り込み続ける生身の男性の大きな手は、確実にわたくしを淫楽の淵に追いつめていったのです。
「こんなんでいっちゃうの、淫乱だなぁ、祥子さんは。」
「はあぁぁっ・・・いっちゃ・・うぅぅぅ」
容赦のない十指の動きに翻弄されたわたくしは・・・第一関節が食い込むほどに強く乳房を掴み上げられたところで・・・最初の絶頂を極めてしまったのです。




「ぁん・・・」
参道へ向かう大鳥居の手前、源氏池を牡丹園へと回り込む道でぬかるみに足を取られたわたくしを、森本さんの腕が支えてくださったのです。

ジューン・ブライド 12

半袖のオックスフォードシャツから出た筋肉質な腕に・・・わたくしの夢想のせいで半ば立ち上がった乳房の先端が触れてしまったのです。一瞬の刺激でしかなかったのに、わたくしの驚きの声には艶めいた響きが加わってしまいました。
「こんな、なんでもないところで転びそうになるなんて、ねえさんも結構おっちょこちょいなのかな?」
わたくしの動揺を知らぬ気に、森本さんはささえた手をそのまま握り込んだのです。
「こうしていれば、転ばないよ、ねえさん。」
歩調を合わせる様に、となりに並ぶと手をつないだままでゆっくりと歩いてゆきます。
「でも、これじゃカメラを扱えないでしょう。」
繋がれた左手を眼の高さまで上げて、後ろめたさを消す様にわざと明るく振る舞ってみせました。
一度転びかけると、ついつい・・・もう大丈夫だろうかと・・・足元に目がいってしまいます。その不安げな様子さえ、楽しそうに森本さんは斜め上から見下ろしてらっしゃいました。
「いいんですよ。ここは写真をとらなくても。」
「えっ、だって資料にできないわ。」
「いいんです。ここは、ねえさんのために立ち寄っただけなんだから。」
<神苑ぼたん園>と書かれた受付にポケットから出した千円札を差し出すと、わたくしの手を引いてずんずんと先に歩いてゆくのです。
「えっ、悪いわ。」
「いえいえ、気にしないで。ねえさんの喜ぶ顔が見たいだけです。ああ 本当にここは額紫陽花がたくさん植えられているんですね。」 
スミダノハナビ、シチダンカ、アマチャ・・・。
薬玉のような大振りな西洋紫陽花とはひと味違う、原種に近い株がいくつも植えられていたのです。さりげなく美しいその姿は、わたくしを悩ませていたトモくんとの最後の夜の想い出を・・・一時とはいえ払いのけてくれたのです。

「森本さん・・・」
「なに、ねえさん。」
「ありがとう、うれしいわ。」
今度こそ、素直な喜びの笑みを隣を歩く森本さんに向けることができたのです。


 

「はぁぁ・・・・ん」
「なんて逝きかたをするんだ、まだ胸だけなのに」
わたくしは快感に膝を折りそうになる身体を、トモくんに抱きとめられておりました。
はぁ・・はぁ・・ と息を荒げるわたくしの肩を優しく撫でてくれたのです。
久しぶりのトモくんの荒々しい愛撫は、年始の饗宴から身を慎んで来たわたくしに想像以上の刺激を与えたのです。

「おねがい・・・立ってられないわ。」
素直に甘えられ・・・素直に淫らになれる・・・ベッドの上だけの関係。わたくしは、はしたないおねだりを口にしてしまったのです。
「それじゃ、そこに膝をついて僕のをフェラしてくれ。」
ラブ・ソファーかベッドにつれていってくれると思ったのです。そしてこの手を括ったネクタイを今度こそ解いてくれると。
なのに・・・彼はその場でわたくしを跪かせると、自分の手でトランクスを下ろして激しく反り返った塊を目の前に差し出したのです。
「ん・・やぁぁ・・ん・・く・・ぷぅっ」
トモくんは片手で跳ね上がる塊の先端を引き下ろすようにして・・・まだ慄いているわたくしの唇に・・・まったりと粘液をまとわりつかせた先端を差し入れたのです。
ちゅぷ・・・くちゅ・・・ わたくしは口に含まされた先端に、舌先を舞わせるとトモくんが感じる裏の合わせ目から指2本ほど下の部分を・・・堅くした舌先で幾度も舐め上げたのです。
「あうっ 祥子さん、感じるぅ そこ ああ」
ちゅぽ・・・ちゅくぅ・・・ わたくしの髪をかき乱すほどに、トモくんの指が乱暴に頭を強く掴むのです。両手を縛られたままの体勢では自由にならない動きを、彼の力強い腕がかわりにゆっくりとはじめたのです。
「んぁ・・・お・・っきぃ・・のぉ・・・」
くぽぉ・・くちゅ・・・ 彼の腰から引き離され塊が唇から出そうになる時に・・わたくしの喘ぎは漏れ・・・それも全てを伝え切るまえにまた喉奥まで・・・トモくんの大きな先端が差し入れられるのです。
「美味しい?祥子さん。僕の美味しい?」
くぷ・・くぽ・・ちゅく・・・ トモくんの腕の動きは次第に早くなってゆきます。
口内にたたえた唾液は隙間なく彼の昂った塊を覆い・・・そのぬめやかな液体の狭間をわたくしの舌が上下左右へとひとときも塊から離れる事なく・・・頭の動きに合わせて踊るのです。
「・・・ぉいひぃ・・・ト・・モくぅ・・んのぉ・・・」
声は切れ切れにしか発せられなくなっていました。
「ああ いい 祥子さんのフェラ最高 ああ そこぉ 好き? これがすきなの?祥子さん」
もう3ヶ月ぶりになるわたくしのフェラチオに、トモくんの声は一段と上ずっておりました。

ジューン・ブライド 13

彼のまっすぐで大きな塊は、その先端だけが一段と大きく・・・わたくしの喉を時折塞ぐほどに奥まで付き入れられていました。とても・・・喘ぎ声さえも・・・上げる事ができないほどでした。
なのに・・・答えを強いるのです。
わたくしの髪を引く様にして、口を犯したままで視線だけを上げさせると、眼を合わせて・・・もう一度・・・。
「好き? これがすきなの? 祥子さん」
「・・す・・ひぃぃ・・・トモ・くぅ・・んんのぉ・・・す・・き・・ぃ・・・」
わたくしの声を聞いて、口内に暴れる塊はぐぅぅっと太さを増したのです。
じゅるるぅっ・・・ちゅるるぅん・・・ とわたくしは吸い立てるようにして塊に舌をまとわりつかせました。
ここでトモくんに満足してもらえば・・・わたくしの恥ずかしい身体の秘密を知られる事無く、一度は冷静に話が出来るはずです。
一杯に広げられ出し入れされる度に、彼の塊にまとわりついた粘液がしごき落とされているかのように唇に留まりました。まるで唇そのものが自ら蜜を溢れさせたとでもいうように・・・ねっとりと滴るほどにまとわりつくのです。
「ああ これ以上はだめだ。でちゃうよ。」
ちゅくぅぅ・・・・トモくんの逞しい腕がわたくしの頭をひきはなしました。

「・・ぁあ・・・ん・・」
あと少しだったのに。彼は猛々しく昂ったまま・・・わたくしの唇から離れてしまったのです。
「おねが・・い・・・もっとぉぉ・・」
後ろ手に縛られて不安定な上半身を倒し・・・わたくしの顔を自らトモくんの塊にすりつけるようにして・・・わたくしは続きをねだりました。
はしたなく開いた唇から伸ばした舌先が、彼の先端から溢れる透明な滴に触れる前に、トモくんの両腕が伸びて来て・・・わたくしの肩を押し戻します。
「おあずけだよ、祥子さん。」
「あぁぁっ・・・」
「相変わらずフェラ好きなんだね、祥子さんは。僕と続けてくれれば、いつでも何時間でも気が済むまで舐めさせてあげるのに。」
蕩けかけた理性に、若い・わたくし好みの肉体というアメを差し出すのです。
わたくしの思惑も知らずに、トモくんはわたくしから別れ話を撤回するという言質を取ろうとしていました。どんなことがあっても・・・結婚をする彼と、結婚後までセックス・フレンドという関係を続けるつもりはありませんでした。
翻意を促す視線をおくりながら、彼は下ろしかけていたトランクスをまたもとのようにきちんと履き直しました。昂ったままの塊は、そのシルエットの形の沁みをつくり・・・欲望がまだそこに留まっているのだと主張するように大きく前を張り出しておりました。

「だめ、これが最後よ。」
「強情だね、祥子さんは。さっきまでの蕩けた顔も好きだけど、強気の大人の女のきつめの顔も好きだよ。スーツ姿のままで立たせて後からめちゃくちゃに犯したくなる。」
以前、わたくしからトモくんを呼び出した夜に、二人の先輩の目の前でホテルの扉のすぐ側の壁に手を付かされて・・・彼にそうして犯されたこともあったのです。
「さぁ、その邪魔なランジェリーを脱がせてあげるよ。本当は、水槽の青い明かりの前で祥子さんが自分でストリップしてくれるといいんだけどね。」
トモくんは、わたくしの肩を掴むと、もう一度熱帯魚が泳ぐ水槽の前に立たせたのです。そして・・・手首をネクタイで縛めたままで、好みのストラップに変えるための左の金具をついっと横に引いたのです。
「あっ・・・」
フルカップのシンプルなサテンのブラは、ストラップの支えが亡くなった途端に・・・花びらのようにトモくんに向かって開いていったのです。
「前に祥子さんが教えてくれたんじゃないか。ランジェリーのこと、たくさん。ここがこんな風になっていることも。」
続いて右の金具も・・・乳房の重みに耐えかねたブラは白い果実を彼に捧げるかのようにゆっくりと・・・Gカップの白い肌を晒していったのです。
「いゃぁ・・・」
トモくんがこんなことを憶えているとは思ってもいませんでした。確かに、何度目かの逢瀬の時に彼にこんなことを教えたこともありました。わたくしすら忘れていたことなのに・・・彼は憶えていたのです。
ブラを取り去るためには手首の縛めを解かなければならない、その時が・・・自由になるチャンスだと思っておりました。
なのに、その僅かな機会さえわたくしは逸してしまったのです。

ジューン・ブライド 14

「こんな中途半端なのもエッチだね、祥子さん」
サテンの薄いモールドカップは、もうわたくしの鴇色の先端さえも覆ってはいませんでした。蓮の花びらのように・・・まぁるく大きなふくらみの下に、その肌の白さを強調するためのように咲き落ちていたのです。
「みちゃ・・・やぁ・・・」
「さっきここで逝ったばかりなのに、またおねだりしてるみたいだよ。何倍も美味しそうに尖ってるよ、祥子さん。」
こんな姿にされるなんて想像もしていなかったのです。恥ずかしさに赤く染まるわたくしの耳朶を舌先でねぶりながら、ぷっくりと立ち上がったままの乳首を彼の指がいらうのです。
「あぁぁ・・・だめぇ・・・」
「ちゃんと祥子さんの口からお願いしてくれないと、この後どうしていいかわからないなぁ。」
巻貝のような耳の中までも・・・トモくんの舌先は這ってゆきます。ここも感じるのだと、教えたのはわたくしでした。
「おねがい・・・手をほどいて・・・」
「だぁめ 言ったでしょう。一度、祥子さんを縛ってみたかったって。本当はこのままフロントに電話して縄を注文したいくらいなんだよ。身体中に縄痕が残るくらいぎりぎりに縛らせてくれる?祥子さん」
なんてことでしょう。いままで・・・トモくんの先輩たちとの複数での行為をたった一度ねだられたこと以外・・・アブノーマルなことを望まれたことはなかったのです。
彼が先ほどふと漏らした言葉に、こんな欲望が隠れていたなんて・・・。
「だめよ・・・縄なんて・・だめ。」
「わかってるよ。そんな怯えた顔をしなくても。祥子さんがいやなら無理強いはしないよ。僕はSMがしたい訳じゃないからね。」
言葉とは裏腹にいつもより強く耳朶を甘噛みしたトモくんの唇は、首筋へと這ってゆくのです。
「でも手首は解いてあげないよ。さぁ、どうしてほしいの、祥子さん。ちゃんと僕にお願いしてごらん。」
「やぁぁぁ・・・」
トモくんはわたくしの口から、身体を覆うものを彼の手で剥ぎ取って・・・と哀願させたいのです。
なんでもない時なら、愛語の一つとして羞恥にまみれながらもその後の淫楽を期待して口にできたことでしょう。でもわたくしのいまの身体では・・・とても、言えることではありませんでした。

「しかたないなぁ。それじゃこんなやらしい姿、僕だけが楽しむのはもったいないから、携帯で撮ってあげるよ。」
そういうと、わたくしから離れて、先ほど床に脱ぎ捨てたジャケットを拾い上げるのです。彼の手は内ポケットに入っている携帯のストラップを掴みます。
「トモくん、だめっ・・・お写真なんて だめ。」
わたくしの必死の声に、彼は携帯をジャケットに戻すと、わたくしの側に戻って来たのです。
別れようという男性の手元に、こんなはしたない姿の写真を残しておく訳にはいきません。彼には、まだ一度も二人きりの時間に写真を撮らせたことはありませんでした。
ただ一度、まだ若かった頃にかつての上司に盗み撮りされた昔の写真を・・・数枚持ち帰られたことがあるだけです。
「もう一度聞くよ、祥子さん。どうしてほしいのか、ちゃんと言ってごらん。」
すっかり露になってしまったわたくしの左の乳房を握りしめて・・・耳元で囁くのです。
もう・・・仕方ありませんでした。
「おねがい、わたくしのランジェリーを・・・脱がせて・・ちょうだい」




「ねえさん、何を考えているの?」
隣を歩く森本さんが、思い切った様に尋ねてきました。
鶴岡八幡宮のあじさい園を2/3ほど廻り終えたところでした。白い花が花火のように散るスミダノハナビの大きな株の前のことです。
「ごめんなさい。ちょっと、仕事のこと。」
「ふうぅん。」
その返事で彼が納得していないことは、充分にわかりました。
今日一日を鎌倉で過ごそうと誘ってくれたのは森本さんだったのです。時折、トモくんのことが脳裏をかすめても、不自然さを感じさせない様に適度に会話をし、相づちをうっていたつもりでした。
「せっかくお休みを取ったのに、だめね。ちょっと気になる事を思い出してしまったものだから。」
「わからなくも、ないけどね。」
彼も多忙な人でした。
今日もわたくしが気づかないだけで、もう何度も携帯が鳴っていたのかもしれません。なのに、そんなそぶりも見せずに優しくエスコートを続けてくれていました。

ジューン・ブライド 15

「ごめんなさい。」
一緒に過ごしてくれる男性の前で、他の方のことを考えたりしない、それはわたくしに出来る最低限の誠意だと心得ていました。なのに、トモくんの披露宴の日だという特別な事情は、わたくしの大人の信条に何度も・何度も揺さぶりをかけたのです。
 
「や、そんなんじゃないんだ。謝らないでください、ねえさん。」
わたくしが重ねたお詫びの言葉に、恐縮した風で森本さんはさらりと前髪をかきあげるのです。
仕事の時には年齢よりも貫禄を感じさせるに違いないその風貌が、年相応の爽やかさを取り戻します。

「さっきまではさ、ねえさんが仕事のことを考えている時の目の色とは違う気がしたから、ちょっと気になっただけ。」
わたくしは、ぎょっと・・しました。
ありえるはずもないのに、心の中の映像を彼に覗かれていたのではとさえ思ったのです。
「そんなに、違うものかしら。」
動揺が声に出ていない事を・・・祈りながら会話を他愛ない方向へと誘導しました。
「ん。なんていうか、磨き上げた日本刀みたいに光るんですよ。仕事のことを考えたり、話したりしているときのねえさんの眼は。」
「あら、物騒な喩えね。」
何度か、珈琲専門店のカウンターで隣り合って、それぞれの仕事の話に花を咲かせたこともありました。その時のわたくしのことを、森本さんはそんな風に観察していたのでしょうか。
「まぁ、真剣を見た事もない人にはちょっと伝わりにくい喩えだけどね。さっきまでのねえさんの眼には、あの光がなかったからちょっと不思議に思ったんだ。」
若い頃は<総長>と呼ばれてやんちゃをしてきた、と笑って話してくれた過去には・・・真剣を目にしたこともあったのかもしれません。
「ふふふ、そんなに殺気走った仕事の話ばかりじゃないのよ。」
森本さんの映像監督としてのプロの眼ゆえ・・・でしょうか。観察眼が見抜いた事実を<単なる誤解>にしなくてはいけません。
「わかってる。でもさ、さっきのねえさんの眼。まるでラリックのガラスみたいだった。半透明の乳白色を透かしたみたいな・・・眼だった。」
ゆっくり楽しんできたあじさい園も、もう出口でした。
「その眼を見てたら、欲情しそうになりましたよ。」
わたくしの耳元に口を寄せると、森本さんは真面目な表情のままでそう囁いたのです。
 


 
「やっと、いえたね。祥子さん」
トモくんはそう言うと、わたくしの後に回りブラのホックを外したのです。
縛められた両手を浮かせるように引き上げられて・・・わたくしを辱めていた黒のサテンは、はらりと・・・足元に落ちたのです。
「ぁっ・・・・」
とうとう、彼の手で・・・・秘密を明かされてしまう時が来てしまうのです。
「次は、ブーツだね。いつもみたいにガーターストッキングで来てくれたら、ブーツを履いたままでも可愛がってあげられたのに。」
すぐに、タイツのウエストにかかるかと思っていた彼の手は、わたくしの足元に向かったのです。ランジェリーの扱いと同時に、装う順序も・・・寝物語にトモくんに聞かせたことがありました。
ためらいもなく膝をつくと、彼の手が右足から内側に付いた短いファスナーを下ろしてゆきます。
「二日目って出血が一番多いっていわなかったけ、祥子さん。ちっとも、血の匂いなんて感じないけど。いやらしいフェロモンの匂いしかしないよ。」
若い彼が興味本位で聞いて来た女性の身体のことを、淫らな実習のようにして教えたこともありました。
トモくんは片脚づつわたくしの足を取り上げると、足首までのエレガントなショートブーツを脱がしてしまいました。
「や・・・そんなふうに・・いわないで」
ふとした拍子に太ももの合わせ目にすりよせられようとするトモくんの鼻先を、わたくしは不安定な姿勢で避け続けていたのです。
 
「タイツって祥子さんが履くと思ってなかったからなんだか新鮮だよ。こんなに濃い色で覆っていやらしいヒップを隠したつもり?」
トモくんがわたくしの身体を水槽に向き合う様にと向きを変えさせたのです。
彼の目の前には、鈍く光る黒のサテンのハイレグに半分だけ覆われた白い腰の頂きが晒されているはずです。タイツが黒のグラデーションでその曲線を却って主張しているかのようでした。